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○●2021年度劇場映画ベスト18 総括●○

お待たせいたしました。
お待たせしすぎたかもしれません。

2021年度は83本の鑑賞本数(複数回鑑賞、旧作、翌年公開作品含まず)から、年間ベスト18本の発表です。ランキング順に発表!

●●2021年度劇場映画ベスト18 総括●●
(1月1日~12月31日までの劇場公開作品対象)

第18位
『マトリックス レザレクションズ』

『マトリックス レザレクションズ』

凄え良かった!
シリーズの基本設定はそのままに、メタ的視点も取り入れ過去作のカットを随所に見せつつ現代の手法を取り入れて再構築させて1作目と対になるような作りで上手く締めくくっていた。
バレットタイムの使い方も進化してて圧巻!
単純に「主演2人、年取ったな〜」とも思うし「それでもしっかりアクション見せてて凄いな〜」とも思ったり、1999年にタイムスリップしたような、同窓会のような気分を味わえてやはりリアルタイムで1作目を(特に劇場で)観てるかどうかで本作の評価は全く分かれる。
自分はガッツリ楽しんだ。
最高〜!
18年の歳月を経てまさか新作が観られるとは思わなかったし、完結編とされていた3作目のしこりの残る終わり方に納得いかなかった人には、本作は真の完結編として溜飲が下がる締め方だったんではないか。


第17位
『空白』

『空白』

 食らいまくって、観終わってしばらくの間クラクラした。
今でも冒頭の交通事故シーンが頭から離れない。
自分の家族があんな酷い死に方したらと思ったら…。
無駄に配慮して都合よく省略せずに、しっかり見せることで観客もその事故の重みを体験する事になり、とても鮮烈。
さすがに実際に映像では描かれないけど、事故に遭って遺体がどういう状態になったか、台詞で説明されるけど、それがあまりにも原型を留めてないほど痛ましく凄惨で、想像するだに、遺体と対面した親父の辛さが伝わってきて観ていてこちらも辛くなる…。
キツいよな〜。
事故で亡くなる少女の存在感は残り続けるし、喪失感を体感する。
でもこのシーンがショッキング過ぎて民放じゃ流せないね。
露悪的なワイドショ〜の編集とかも描いてるし。

古田新太は韓国俳優のようなアクの強さでスクリーンを掌握するし、松坂桃李はひたすら不憫だし善意の押し付けおばさんこと寺島しのぶは強烈だったし、気の良い弟子の藤原季節には救われるしと、それぞれの役者陣が最高。

また、わずかな登場シーンの片岡礼子が、暴走する古田新太を何も言わなくさせる演技は見入ってしまった。


第16位
『ジャスト6.5 闘いの証』

『ジャスト6.5 闘いの証』

娯楽性、社会性、作家性を兼ね備えた絶妙なバランスが凄い!
警察とドラッグ組織の必死の攻防戦が繰り広げられるエンタメ要素満載の娯楽大作。
それでありながら実際のイランのドラッグ問題などの切り込んだ社会性を見せ、作品全体にほとばしる監督の作家性がスクリーンから感じ取れる、とてつもない熱量を持った傑作だった…。

むさ苦しい!暑苦しい!息苦しい!
密室のような刑務所内の熱血刑事 対 麻薬組織のボスによる攻防戦こそが本作最大の魅力。
初めて観るイラン映画はコレで決まり!!と、問答無用で太鼓判を押したくなるような凄まじい強度を持った、ドキュメンタリー的な要素を多く孕んだエンタメ作品だった。
寒い日に、むさ苦しさと暑苦しさと息苦しさで身体を温めたい人にもオススメ!


第15位
『ラストナイト・イン・ソーホー』

『ラストナイト・イン・ソーホー』

主人公エ口イーズを演じた主演女優トーマシン・マッケンジーが、めッッッたんこぎゃわええええ!2時間、眼福!
無論、アニャ・テイラー・ジョイもその観る者をつかんで離さない眼力も良かった!
エドガー・ライト監督の新作としても、前作「baby driver」から振れ幅が飛び過ぎてて驚きを隠せない。
60年代のロンドンという、これまでとまるで違うフェーズの世界観を見せられたのが斬新。
それでいて過去の監督の作品を想起させるカットも観られてニヤニヤした。
更に、色んなジャンルがごちゃまぜになる感覚たまんねぇ。
サイコロジカルスリラーであり、ジャンルが交錯してテンションぶち上がるという共通点でいえば、本作と「マリグナント -凶暴な悪夢-」とで、2本立て上映で連続で観たいところ。

1回だけじゃ味わい尽くせないほど複雑かつ幻想的に見せる60年代のロンドンの街並のセットも淫靡で恐ろしくて魅力的。
全編かかるサントラも60'sロンドンで良かった〜!
これはVINYL盤欲しくなるでしょ!
とりあえずスポティファイでDave Dee, Dozy, Beaky, Mick & Tichのアルバムは全部ダウンロードした。


第14位
『レイジング・ファイア』

『レイジング・ファイア』

熱いアツイあつい〜!
超王道の香港刑事アクションの最新型!
これまで観たドニー・イェン作品で1番好きかも。
元刑事で敵となるンゴウ役のニコラス・ツェーがドニーさんを食ってしまうぐらいのカッコ良さ。
ンゴウさんは結構やるせない理由で闇堕ちしてるので、完全な悪とは言い切れないし、彼なりの正義で動いていると思うと、どちらかと言えば、ンゴウ側を応援したくなってしまう。
ドニーさんがド強くて絶対的な正義という存在は、いつもの作品と変わらないのでンゴウがどんな手を使って欺いて撹乱させて負かせようとするか、目が離せなかった!
後半の一般市民を大勢巻き込んだ壮絶な市街の銃撃戦はテンション上がりまくり、たまんねぇ!
やっぱりマイケル・マン監督作「ヒート」のオマージュだったりするんだろうか。

第13位
『サイダーのように言葉が沸き上がる』

『サイダーのように言葉が沸き上がる』

青春音楽アニメ映画として傑作!
俳句とレコードを主軸にした超ド直球で瑞々しいゆったりとしたテンポが心地良い現代の若者のドラマで凄く良かった!

SNSコミュニケーションのやりとりのリアルさは観ててニヤニヤした。
全編ポップで鮮烈な色合いとキャラクター描画が観てて楽しい。
主演の杉咲花の声のかわいさもプラスになってた。
少年少女がコンプレックスを克服する話でもあり、そうした面でもウルッと来てしまった。

細かいところでツッコミどころはあるけど、声に出して伝えることは大事だなと改めて思わされた。
てか観終わって思わず「出っ歯 女子」で検索しちゃったね!
地方のショッピングモールが舞台ってのも良かったな〜。
地方民にとったら娯楽と生活の場であるし。

それと、アナログ盤は経年劣化による歪みが起こっても決して素人はまっすぐ直そうとしちゃ駄目だというのも教訓としてあったな。
材質がプラスチックなんだから、まっすぐ元のように戻せるわけがない!

パンフレットも素晴らしく、柴デミー賞にて、最優秀パンフ賞に選出したほど。劇中に登場した12インチアナログ盤の中抜きピクチャーレーベル仕様のジャケまんまという凝り様で作品の世界観を持ち帰れるのが凄い!
監督のインタビューでTMGEとか灰野さんとかラリーズの話が出てくるのも面白い。

第12位
『ビルド・ア・ガール』

『ビルド・ア・ガール』

本作は90年代のUKが舞台で、音楽出版社に見習いで入った16歳の女の子が初めてライブ取材に入ったのがMANIC STREET PREACHERSのライブで、そこで演奏された「YOU LOVE US」を聴いてロックの洗礼を全身で浴びるという、あまりにもリアルタイムに筆者をピンポイントに狙いにきやがった震えるカットに、鳥肌立ちすぎて泣いた!
本作はもうこのカットの為に存在していると言っても過言じゃない!
ここ最近てか、この数年観た映画でもベストカット!
Blu-ray出たらこのシーンだけ何回も観返す!
それくらいの衝撃的なカット!
なんせ日本語字幕で「YOU LOVE US」の歌詞がしばらく流れるんだぜ?
英国の映画でここまでマニックスの歌がフィーチュアされたことあっただろうかいや無い!こんなに嬉しいことはない。

その時に彼女が聴いた「YOU LOVE US」がその後の彼女の人生を変えていき何の因果か毒舌ライターとなりながら悩みや葛藤で「SORROW 16」になりつつも家族の暖かさに気づき再起していく姿はなんとも微笑ましい。
プリさんは役者が演じてるけどジェ〜ムズ兄貴が似てなさ過ぎて笑た!
使われてる音は本物!
おまけに劇中でJEFF BUCKLEYの「Lover, You Should've Come Over」もゆったり流れて、更にピンポイントに殺しにかかりに来ている有様で何なんだよまったく(怒嬉涙)!
90sのUKロックばんばんかかっててホントたまらなかった…。

マニックスにハマった時期も16歳だし、音楽ライターを目指した事もあったしで、この主人公とあまりに似通っている。
だが彼女の方が遥かに才能もガッツも勇気も運もあっただけの話だよ…。


第11位
『ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド』

『ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド』

青春音楽映画の傑作!
1つのバンドに救われて情熱を捧げてきた人皆にオススメする。

The Smithsの楽曲が全編流れ、彼らがいかに鬱屈を抱えた当時の若者に影響を与え寄り添われていたか身に沁みて伝わって最後は落涙。
スミス好きとメタルDJという音楽趣味の違う2人が徐々に通じ合うのもグッときた。
劇中にはメンバーだったモリッシーのインタビューも挿み込まれるなど、バンド公認感もあり、楽曲が使われ続ける点も良くて、観終わってすぐにスポティファイでアルバムをダウンロードしてしまった。

スミスを聴くと10代で肉食とセックスに関心が無くなるってどんだけの影響力やねん!
スミスファンによるラジオ局ジャック事件は本当に遭った事らしく、パンフにその顛末や詳細が書かれていて面白かった。


第10位
『新 感染半島 ファイナル・ステージ』

『新 感染半島 ファイナル・ステージ』

作り込まれたポスト・アポカリプスの世界観で描かれる人間同士のタマの獲り合い!
世界観が広がり、ゾンビ映画の続編として、まったく別物と化したようにも見えるが、作品の本質である、「極限状態に取り残された人々の人間性を描く」という点では前作に負けず劣らずの見応えある作品に仕上がっていた。

監督が本作の中で最も気合を入れて撮ったとインタビューで答えているのがクライマックスのカーチェイスシーン。
このアドレナリンがドバドバ噴射するような感触は「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を想起せざるを得なかった。
それほどのスピード感、テンポ感をもって大迫力の見せ場を作っている。
荒廃した都市の地形を利用しているのも熱い。

観ていてハラハラするカーチェイスシーンが終わってもひと息つけず、「え~!まだ続くの~!!?」と思いながらも、更に物語はドラマチックな展開に。
ここはちょっとスローモーションが多いお涙頂戴要素が若干クドいような気もしたけど、終わってみれば、「ゾンビ」まんまのオマージュシーンで終了という潔いラストシーンで大満足!!
ていうか、こんなくっそフザけた邦題考えた奴、前に出ろ!
マ・ドンソクが正義の張り手をお見舞いするぞ!


第9位
『あの頃。』

『あの頃。』

劔樹人の実話をまとめた原作を元に、最近、新作公開が続いている今泉力哉監督による、ハロー!プロジェクトにハマりすぎて愛情が膨れ上がった男たち=通称ハロヲタの熱狂の青春を、アップフロントプロモーション全面協力のもとに描く本作。
しかし、オープニングで、早川義夫の「サルビアの花」のカバーが流れていきなりハッとなる。

ハロプロを通じた男たちの関係は、何か共通の趣味にハマっていたサークルやオフ会に属していた人なら、持て余した時間を青春を捧げていた、もう戻ってこないかけがえのない時間の大事さ、尊さに共感を覚えることだろう。

そうした、あの頃は良かったというノスタルジー的な気持ちにさせるし、そもそも劇中に出てくる「恋愛研究会。」の方々のmixi日記を読んでたりしたので、より感情移入させられた。

松浦亜弥役の現役ハロプロメンバーである山﨑夢羽も瑞々しさで好演。
握手会のシーンになぜか怒髪天の増子さんが出てきたのは爆笑ポイント。

自分はこの頃は、ハロプロに対してはそこまで入れ込んではいなかったが、共通の音楽を聴く友達と飲み会やったり、DJイベントで盛り上がったり、ライブ観てフェスに行ってと、同じことに夢中になって楽しい時間だったな~と思い返し、懐かしい気分になった。

ところで、コズミンが喫茶店でストーカーの知り合いの女性に土下座で謝るシーン、この喫茶店どこかで見た事あると思ったら、自分ちの目の前の喫茶店じゃねえか!
阿倍野区の話かと思ったらまさかの都内ロケ!

でも、一点不満があるとすれば、大学の文化祭のシーンで、ミキティこと藤本美貴の「ロマンティック浮かれモード」が流れる中で、ヲタ達が渾身のヲタ芸を披露するシーンがあるのだが、「美貴さま美貴さまお仕置きキボンヌ」も「スライディングダッシュケチャ」とかも、もう少しヲタ芸の熱量とヤバさは見せられたんじゃないかと。

Youtubeで素人が撮った、さいたまスーパーアリーナ前で行われたヲタクの集会の動画が狂信的でスリリングに満ちて最高に馬鹿だ。


第8位
『ただ悪より救いたまえ』

『ただ悪より救いたまえ』

往年のVシネマのような、エグみある描写も含めて、懐かしさすらある純度100%の殺意むき出しの男2人のタマの取り合いに興奮する暴力エンタメの傑作!
汗まみれにむせ返る暑さと街の猥雑さが混同する熱帯バンコクを主戦場にすれ違う2人が遂に対峙するタイマンのシーンは興奮!
本作のタイトルにもなっている「悪」とは、何を指すか色々と考える。

触る者皆傷つけてもはや当初の殺す理由すら忘れて追いかけてくるイ・ジョンジェの凶気はわかりやすく怖いが尋問する時に平気で男の親指を切り落とすのに幼女の前では素敵なおじさんとして微笑むファン・ジョンミンも恐ろしや!
そしてバンコク到着からのフィルムのトーンが黄色く、ポスターのイメージのような西部劇的ですらある。
第14位に挙げた「レイジング・ファイア」と本作の男同士のタイマンWバイオレンス映画2本立て上映、どっかの名画座でやってくんないかなー。
立て続けに観たい。


第7位
『フラ・フラダンス』

『フラ・フラダンス』

『映画 聲の形』、『若おかみは小学生!』『劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン』など日本アニメ史に残る傑作を生み出し続けている脚本家・吉田玲子がまたやった!
凄え良かった…傑作!
社会人1年目女子たちのフラダンスに燃える青春ドラマとしてキャラがそれぞれ立ってて、震災などの過去の痛みを乗り越えて成長していく主人公にはさすがに涙目に。

ラストで沸点まで盛り上げてエンドロールにフィロソフィーのダンスの主題歌「サンフラワー」で締めくくるまでの流れ、完璧過ぎる!
劇中の台詞に「新しいダンス」というのがあるのもフィロソフィーのダンスを想起させて良かったし、ももク口っぽいアイドルがいわきでコンサートを行うシーンとか震災があった10年前を思い出してグッときたし、全編見せ場があってそれぞれのキャラにしっかりとしたドラマもあって、フラというジャンルに興味を持たされてしまった!

DEAN FUJIOKAの、のっぺらとした大根な声演技がノイズだった事を除けば作品に何も文句の付けようが無かった…。
福原遥や富田望生の声演技は安定感あってキャラに個性を与えていてすんげえ良かった!
フラの音楽は心地良かった。キャラデザも筆者の好みだった。
観終わっても多幸感が続いている。


第6位
『最強殺し屋伝説 国岡 完全版』

『最強殺し屋伝説 国岡 完全版』

超面白くてニヤニヤ!
話運びが絶妙でテンポが凄く良い!
2021年の邦画界を盛り上げた立役者と言ってもいい、阪元裕吾監督作。

殺し屋モキュメンタリーというと、「ありふれた事件」くらいしか思い浮かばなかったので、本作はこのジャンルとして新たな方向性を見出したような、純粋にスカッと楽しい娯楽作品として観終わって気分良く出られる!

殺し屋なのにサイレンサーを使わないリアリティを問わない豪快さもまた良し!
ボンドよりも圧倒的に国岡の方が好感持てるし!
他の殺し屋を演じるキャストも、リアルにいそうって人と、こんな奴絶対いねえだろ!とツッコミたくなるような人もいて、それぞれ個性が立ち過ぎ!
最初は国岡の単独行動から途中でチームものになっていく流れも自然でとても面白い。
漫画のような世界観に振り切っている!


しかし本編を観たあとにポスタービジュアルを観ると、国岡は外食や簡単な惣菜ばかり食ってて自炊するようなタイプに見えないのに、スーパーの袋にネギ入ってるのは、違和感。
ラーメン食う時に薬味で入れるのかな。


第5位
『サマーフィルムにのって』

『サマーフィルムにのって』

高校生の映画制作を主軸にした青春ドラマ。
SFや時代劇作品にも猛烈なリスペクトを感じた。
消えかかる映画の未来に魂のバトンを託すところまで描き、その気持ちよい鑑賞後感に泣けた。
主演の伊藤万理華のスクリーン映えする表情に最後まで釘付け!
これは文句なしの傑作!
もう大好きしか言えねーじゃん!

てか昭和の時代劇映画や平成の壁ドン恋愛映画などのジャンルへのリスペクトを描写しつつ、スマホで撮影するような令和の若者へ映画制作の未来を託す本作こそ、映画会社の○○周年記念作品にふさわしいのでは?
(この直前に山田洋次監督の『キネマの神様』を観たので尚更そう思った)

本作はメジャーなキャストが出てこないけどそれが良かった。
出演の生徒たちそれぞれがしっかりキャラが立ってた。
役名がハダシとかビート板とかブルーハワイとか、ニックネームで呼び合ってるのは大林作品へのリスペクトか。

Cody・Lee(李) による主題歌「異星人と熱帯夜」も良かった!
聴くと映画の風景が思い浮かばれてきて真夏の青空が目の前に広がる。
もう大好きしか言えねーじゃん!


第4位
『映画大好きポンポさん』

『映画大好きポンポさん』

大傑作!狂った心で夢を見てるんだよ!!!
映画製作の現場をエンタメとして昇華させつつ、制作現場だけでなく製作に必要な融資の話もドラマチックに見せる!
現実の映画に対しても、制作陣の想いを想像したくなる、更に映画が好きになれるような限りなく映画愛が爆発した作品!
お見事!
『あんなのリアルじゃないよ』とか業界人が知ったかぶりの知識でとりあえず否定してきそうだけど、大事なのはリアルさじゃねえから。
映画編集という動画を切り貼りする地味な作業をアニメーションに昇華したというのも画期的!
まさしくこれは世界広しといえども、日本のアニメーションでしか成しえないクリエイティブが炸裂した奇跡のバランスで作られた、観る者の心に残る作品だった!

断腸の思いでカットを捨てる辛さとか、観てて泣きそうになったよ。
上映時間90分というのも意味を持ったものというのもあり、これぞまさしく映画館で観るべき!
映画に夢を託した世界各地の映画好きに刺さるんじゃないかね。
まぁ内容関係なく『美少女アニメ的な絵柄が苦手』とかいうこだわりある人は観なくていいけど。

『映画を撮るか、死ぬか』という究極の二者択一の覚悟と決意で映画制作に挑む、主役のジーン役の声を演じた清水尋也は見た目、首が長い俳優さんだけど、声質もいい感じにハスキ〜で素人臭さが無くて聴きやすい。

また、映画の編集作業という現実では限りなく地味な仕事を、本作最大の目玉シーンとして、観ていて身体の総毛だつ鳥肌と高揚感とカタルシスで打ち震えあがらせたことは、アニメ作品としても、映画としても、あまりに衝撃で画期的だった。

第3位
『ザ・スーサイド・スクワッド “極"悪党、集結』

ザ・スーサイド・スクワッド “極"悪党、集結

期待を超えるハチャメチャ痛快な面白さで楽しめた!
巨大なバジェットの作品でこんな馬鹿な事やれるの凄すぎるよ…!

マーベル映画では実現不可能なジェームズ・ガン監督による久々の振り切ったゴア描写の連続は、爆笑で痛快で眼福!
もはや味方も敵も誰がいつ死ぬか分からない展開も良し!
ハーレィ・クィンが出てる作品では文句無しでベスト!
怪獣映画としても楽しめた!
描写についても妥協をしないDC作品は今後、本作をクオリティの基準として期待しちゃう。監督によるセンスのいい選曲も相変わらず!
サメ人間のナナウエに萌える!
ハチャメチャなゴアアクションと同時に、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.2」に続き、父親の存在とその関係性がクライマックスに繋がっていくのはグッと深みを出してて、やっぱとんでもない。
モヤモヤしたら観返したくなる作品。

第2位
『街の上で』

『街の上で』

正直、観る前は、下北沢、古着屋、古本屋、自主映画、恋人など、あまり自分に刺さらなそうなキーワードが並ぶ作品で期待はしていなかった。
それでも今泉力哉作品だし観るか~くらいな気軽な感じで。

下北沢を舞台に、若葉竜也演じる主人公の青くんが周りの色んな女性たちに振り回されていく会話劇。これがめっぽう面白い。いや面白すぎる。
最高。

下北沢の街の風景の中で、主軸となるのは人と人とのそれぞれの距離感を繊細かつユーモアを交えた会話の面白さ。
大仰なシーンは一切無いが、全編ゆったりとした時間の中で醸し出される独特な癒し効果がぬるま湯に浸かってるような心地よさ。
それでいてラストの大人数が一堂に会する爆笑シーンがアクセントになっていたりもするし、たまらない。
劇中に登場するような人が本当に下北沢にいるかもしれないという現実との地続き感を感じるのも良い。

15年くらい前に友達が下北沢でバーをやっていた時に何度か遊びに行って酔っぱらい過ぎて何故か店を飛び出して下北沢の街を疾走して迷子になったな~とか、懐かしい気分にもなった。

あ~それにしても、青くんと友達になりたいしイハちゃんと恋バナしたいし田辺さんに好かれたいし町子さんの自主映画出たいし雪ちゃんに振り回されたい!
観れば観るほど更に楽しく愛おしくなる作品。
これからも観続けていきたい大好きな一本。


第1位
『ベイビーわるきゅーれ』

『ベイビーわるきゅーれ』

こりゃ~話題になるわ!
SNSを中心に火が点き、半年以上のロングランが続くのもうなずける。
文句無しに2021年を代表する作品。
2021年は4本もの殺し屋映画を撮った阪元裕吾監督、ノリにノッている。

「明るい殺し屋映画があってもいいじゃないか!」というコンセプト自体は過去にもあったけれども、本作の内容は、過去の邦画では観たことがない新感覚でフレッシュな印象だった。

ジャンルとしては、ゆるふわシスターフッドバイオレンスアクション!
真逆の雰囲気を違和感なくミックスさせている。

髙石あかりと伊澤彩織という、まったく違う個性の主人公2人の組み合わせは最高のバディムービーでもあった。
そしてまた二人に会いたくて何度も観たくなる。

伊澤彩織は役者ではなくスタントウーマンなので、台詞は聞き取りづらいところはあったけど演技してないような素感も良くてかわいい!
その分、三元雅芸との格闘シーンは、お互いにスタントに特化した人なので、異常な熱量の動きに目が釘付けに。

舞台版「鬼滅の刃」で禰津子役を演じていた髙石あかりは、時に大げさにお茶目に、時に神妙に落ち着き払ったりと、顔の表情や声色を使い分けて芸達者で上手いそしてかわいい!

二人が住んでいる場所が鶯谷っていう絶妙なチョイスがまた良かった。
家の近所だし!駅前の橋とかホテルが並ぶ風景とか既視感あった。

あと、仕事以外で人を殺したら死体の片付け費用は本人が実費で支払うというシビアさも面白い。

本作のパンフは、2人が歌う挿入歌とドラマが3本入ったCD付きというちょっと異常なレベルの満足度。
映画館から出ても、その世界観を引き続き楽しめるという邦画でありそうで無かった驚きの仕掛けとなっている。

それで1,000円(税込)って原価どうなってんの?!儲け出んの(怒)?!
思わずクリアファイルとポスターも買ってしまったよ。

続編制作も決定して、予算も更にスケールアップするだろうけど、世界観はあまり大きくしなくてもいいかなという気はする。

【総評】

2021年は相変わらず未曽有のコ口ナ禍が勢いを増すものの、公開作品の充実度は衰えを見せない。結局、2020年よりも劇場で観る本数も多かった。

2021年に『ベイビーわるきゅーれ』を第1位に持ってきたのは、前年に「エクストリーム・ジョブ」を第1位に選出した理由と同じ。

劇場内が作品に魅了されるかのように爆笑の渦に包まれたり(あまり声は出せずとも)、アクションにハラハラしたり、やっぱり「超どストレートなエンターテインメントが渇望されるべき」だと思ったから。

2022年は相変わらず例の感染症の拡大は止まらないし、4月から色々な生活品の値上げが増えたり、よその国で戦争が始まったり、国内や世界は更に悪い方向に進んでいる気はするけど、今年も映画館で映画を観てる間は何もかも忘れてドエンタメの世界に浸っていたい。

●●2021年度劇場映画ベスト18●●

1.『ベイビーわるきゅーれ』
2.『街の上で』
3.『ザ・スーサイド・スクワッド “極"悪党、集結』
4.
『映画大好きポンポさん』
5.『サマーフィルムにのって』
6.『最強殺し屋伝説 国岡 完全版』
7.『フラ・フラダンス』
8.『ただ悪より救いたまえ』
9.『あの頃。』
10.
『新 感染半島 ファイナル・ステージ』
11.『ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド』
12.『ビルド・ア・ガール』
13.『サイダーのように言葉が沸き上がる』
14.『レイジング・ファイア』
15.『ラストナイト・イン・ソーホー』
16.
『ジャスト6.5 闘いの証』
17.『空白』
18.『マトリックス レザレクションズ』

∞『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(シンクロ率、無限大です!)

◆ランクには漏れたけど心に残った2021年の傑作16作品◆

『リスペクト』
『14歳の栞』
『ヒッチャー HDリマスター』
『ノンストップ』
『ノマドランド』
『ロード・オブ・カオス』
『くれなずめ』
『アメリカン・ユートピア』
『漁港の肉子ちゃん』
『サムジンカンパニー1995』
『唐人街探偵 東京MISSION』
『ダルバール 復讐人』
『ジャッリカットゥ 牛の怒り』
『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』
『黄龍の村』
『マリグナント 凶暴な悪夢』

以上。
2022年度もたくさん観るぞ!


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