2020年映画ZAKKIちょ~ 9本目 『デッド・ドント・ダイ』
2019年製作/上映時間:104分/R15+/スウェーデン・アメリカ合作
劇場公開日:2020年6月5日
観賞劇場:TOHOシネマズ日本橋
観了日:6月6日
まったりのんびり不条理ゾンビ・コメディ
一筋縄ではいかないオフビートの世界観を描くのが得意なジム・ジャームッシュ監督がゾンビをテーマに描いた監督・脚本作品。
【あらすじ】
アメリカの田舎町のダイナーで起こった変死事件が発生。墓場から死者が次々とよみがえり、やがてゾンビが町に溢れかえる。
元々、4月に日本公開だったものの、某新型のヤツのせいで、劇場が営業停止していたこともあり、6月に公開が延期されていた本作。
そうした事情もあり、久々に新作映画を映画館で観られるということもあり、期待を込めて劇場へ足を向けた。
以下、「良かった点」と「良くなかった点」。
○良かった点
のんびりとした田舎町の人々の、ゆる~りふわ~りとした雰囲気の生活風景がまず癒される。
また、主演のビル・マーレイやアダム・ドライヴァーほか、ティルダ・スウィントン、スティーブ・ブシェミ、ダニー・グローヴァー、セレーナ・ゴメス、RZA、トム・ウェイツにイギー・ポップと勢ぞろい。
これだけ豪華キャスト揃ってたら、それぞれのシーンを観てるだけで楽しい。
(余談だがダニー・グローヴァーは、いかりや長介に似ている)
アダム・ドライヴァーが出ている事もあってか、「スター・ウォーズ」ネタがあるのはファンはクスッと出来るだろう。
個人的にはジャームッシュ監督の前作である、ザ・ストゥージスのドキュメンタリー映画『ギミー・デンジャー』が本当に最高だったので、本作でイギー・ポップ扮するゾンビが登場して徘徊するシーンはニヤニヤが止まらない、本作一番の眼福シーンであった。
(イギーさん、楽しくゾンビを演じてたんだろうな~というのがスクリーン越しから伝わってくる)
あと、都会から田舎町へ遊びに来た若者グループの紅一点セレーナ・ゴメスの肉感溢れるナイスバディなホットパンツも眼福。
×良くなかった点
ゾンビコメディ映画としては駄作。
高い期待値から一気にハシゴを外されたかのように、大きな盛り上がりも無く、淡々と進み、カタルシス皆無で終わり、拍子抜け。
ラストも、「なんだかな~」と思わずつぶやいちゃったほどのスッキリしないところで終わる、後味の悪さ。
例えば、筆者がすぐに思いつくレベルの代表的なゾンビコメディ映画と言えば、「ショーン・オブ・ザ・デッド」、「ゾンビランド」シリーズ、「プラネット・テラー」、邦画なら「カメラを止めるな!」など、どれもゾンビ愛を感じられ、魅力的なキャラクターや練られた脚本の傑作ぞろい。
だからと言って、本作と同じようなモノを求めると絶対に肩透かしを食らう。前述の通り、カタルシスがゼロだから。
本作に出演している豪華キャストそれぞれに特に大きくスポットが当たるわけでない群像劇のような形で、淡々と描いている事もあり、実はどのキャラクターにも感情移入が湧きにくいようになっている。
顔合わせの豪華さだけ。
脚本も、ゾンビが本編に出てくるまでがとにかく長い!
ゾンビがなぜ発生したかだったり、動物が急に姿を消したりというシーンをたっぷり色々ともったいぶって引っぱる引っぱる!
マジで何回あくびが出た事か。前述の通り、その後の展開も淡々としてまったくスリル無くて、ゾンビ映画としての緊張と緩和のバランスが無く、緩和だけ。
もちろん、ジム・ジャームッシュ監督が撮るのだから、一筋縄でいかないゾンビ映画では無いというのはなんとなく分かっていたつもりだったが、
それでも、このジャンルの作品としては、ゾンビ映画のお約束に基づいた仕掛けや捻りも無さ過ぎて後味悪すぎる。
それでいて、日本のお笑いで言うところの、天丼ギャグが出てきたり、まるで「カメラを止めるな!」のような、メタフィクションを匂わせる台詞を唐突に出してくるオフビートな笑い。
こうした笑いのツボは完全に好みが分かれるところ。
筆者はまったくダメだった。
すべてを「ゆる~く」とかで済ませちゃいけない事もあるんだなというのを、本作のようなゾンビ愛を感じられない凡作を観終わって思った。
ゾンビ映画の色々なお約束を分かったつもりで撮ってるんだろうけど、すべてが中途半端。ぜんぜん面白くない。
この内容なら、ミニシアターでかけるならまだ許容できたかもしれないけど、TOHOシネマズの一番デカいキャパのスクリーンでかけるような大衆向けの作品では絶対無い。
結論
繰り返しとなるが、過去のゾンビコメディ映画の傑作のようなものを期待して観に行くと絶対に失敗する。
「ジム・ジャームッシュの長年のファンだし」とか「イギーさんのゾンビ姿を観たいし」とか「アダム・ドライヴァーの作品なら何でも観たいし」と言うなら少しでも観る価値はあるだろうけど、ゾンビコメディ映画としては無し。
正直、良いのはビジュアルイメージだけなので、ポスターとか観て自分で物語を妄想する方がマシ。
それでは最後に、みんなで予告編を観てみよう。