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2020年映画ZAKKIちょ~ 17本目 『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』

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2019年製作/上映時間:100分/PG12/アメリカ
原題:The Death of Dick Long
劇場公開日:8月7日
観賞劇場:シネマカリテ新宿
観了日:8月13日

その時、彼に何が起こったの?世にもチン奇な怪死の謎とは?!


 まずはじめに、劇中でどのようにディック・ロングが死んだかは、本稿では一切明記せず(ネタバレ無し)。書くとつまんないし。

 死体のおならで海を渡るという奇抜なアイデアで一部映画ファンの話題をさらった「スイス・アーミー・マン」のダニエル・シャイナート監督によるブラック・コメディ。

【あらすじ】
アラバマの平穏な小さな田舎町で、売れないバンド仲間のジーク、アール、ディックは、いつものように夜な夜なバカ騒ぎをしていたが、ある事が原因でディックが死んでしまった!残された男たちの必死の偽装工作がはじまる。


 「ミッドサマー」やオスカー受賞作の「ムーンライト」、「レディ・バード」、「へレディタリー/継承」、前述の「スイス・アーミー・マン」、以前取り上げた「SKIN/スキン」など、面白い着眼点の先鋭的な話題作を送り続けている新進気鋭の映画製作スタジオ、A24が製作する本作。

 好奇心を煽る邦題からして、そそられる。原題が「The Death of Dick Long」とシンプルで味気無いのに対して、この邦題は興味を喚起するという点で非常に良いと思う。いったい彼はなぜ死んだのか?
知りたくてしょうがないので劇場へ足を向けた。

以下、「良かった点」。

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○良かった点

良かった点は下記2点。

1.残された男たちのテキトーすぎる偽装工作
2.笑いとスリルの絶妙なバランスのブラック・コメディ

1.残された男たちのテキトーすぎる偽装工作

 3人のバカ騒ぎの夜のオープニングから一転、残されたジークとアールによる必死の偽装工作が始まっていくのだが、ま~その隠し方がとにかく雑!

周りの人に対して、その場しのぎの嘘で乗り切ろうとしていく2人の姿が観ていてツッコミ入れてしまいたくなる。

 特にジークは妻と娘がいる手前、アリバイ作りも大変。ディックを乗せていた車の血まみれのバックシートをシーツで隠すも、娘を学校に送って行く時にバックシートに乗った娘の服の背中に血がベッタリ付くスリリングさよ!
血まみれのバックシートを掃除する2人の会話の中で、「パルプ・フィクション」の死体を処理する掃除屋の話題が出たが、まさしく本作も同じような状況になっているのが面白い。

 ディックの死を隠す為に、ひたすら行き当たりばったりの嘘を付きまくるジークの情けない慌てぶりは、すぐに噂が広まってしまう小さい田舎町の中で、その夜に起きた奇想天外な事実は絶対隠さなきゃならないという切迫感で笑ってしまう。
これは2回目の鑑賞の方が面白く感じるかも。

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2.笑いとスリルの絶妙なバランスのブラック・コメディ

 そうしたジークとアールの必死の偽装工作、特にジークは発覚したら家庭的、社会的な破滅を意味する中で、彼が焦れば焦るほど、作品はコメディとしての色が濃くなっていく。

しかし、本作最大の謎である「ディックの死因」が明らかになっていくところでは、「おいおいマジかよ!!」と、その驚愕の事実に呆気を取られ、人によっては爆笑し、人によっては恐ろしくなってしまうという、作品としての味わい深さがジワジワくる。

 この笑いとスリルの絶妙なバランスで描かれる本作は、ダニエル・シャイナート監督(ちなみに個人名ではなく、2人組のユニット名)は、制作する上で「偽装工作をし続ける2人への共感」と「他人には絶対に言いたくない秘密を持つこと」という要素を盛り込んでいると語り、特に「秘密を持つ」というテーマで、人間の愚かしさ、可笑しさを描いていて、それが余韻を残すブラック・コメディとなっている。

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◆結論

 タイトル通り、上画像のヒゲ面のディックさんがなぜ死んだのか?最大の謎は本編を観れば明らかにされる。
きわどいブラックユーモアが散りばめられたコメディとして秀逸。
「ファーゴ」とか「パルプ・フィクション」が好きならおススメ。

ちなみに本作は、実際に起きた事件を基にしている作品。
本作を観終わった後、思わずググりたくなること間違いナシ!!

それでは最後に、みんなで予告編を観てみよう。


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