届け!新潟・古町から日本全国へ!至極のアイドルポップス 「ファルセット」/ RYUTist
普段、noteには映画の感想文をメインで書いており、音楽についてはこの媒体ではまったく語ってこなかったが、どうしてもこれだけはこの場を使ってちょびっとだけ長く文章をかけて書いておかねばならない。
書かずにおれない。書かなきゃならない!
なぜか?
それはこれから紹介する、RYUTistの7月14日に発売された、4枚目の最新アルバム「ファルセット」が、ちょっと、いやかなりの、年間ベスト級など軽く飛び越えた、20年代のアイドルポップス史のはじまりを高らかに告げる、ぶったまげた傑作だったからである。
RYUTistとは、新潟・古町を中心に2011年より活動し、今年で9周年を迎える4人組の現役アイドルグループである。
筆者とグループのなれそめは、3年前になんとなくジャケが気になって、AMAZON MUSICで、2ndアルバム「日本海夕日ライン」を軽い気持ちで聴いてみたら、雷に直撃したような衝撃を覚えるアイドルポップスとして、完成された傑作アルバムだったのである!
それ以降も、出す曲出す曲どれも、こちらの期待以上の高いクオリティの楽曲を立て続けにリリースしてくれる中で、せっせこCDやグッズなどを買い、ライブに通い、ホームグラウンドである新潟まで、周年ライヴを観に東京から遠征するくらい虜になってしまっている。(今年6月開催のりゅーとぴあ公演もチケット取ってたのに…)
そうした経緯を踏まえたうえで、4枚の先行シングルおよび先行配信曲を聴く感じで、既に名盤になる事はある程度予想出来ていた、2年9ヶ月ぶりの彼女たちの最新アルバム「ファルセット」。
聴いた感想は冒頭に述べた通り、期待を遥かに超えたモノとなっていて、初めて聴き終えた時はあまりに興奮して息遣いが荒くなり心拍値が上昇した。
フラゲ日から10日間以上、このアルバムだけを聴き込み続けて、本作がなぜそんなにも凄いのか、以下、全曲感想をば。
全曲感想なんて、16年前にMANIC STREET PREACHERSさんの「THE HOLY BIBLE」の10周年記念盤が出た時に楽天ブログで書いて以来やってないよ!
そんな、16年ぶりの行動へと突き動かしてしまう衝動を与えてくれた、人生観ちょっと揺らいじゃう至極のアイドルポップス作品なのだ「ファルセット」は〜〜!!!!
■RYUTist「ファルセット」全12曲感想
01. GIRLS 作編曲:蓮沼執太
02. ALIVE 作詞:蓮沼執太/作編曲:蓮沼執太
「GIRLS ALIVE」。少女たちは生きている
新潟を中心に活動し、生活する4人のメンバーたちの日常、感じたこと、目に見える風景を切り取った歌詞の楽曲が、この素晴らしいアルバムの幕開けとなる。
4人の声がコラージュ音のように被さるイントロの1曲目から2曲目へとシームレスに繋がるオープニング曲は蓮沼執太さん提供による楽曲。
勉強不足なことに、彼の名前は今まで知らなかったのだが、その音の作り込みはこれまで聴いたことのないような、上品で軽やかなグルーヴ感で織り成すポップスの方法論により構成され、それはクラシック的でもあり、ジャズ的でもあった。
特に印象的なのはクラップ(手拍子)による音の広がりと反響。
ほかの蓮沼作品も聴いてみたところ、この音作りは彼独特の世界観であることが確認できた。
そして、更にこの曲の驚くべき点は、中盤で展開される軽快なグルーヴと共に詰め込まれる言葉の洪水。一日の始まりをエモーショナルに活写していく。
ここ10年弱、メジャーからインディーズまで有象無象のアイドルポップスはそれなりに聴き込んでいると自負していた筆者でも、6分50秒という長尺の「ALIVE」を初めて聴いた時には誇張抜きで、これまで聴いた事の無い音で度肝を抜かされて泣きそうになった。
この2曲を通して、初めて聴く人でも、このアルバムが何かタダモノではないアイドルポップスであると興味を引くことになるだろう。
03. きっと、はじまりの季節 作詞・作曲:弓木英梨乃/編曲:sugarbeans
さあ旅立とう、まだ見ぬ自分と出会う為に
2019年10月29日発売の通算8枚目のシングル曲。
夜明けの明るい日差しが窓から差し込んでくるかのようなやさしいピアノのイントロから旅立ちへ向かう壮大なサビへ進んでいくドラマチックな展開が熱い。
楽曲提供の弓木さんはKIRINJIさんに在籍。
だが筆者の中ではBaseBall Bearさんのサポートギタリストとして、ライブで何度も観ていたので、その印象が強い。
Negiccoさんの楽曲をずっと作り続けているConnieさんのアルバムにボーカルとして参加した弓木さん歌唱曲は、殺人的キュートボイスで、ギタリストとしての佇まいのカッコよさとのギャップにやられそうになった。
ちなみに実はアルバム発売前に、「はじまり」が付いたタイトル通り1曲目はこの曲なんじゃないかと予想していた。それは良い意味であっさり裏切られたが。
この曲は「旅立ち」とか「はじまり」がテーマだと思うが、面白いと思ったのは、想像させる余地が多い歌詞。
シンプルで詩的な言葉による世界観は、自由に想像させる余地があるから言葉に出してその意味を噛みしめたくなる。
特に好きなフレーズふたつが下記。
「新しい色を塗って 流浪になって旅するわ」
昭和のアイドル歌謡的な、古風かつ凛とした言葉で、耳に残る。
「流浪」って言葉、今だと時代劇か「タモリ倶楽部」でしか聴かないし。
「雪は一粒 日向から巡る 二月の凪は孤独の国」
何度か言葉にして、その意味を探りたくなるような深みのある風流なフレーズ。
04. ナイスポーズ 作詞:柴田聡子/作編曲:柴田聡子
普段そっけない君が、不意に取ったナイスなポーズ
2020年3月11日配信曲。躍動するクラップのイントロが心地良い。外出先で聴いていて思わず浮き足立ってスキップしてしまうほど楽しくなってしまうメロディー。
「君」と「私」による、なにげない2人の日常の一コマを描いていきながらも、大サビで爆発するカタルシスは鳥肌が立つ。
「このナイスなポーズを目に焼き付けろ!」ってことだったんだろうか。
筆者が「私」だったら、その光景を目にしたらきっと「ナイスですね!」と街中で叫びたくなるだろう。
聴きながら、4分間のショートフィルムを観ているような気分で、2人の関係性に心がほっこりする。
楽曲提供の柴田さんの楽曲はこれまで聴いたことがなかったが、歌詞の節々の描写の細かさとか、独特な才能を感じ取る事が出来る。
特に印象的なフレーズが下記。
「君の主張は 一貫してこうだ
思い出はもっと 目に焼き付けろ
私はそうは 全然思えない
憶えていられないこともあるよ」
何気ない2人の主張がぶつかる歌詞のなかで、まるでRYUTistのライブパフォーマンスをじっくり目に焼き付ける派と、最前列でデカいカメラでひたすら撮影に専念する派(※)というファンのスタンスを浮き彫りにさせているかのようでもある。
※RYUTistのライブは、HOME LIVEなど一部公演は写真撮影可能。
05. 好きだよ・・・ 作詞:NOBE/作編曲:KOJI oba
この曲こそ、アイドルポップスの真骨頂
この作品がいかに大傑作だからといって、軽はずみに「アイドルを超えた!」とは絶対に言わせない、強烈な存在感でどっしりとアルバム中盤にそびえ立つ5曲目。
「RYUTistとはアイドルポップスである」と改めて宣言するかのような、今後の柱ともなるであろう、超重要曲。
「アイドルなんて見た目なんかどうでもいい!恋愛の歌なんて歌ってなくてもいい!とにかくもう曲さえ良ければ(自分の趣味に合っていれば)すべてオッケー!」という建前の元で、第三者へのエクスキューズとする「楽曲派」という概念は、筆者からすると到底理解不能な存在である。
それは結局どこかで他の音楽ジャンルよりもアイドルポップスを軽視しているように見える。
本作は、いわゆる「楽曲派」が好みそうな、大人の雰囲気さえまとったアルバムではあるが、けして「アイドルを超えてなどいない」。
従来の「アイドルポップス」の限界を超えつつ、より進化させて研ぎ澄まされた純度の高さが際立った20年代のスタンダードとなるべき、新しくも基本を兼ね備えた「アイドルポップス」の形を提示している。
そうした、力強いアティチュードが聴こえてきそうなのがこの楽曲。
ももいろクローバーさん「走れ!」、Buono!さん「初恋サイダー」などのアイドルポップス史に残るアンセムを手掛けたり、でんぱ組.incさん、℃-uteさんなど大物グループの歌詞も担当している、10年代以降のアイドルポップス界では重要な存在となったNOBEさんが作詞を担当。
RYUTistにも「神話」「piece of life」「日曜日のサマートレイン」「Blue」などなど、筆者が惚れ込んだ曲の歌詞をこれまで書いてきている。
歌詞の内容はアイドルポップスの王道とも言える、「すれ違いセツナ系」。
4分間のショートフィルムのようだった「ナイスポーズ」と違い、こちらは1時間のドラマの一部分を切り取ったような世界観。
「愛しくて切なくて」という手垢が付いてコスられまくったようなJ-POPの歌詞を「好きだよ・・・」という短い言葉で説得力をもって聞かせる手腕。
メンバーの”ともちぃ“こと宇野友恵さんのボーカルが特に、セツなさMAXに曲に命を吹き込んでいる。
切ない歌詞と熱いボーカルに加えて、耳に心地よいデジタル音を紡ぎ出すKOJI obaさんによる作曲も、化学反応のようにバチッとハマっていて、聴いていて何度も鳥肌が立ったし、泣きそうになるし、気持ちがザワつくし、色んな感情が集団でゾワッと襲ってきた。
この曲に耳を澄ますと今にも「ぉ、俺も好ぎだよおおおおぉぉぉ!!!!」というファンたちの苦悶の絶叫が聞こえてくるようではないか。
アイドルポップスとして正しく機能した、大正解の名曲。
06. センシティブサイン 作詞:シンリズム/作編曲:シンリズム
必ず春はくる。希望と祈りのセンシティブサイン
2019年4月23日発売の通算7枚目のシングル曲。
前曲「好きだよ・・・」がとんでもない熱量の為、次のこの曲の軽やかなイントロが流れると、ザワついた気持ちが浄化されるかのように安心する。
こうした、聴き手の心の緩急を揺さぶるようなアルバムの曲順構成も最初から最後まで抜かりが無く、見事。
23歳のシンガーソングライター、シンリズムさんによる楽曲提供。
余談だが「しん りずむ」っていう本名らしい!(Wikipedia参照)
アイドルポップスを聴いててよくあることで、提供された曲のルーツを探る為に、楽曲提供ミュージシャンの音源もつい気になって聴いてしまう。
ホーンセクションを使ったキャッチーなメロディーの中で、細やかな音色や多彩な音使いが聴こえてきて、聴いていて実に楽しい曲。
特に好きなフレーズが下記。
「線路の向こう 彩る季節を繋いで
必ず春はくるよって 信じたいな今だけ」
この曲の発表時にはまったく予想できなかった事だろうけど、例のウィルスのせいで、まるで今年の冬までで季節が止まってしまい、春はまだ来ていないような気持ちを感じている人からすると、また歌詞の意味合いが変わってくる。
そういう聴き方でこの曲を聴いていると、希望と祈りの曲に聴こえてきて、よりグッと気持ちが昂る。
07. 絶対に絶対に絶対にGO! 作詞:藤村鼓乃美 ・ 北川勝利/作編曲:北川勝利
今日は今日しかない!今日中にやりたいこと全部をやっちまおうぜ
声優の藤村鼓乃美さんと、ROUND TABLEの北川勝利さんによる共同曲。流麗なストリングスとピアノのイントロから弾むようなリズムに転調するところや、楽曲名から歌詞に至るまでアニソンテイストを踏襲するかのようで、アルバムの中でも特段ポジティブな印象を受け、特別な存在感を放っている。
北川さんの楽曲提供の幅は、花澤香菜さん、中島愛さん、坂本真綾さん、Negiccoさん、さくら学院さんなどの女性声優やアイドルから、松平健さんなど大御所に至るまで多岐に渡り、その才能をこの曲でも遺憾なく発揮している。
「いつも今がスペシャル!」というフレーズを聴くと、どうしても同じ新潟のアイドル、Negiccoさんの「本日がスペシャル!」を想起させるが、それも織り込み済で歌詞に入れてるのだとしたら、しみじみニヤニヤしてしまう。
「今日は今日しかないから」というフレーズについても、ここ最近、筆者も身に染みて感じて聴こえている。
そうした一日一日の大切さは、社会人になると24時間じゃ全然足りない、あっという間に過ぎ去る時間を前に忘れがちになってくる。それに、明日なんか当たり前に来ると思っていても、この大切さに気付けない。
生きてるうちにやりたい事を全部やっておかなきゃ!という前向きな気分にさせてくれる曲。
08. 青空シグナル 作詞:清浦夏実/作編曲:沖井礼二
両手を広げて羽ばたけ!ネクストレベルの可能性へ
2018年5月15日発売の通算5枚目のシングル曲。J-POPユニット、TWEEDEESによる楽曲提供曲。
2017年8月に発売されたRYUTistの3rdアルバム「柳都芸妓」リリース後の、楽曲クリエイティブ的に、本作「ファルセット」へ向けたマイルストーンとなった重要な位置付けの曲。
メンバーの”みくちゃん”こと横山実郁さんも「RYUTistの流れを変えてくれた曲」とTwitter上で発言している通り、これまでよりも、一般大衆向けとしてのアイドルポップスとして、その方向性がより幅広く開けた、メジャー感満載の名曲である。
はじまりと旅立ちと決別という人生における岐路を歌ったこの曲では、目をつぶって聴くと一面の青空が広がり、気持ちよい風がぴゅ~っと顔を撫でていく感覚に陥る。
そして最後のフレーズの「両手を広げ 羽ばたくの」というところを外出先で聴いていると、実際に両手を広げて思い切り地面を蹴ってジャンプしたくなる衝動を抑えるのが大変なのである。
それにつけても、こういう疾走感に溢れた演奏を聴いていると、生バンドスタイルでのRYUTistのライブステージをいつか観てみたいと思ってしまう。今は実現することを願いつつ、この曲を聴き続けよう。
09. 時間だよ 作詞:Kan Sano/作編曲:Kan Sano
アダルト・ポップスの時間ですよ!
2020年7月7日配信曲。アルバムもいよいよ後半戦。
大人びたデジタルビートが鳴り響く中で、4人の「it's time,time」と歌われるコーラスワークが気持ちよい。
先行配信で初めて聴いた時には「あれ、今誰の曲聴いてるんだっけ?」と一瞬思ってしまったほど、グループにとっても、これまでになくアダルトチックな雰囲気を醸し出していて、楽曲の幅を広げる、新たな挑戦と言える曲。
キーボーディスト、ビートメイカー/プロデューサーとして、ソロ活動やCM曲に至るまで多岐に渡るキャリアを持っているKan Sanoさんによる楽曲提供。なんとアイドル曲をプロデュースするのは初とのこと。
今後この曲をライブパフォーマンスでどうやって見せていくのか楽しみ。
きっと、大人っぽいクールなダンスが楽しめることだろう。
とりあえず楽曲自体の完成度としては、この新しい挑戦は成功したのではないかと言える。
「失って分かる大切さなんて嘘だよね」
というフレーズが大人びてて、チクッと刺激される。
あと、
「文字数は 愛その他の大きさとは関係ないよ」
というフレーズもあるが、今こうやって書いている文章の文字数が既に6,200文字を超えているけど、このアルバムへの愛と関係あると無防備に信じてみる。
10. 無重力ファンタジア 作詞:清浦夏実/作編曲:ikkubaru
古町シティから銀河スペースへ…たゆたう空間、漂う無重力
8曲目に収録の、2018年5月15日発売の通算5枚目のシングル「青空シグナル」のカップリング曲。
この曲もまた、本作「ファルセット」の方向性を決定づけたとも言える。
ジャジーでアダルトチックな曲調のこの曲を初めて聴いた時は、その音の成熟さにかなり衝撃を受けた。
「青空シグナル」と同じく清浦夏実さんによる作詞に、インドネシアのシティポップバンド、ikkubaruさん作編曲。
そのタイトルが示す通り、スペーシーにたゆたう浮遊感を感じられる。
いつも外で聴いてると、お酒飲んでなくてもふらふら~と足元がおぼつかなくなりそうになる。
クラブでDJやる機会あったら、深夜3時くらいにこの曲をDJでかけて爆音に身を包まれながらふらふらと揺れてたい。
「流星ラインダンス」というフレーズを聴くと、やはりNegiccoさんの「圧倒的なスタイル」のライブ時に隣同士のお客と肩を組んで会場が一丸となって盛り上がる「ラインダンス」を想起せざるを得ない。
実際は流星ではなく、激しくうなる地殻上下変動のようだが。
だが、しばらくライブでラインダンスも出来ないんだなと思うと途端に切なくなってくる。
想起させると言えば、昭和世代の筆者からすると「カルーセル」というフレーズを聴くと、もはや元祖ニューハーフタレントの顔しか思い浮かばない。ついでに思わず気になって「カルーセル モロッコ」でググってしまったりする。(「カルーセル」は回転台や回転木馬とかの意味らしい)
11. 春にゆびきり 作詞:パソコン音楽クラブ/作編曲:パソコン音楽クラブ
また会おう、いつか巡る春の日に
2020年4月19日配信曲。ふわふわとしたジャジーな浮遊感から、空間的広がりを見せるデジタルビートのイントロへと繋がっていく。
DTMユニット、パソコン音楽クラブさん楽曲提供曲。90年代の音源モジュールやデジタルシンセサイザーで紡がれるメロディは、4人の美しいコーラスワークと相まって、懐かしさと温かみを感じられるものとなっている。
6曲目の「センシティブサイン」がまだ来ぬ春が来ることを信じる希望と祈りの曲だとしたら、これは遠ざかる春がまた巡って来るときに再会しようとする、約束の曲である。
「何年たっても ずっと変わらないもの
なんてないのだと 突然知ったの」
というフレーズは、まるで去年まで当たり前のように出来ていた事が叶わない現在の状況を指しているようで、身に染む。
「いつか僕らがまた出会うその日に
消えないよう 忘れないように
ほら ゆびきりしよう」
最後は上記のフレーズで締めくくられ、これは現状、客前でライブが出来ていない、RYUTistとファンとの再会を約束する言葉と取れる。
ただ、それだけではなく、外出が難しく、なかなか会いたい人にも会えない状況下で、聴く人をやさしく包み込むようなメッセージでもある。それこそ音楽に癒される瞬間であり、胸がいっぱいになる。
12. 黄昏のダイアリー 作詞:清浦夏実/作編曲:北川勝利・沖井礼二
それでも4人は歌い続ける、残された約束を信じる為に
2018年11月20日発売の通算6枚目のシングル曲。
8、10曲目に続き、TWEEDEESの清浦さんが歌詞を担当。
同じくTWEEDEESの沖井さんと、7曲目に続き北川さんによる作編曲。
「一秒 一瞬 逃さずいて もっと変わりたいよ」や「同じ歩幅 違う未来 いつか進んでも」といったフレーズを聴くと、この曲はRYUTistからの全力の意思表示のようだなといつも思ってしまう。
特に好きなフレーズは下記。
「歌い続けるよきっと 残された約束
信じる力握りしめて」
この「残された約束」という部分は、前の曲「春にゆびきり」の歌詞ともリンクしているかのようだし、もちろん意図的ではないにせよ、シングル発表当時よりも、今現在の方が響くフレーズである。
あと、もちろん下記の大サビ前のフレーズも好き。
「ひとりではさみしい 夜明け待つ流星」
メンバーの”むうたん”こと五十嵐夢羽さんの歌う「夜明け待つ流星」部分は、ライブで筆者もつい、星を掴むかの如く腕を天高く上げてしまうほどで、ファンと楽曲のテンション的にも、昂るエモーショナルが爆発する一番盛り上がるポイントである。
最後の曲として、彼女たちの新たな代表曲とも言える美しい旋律を持つシングル曲を持ってくるのは、とても良い。聴き終えた後に、爽やかかつ、少しセンチな気分になる。
■まとめ
というわけで、ちょびっとだけ長くなってしまった、アルバム全12曲感想でした。
改めて最初から最後まで、まるでパズルのピースがパチっと、それぞれ所定の位置に完璧にハマったアルバムの曲順構成だなと感心した。
(最後にボーナストラックとして7inchシングル「Majimeに恋して」が収録されても良かったけど)
本作を聴き終えて思い出すのは、筆者が敬愛する岡村靖幸さんが、かつて月刊カドカワ(たしか1992年に出た特集号)のインタビューで「アルバムが完成するってことは、一曲一曲が宝石のように輝いていて、しかもしっかりと配列されていなくちゃならない」と語っていたことだった。
まさに本作はその言葉が具現化したような作品だなと、この10日間以上聴き続けて思った。
なので、これだけの作品は、もっともっと多くの人に聴かれなければならない。けして知る人ぞ知るマニア向けの作品にしちゃならない。
その為にはどうしたらいいのだろうか?と、いちファンの筆者としてすぐ出来る事は、こうしたnoteに書くとか、地道な口コミくらいしかない。
アイドルポップスに少しでも興味を持っている人で、本稿を読んで頂いた方には、apple music でも Spotify でもサブスクで展開されているので、ぜひ一度試しに聴いていただきたい。かつて自分が気軽に聴き始めたように。
それにつけても、新作アルバムのリリースタイミングでも、メンバーでありリーダーの”のんの”こと佐藤乃々子さんは、インスタではアルバムの宣伝を一切せず、ひたすら飼い猫の写真だけをアップし続けるスタンスが、ブレてなくてちょっと素敵だなと思う。
それでは本作の、個人的ボーナストラック扱いの「Majimeに恋して」を最後にみんなで観てみよう。