見出し画像

2021年映画ZAKKIちょ~ 2本目 『ジャスト6.5 闘いの証』

Screenshot_2021-02-18 みうらじゅんの映画チラシ放談(第52回)『甦る三大テノール 永遠の歌声』 『ジャスト6 5 闘いの証』

2019年製作/上映時間:134分/イラン
原題:Metri Shesh Va Nim
劇場公開日:1月16日
鑑賞劇場:K's Cinema
鑑賞日:1月17日

イラン薬物大捜査線!ルール無視の熱血刑事 VS 命懸けなギャングのボス!沸騰!熱闘!ほとばしるギラリズムの果てに見るものは?

【あらすじ】
薬物中毒者であふれるイランの街。イラン警察のサマド率いる麻薬撲滅チームは、麻薬組織のボス、ナセル・ハクザドを逮捕すべく、大規模な捜査に乗り出す。

 イラン警察と麻薬組織の抗争を緊迫感と臨場感たっぷりに描く社会派クライムドラマである本作。現実のイランのドラッグ問題をドキュメンタリータッチで取り扱いながらも、全編みなぎるそのエンタメ性の高さから、興行的にイラン映画史上最大のヒット作となった。

日本で観られるイラン映画というと、アッバス・キアロスタミ作品であるとか、10年前に公開されベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した『別離』(奇しくも主演俳優が本作と同じ)だとか、著名監督作や映画賞受賞作品くらいで、それほど多く観られる状況では無い。

そんな中で本作。
監督は、本作が1989年生まれのサイード・ルスタイ。
まだ30代前半と若めながら、デビュー作である前作はイランのアカデミー賞と呼ばれるファジル国際映画祭でいきなり監督賞・脚本賞を獲得と才能を爆発させている。
そんな、国内の映画賞受賞の勢いに乗って作られた2作目である本作。
その反響たるや、前述の通り。

2019年の東京国際映画祭で本作がいち早く上映された時には、観に行こうかなと思ったのだが、なんだかんだで結局止めてしまったのだが、それから本公開まで1年と数か月も待たされるとは思わなかった!

というわけで期待値も上がっていたので、しっかり前売り券も購入し、公開2日目に劇場へ足を向けた。

画像4

○良かった点

1.娯楽性、社会性、作家性を兼ね備えた絶妙なバランスが凄い!

 本作は警察とドラッグ組織の必死の攻防戦が繰り広げられるエンタメ要素満載の娯楽大作でありながら、実際のイランのドラッグ問題などの切り込んだ社会性を見せ、作品全体にほとばしる監督の作家性がスクリーンから感じ取れる、とてつもない熱量を持った傑作だった…。イラン映画を観るのは実は初めてだったが、いきなり最初からとんでもないモン観たという感じ。

警察と麻薬組織の抗争なんて、北米や日本その他の国の作品などでは手垢が付いた題材ではあるけれど、国が変われば環境や状況がまったく違うし、法律も違う。

なんたって、イランは麻薬所持だけでも死刑だし販売してたら当然死刑だし同性愛も死刑だし無神論者も死刑だし姦通罪も死刑だし飲酒しても死刑!
さすがイスラム教徒が99.8%の国イラン、刑罰の重みのレベルが違う!

口角泡を飛ばし特徴的な甲高い声で叫び続ける熱血刑事サマド(ペイマン・モアディ)が、その元締めである麻薬組織のボス、ナセル(ナヴィド・モハマドザデー)を必死に追い込んでいく展開が熱いが、親玉さんも死刑になるってもんだから、必死にもがく!

この熱血刑事が犯人たちに対して、とにかく怒鳴る!叫ぶ!喚き散らす!テンパったテンションが最後まで続き、スリリングで目が離せない。

それに対して、麻薬組織のボスがあの手この手を使い、いかにこの状況から逃れるか、むしろ観客側が感情移入させるような見せ方で、単純に勧善懲悪の構図で描かないことにより、その末路は、鑑賞後に深い余韻を与える。

それか、「悪いことすると捕まるし死刑だぞ!麻薬は要らん!」というイラン国民への警鐘とも取れる。

画像3

2.むさ苦しい!暑苦しい!息苦しい!この刑務所内の攻防戦こそが本作最大の魅力

 ドラッグでトンでるジャンキー達が暮らす地域に警察の一斉捜査が入り、大捕り物となって、ジャンキー達で刑務所がパンパンに!本作中盤の舞台となるのはこの刑務所。

そして更に刑務所の一室に、上画像のジャンキー達が押し込められる!
これ、おそらく実際のイランの刑務所もこんなんじゃないかと思わせるような、暗くて汚い密室に無数の男たちが押し込まれ、座る場所も無いようなむさ苦しく暑苦しい酸欠状態になっていく。

もう三密ってレベルじゃねーぞ!!
コ口ナ禍の今だからこそ尚更、こんな人詰め込み描写は観ていて恐怖を覚えるし、どんどんどん収容人数が追加されていくから、本当に観ていて息苦しくなる。

やっぱり前述の通り、「ほら、悪いことするとこんな狭苦しいところに家畜のように詰め込まれちゃうんだぞ!」という無言のメッセージだろうか。

しかし、この刑務所内での熱血刑事 対 麻薬組織のボスの攻防戦こそが本作最大の魅力である。
更に刑事同士による互いの足の引っ張り合いや、ボスが逃げ出すためのあの手この手の画策が息を呑む面白さ。

画像4

◆結論

 初めて観るイラン映画はコレで決まり!!
と、問答無用で太鼓判を押したくなるような凄まじい強度を持った、ドキュメンタリー的な要素を多く孕んだエンタメ作品。
寒い時期に観たらきっと温かくなって暖房も要らん!

それでは最後にみんなで予告編を観てみよう。


いいなと思ったら応援しよう!