2020年映画ZAKKIちょ~ 4本目 『劇場版「メイドインアビス」-深き魂の黎明-』
2020年製作/上映時間:105分/R15+/日本
劇場公開日:2020年1月17日
観賞劇場および観了日:
EJアニメシアター新宿 2020年1月25日 (1回目)
立川シネマシティ 2020年2月1日 (2回目、極上音響上映)
2017年に全13話のTVアニメシリーズとして放送された作品の続編となる
完全新作の劇場版である本作。
一見、キャラクターの見た目からすると、ゆるふわ美少女萌え萌えまったり冒険記と勘違いされそうだが、その実、美しくも恐ろしい奈落の世界を舞台にした、心底ワクワクする骨太で王道の冒険ファンタジー作品である。
で、本作を鑑賞したが、トンでもねぇな!
観終わってしばらく、ヒリヒリする感情を抑えようと必死になった。
色々アニメ作品観てるけど、ちょっとこれは今まで味わった事のない感覚。
3点の「良かった点」と1点の「良くなかった点」を下記に記述。
○良かった点
良かった点は下記3点。
1.冒険ファンタジーものとして
2.あまりに残酷過ぎる試練の数々
3.日本を代表する職人たちによる作画、美術
1.冒険ファンタジーものとして
本作は、「WEBコミックガンマ」連載の漫画を原作にしたアニメ作品。
現在も連載中でコミックスは8巻まで続巻中。
作品全体のあらすじは、人一倍好奇心に溢れた探窟家見習いの少女リコが、ある日、消息不明であった探窟家の母の「奈落の底で待つ」という手紙を受け取り、記憶喪失の機会仕掛けの少年レグと共に、凶暴な生物たちが棲息し、人智を超越した貴重な“遺物”が眠る、人類未踏の深く巨大な大穴“(アビス)”の深淵へと潜っていく…という話。
本作をまず面白いと思ったのは、その設定!
底に何が待ち受けているか分からない大穴は、下へ下へ潜っていくごとに、未知の生物が襲ってきたり、ただでさえ命の危険に迫られ恐ろしいのだが、逆に、上へ上へ戻ろうとすると「上昇負荷」という名の「アビスの呪い」がその層の深さのレベルによって襲ってくるというところ。
もっとも軽度の第1層だと「軽い眩暈・吐き気」で済むけど、
第6~7層だと「人間性の喪失」~「確実な死」に至る。
つまり、一度、深く潜ったら、もう地上の世界へ戻れない。
退路は断たれるということ。
そんな設定を踏まえつつ、少年少女たちが未知の深界へ決死の覚悟で挑むというところが、ハラハラする緊張感を与えて冒険譚として、非常にそそられる。
本作は、冒険ファンタジーものに加えて、熱血少年漫画的なバトルアクションものとしての要素も非常に強く、ダイナミックな動画に興奮させられた。
2.あまりに残酷過ぎる試練の数々
「アビスの呪い」という、鬼のような設定が作品全体に緊張感を与えるが、主人公たちに待ち受ける地獄は、それだけでない。
層が深くなればなるほど凶暴で危険な生き物が棲息し襲いかかってくるのである。
TVシリーズでは、第4層に巣くう生物から毒を受けたリコが全身に呪いが広がり穴という穴から出血、失禁、あわや左腕を切り落とす直前までいくという、正直かなりへヴィーな展開に観ててたじろいだ。
だが本作は、それ以上の残酷な試練が少年少女たちを襲う!
「日本のアニメって、こんなコンプライアンスがうるさい今でも、ここまで振り切っていいんだ…」と呆然とした。
規制やタブーにうるさい海外のアニメじゃまず実現不可能な描写だろう。
某アニメブロガー(?)さんの本作の感想の投稿で、戦慄を覚えたのが、本作に登場する敵キャラクター、ボンドルド卿は、理想への追求心がゆえに人間の道を踏み外した怪物という設定だが、現実にナチ収容所で何千人もの子供たちを弄び人体実験した医師ヨーゼフ・メンゲレをモデルにしたのでは?という推測。
この医師の行った所業についてWikipediaの情報を読んでるだけで胸糞悪くなった。
これ以上の詳細は書けないが、本作が映倫にR‐15指定を受けたのは、まさにここの点で、グロテスクな描写的にも、青少年たちにトラウマを埋め込む可能性もある倫理的にも、かなりキワどかった。
だが、この部分こそ、作品に大きな余韻を与える点でもあり、少年少女たちの成長譚として、観終わってヒリヒリとした感情になった点でもある。
3.日本を代表する職人たちによる作画、美術
そんな少年少女たちの過酷な運命を描く冒険ファンタジー作品を、日本でも有数の職人たちが彩っている。
監督は「MASTERキートン」「花田少年史」「MONSTER」の小島正幸。
キャラクターデザインは1980年代から活躍して「機動警察パトレイバー」「攻殻機動隊」「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」などの作画監督として携わった、トップアニメーターの一人でもある黄瀬和哉。
美術監督は「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」「君の名は。」を手掛けた増山修と、日本アニメ史に燦然と輝く傑作を作ってきたスタッフたちが、作品を大いに盛り上げている。
特に、無限に広がっていくアビスの世界を雄大かつ美しい深みのある景色や、人体実験の場である研究室の血生臭く湿り気ある景色など、美術監督の増山さんの仕事は目を見張る。
×良くなかった点
内容自体の問題ではなく、本作はTVシリーズからの続きという性質上、説明が一切無いので、いきなり映画が初見だと話がよく分からないということ。
上記のように、著名なスタッフたちによる技術面での力の入りようは初見でも楽しめるが、登場キャラクターがどんな目的でどんな性格で、これまでどんな過程を歩んできたかを知っておかないと最大限に楽しむことが出来ないのが難点。
◆結論
作品の世界観、物語、キャラクター、作画、美術、音楽などトップクラスの才能が集結した高いクオリティすべてひっくるめて、
2020年最初の、日本が世界に誇れる傑作アニメ映画であることは間違いない。
元々、全国50館での上映だったが、連日大入り状態が続いていることから、全国170~200館に拡大上映され、4DX上映も2月末より始まるとか。
本作鑑賞前に、事前にTVシリーズ全13話を観ておく必要があるが、
AmazonプライムビデオやNetflixで気軽に鑑賞出来るので、
是非ともそれを観た上で本作に臨んで欲しい。
筆者も本作鑑賞前にTVシリーズを試しに観始めたところ、
あまりに面白くてほぼ1日で全13話制覇する勢いだった。
ちなみに、日本語字幕も設定で付けられるNetflixの方が、
作品の理解をより深められるのでおススメである。
それでは最後に、本作の予告編を観てみよう。
©つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス「深き魂の黎明」製作委員会
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?