2020年映画ZAKKIちょ~ 21本目 『ジェクシー! スマホを変えただけなのに』
2019年製作/上映時間:84分/PG12/アメリカ
原題:Jexi
劇場公開日:8月14日
鑑賞劇場:新宿バルト9
鑑賞日:9月1日
スマホが人間に恋をした?!暴走ロマンチックコメディ
【あらすじ】
子供の頃から携帯電話に夢中で、友達も恋人もできない男が、ある日スマホを機種変したことで、生活が一変していく!
予告編を観てみて、これはわざわざ映画館で観なくてもいいかな~と思っていたが、ちょうど映画サービスデーで安かったし、ハシゴするのに時間が合ったし、上映時間84分という短さなので、スナック感覚でかる~い気持ちで劇場へ足を向けた。
○良かった点
良かった点は下記3点。
1.「アイデアの勝利」と「軽快で怒涛なテンポ」の複合技
2.主人公の成長を描く青春ドラマとしての面白さ
3.本作から感じた現代のスマホ依存へのメッセージ
1.「アイデアの勝利」と「軽快で怒涛なテンポ」の複合技
SiriとかAlexaなどの、機械に話しかけることで欲しい答えが貰えたり、生活の役に立つような音声機能デバイスの利用者が増えている昨今、「もし、スマホが意志を持ったら」と、映画の企画会議のジャストアイデアで生まれたような作品。
そういった、ふとしたワンアイデアも、ともすれば、脚本や演出、キャストの演技次第で、出オチだとか企画倒れとかで終わる可能性すらある。
過去の映画でも、「アイデアは面白いけど作品としては駄作」とか「キャストは良いのに活かしきれてない」とか、せっかくのアイデアを昇華出来ずに消化不良で終わるパターンが多かったりする。
だが、本作は、スマホというデバイスから考え得るヒドい下ネタを混ぜつつ、「もしスマホが自分の意志で過激な台詞で話しかけてきたら」という要素を膨らませ、爆笑させつつも軽妙なテンポ感で、しっかりとしたコメディ作品に仕上がった秀作だった。
スマホが手離せない主人公がある日スマホを壊して機種変 →
スマホが意志を持って喋り出す →
スマホが孤独な主人公に友人や気になるヒロインとの出会いを呼ぶ →
スマホが主人公に恋をする →
スマホが主人公に嫉妬する →
スマホがネットワークの力を駆使して主人公に嫌がらせをする → ?
といったプロセスを、怒涛のテンポで見せていく。
そこは、「ハングオーバー!」の脚本家コンビが監督・脚本を務めているだけあり、さすがの手腕。
2.主人公の成長を描く青春ドラマとしての面白さ
上記のように、スマホが主人公への嫉妬で、下品な言葉を投げかけながらネットワークを駆使した嫌がらせをするというところが本作の奇天烈な面白さである。
ただ、それだけで終わらせないのが本作の良いところ。
幼少の頃より携帯電話のゲームにハマって、友達や彼女も作らずに携帯依存症のまま成人して社会人になっている、やや小太りの主人公フィル(アダム・ディバイン)。
会社と家を往復し、家に籠ってネットフリックスを観て、空いた時間をスマホで埋めるという生活を送っている。
そんな毎日が、ライフコーチ機能「ジェクシー」を搭載したスマホとの出会いで激変する。
同じ会社で3年間も隣の席に座ってるのに一切会話が無かった人たちと仲良くなったり、それまで女性と無縁だったフィルが、意中のヒロインと良い仲になり始めたり。
確かに意志を持ったスマホはファンタジーだが、ふとしたある事がきっかけで、良い方向にせよ悪い方向にせよ、物の見方や生き方や人間関係なんて変化していくよな~と、最近、出会いの無い筆者は、スマホを変えたきっかけで徐々に人との出会いを生んでいく流れでは、何故だかちょっとグッときた。
暴走したスマホがホントに酷いことをやらかしたり色々とある中で、それまでけして手離す事の無かったスマホとの関係を変えていく主人公の心の成長の見せ方も丁寧で上手い。
アレクサンドラ・シップ演じるヒロインも明朗快活で好奇心旺盛な美人で、そりゃ惚れるわ!っていうタイプで、つい主人公フィルに感情移入してしまった。
3.本作から感じた現代のスマホ依存へのメッセージ
意志を持ったスマホが主人公に恋をしたことがきっかけで、嫉妬や怒りの発露を街中のあらゆるネットワークを駆使してぶつけてくるのは、本作はコメディだから笑えるが、タッチを変えればサスペンスやホラーの恐さにもなり得る面白さを持っている。
本作の邦題には「スマホを変えただけなのに」という副題が付けられていて、これは邦画の「スマホを落としただけなのに」から引用されている。
日本では、海外コメディ映画は、日本人に分かりやすくする為に邦画のタイトルをパロった邦題(「電車男」に対する「バス男」、「20世紀少年」に対する「26世紀青年」など)が付けられる事が多く、たいていの場合、原題とかけ離れているせいで、海外コメディ映画ファンからブーイングや批判を食らうパターンが多いが、本作は的を得ていてハマっていると感じた。
暴れるスマホを描いたコメディとして面白おかしく描いた本作だが、制作側は、生活の大半を共にする現代人のスマホ依存に対して、「少しスマホから離れて周りを見たら、ふとしたきっかけで世界が変わるかもよ」というちょっとシリアスなメッセージを込めているような気がしてならない。
◆結論
以上のように、スマホ暴走パニックと青春ドラマをミックスさせつつ、現代のスマホ依存へのメッセージも込めた、良く出来たコメディだった。
更に、なぜか分からないが、本作の日本語吹替版は、今をときめく実力ある人気声優陣で固められており、タレントの素人演技を聞かされることは無いので、安心して観ていられる。
メインとなるフィルの声を杉田智和、スマホの声を花澤香菜が演じ、無感情のデジタルボイスでの喘ぎ声や過激なセリフにも果敢に挑戦し、声の演技でかなり笑えてしまった。
もうしばらくしたら、サブスク配信でもリリースされるだろうが、84分という短さもあるし、作品のテーマ的に、日本では配信で人気になりそうな予感がする。
それでは最後にみんなで予告編を観てみよう。
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