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2020年映画ZAKKIちょ~ 12本目 『ワイルド・ローズ』

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2018年製作/上映時間:102分/PG12/イギリス
原題:Wild Rose
劇場公開日:2020年6月26日
観賞劇場:新宿ピカデリー
観了日:6月28日

夢を取るか!家族を取るか!カントリーを歌うシングルマザー奮闘記!

 正直、いまだにカントリーという音楽ジャンルがよく分からない。
元々は1920年代にアメリカ合衆国南部で発祥した労働者階級の白人のフォーク・ミュージックとされるジャンル。

 カントリーというと、西部開拓時代とかカウボーイがロデオ乗ってる時にかかってるような牧歌的な音楽を想起させる。

 だが、そのジャンルは時代を経ていくごとに広義に渡っていて、ポップスとかロックのように聞こえても、「いや、これカントリーだよ」と言われたりして、やっぱりよく分からない。

 そんなカントリーというジャンルを扱う本作の舞台はアメリカではなく、イギリスの音楽映画である。実在の人物を基にした作品との事。

【あらすじ】
ヘロインを売った罪で逮捕され、刑務所から出所したばかりのカントリー音楽を歌うローズ。彼女は2人の子どもを抱えるシングルマザーでもあった。しかしムショ帰りだし子どもたちはまったくなつかない!果たしてカントリー歌手の夢を追いかけたまま子供たちと暮らしていけるのか!?


 カントリーという音楽ジャンルにはまったく明るくないが、音楽映画には目がないので、とりあえずそこまで大きな期待はせず、劇場へ足を向けた。

以下、「良かった点」と「良くなかった点」。

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○良かった点

 音楽映画としても、家族映画としても、どちらにも偏り過ぎない絶妙なバランスで描かれていて、鑑賞後感もすがすがしい、予想だにしなかった傑作だった!
まず、ジェシー・バックリー演じる主人公ローズの、白の革ジャンにカウボーイブーツに身を包んだ、陽気でちゃらんぽらんな性格が、開始数分で惹き込まれる。
ムショ出て男とすぐセックス!欲望に忠実過ぎる!最高!

 刑務所から出所してシャバに飛び出すローズの姿を追うオープニングで流れるプライマル・スクリームの代表曲のひとつである「カントリー・ガール」のカバー曲を、堂々とした歌唱で聴かせるジェシーさん。

 女優である彼女の歌声がまるで本物のカントリー歌手かのように、作品の説得力を持たせていて、そのスキルに圧倒される。
観終わった後は衝動のままに速攻Spotifyでサントラをダウンロードし、更にフィジカルで手元に置いておきたいのでサントラCDも注文してた!

 サントラCDは、まるでジェシー・バックリーのフルアルバムかのようにほぼ全編彼女の歌唱曲で占められていて、映画を観た後に聴くと、作品の余韻に浸れるし、映画を観ていなくてもカントリー音楽集として十分楽しめる名盤。

もうごちゃごちゃ語るより、聴いてもらう方が早い!
そんなジェシー・バックリーがはりきって歌うアツアツな「カントリー・ガール」を聴いてくれ~~!


 良質な音楽映画のお約束どおり、観た後にサントラを速攻欲しくなるほど、映画全編でジェシーさんが歌う楽曲の数々がどれもこれもホント凄く良くて、音楽のチカラに問答無用でねじ伏せられる思いであった。

 キャッチや紹介記事では「ラスト5分の感動」と煽ってるけど、ローズの葛藤や悩みに立ち向かっていく姿を追っかけていって、観客が気持ちを積み上げていって、そのラストに行き着くまでの過程があるからこそ、ラスト5分が感動する。
けしてラスト5分だけが感動するわけじゃない。
ラストシーンの、ローズの娘の目を輝かせた笑顔を目の当たりにして、ただただ号泣なんだよ!

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 実在の人物をモデルにしたという本作だが、イギリス・スコットランドの都市グラスゴーで、アメリカのカントリー音楽をやっている歌手というのもまた相当珍しく、そうした背景も込みで観ていくと、「ラスト5分の感動」とやらも更に増幅されることだろう。

 ムショに出たばかりのローズは、子供たちとうまくコミュニケーションが取れず、お婆ちゃんにばかり懐いているし、音楽活動にかまけてバーで酒を飲んでて子供たちと遊ぶ約束を無視してしまう様子はもどかしいし、ロンドン行きの列車で酒飲んで若者たちと盛り上がってたらバッグ無くすし、「もう!馬鹿だなローズ!」とハラハラして観てしまう。

それに、自分の子供に「I HATE YOU!(大っ嫌いだ!)」と叫ばれるのを想像するだけで恐ろしいし鳥肌立つ。子供いないけど。

 そんなちゃらんぽらんだったローズが、徐々に子供を育てていく事で母親としての自覚を持っていく様はグッとくる。本当は母であるローズに甘えたいのに、なかなか素直に感情を出さない娘ちゃんとのキッチンでのハグシーンはマジ泣ける。

 とにもかくにも、音楽映画としても家族映画としても、102分間ホントに好きなシーンばかり。
もっと音響の良い映画館で本作をもう一度鑑賞したい。

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×良くなかった点

 期待値が低かった反面、予想以上に傑作だった本作。
パンフ買ってサントラ聴きながら映画の感動を反芻して余韻に浸ろうと思い、売店に向かったら、なんと「パンフ販売無し」とのこと。

本編の内容以外のことで、本気でガッカリした。作品が極上に良かっただけにありえない。
ミニシアターとか小規模の劇場でかかる1週間限定公開作品じゃないんだから!!
きっとパンフには監督・キャストのインタビューや、グラスゴーのカントリー音楽事情とか、音楽都市であるナッシュビルの紹介とか載ってるんだろうなあと期待していたのに!

 配給会社の本作担当、マジ仕事しろ!
これもコロナのせいとか言わせねーぞ!
予算無くてパンフが出せないならせめて公式サイトのコンテンツ(プロダクションノーツやインタビュー)を掲載するとか、作品をより楽しむ為の工夫をするべきでしょう。
必要最低限の説明とメディア記事のリンクだけ貼ってるとか適当過ぎるよ…。
そういう、作品を理解してもらおうとか、盛り上げようとしない、いい加減な姿勢って、映画ファンは目ざといから見透かしちゃうんだよね〜。

結論

 …と、大変残念なことに、パンフ販売が無い為、鑑賞後は余韻に浸るにはサントラを聴くしかないが、とにもかくにも、作品はテンポ良く進み、気軽に観られ、楽曲はどれも胸に刺さる音楽映画としてオススメしたい。

 それでは最後にみんなで予告編を観てみよう。


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