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2020年映画ZAKKIちょ~ 10本目 『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』

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2019年製作/上映時間:135分/アメリカ
原題:Little Women
劇場公開日:2020年6月12日
観賞劇場:TOHOシネマズ日本橋
観了日:6月13日

それぞれの「らしさ」でサバイブしていく乙女たちのドラマ

 「レディ・バード」のグレタ・ガーウィグ監督と主演のシアーシャ・ローナンが再びタッグを組み、150年以上愛されている原作の、幾度とされている実写化に挑んだ意欲作。

【あらすじ】
幸せな結婚を望む長女メグ、ド直球で短気で男勝りな次女ジョー、内気で心優しい三女ベス、人懐っこくおしゃまな末っ子エイミー。南北戦争時代に力強く生きるマーチ家の4姉妹が織りなす4つの物語。

 本作については、正直、ジャンル的に自分好みの映画では無いので、
「スルーだな」と早々から決め込んでいた。

 だが、筆者が現在、全力で推しているTBS社員の日比麻音子アナウンサーが「生涯ベスト級の作品」と目を輝かせて満面の笑顔でニヤつきながら(妄想)絶賛していた為、作品そのものの興味よりも、本作を観て日比さんがどう感じて、何が生涯ベスト級だったのかを探りたいという興味だけで、原作もよく知らないまま劇場へ足を向けた。

以下、「良かった点」と「良くなかった点」。

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○良かった点

 まず、本作鑑賞前の、筆者の頭の中で勝手に抱いていた「若草物語」のイメージはこちら↓

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「マッドマックス 怒りのデス・ロード」で、大隊長フュリオサに先導され、それぞれの強い意志を持って圧倒的権力者から逃れる為、過酷なデス・ロードへ立ち向かっていく5人の妻たち。

実際、本作鑑賞後も、そのイメージはあながち間違っていなかった。
フュリオサは姉妹たちのお母さんに置き換える。

 本作は戦時中、時代に翻弄されながらも、それぞれの「らしさ」でサバイブしていく女子たちが超がんばる映画で、最初から最後まで惹き込まれ、落涙する場面もあり、作品世界に没頭することが出来る、飛び抜けた傑作だった。
これはスクリーンで見逃していたら絶対に後悔していたところ。

 正直、こういうクラシックな原作のファミリードラマというジャンルの映画はこれまでの映画鑑賞歴で殆どスルーしてきているので、「怒りのデス・ロード」以外の作品と比較が出来ないのは視野が狭いところだが、それでも、「これからこういうジャンル観ていこう!」というきっかけを筆者に与えてくれたというだけでも、本作の意義はある。

 本作が凄いと思ったのは、150年以上愛されている超有名な原作を忠実に実写化する一方で、時系列を大胆に組み替えて構成・編集しつつ、更に原作者が本来望んでいた結末を汲んだ締め方にまで昇華している監督の手腕。

1868年に出版された原作を尊重しつつ、映画業界も女性が幅広く台頭し始めている2020年の現在を反映した、生きがいや幸せの定義は人それぞれという落としどころにしていて、お見事だった。

もちろん、キャスト、セット、衣装、小道具、キャメラワーク、音楽どれをとっても、上品に作られた一級品。
第92回アカデミー賞で作品賞はじめ計6部門でノミネートされ、衣装デザイン賞を受賞したのも納得。脚色賞も獲るべきだったと思うが。

たとえ、中学生男子が間違って観に来てしまったとしても、何か心が温まるものを持ち帰れるような、万人向けの作りである。

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 そんな、わちゃわちゃとしたガールズパワーが炸裂した4姉妹と対峙する金持ちの道楽息子ローリーを演じるのは、まるで少女漫画の世界から飛び出してきたような容姿端麗さで、世界中の女性人気が非常に高い美青年のティモシー・シャラメ。

こんな美青年が主人公のジョーに対して「出会った時から愛してた!」なんてくっせぇ台詞でプロポーズするシーンなんか、筆者が観ても「はいはいイケメンなら何言ってもOK、OK」と鼻で笑うところだが、巧みな作品全体の構成により、そんな歯の浮く台詞のシーンさえも緊張感を孕み、2人の青春のやり取りを、胸をドキドキさせながら見守ることになった。
(そして日比さんは心の中でよだれを垂らしながら観ていたらしい)

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 あと、良かった点は冒頭の、自分の書いた原稿が初めて売れてニューヨークの街を全力疾走するジョーの姿を映すシーン。
胸が透くような気持ちになる。
原作の時代背景では、女性がスカートを上げて走るなんてもってのほかだったらしい。
なんとこのシーン、パンフによると撮影現場ではデヴィッド・ボウイ「モダン・ラヴ」、ザ・キュアー「ジャスト・ライク・ヘヴン」がかかっていたとのこと。まさしく気持ちを作り上げる為に最適なBGM!

 2月に取り上げた、今年公開された大傑作のひとつである韓国映画「スウィング・キッズ」でも、抑圧された想いの中でエモーショナルが大爆発するシークエンスとして、もっとも鮮烈な印象を与えたダンスシーンで、心が躍る印象的なイントロのギターカッティング音のデヴィッド・ボウイ「モダン・ラヴ」が流れていた。

性急な解放感の爆発と、走らずにはいられぬザ・高揚感の衝動!最高!

 あと、似た者同士であるがゆえにローリーのプロポーズを断ったジョーが、「絶対に結婚なんかしない!」と母親に漏らした後、「でも、時々どうしようもなく寂しいの」と本音をぶちまけるシーンは落涙したよね。

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×良くなかった点

 本作は4姉妹の少女時代と、数年後の大人になった時代の構成をごちゃまぜに構成した作品で、原作を知らなくても、その内容がハッキリわかる親切な作りになっている。

4姉妹の末っ子エイミーを演じて本年度アカデミー賞の助演女優賞にノミネートされたフローレンス・ピュー。
日本でも大ヒットを記録している「ミッドサマー」の主演女優として有名だが、少女時代の彼女の容姿はどう脳内変換して観ても13歳に見えねえ…。
どうしても「ミッドサマー」を観た衝撃の後遺症が残っているからだろうか。こればかりは「ミッドサマー」後の弊害と呼ぶべきか。

 あと、家族が再び集まるきっかけを作った三女ベスの存在感が、いくら控えめな性格とはいえ、ちょっと薄すぎた。
ベスとピアノと老紳士のエピソードはグッときたのだが、キャストの知名度による格差か、メグ、ジョー、エイミーよりもカット数が少なく、彼女が何を考えていたのかなどが見えにくかったのが残念。

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結論

 何度も書くけど、筆者としては、ジャンル的に興味ないと思われた本作は、ヘタすると完全スルーしていた可能性が高かった。
しかし蓋を開けてみたら年間ベスト級の面白さであった。
公開前に、作品の魅力を伝えてくれた日比さんには感謝しかない。
本当にありがとうございました。

そんなわけで、こういうジャンルを観た事の無い人にも全力でオススメできる一本であり、鑑賞後感も良いので、デートに誘うのにも最適な一本かと思われます。

 それでは最後にみんなで予告編を観てみよう。


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