サンダーバームという伝説
ビートルズのAbbey rodeや、ニルバーナのnevermindなど、ジャケットと呼ばれるCDの表紙が有名なアルバムというのは多数存在しております。
サブスクが台頭し、CD自体が売れなくなった今でも、ジャケットの文化というのは引き継がれ、収録されている曲たちの顔となる画像には、かなりの力があることは、皆様も感じている事かと思います。
そんな中で、個人的に後にも先にもこれ以上の物に出会うことはないだろうと思うくらい、カッコいいと思ってるジャケットがあるんですよ。
それがこちら。
サンダーバームの「HOW TO ロックンロール」でございます。沢山の曲を聴いて、いろんなジャケットを見てきましたが、未だにこのジャケットを超えるものに、出会った事が無いんですよ。発売から10年も経っているのに、いまだに僕のホーム画面は、このジャケットですからね。
というのもこのCD。
私の人生の中で、最初で最後のジャケット買いをしたCDなんですよね。
俺が大学生だった頃、バンドを始めて、いろんな音楽を聴きたいと、かぎまわってた時期でございました。YouTubeでMVをみて、友達から雑多にCDを借り漁って、音が鳴るものを手当たり次第摂取していたんですね。多分あの頃の俺なら、音姫のサントラでさえ「こんな音楽もあるのか!」つって、馬鹿みたいに目をキラキラさせると思いますよ。
暇さえあれば近所のタワレコに行って、試聴コーナーで足が痛くなるまで音楽を聴く生活。その中で出会ったのが、このHOW TO ロックンロールやったんです。
その日も、いつものように足が痛くなるまで試聴をしておりました。金もないので、買い物する素振りだけ見せて帰ろうかな、なんてぐるっと回ってる時に、このジャケットが目に飛び込んできたんですよ。
革ジャンを着たおじいさん。
体に刻まれた、HOW TO ROCK ‘N’ ROLLの文字。
構成も、ジャンルも、バンドなのかすらわからないまま、気づけばレジにCDを持って行っておりました。
そして聞いてみると、本当に驚きが沢山あったんですよ。まず何より馬鹿みてぇにカッコいいんですわ。
俺はパンクが音楽の中で一番好きなんですけどね、パンクのかっこよさって、突き抜けた真っ直ぐさと、素直にいえない恥じらいの、心の動きそのものやと思うんですね。この相反する感情を、爆発させた世界観を作っているのがパンクやと思ってるんですよ。
サンダーバームをパンクと呼ぶかどうかはともかくとして、その感情的な根幹の部分には通ずるものを感じたんですよ。言ってしまえば見た目が良かったアルバムを買って、コレほどの当たりを引くってだけで、ものすごい運命を感じたんですね。
さらに驚いたのがプロデューサーですよ。歌詞カードの後ろの方に小さく書いてある文字を読むと、「コザック前田」って書かれてるんですね。
ご存知ない方もいらっしゃるかも知れませんが、コザック前田といえば、晩秋やはじめて君としゃべったなんかで有名な、ガガガSPのボーカルでございます。死ぬほど好きで、俺が一番好きな音楽ジャンルをパンクにしてしまった張本人が、プロデューサーとして名を連ねてるんですわ。
そもそも曲がよくなければ、こんな小さい文字を読むことなんてなかったと思います。いくらジャケットが良いからって、曲が悪けりゃ歌詞カードの隅から隅まで読もうとは思いません。もう、ひっくり返りそうな思いでしたよ。
更に拍車をかけたのが、サンダーバームって、ベースボーカルのスリーピースバンドなんですよ。
当時ベースを始めたばかりだった俺は、もう完全にサンダーバームの虜になりました。サッカーのキーパーくらい、ジャン負けで押し付けられるような立ち位置に思っていたベースが、フロントに立って歌を歌ってるんですよ。
しかも曲も面白いんですね。
例えばストレートなロックナンバーのような、王道ど真ん中の真っ直ぐな曲もあれば、別アルバムですが、彼女は笑ったなんて、めちゃくちゃテクい動き回るベースラインの曲やったりするんですよ。
ここまで来るころには、取り憑かれたようにサンダーバームを聴く生活になりました。F-1レーサーにはなりたくないって言う、他バンドとのコラボCDを求めて、彷徨い歩くほどでしたよ。サンダーバームの一枚のアルバムで、俺はしっかりロックンロールとはなんたるかを教えられ、取り憑かれてしまったんですよね。
そして気がつくと大学4年間かけて、サンダーバームのコピーをしまくっておりました。軽音サークルの友達からも「犬井といえば、サンダーバーム」と言われるほどに、サンダーバームが俺の青春そのものになっていったんですよ。
たまたまジャケットが目に入ったというだけで、サンダーバームが俺の青春にロックンロールを教えてくれたんですよ。こんなこと滅多にあることではないからこそ、俺にとってサンダーバームのジャケットを超える、名ジャケットというのは生まれないと思ったんですよね。
最近サンダーバームのボーカルチョップさんの奥さんである、つるうちはなさんが、僕のnoteについて紹介をしてくれました。
サンダーバームをきっかけに、つるうちはなさんの曲も聴くようになりました。noteには、プロデュースされているアイドル、あヴぁんだんどを紹介した記事があったので、それを見てくださったとのことです。
この出会いすらも、サンダーバーム無しには無かったんじゃないかと思うものなんですよ。もちろんチョップさんも、今でも大好きでして、サンダーバーム自体は解散してしまいましたが、the electersとして活躍もされている姿は、今でも追いかけています。
僕の伝説のチョップさんと、奥さんであるつるうちはなさん。
みなさんの伝説の1ページにも、僕のスピーカーが壊れちゃうような二人の活躍を、加えてみていかがでしょうか