
The Steel Houseのチョコレートケーキ
昨年、クリスマスに第九を聴きに行き、その待ち時間に立ち寄った際にその存在を知った。
正直、ここのカフェのフードは可もなく不可もなくといった感じなのであまり期待はしていなかったが。
結論から言うと、いい意味でその期待は裏切られた。私の28年のケーキ人生の中で1,2位を争う美味しさであった。
────────────────────
サイズは15cm、チョコレートケーキというタイトルで50台限定販売である。
外側はグラサージュショコラで覆われており、中はチョコレートムース、キャラメルムース、チョコレートスポンジが重なっている。はみ出すように敷かれたボトムスはクッキー生地だ。

まず最初に驚かされたのは、クリスマスツリーを模した緑の部分。
空前のピスタチオブームである昨今、緑といえばピスタチオなのではなかろうか。ましてやメインはチョコレート、なるべく癖の少ない味を持ってくるのが常ではないかと考えるが、なんとこれが抹茶クリームなのだ。抹茶を持ってくるなら前面に抹茶を押し出すことが多いのだろうが、タイトルに特筆することもなくサラっと抹茶を持ってきたその心意気に一口目から大いに感動した。
更に私を驚かせたのはボトムスのクッキー生地だ。
これが、かなり塩気が効いている。だがそれと同じくらいバターの風味があるせいか、洋菓子の域からは出ていない。
硬すぎずサクサクとしたこのクッキーが、
グラサージュショコラ・チョコレートムースを見事に纏めているのだ。
そればかりでなく2層目の控えめな風味のキャラメルムースと相乗効果になり、ケーキ全体のチョコレート風味の奥に塩キャラメルを感じることのできるものとなっていた。
上に載っている丸い飾りは、クッキーにナッツを纏っているものである。このクッキー生地すらも強いこだわりを感じる。普通のクッキーやボトムスとは明らかに違うものであり、スノーボールに近くはあるが卵感のあるポクッとした食感である。
ナッツは香ばしく、良いアクセントとなっている。
ついでに言うと噛むときには少し身構えるアラザンだがこちらはあまり硬くないものであった。
チョコレートでできたクリスマスモチーフの飾りが偶数個であるところも評価できる。チョコ好き2人暮らしの私達が無駄な争いをしなくて済んだのだ。
────────────────────
ここ数年、加齢による体調の変化からか、ケーキを重く感じるようになり1切れ食べるのも精一杯であったがこのケーキは違った。たしかに、ケーキとしての重さはあるのだがそれを上回る美味しさ、全体のバランスの良さであった。
────────────────────
『チョコレートケーキ』という控えめなタイトルからは想像することも出来なかった、宇宙のような広がりすらも感じるこの作品に心からの賛辞を送ろうと思う。