【新年度研修〜新しい相棒〜】
私はこの春、新人を迎え入れた。
彼がうちに適している人材なのかは、正直まだわからない段階だが、能力そのものは高いと評価されている。
実際、年初に東京で行われたプレ研修でも、短時間ながら彼はその能力を存分に発揮していた。
何より、その見た目を、私は気に入っている。
プレ研修の頃から外見の良さには気づいていたが、当時はまだ垢抜けず、かわいらしさすらあった。しかしながら今は見違えるほどにスタイリッシュになり、ザ・都会の青年という感じだ。
ルッキズムだ、中身で勝負しろ、などと叩かれるだろうが別に構わない。
日々を共に過ごす相手だ。ときには吐きそうになるくらい苦しいこともあるだろうが、そんな瞬間を一緒に過ごすならなるべく外見が良いほうがいいに決まっている。
「今日の夕方から、一緒に、2人でどう?」
私は彼の耳元で囁いた。
彼はやや迷惑そうな顔でこちらを一瞥した。
その横顔すらも端正でしばらく見ていられる。
嫌がっているのか、ラッキーと思っているのかもその表情からは到底読み取ることはできないが、私は彼を連れ出すことに成功し、とある場所へと向かった。
もっとも、これは私の片思いであり彼がラッキーだと思っている筈は微塵もないのだが。
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「さあ、新人くん、始めようか」
うす暗いがムーディーにライトアップされたその場所で私はおもむろに作業を始めた。
新人くんは相変わらず私とペースを合わせるのが苦手なようだ。
「これだから今の若い子は」
今にも口に出しそうだったが喉元でグッと堪え、私は新人とペースを合わせた。
なるほど。こちらから斟酌してやると随分とスムーズだ。やはり恐ろしい新世代だ。
ふつう、新人が私に合わせるべきなのではないか?そう思ったが惚れたほうが負けなのだ。彼をここに置いて帰るわけには行かない。
『愛されるより愛したい真剣で』と某アイドルが歌っていたがそんな綺麗なものでもない。
既に私は彼にこれでもかというほどの痛みを味わされているのだ。
某アイドルはこの痛みを本当に知っているのだろうか、そんなことを思いながら私は帰路についた。
つづく
ご存知の通りスペックの高さは随一
仲良くなれますように