見出し画像

今更解説するゴーストオブツシマの万死がすごかった

パトスのぶつけ先がNoteになっている犬です。
いつもお世話になっております。

先日ゴーストオブツシマの追加DLCとPS5版が発表されまして、ドハマリしました。

今回は、そんな今更感が強いゴーストオブツシマの難易度:万死がすごいって話です。

オープンワールドは飽きやすい

結論から言えば、オープンワールドゲームというのは、構造上飽きやすいゲームだ。

プレイヤーが操るヒーローキャラが、箱庭の中を移動し、時折発生するイベントを解決したり、アイテムを収集するのがオープンワールドゲームの概要で構造だ。

だが、ここに飽きやすい壁がある。箇条書きするとこう!

・ヒーローキャラ操作の壁
・イベントの壁
・移動の壁
・アイテム収集の壁


要素ほぼ全部じゃん。そう、ほぼ全部である。
一つずつ説明していこう。

ヒーローキャラ操作の壁

まず、プレイヤーが操作するヒーローキャラ操作の壁だ。

オープンワールドゲームはプレイヤーが自分のスタイルに合うようにヒーローキャラをカスタマイズできることが主流になっている。

同じゲームでもパワーで押し切ったり、ステルス暗殺したり、特殊パワーで無双したりとカスタマイズによって違うゲームをしていると錯覚するほどの間口の広さだ。

ただ、プレイヤーがその手段を全部使うかというと、それはNOだ。

そもそも、カスタマイズ用の強化ポイントは有限で、プレイヤーは一回のプレイで取捨選択を強いられるし、プレイが進むほどスキル取得までの時間が伸びる。
その全てを体験するには膨大な時間か複数回の周回プレイを求められる。

そんなこともあり、大抵のプレイヤーは一回だけクリアするか、キャラ操作に飽きてやめてしまう。

それに、間口の広さというのは逆にいえば大味なバランスとも言える。

一つ有能なスキルを覚えたら、あとの戦闘が簡単になってしまうことが多々ある。むしろ覚えないと縛りプレイかと思うほど戦闘が厳しくなる。

オープンワールドゲームあるあるだ。

ならば難易度をあげればいい? それについては記事の肝なのであとで書こう。

なお、解決例は以下の通り。

・武器が壊れるゼルダの伝説ブレスオブザワイルド
 戦闘に緊張感が出るため飽きにくい。
 最初からすべての攻撃アクションを使えるため、快適な戦闘には武器の特徴に合わせた工夫が必要。壊れそうなら投げろ。

・エリアが進めば新しいスキルツリーが開放されるInFAMOUS Second Son
 進行度で新要素が開放される系は飽きにくい。

イベントの壁

オープンワールドゲームはなぜゲームなり得るのかというと、それはイベントというプレイヤーの解決すべきものがあるからだ。

箱庭の中をただ歩き回るだけならば、ただのウォークスルー動画だ。

そこにゲーム性はないし、ジャンルとして成り立っていないだろう。

ただ、オープンワールドという一つの箱庭に多数の要素を置くという特質上、ストーリーイベントを除いたイベントはパターン化しがちだ。

このイベントパターンが多いと飽きにくいのだが、悲しいかなメインパターンを増やさずに、プレイヤーに特殊なクリア条件を課してパターンを増やす、いわゆるサブミッションパターンを増やすことが多い。

先程のヒーローキャラ操作の対策でもあるのだろうが、プレイヤーに一定の動作要求や特殊な条件目標を追加して、イベントパターンのかさ増しをするのだ。

コレに関しては良い悪いと一概に断じることはできない。

プレイヤーに気づきを与えることにもなるし、サブミッションとイベントが噛み合っていてクリアが簡単になる指標であればストレスはないだろう。

しかし、難易度が高くなる、プレイヤーの得意不得意、カスタマイズによっては達成できないサブミッションがあると理解した時点で、ゲームが面倒に感じてしまうのはあり得るだろう。

そもそも、目標達成を自由に行っていいはずのオープンワールドゲームで、サブミッションのせいで攻略方法が限定されるのは本末転倒だ。

サブミッションを無視すればいいのでは? と思われるかもしれないが、ゲーマーというのはチェックリスト一つ空いたままクリアすることになんとも言い難いストレスを感じる生き物なのだ。

なお、オープンワールドでは遭遇イベントというマップを歩いていたら出くわす小イベントが発生するが、コレに関してはパターンが少ない方がストレスがない。朝ごはんの主食で数十種類から選ぶ必要がないのと一緒だ。

なお、解決例は以下の通り。

・遭遇イベント以外、同じイベントがほぼないゼルダの伝説ブレスオブザワイルド
 頭おかしい。よくよく考えたら頭おかしい。祠全部ちがうやん。
 また、解決方法についてもどれが正しいというルートもない。

移動の壁

オープンワールドゲーム過渡期は、箱庭の大きさがどんどん大きくなる傾向にあった。ゲームエンジンの進化、ハード面での進化、いろいろと要素が重なり、ワールドが広いことが評価の一つになった時代もあった。

しかし、プレイ体験の密度というなら話は別だ。

考えてみてほしい。疲れて帰ってきて、用事を済ませて寝る時間まであと一時間、だというのに目的地までの移動だけで一時間経ってしまうゲームは果たして良いプレイ体験といえるのだろうか。

オープンワールドゲームはロードを挟まず続く広大な世界が売りだが、プレイヤーの体験をただ移動で延ばすような箱庭はただ飽きるだけだ。

移動時間をへらすために、オープンワールドではファストトラベル(拠点間移動)が標準搭載されているのだが、拠点を見つけないと利用できない。どちらにせよ、世界を隈無く移動することが求められるのだ。

移動する間に寄り道できるようなコンテンツを配置することが対応策の一つだが、昨今の話題性があるオープンワールドゲームは対策をきちんとしていて特徴がある。

・登ることが楽しい、ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド
 飽きる要素をことごとく潰してないか。
 登ればパラセールによる滑空で移動短縮にもなる。

・スイング移動が快適なスパイダーマン
 移動が速い&楽しいと相対的な体験密度が高まる好例。

・マップを段階的に開放するInFAMOUS Second Son
 段階的に開放することで体験密度を保つ。
 移動手段も増えるため移動に飽きない。

・ゴーストオブツシマ
 ファストトラベルのロードが短く快適。
 馬で移動中の風景がひたすら美しい。

アイテム収集の壁

オープンワールドゲームはその箱庭の中に収集アイテムや素材アイテムを置いて、マップ探索に意味をもたせることが多い。

しかし、その種類・数が多くなれば多くなるほど集めることが苦痛になる。
特に収集アイテムは「クリアするには」必要のないアイテムなのだが、実績を取得するには必要なことが多い。

ゲーム実績のためにフルコンプしたい人は、ゲームクリアと関係ないアイテムを広い箱庭の中で探し回らなければならないのだ。

もちろん、収集アイテム自体は世界観の理解に役立つものが多いのだが、ゲーム体験を助けるよりも深めるアイテムだろう。ゲームへの熱量がよほどなければ全部集めるぞ、という気合いを入れづらい。

そして大抵の場合は最後の一個が見つからず飽きることが多い。
初期のオープンワールドゲームはアイテムのコンプリートにかなりの時間を要したのだ。そもそも存在するのかそれは、というモノも多かった。

それもあって、最近のオープンワールドゲームでは、収集アイテムを探知するシステムやアイテムを標準搭載している。よって解決例は割愛する。

最後の一冊(しかも中抜け)が集まらず、世界中の本棚を探索する旅をしなくていいとは、便利な時代になったものだ。

オープンワールドゲームで飽きるとは何か

ここまで、各要素で飽きる壁を書いてきたことをまとめると、ゲームでの『飽き』というのは、以下が原因で起こる。

・操作変化がない
・体験の既視感
・体験密度の低さ


飽きという言葉自体が「同じようなことの繰り返しにうんざりすること」という意味なので、外れてはいない。

要するに、オープンワールドゲームは「同じことを繰り返すことが求められる」ゲームなので飽きやすいのだ。

逆に飽きにくいゲームと言われると、対人対戦ゲームが上がるだろう。

ただし、対人対戦ゲームでも何かの繰り返しを強制するならば、飽きは早く来る。

例えば、理論上最強編成の強要、立ち回りの固定、勝ちパターン、負けパターンが判明する、だとかだ。

まあそれらは対人対戦ゲームにあるまじきバランス崩壊なので、一気に廃れるだろう。

オープンワールドゲームの難易度は大体おおざっぱ

ゲームに変化を与える方法の一つとして、ゲームの難易度を設定するデザインが、最近のゲームで当たり前となった。

通常よりも手強い敵の出現、AIの変化、敵の数の増減などのパラメータでゲーム難易度を変更する方法が一般的だろう。

まともに難易度調整する開発であれば、ステージ毎、シーンごとのレベルデザインに沿って修正するため、手応えの変化を提供できるだろう。

しかし、オープンワールドゲームは、そんな細かな調整などできない。
要因はさまざまあるが、大体共通するのは時間と人的リソースの不足だ。

オープンワールドは広すぎるので、まともに難易度調整しようとすると世界を造る以上の労力と検証のための人数が必要になる。

なにせAIの挙動を少し変えただけで、物理挙動により世界の果てまで飛んで行ったり、蜂に特殊な属性を追加するだけで馬車が吹き飛んだりする世界だ。

そのため、敵のHPは1.5倍、敵の攻撃は2倍など大雑把な修正をして難易度を上げました、というのがほとんどである。

そんな難易度の調整で大丈夫か? 大丈夫じゃない。問題だ。

ただ戦闘の時間が伸び、こちらは数撃で倒れるのに向こうは十数回攻撃しても倒れない。一撃死するボスなんて考えたくもない。

苦行を強いられるプレイヤー。クリアした時の達成感はあるだろうが、クリアできなかった時の無力感はより大きなものになるだろう。

というか単純に疲れる。勘弁してくれ。

一度ツシマに飽きていた

ゴーストオブツシマは2020年7月17日に発売されたオープンワールドゲームだ。

発売当初は美しい風景、戦闘の楽しさ、速いロードに感動しながらもプレイしていたが、第一回アップデートが来る前にプレイを中断した。

確か下県のマップ埋めが終わり、下県での収集アイテムを集めるぞとなった段階で、仕事が忙しくなってきたのだ。

家に帰っても気力がでないときに、コントローラ振動を頼みの綱としたアイテム収集、移動中の戦闘はパワープレイが可能だったためマンネリ化と飽きる条件が整っていき、ついには起動しなくなった。

そして時はぶっ飛び2021年8月20日。ゴーストオブツシマ・ディレクターズカット&PS5版が発売された。

ツシマは素材が最高級だが、普通のオープンワールドゲームだった

発売当初のゴーストオブツシマの評価は、「非常に良くできた普通のオープンワールドゲーム」というものが大半だった。

ゲームの舞台、ストーリー、戦闘システム、映像表現、音楽ともに非常に高いレベルの作品と良い評価がされた。

しかし、オープンワールドによくあるテンプレの域を出ないという厳しい意見もあった。

最高の素材を使ったおかずを普通の弁当箱に詰め込んだようなゴーストオブツシマは、オープンワールドゲームに慣れ親しんだ人からすれば、いつものオープンワールドであり、既視感が強いものだっただろう。

つまり、上で挙げた飽きる構造をオープンワールドとして持っていたのである。

ゴーストオブツシマ・ディレクターズカット、そして万死との出会い

PS5が買えた。かなりの幸運である。

しかし、やるゲームもDemon's Soulsぐらいしかなく、持て余し気味だった時、ゴーストオブツシマ・ディレクターズカット&PS5版が発売されることとなった。

より美麗になったツシマを遊べる(しかもPS4版を持っていたら格安で)となり、やってみようかな、という気になったのだ。

しかし、PS4版のセーブデータを移植しても、途中からだとやる気が出ない。RPGによくある『途中で何をしていたか忘れる』現象である。

「いっそのこと、最初からやるか」

ならば、むしろ最高難易度で遊んでみるか。と調べたところ、出てきたのが『万死』モードである。

簡単に言えば、敵も味方も一太刀で死ぬモードだ。
さらに敵の攻撃が苛烈、パリィと回避タイミングも厳しくなった、まさしくクリアまでに万死するモードである。

設定してプロローグを開始。
プロローグの最初の浜で突撃中に死亡。

「やべぇ、まだプロローグだぞ」

万死のやばさにハマった瞬間であった。

ちなみに、プロローグでの万死のやばさについては下のブログが非常に参考になるので、見て欲しい。

飽きる油断を与えない万死

いままでなんと温い世界に居たことだろう。

プロローグから簡単に死ぬ現実を打ち付けられてから、生死のREALさを感じた犬は、非常に慎重に行動するようになった。

難易度『普通』では、隠密ミッション以外は「やぁやぁ我こそは!」と高らかに宣言して戦いに臨んで居たが、万死でそんなことをすれば死ぬ。

重兵の攻撃を避けていた時に横から現れた槍兵にチョン突かれただけで死ぬのだ。

また、敵AIもかなり強化されたようで、強制三択対応が非常に多くなり、タイマンでも全然勝てないこともしばしば。

特に序盤はスキルが揃っていないのも相まって、クエスト再挑戦回数は増え、経験値稼ぎとなる遭遇イベントでも失敗が続いた。

これは詰んだか…? と思いもしたが、パワープレイを見直し、フィールドの下見をキチンとするようになってから安定していった。それでも遭遇表は運。

高難易度でしか味わえないゲームを理解する楽しみだなぁと思いつつ、それでも油断すれば死ぬ万死にかなりハマった。

飽きという油断が一切許されないシビアさが味わえるオープンワールドゲームはなかなか無いだろう。

ダレないボス戦〜悪いのは全部自分〜

また、敵も一撃で死ぬというのも、プレイ時間の延長を感じない良い点だ。
もちろん、ボス戦にもその「死にやすい」恩恵が入る。

さすがに一撃で死ぬことはないが、上手く捌ききれたときは他の難易度ではあり得ないほど短い時間でボス戦の決着が付く。

このお陰で、敵が硬すぎて対応時間が長くなり、集中が切れて死ぬ、と言うことがない。

そう、悪いのは全て自分。攻撃を捌ききれない、攻撃を入れられない、避けきれない自分が悪いのだ。

ちなみに勝利するまで二十戦くらいは余裕で失敗している。

あまりに負けすぎると、途中でこのクエストを諦めますかいう煽りシステムメッセージが出てくるのは本当に面倒で心が折れるのでOFF設定ください。

終盤になると初手から最速攻撃とか特殊攻撃を繰り出すのでジャンケンを見切れない場合は何も出来ないまま死ぬ。ってかステージが暗いわ。

それも見切れなかった自分が悪いのだ。 そうだろうか?

衰えた動体視力を喝を入れつつ、敵の行動を把握し、予測し、持たされた気力と技をフルに使い、勝てるムーブに入ったときはアドレナリンドバドバである。そのまま勝てた時は拳を上げて叫ぶほど大興奮である。

ラストバトルは本当に泣けるほど難しくてやばかったです、はい。

万死は飽きを破壊するスパイスだった

この難易度:万死、自分がツシマをやらなくなってからすぐに実装された難易度であるが、実は難易度:難しいの救済策だったという側面も存在する。

ツシマの難易度は、難しいまでは敵の体力に補正が入る。中盤まではそれほどでもないが、終盤になると体力補正がかなり多くなり、敵を倒すまでに時間が掛かるという問題が出るようになった。

そこで、難易度:万死に変更すれば、敵の体力が減る恩恵が得られると言うわけだ。

万死も後半のスキルが揃った状態になれば、それほど苦労することがないというのも理由だろう。

つまり、万死は味の飽きを無くさせるスパイスのような役割も担ったのである。

ツシマをより面白く味わうには万死をしよう

万死も確実に進めることでスキルが揃い、装備も揃い、難易度が緩和されていく。そのことに気づいてから、積極的にいろんな要素を集めまくった。
さすがに収集要素は無理だったが、強化要素は全て集めきったと思う。

そんなフィールドでの探索もほぼ終わり、激動のストーリーを進め、そしてエンディングを迎える頃には、ツシマを駆け抜け、救った冥人になっていた。

装束でどんな結末を迎えたか察して欲しい。

最高難易度ながら、既存のオープンワールドの【飽きる】をぶっ壊してくれた、ゴーストオブツシマの難易度:万死、そして開発した全ての人に感謝しながら、筆を置き…

え、壱岐は行かないのかって?

も、もう少し後でいいかな……。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?