見出し画像

犬さんごはん 第一回「芋を揚げたい」

適当に更新する飯エッセイを連載しようと突然閃きました。普段食べてるものを中心に更新します。

さて、第一回に当たってアンケートを取りました。

票の少なさは私の信任の無さ。

それはさておき、設置した時には「おにぎりウインナー卵焼き」がぶっちぎるだろうと想像してたんですよね。
なのに一票目が「絹さや」という波乱の幕開けで、ドキドキしながらリツイートしまくったら「お前をデブから脱却させない」という信念みたいなものが集まってしまいました。
油ものの魔の手からは逃れられないのだな。

普段はこういう

豪華でヘルシーなツマミを作ることもあるんですが、テーマを「シンプル」に決めたので単品勝負にしました。

結果が芋。
わかる、芋は旨い。

実はフライドポテトを食べると1日の必要ビタミンCがほぼ摂取出来ます。芋は偉いのです。
但し中性脂肪と糖質がアカンことになります。
芋はヤバいのです。

私はあまり外食をしないんですが、マックのフライドポテトを定期的に食べたくなります。
周期としては二ヶ月に一度ぐらい。
耐えられないと実家近くのマックでSサイズかクーポンのMサイズを購入して貪ります。

あの塩気のバランスのよさはなんなんですかね。
国民をブタにする気なんですかね。
しなっとロングよりカリっとショートクリスピーな芋が好みです。

昨年から独り暮らしをしているのですが、私のフライパンは二ヶ月に一度の頻度で芋を揚げるのに使われます。
マックポテトは高いので、業務スーパーで1キロ入りのシューストリングを購入して揚げます。
油はだぶだぶと入れず、芋の3分の1程度が浸かる量を注ぎます。芋は冷凍のままです。

ガスの火をつけたら、そのまま好みの揚げ具合になるまで菜箸でかき回し、ひっくり返し、裏返します。
たまに芋に箸が刺さってその部分がもろもろになりますが、長時間加熱すれば逆にサクサクになるので気にしません。先ほど述べたように、私はクリスピーな食感が好みなのです。

狐色になったな、という段階で「少しずつ」菜箸でキッチンペーパーを敷いたバットに取り出します。ざらっと一気に取り出すより揚げ具合にムラが出来、カリカリ部分はよりカリカリになります。

「俺はしなっとロングが好きなんだよ!!!」という地上最強キャラの嗜好は全く構いませんが、自分で揚げる時は「お前はポテチでも喰ってろ」というレベルを目指します。
個人の嗜好は様々です。

こんがりと揚がり、適度に油が切れたら熱いうちに味塩こしょうを振り、ざっくりと混ぜます。
塩だけで十分旨いことを知っていながらも、キッチンで一番取り出しやすい、そして振りかけやすいものに頼ります。

コンソメやがらスープをまぶすのはむしろ邪道。
旨いのは認めますが私の普段の欲求を満たすポテトには必要ありません。(旨味は足されていますが)

飲み会の時はキッチンペーパーを可愛いものに変更したりしますが、そんなことよりしっかり油が切れてくっつかずに使いやすいものをいつも使っています。
映えより味です。あと量な!!!!

小皿にケチャップとマヨネーズ(あればフレンチマスタード)を絞りだし、スタンバイOK。
まだポテトは冷めておらず、アッツアツ。
箸で掴んだひとかたまりでマヨとケチャップをかき回してディップし、舌先を熱さに怯えさせながらぱくり。

カリっと口の中で砕け、中のざらっともトロっとも言えない芋の味が脳内を駆け巡り、油が染み出すと同時に脳汁が放出されます。

やばい、一生食べていたい。

アマプラで見ているドラマや映画を眺める暇もなく、箸を動かしては噛み、飲み込み、もはや唇はテラテラ。
ケチャップは芋の甘さを際立たせ、マヨネーズは旨味を倍増させ、マスタードは口中を爽やかにしてくれます。

食べるとなくなる、でも食べたい。
肥るのは解っている、でも我慢できない。

そもそもフライドポテトを目の前に出されて、我慢できる人なんて存在するんでしょうか。
どっかのCMじゃないですが、糖分と脂肪分のタッグは判断力をぶっ壊すのに優秀すぎます。300gも揚げた芋が、みるみる胃袋に収まっていく…!!!!

ビールにも合うでしょう。レモンサワーでもいけるでしょう。
しかし基本的に、私が芋を食べたくなるのは日中です。
飲み物も挟まずに、芋自体が液体かのように口に詰め込みます。
下品なのは解っていますが、揚げた芋の魅力には抗えないのです。

小皿のディップソースが綺麗に拭われた頃に、計算したかのようにフライドポテトはなくなります。毎回です。ソースを余らせることはまずありません。

最後の2本を使って残り少ないソースを丁寧にかき集め、惜しみながら咀嚼すると、「ああ、私の幸福の絶頂とはこれを準備し終えた正にその瞬間であったな」という実感が湧き、そして次は悲しみに襲われるのです。

罪深いことをしてしまった。
このカロリーはどうやって消費すればいいのか。
もうこの味は楽しめないのだ……。

いや、業務スーパーの芋なんですからいつでも楽しめます。買いに行きさえすれば。揚げさえすれば。
しかし食べ終えた瞬間は何故かいつも後悔に染まり、二度と芋を揚げることはないだろうと確信してしまうのです(その後も揚げてます)。

何故家で芋を揚げることにこんなに罪悪感があるのか。

これは、主に私の育った環境に原因があると思われます。

私の母は揚げ物が苦にならない人でした。
父が天ぷらやフライが大好きで、子どもたちが成人してからは父の嗜好を優先すべく、週に三度も揚げ物をしています。

私は実家を離れるのが遅かったので、それをおかずに日々ごはんを食べていました。
まあ体型は太いけれど、それも父のことを考えたらおかずに文句などは言えませんでした。

しかしある日、気付いてしまったのです。
一般家庭で週に三回揚げ物をするのはおかしいことに。

通院先で指摘され、血液検査で愕然となり、私は母に何度か「揚げ物を減らして欲しい」と告げました。
母は取り合わず、中性脂肪は高いまま。
現在その名残でまだ血液検査に引っ掛かっています。

外食でポテトを頼むのもいつも遠慮していました。
フライドポテトは愛している。しかし前述の通り、リスクが高すぎる。
更に言うと、フライドポテトを注文しようとすると、いつも母に「家で揚げるから」と阻止されていたのです。
うちは婆上の趣味で畑をやっているので、芋自体はたくさんあるんですね。

しかし、母の揚げる芋は「揚げた芋」でしかなく、唐突に食べたくなるフライドポテトとは別物でした。

フラストレーションは蓄積され、私の中で「フライドポテト」は罪の味と認識が出来てゆきました。
お金はかかる、カロリーは高い、おやつでもおかずでもない。
食べたい……でも食べてはいけない、のでは?

その糸が切れたのが、独り暮らしで自炊をして1ヶ月目でした。

油を使う料理をあまりしなかったせいか、急激に血液検査の結果がよくなり、体重がいくらか落ちたのです。

「揚げたら?」

冷凍の1キロのポテトを見た瞬間、誘惑に負けました。

その後はご覧の通りです。
いくらでも揚げられる芋の魅力に目覚め、せっせと揚げては口に運び、後悔する。
でも芋を買うことを止められない。
揚げただけでもヤバいのに、カロリー倍増のソースまで用意してしまう。

皆さん、フライドポテトは中毒になります。
一時の快楽のために、体型も健康も棒に振ってしまいます。
それでもあの脳汁が分泌される瞬間のために、いくら油の処理が面倒でも止めることが出来ないのです。

今では毎日のように天ぷらを口にする父を責められません。炭水化物と油のループからは簡単に抜け出せないことを完全に理解しました。ちなみに父、血糖値を気にしているものの普通体型です。

芋のためだけに運動をしようか悩む今日この頃。

しかも更に罪深い味を見つけてしまいました。
芋をスライスしてバターと醤油で炒め、こんがり焼けたら海苔をちぎってまぶす。

醤油の香ばしさ、バターのコク、磯の香りが一体となって……!

最近目の調子がどうもいけません。糖尿で失明したら自業自得です。
俺はもうダメだ、お前らはこんなものにハマるんじゃないぞ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?