SnowManは何故売れたのか(中)
前回に引き続き、SnowManがなぜここまで売れたのかについて考えていこうと思います。
前編はこちらから↓
中編の今回はSnowManのファンダム(ファンの集団)と旧ジャニーズ特有のビジネス戦略という視点から書いていきます。
ファンダム
SnowManが売れた理由に、ファンダム(ファンの集団)にも理由があると思われる。
年齢層がやや高め
SnowManは昔から大人のファンが多い。
私が初めてSnowManが出演するコンサートに参加したのは2017年春に行われた「ジャニーズJr.祭り」というコンサートなのだが、これは名前の通り当時人気なジャニーズJr.たちがたくさん出演していた。
King & Prince・SixTONES・SnowMan・TravisJapan・美 少年(当時は東京B少年)・HiHiJets・Love-tune(現在は全員退所済み)といった今考えれば超豪華なラインナップ。
そのため、参戦するオタクも誰を推しているかバラッバラなんだが、スノのオタクはパッとみただけでわかる。
何故なら年齢層が高いから。
参加するアイドルたちは当時20歳ぐらいの子が多いから大体オタクはそれくらいの年齢の子が多いはずなのだが、スノだけメンバーもちょっと上だしファンはもっと上の人が多かったように思う。
今もそれは変わっておらず、ファン層は他のアイドルに比べて若干高め。
脱線したので話を戻すが、なぜ大人のファンが多いと売れるかというと、これは超簡単な理由で「お金を持っているから」だ。
中高生がアイドルにハマっても使えるお金は高が知れているが、社会人オタクはそのために働いているようなものなので自分が使いたい分まるまるアイドルに使うことができる。
そして、ファンたちは「お金を落とすこと」「売り上げとして数字を出すこと」の重要性をよく理解している。
ただファンがお金を持っていても、その推しにたくさん使うかは別なので。これについてはまだ後で述べます。
CDを買う習慣がある
今の若者の中には「音楽はサブスクで聞くもの」という考えの人が多いので、CDを買う習慣がない。
私の世代(1998年生まれ)ぐらいまではまだ中高生の頃CD買ってウォークマンに入れていたりしていたのでなじみがあるが、それより下の世代は多分ない。
もちろんジャニーズはサブスクを解禁してないグループがほとんどなので曲をちゃんと聞くとなるとCDを買うことにはなるのだが、そもそも買う習慣がないと購買行動に移りにくい。
今は YouTubeがあるので「 YouTubeで聞けばいっか」となりCDを買ってくれない。
その点、大人のファンたちにとって曲を聞きたい=CDを買うことになるので、CDが売れやすい。
お金を落とすことの重要性を知っている
先ほども述べたが、お金を落とすことの重要性を理解し行動しているファンが多い。
特にSnowManは下積み時代が長いグループでもあるため、古参ファンたちの数字への意識が高い。
「やっと日の目を浴びた」っていう嬉しさだけでなく、この状況が当たり前ではないこと、売れ続けるためには数字が大事だということをとても痛感している。
その空気感がファンダム(ファン集団)へも伝わったのではないだろうか。
今はCDの売り上げ以外にも売れているかの指標としてSNSのフォロワー数やサブスク・YouTubeの再生回数が強みとしてあるのだが、それでもやっぱりCDの売り上げというのは今でもかなり重要視される。
ドラマやCMといった音楽活動以外の仕事のキャスティングをする偉い人は大体おじさんなので(偏見)、「再生回数が多い」より「CDがたくさん売れている」の方が強みとして大きい。
…というのは半分冗談なのでちゃんとした理由を言うと、再生回数が多いのとCDがたくさん売れているのでは、後者の方がビジネス的に成功しているからである。
再生回数が多いのとお金を落とすファンが多いことは必ずしもイコールではない。
「YouTubeはタダだから見るけど、CD買ったりコンサートには行かない」みたいなお茶の間ファンが多いと、もしCMをしてもファンがその商品を買ってくれる可能性が低い。
しかしCDがたくさん売れていることとお金を落とすファンが多いことはほぼイコールと言っていい。
だからCDを売れているグループをCMに起用した方が、商品が売れる可能性が高いので起用されやすいのだ。
そしてジャニヲタは「CMに起用されて商品が売れるようになれば、またCMに起用してもらえる可能性が上がる」ということを理解しているので、推しがCMに起用されればその商品を買う。
このサイクルが出来上がっているためCMに起用されやすくなり、CMに出ればファン以外への知名度が上がっていき、新規ファンを獲得しやすくなる。
飽きにくく浮気しにくい
一般的に若者は飽きやすかったり流行に左右されたり好きなアイドルの趣味が変わりやすいので、新しいアイドルが出てきたらそっちを好きになってしまってファンを辞めてしまうことが多い。
しかしある程度の大人のファンはすぐ飽きたりする人が少ない。アイドルに求めることや価値観がある程度定まってきているというのもあるだろう。
だから一回ファンになったら長期的に応援してくれる人が多い。
新規獲得も大事だけど、長く応援してくれるファンがいるグループはやっぱり強いし、新規やファン以外の人からしても「長く応援してくれる人がたくさんいるってことは、それだけ魅力的なんだろうな」って思ってもらえる。
ビジネス側からの視点から見ても、いついなくなるかわからない新規ファンばかりのグループより、長くファンしている人が多いグループの方が「安定して数字を持ってきてくれそう」って思ってもらえるのではないか。
子どもと一緒に応援できる
ファンの年齢層がやや高めであることから、ファンの中には子どもがいる人も多いだろう。自分だけでなく、子どもと一緒に応援することができる。
SnowManは過激なことを言ったりするメンバーがいないので、親も子どもと一緒に安心して観ることができる。また、推し活は自分一人でするよりも誰かと一緒の方が楽しめるし長続きするという人も多いため、身近に一緒に楽しめる人がいるのは長く応援してもらえる理由になる。
旧ジャニーズ特有のビジネス戦略
旧ジャニーズは他事務所アイドルグループやK-POPアイドルとは異なった売り方をしていることが多い。
それがSnowManのヒットにも大きく影響している。
・事務所の方針なのでSnowMan以外にも当てはまることが多いこと、
・K-POPをはじめとした他事務所と比較しているが「どちらが良くてどちらかが悪い」という訳ではないこと
をご承知の上で読んでいただきたい。
ランダムグッズなし
旧ジャニーズ以外のアイドルのファンをしている人たちの頭を悩ませている理由の一つに「一部のグッズがランダム」というところがある。
詳しくない人に説明すると、トレカ(トレーディングカード:カードサイズのブロマイド)や顔が印刷された缶バッチなどが、どのメンバーかわからない状態で販売されている。
そのため、購入してもお目当ての推しが出るとも限らない。推しを手に入れるためには、推しが出るまで買い続けるか、自分で引いたメンバーと推しを交換してくれる人を探さなければいけない。
大体の人は数個買って出なかったら推しと交換してくれる人を探すことになるのだが、これが大変で。
まずメンバーが多いと推しを自引きできる可能性が下がる。自引きできなくて交換を探すとしても、メンバーが多ければ多いほどうまく交換してくれる人を探すのが難しくなる。
これに加え、メンバーの人気は均一ではないのでどうしても交換が見つかりやすいメンバーとなかなか交換してもらえないメンバーが存在する。
そのため、推しが人気メンバーで引いたメンバーが不人気メンバーだと交換が見つからない…という事態が発生する。
ちなみに交換はTwitterで探すか、会場でそのグッズを持ちながら彷徨って声をかけてもらい待ちするorこちらから話しかけるといった方法が一般的。たまに店みたいに並べている人もいる。
つまり、めっちゃ大変なのである。
話を戻すと、旧ジャニーズはこのランダムがないのがファンにとってめっちゃありがたいのだ。金銭的にも、交換を探す手間的にも。
CDの抽選券なし
これはたま〜にやってるグループあるが、大体ないことのほうが多い。
他事務所はCDにサイン会などの抽選券を付けることでファンにたくさん買わせる手法をとっているところが多い。
そのため、全部のイベントに行きたいファンはCDをたくさん買う(積む)事になる。
しかしたくさん買っても当たる確率は上がるが当たる保証はないので、たくさん買って当たらなかった時の絶望感は大きい。
こういうことが続くと「推し疲れ」が起きやすくなる。
しかし旧ジャニーズはこれがないので、CDは欲しいものを欲しいだけ買えば良い。
全体的に安価
旧ジャニーズはFC料金もコンサートチケットもグッズも全体的に安価である。
今でこそ物価上昇で少し高くはなったものの、今でも9,000円台。
昔はペンライトも1,000円台でした。
K-POPアイドルは10,000円切ることはほぼない上にアップグレードとかあって結局20,000円ぐらいするので、それに比べたら全然安い。
元々ジャニー氏が「アイドルのグッズは若い子が買うものだから」と安めの価格設定にしていたとのこと。
それによって若いファンを取り込めるし、その若いファンがずっと旧ジャニーズのタレントを応援してくれるきっかけを作っていると思われます。
あとグッズが安価にできるのは、事務所の大きさ故に大量生産できコストカットできるという側面もありそう。
軽めのファンでも楽しめる
旧ジャニーズはK-POPアイドルに比べて、ライトなファンをしやすいジャンルと言えます。
まず日本語を喋ってるし、テレビ・YouTube・雑誌等手軽に手に入るコンテンツがたくさんあるからです。コンサートもFCに入って申し込むだけで手続きは簡単だし、グッズやCD/DVDも安価。
まず軽めのファンがいないとコアなファンにならないので「入りやすい」というコンテンツなのは大事だと思います。
何事も、新規が入りにくいコンテンツは発展しないのです。
音楽活動以外にも力を入れている
旧ジャニーズのタレントは音楽活動以外にもバラエティ・俳優・モデル・作家等々その人の得意分野を活かした分野に進出しています。
そのため、アイドル自体に興味がなかったような層にもアプローチをすることが可能です。
SnowManは旧ジャニーズタレントの中でもこの幅が広い方なのも売れたきっかけの一つでしょう。
また供給が豊富にあるというのは、ファンに飽きられないためにとても大事なことです。遠距離恋愛が続きにくいの同じで、目にする機会が少ないとファンは離れていってしまいます。
コンサートの席が完全ランダム
他事務所のアーティストには「アップグレード」や「SS席」などのお金を多く払うことでいい席をゲットすることができますが、旧ジャニーズのコンサートではそれがありません(一部舞台では席のランクあり)
他事務所のアイドルのコンサート行って、せっかくアップグレードしたのに、アップグレードの範囲が広すぎてお金積んだのに全然良席じゃないじゃん!ってことあります。
旧ジャニーズはそれがないため、全ての人にいい席(近い・通路横など)のチャンスがあります。
友達の付き添いで来たコンサートが思いの他良席で、メンバーを近くで見たらカッコ良すぎてファンになった!っていう人も。
今はデジタルチケットで入場するときにしか席がわからないのも、ドキドキ感あって楽しい。
コンサートの構成
旧ジャニーズのファンがみんな口を揃えて言うのが「コンサートがめっちゃ楽しい」ということでしょう。
旧ジャニーズはまずステージ構成がめちゃくちゃ凝っています。
松本潤さんがムービングステージを発案したというのは有名な話ですが、豊富な花道や上の方に行ける気球や奇抜な登場など色々な工夫がされています。
たとえ後ろの方の席でも一回は近くで見る機会があるし「どんな席のお客さんも置いてけぼりにしない」というスタンスがどのグループにもあるように感じます。
接触系・1対1イベントが少ない
K-POPアイドルにはヨントン:1対1でのビデオ通話、サイン会:対面でサインを書いてもらう間に1対1でおしゃべりする などのイベントがある。
こういった形式のイベントの特徴は「アイドルとファンが一定時間1対1で話せる」ということにあるのだが(1対1とはいっても近くにスタッフはいる)、
ファン的には推しと1対1で話せて嬉しいだろう。
だがこのイベントの問題点は、ファン側が「アイドルに認知してもらう」ことが目的になりがちであるということである。
本来「ファンがアイドルを見に行く」という構図だったはずが、「ファンがアイドルにアピールしに行く」という構図に変わってしまっている。
そしてこういったイベントを好むファンは承認欲求が強めな人が多いので、認知してもらえた(覚えてもらえた)り、嬉しい対応をしてもらえたらSNSに書き込み(レポ)、それがマウント合戦のようになってしまうのだ。
それによりファン同士の対立が生まれてしまったり、トラブルの元になる。
また、アイドル側からしても
・逐一臨機応変な対応を求められる
・ファンとの距離感をはかるのが難しい
・よくわからない要求をされる(1対1なのでスルーできない)
・やっていないことをレポされるリスクあり(盛った・嘘のレポを書かれる)
などのリスクが。
元々旧ジャニーズは昔ながらのアイドルのように「画面の向こうの人」というファンとの一定の距離感を大切にしているから(最近はSNS解禁でそれも微妙になっているが)、そのブランディングとリスク回避のために実施していないのだろうと思う。
ファンを辞めても他のグループに「降りる」
「ジャニヲタ」と呼ばれる人の中には、「好きになったアイドルが旧ジャニーズだった」というパターンと、「旧ジャニーズのタレントをずっと応援している」パターンがあります。
後者の場合、もし今応援しているグループのファンを辞めても、同じ事務所の別のグループに推しグループを変える人がいます。
その場合、別の後輩グループに乗り換える人が多いです(これを「降りる」と表現することがあります)
例えば、KAT-TUN→SixTONES、嵐→なにわ男子 など
まれに「推しが先輩の曲をカバーしてて、その曲を聞いたらその先輩グループのファンになった!」というパターンもある。
そのため、仮に1グループのファンを辞めても他のグループを応援してくれるので事務所全体の売り上げは下がらないのです。
これは
・事務所が大きく、様々なタレントがいる
・事務所のタレントがグループを超えて共演・交流があり、他グループのメンバーを知る機会が多い
などの理由がありそう。
ちなみにSnowManは嵐から降りた人が多いと言われています。
その理由は(下)で書きます。
事務所のノウハウと財力
今まで色々言ってきましたが、やっぱりこれが一番大きいです。
旧ジャニーズ事務所には長い歴史とたくさんの実績と財力があります。
デビューしたてでもある程度はテレビに出て宣伝させてもらえるし、メディアも注目してくれる。
まだ売れていない、デビューしたばかりのグループにもしっかりしたMVが作れるし、ちゃんとした衣装を用意してもらえる。
腕のあるプロデューサーがいて、いい楽曲を歌うことができる。
売り出すためのノウハウもある。
いくらアイドルたちがかっこよくて歌もダンスもうまくてトークできても、
ダサい歌と変なダンスじゃ売れないし、そもそもバラエティに出してもらえない。
アイドルにはそういった「土壌」が必要不可欠。
それについてはこの記事でも触れています↓
下編では、SnowManのヒットに現代の時代背景がどのように絡んでいたのか、という視点で考えていきます。
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