治験コーディネーターは"女の仕事"!?
こんにちは、治験のいぬです。
今日は、「治験コーディネーターは女の仕事」という言葉について考えてみたいと思います。お恥ずかしながら、僕の別部署の同僚から聞いた言葉です。
平成も終わり、令和になって5年以上過ぎて、今更何を言っているんだ…
と思うかもしれませんが、確かにまぁ、よく聞きます。
今でこそ看護師は男性も増えましたし、歓迎されることもありますが、
もともとは「看護婦さん」と呼ばれ、女性医師は看護師と勘違いされ…
という時代もありました。
単に「女性が多いから」という理由で、治験コーディネーターは女の仕事と言われるのであれば、それは誤りだと思います。
同僚はどのような意図があってこの言葉を言ったのかわからないし、
僕は明確な答えを持ち合わせていなかったから、
その場では適当にお茶を濁しました。穏健派なので。
僕はこの言葉に対してどう思っているかというと…
うーん…よく分からないな。
仕事を選ぶときに、性別を意識したことがなかったから。
治験コーディネーターに求められること
まずは「コンピテンシー」について考えてみよう。コンピテンシーとは、とある職業において備わっていることが期待されている (通常備わっている) 能力。
例えば、医師なら…ある程度のリーダーシップや医学的に正しい指示を出せること。
看護師なら…医師とのコミュニケーション能力や、容体変化を鋭敏に検知する観察眼。正しい処置や看護技術。
リハビリテーション職なら…患者さんの病態評価や治療手技に精通していること。
このように、ある役割には期待される能力や技術があるはず。ここでは、コンピテンシーを狭義にとらえ、能力と想定しよう。
【コンピテンシーリスト】(仮・多分これ以外にもある)
・倫理観。患者さんを保護するために、研究を優先せず、患者さんを守るために必要。
・丁寧さや細かさ。医師の作成する文書を丁寧に精査すること。治験の文書に、誤字や脱字があってはいけない。
・人のよさ (コミュニケーション) 。愛嬌があって、人にお願い事をするのが得意なことも必要。
・新しいものを覚える。常に新しい試験を立ち上げ・担当するので、治験実施計画書と呼ばれる"ルールブック"を勉強し続ける必要がある。
こんなところかな。最近は医療資格保有者ばかりではないので、
医学知識とか各職種の業務範囲、医療制度のしくみとか、
知識面については入社してから身に着けていくことだけど、
これらも、もしかしたら医療機関側の人からしたら
「チケンさん※が知ってること」=コンピテンシーになるかもしれない。
※ 医療機関外・民間企業であるSMOからやってくる治験コーディネーターのことを呼称するとき、「チケンさん」と呼ばれることがある。
治験コーディネーターのコンピテンシーが最大化される性質は
ここまでコンピテンシーについて考えてみたけど、女性でも「どんぶり勘定」な人はいると思うし、だからといって治験コーディネーターに向いていないとは思わないし、男性でも精査が得意な人は得意だろうし、女性でも人に愛想を振りまいて (そこまでじゃなくても) お願い事をするのが苦手な人もいると思う。
それであれば、個人が持つ性質に依存するのだろうか。
人なつっこいこと?小さいことにイライラしないことが当てはまるかもしれない。男性はすぐカッとなる人がいるから不向き?
女性は気分に浮き沈みがある人がいるから不向き?この筋も、違うと思う…。
丁寧に人と関わったり、人と話すのが好きな人もコンピテンシーが最大化しやすそうな気がする。でも、女性が全員人と話すのが好きというわけではないし、得意じゃない人もいる…。
とはいえ、男性が向かない領域は、確実に存在する
能力だけを考えれば、性差も特性もあまり関係ない気がするけど、
男性治験コーディネーターが介入しづらい領域がいくつか存在する。
会社の方針にもよるけど、産婦人科や皮膚科、乳がん試験など。
産婦人科は女性に特有の疾患を扱うから。皮膚科は治療効果判定のためのデータを得るため、皮膚の写真やメディアを治験コーディネーターが撮ったりするけど…診察の際に服を脱いだり、まくりあげたりすることがあるから。
僕らはもちろんそういうことは一切考えていないけど、
医療機関の人や、一般生活者の患者さんがどう思うか…を考えると、やはりNG。
そう考えると、「NG科」があるかもしれない男性コーディネーターより、
女性コーディネーターのほうが、働ける幅は広いかもしれない。
出世しづらい
…これだ。いろいろ書いていて、治験コーディネーターは女の仕事だと言われる理由、なんとなくこれなんじゃないかなと思った。
僕は幸いなことに、仕事ぶりをご評価いただけて、トップではないけれど部下もいて、
マネージメントにも挑戦しているけれど、周りには女性上司の同僚が圧倒的に多い。
「お給料が低いから」という理由で、「ワークライフバランスが…」という理由で、リタイアしていった男性もたくさん見てきた。
外資・内資にもよるけど、女性は産休も含むと在籍年数が増えやすい。
このあたり、評価項目にはないけど、「心情」には影響する気がする。
(僕よりもっと上の人たちの心情。)
多くの男性は結婚し、お子さんができても仕事をする。
お子さんができて、大きなお金が必要になっているときに、
平社員で過ごすのは、しんどいかもしれない。
その点、治験コーディネーターは入れ替わりが激しいし、
「腰掛け」にもしやすい。
女性はどうしても夫婦の関係でお子さんが望まれるとき、
出産を必ず担う必要があるから、「腰掛け」の仕事と相性がいい。
「腰掛け」の人が多い仕事だから、産休や育休後に戻ってきやすいし、戻ってくる余地もある。
…よく想像できたな。
僕はそういう一般的な道からは外れているし、興味もないんだけど。
結局、稼げる仕事が男性にとっていちばん?
冒頭で聞いた、「治験コーディネーターは女の仕事」という彼の言葉には、多少なりともこの意味合いが入っている気がする。
それぞれの生き方・ライフスタイル・選択・果ては両親とのかかわりによって異なるし、すべてが許容されるべきだけど、古典的な考え方でいえば、
「治験コーディネーターは女の仕事」かもしれない。
自分の男性的な部分 (そもそもあるかどうかも怪しい) が、仕事に役立ったと実感したことはない。
また、男性であることによって女性に劣っていると感じたこともない。
結局のところ、彼には治験コーディネーターという仕事が合わなかった部分が多々あり、だから部署移動して仕事しているのかなと思う。
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