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キャッキャウフフしてみたい

みんなには、推しはいるだろうか。最近よく耳にする言葉だが、殆どテレビも見ず、好きな俳優もいない私には無縁な言葉だと思っていた。周りが推しがどうとか言っているのを見ると、楽しそうだなと思うくらいだった。ただ、推しを見てキャッキャウフフしたりする気持ちはどんなものなのだろうと思っていた。そもそも、推しって何だろう。ただの"好き"とは違いはあるのかと思い、調べてみた。


推し(おし)
他の人にすすめること。また俗に、人にすすめたいほど気に入っている人や物。「―の主演ドラマ」
[補説]アイドルグループの中で最も応援しているメンバーを意味する語「推しメン」が流行したことから、多く、アイドルや俳優などについていう。
            -デジタル大辞泉より-

この定義からすると、私の推しは村上春樹や谷崎潤一郎と言うことになるのかも知れない。でも彼らは俳優やアイドルではないし、別にキャッキャウフフはしないけど、人にすすめたいほど気に入っているので、推しと呼んでも差し支えないのではないだろうか。でも私は、彼ら本人をというよりは作品が好きなので、この場合は作品が推し、ということで良いのだろうか。でも、何となくしっくりこない。


そんな私の娘、小2。SexyZoneの中島健人さんが大好きである。元々、私の妹が同グループの人を推していて、娘が1歳くらいの頃から、BSでやっていたジャニーズの番組を一緒に見ていた。まぁ1歳だから、誰が好きかとかはなかったと思う。曲調が明るかったり、何だかキラキラして楽しかったんだろう、それをかけていると機嫌が良かった。娘が3歳になった時に妹は家を出たのだが、曲に合わせてよちよち踊る娘が可愛くて、時々映像を流したりしていた。



どの人が好きとかあるのかなと思って聞いてみたら「ケンティー」と答えた。何度聞いても「ケンティー」と答える。それを妹に報告すると、お土産にうちわをくれた。とても喜んで、それを持って家中を歩いていた。曲を流せば、どれがケンティーの声か聞き分けていたし、DVDをつければ、ケンティーとハイタッチしたくて、彼の手を追いかけていた。

今でも、うちわを見て「うふふ、ケンティー」と言ったり、彼が表紙を飾り、特集が組まれていた数年前のホットペッパーや、私の妹からもらったファンクラブ会報を眺めていたりする。


彼のどこが好きなのか聞けば「ケンティーのことを考えると恥ずかしい気持ちになるから分からない」と言うし、去年の結成10周年記念品のプリザーブドフラワーのバラを受け取った時は「ケンティーからバラが届いた」と感激して涙ぐみ、机に飾っていた。
だから、娘はどこが好きとかではなく、中島健人さんそのものが、本当に大好きなんだろう。

そして、今年の夏に開催されるコンサートのチケットを、妹が取ってくれた。感染対策もされているし、着席ブロックなら大丈夫では?と、誘ってくれたのだ。「今度ケンティーに会えるよ」と娘に伝えると、余程嬉しかったようで、その場に座り込んでしまい、暫く動かなかった。感激で人が動けなくなるところを、私が初めて見た瞬間だった。


私は仕事をしているので、娘は放課後に児童館へ行っている。宿題をそこでやってくる約束をしているが、子どもなので度々忘れてくる。その度に私に叱られて「ママの鬼ー!こわいー!」と泣いていたのだが、そんなの当たり前だろう。だって約束を守らないのだから。ただ、私は宿題をやらないことに対して叱っているのではなく、約束を守らないことに対して叱っているのだ。なので「約束を守れないと、コンサートに連れて行く約束をすることは出来ない」と話した。


それから1ヶ月弱。正直、1度くらいは忘れるかなと思っていたが、今のところ宿題を忘れたことはない。それどころか、ドリルも進んでやるし、お手伝いも今まで以上にするようになった。「出来るなら、最初からやった方が良かったのでは」と思った。でも小2なら遊びの誘惑に負けても仕方がないよね。


娘を見ていると、推しがいることの励みと、そこから生まれるパワー、そして推しへの気持ちとは何かを体現しているように感じる。何より、キャッキャウフフしている娘は正に乙女という感じで、とても可愛らしい。今度、ケンティーに会う時に着ていく、青いワンピース(青は中島健人さんのメンバーカラーらしい)が欲しいそうだ。これを乙女と言わずして、何と言えばよいのか。

もし、私にそういう推しが出来たとしても同じように推せる自信はない。そう考えると、推しがいる人って本当にすごいなぁと思う。私も、その世界を知ってみたい、キャッキャウフフしてみたいと少しだけ思った。ただ、職場の人曰く"推しは出会うもの"らしいので、私がキャッキャウフフする日が来るかも知れない。来ないかも知れない。でも、来ないならそれでいいかとも思う。楽しいことは他にもあるので、それでオーケーである。



何にせよ、あれ程言っても忘れていた宿題をちゃんとやってくるようになったので、中島健人さんには感謝の気持ちしかない。セクシーサンキュー。



※最後に、私の推し・村上春樹の本を紹介しておく。猫について書かれた本。優しい絵と文が沁みてくる。短いので読みやすく、子どもへの読み聞かせにも◎推せる。

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