遺棄ていますか ~デス電所のこと~

 デス電所の「すこやかに遺棄る」を観てきた。

 デス電所はもともと関西の劇団で、結成は多分もう17年以上前だ。そんな前か、吐きそうである。いわゆる小劇団というもので、大阪に居るときはよく見に行っていた。芸術創造館とか、精華小劇場とか、ウイングフィールドとか、HEPホールとかだ。懐かしい、吐きそうだ。まだOMSだってあった。OMSはいい建物だったなあ。わたしはあそこが好きだったんだ。通う前になくなってしまった。

 性格などは特に今となにも変っていないが、今よりギンギラギンにクソサブカル、アングラに憧れていた幼かりし私は諸事情で彼らのチラシを手に入れ、芝居と思えぬあまりのかっこよさに昏倒(バンドのチラシよりカッコよかった)できる範疇でなるべく見に行っていた。
 チラシは「屍キングダム」で観にいけたのは「仔犬、大怪我」からです。解る人間にはガチ勢だと伝わったとおもう。わからなかったらインディーズのシングル三枚目からです、くらいの受け取り方をして欲しい。

 芝居そのものもしびれるようなドライなテイスト、都市伝説じみた奇妙な遊び心ある脚本がとてもよく。さらに特筆すべきこととしては小劇団には珍しく座付きの作曲家がいて、芝居を一つするたびにサントラを一枚発行。歌詞つきの曲が絶対一曲はあるというめずらしくかつ贅沢なスタイルだった。詩は脚本演出の竹内氏、曲は和田氏というのは本当に黄金コンビで私は実は今でもしょっちゅう彼らの歌を口ずさんでいるのだが、なんでも永遠には続かないもので2012年の「神様のいないシフト」で解散ということになった。

 そんなデス電所が復活をするという。

 正直、最初はビビった。

 若い頃好きだったものが年齢を経てからみると輝きを失って見えるなんてありふれた話で、しかも最後のほうの話好きだった?っていうとチケット代の価値はあったけど学生の頃ドドドはまりしたのと比べると比べちゃうよなあだったし、さらに残念ながら和田氏は居ないとのことである。オリジナルソング無いのか……。となった。

 仕方ない、和田俊輔氏は今や超売れっ子。あんな劇伴書ける人間ほかにいないもんな。去年のお仕事一覧を見るだけで、ミュージカルハイキュー、黒執事、NARUTO、磯部磯兵衛、ダイヤのA。完全に2.5次元にひっぱりだこである。わかる。わかるよ。いい曲だよね。っていうかそんな人が座付きだったの超贅沢じゃない? うちにサントラあるよ、みんな聞きに来て欲しい、いいから。

 と言うわけで完全に腰が引けた状態で、ただし複数回は見るのでフリーパスを購入し、だが友達を誘うのは観るまでわからん、と恐る恐る行ったのであるが。

★杞★憂★で★し★た★

 まさかの大勝利である。観劇中ニヤニヤがとまらなかった。まず配られたエチケット袋(ちいさいレジ袋)に、そういう仕込みするよね~、と大興奮。

 テンポのいい台詞の応酬にヘラヘラ笑っているうちに恐ろしいものを油で揚げて食わされるような、油で揚げてあるからおいしいねところで中身何?これ?えっ?何の肉??状態の。状態の芝居~~~~~~!!!!!!!最高~~~~~!!!!!!!!!!!!!! 2017年ベストオブ即落ちダブルピースをかます羽目になった。

 出演は5人、場所は下北沢OFF・OFFシアター、セットも荒れたマンションを思わせるシンプルなもの。だがすべてがかみ合っていて最★高

 あらすじとしては金に困っている男が知り合いの芸能人(と、年賀状に書いていた)に借りに行くがもちろん彼とて儲かっているわけではなくせいぜいバックダンサーとして日々糊口をしのいでいる暮らし。もうどうしようもなくなった男が自殺をする寸前で割りのいい仕事が見つかるがそれはマンションに置かれた謎の遺体を遺棄するという仕事だった。という導入。ここがもうスムーズに畳み掛けてくるので最高。

 あとキャラがいい。舞台写真を見てくれ。https://desco666.tumblr.com/

 メインテーマとしてタイトルにもなっている遺棄。世の中から、親から、家族から捨てられた人間、というのがあって、登場人物はみな多かれ少なかれその側面を持っている。しかし彼らはそれでもなんとか生きている、生者として世の中に引っかかっている、そこに完全に捨てられたもの、としてネグレクトされた子供、という存在が絡んでくる。
 見終わるころには手の中のレジ袋がエチケット袋から完全に変質しているという寸法である。

 話の中に「呪い」という言葉が出てくるが、こんなにも、悲しい呪いがあるのかと思った。

再演とかあるかもしれないからこの位にしておくけど、次、デス電所の公演あったら知り合い全員連れて行くからな~。スケジュールあけといてね!!

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