恋をしにいく ~ストリップ探訪記~

 ストリップを見てきた。

 いきなり何をと思われるかもしれないがあのストリップである。服を脱ぐやつだ。もともと私の周りには何人かストリップを愛好している人間が居て、大阪に住んでいるときも友達に連れて行ってもらったことはある。そのときも、キラキラとしてなかなかいいものだと思ったが、今回改めて東京で見てとてもよかったのでそのことを書こうと思う。

 なかなか一人で始めての箱に行くのはライブでもクラブでもハードルがある。いわんやストリップをや、と言うことで、友達が誘ってくれたので行くことになった。渋谷にある道頓堀劇場である。中はこじんまりとしているがとても綺麗で、へたな小劇場よりよっぽど設備も整っている。女子トイレもあるし、空調も効いている。客席には男性が殆どだが、我々以外の女性もちらほらと見られるし、少し申し訳ないのだが皆さん気を使ってくださるので嫌な思いなどとくにすることも無い。

 ストリップというと、どうも皆アングラでいやらしいものだというイメージを持っているようだが、実際に見てみるとそんなことを思う暇は正直無い。基本構成は大体20分くらいの区切りで、ダンサーが一人出てきて、しっかりとした着衣、露出度がすこし増えたかたちに早変わり(舞台の上で着替えたり、袖で着替えてきたり、演目によって違う)そしてヌードという流れだ。曲が2~5曲ほど使われ、それにあわせて転換していく。その後写真を一緒に取れる時間などがあって、次のダンサーへ、という感じなので、正直裸でいる時間は全部合計してもたぶん一日の公演時間の4分の1か5分の1くらいだと思う。

 しかし、劇場に居る人はみなヌードを見に来ているのだろう、それが目的だろう、と思うかもしれないが、今回、私は客席で結構な長い時間見て、思った。

 最初ダンサーが服を着て出てくる、ドレスだったり、パイロットの格好だったり、メイドさんだったり、和服だったりする。しっかり着込んでいて、露出はむしろ少ない。その格好でかっこよかったりチャーミングにダンスをするのを目の前で見てしまうと、わかるのだ、好きになってしまうのだ。曲が変わって、するすると衣装がその肌の上をすべり、やわらかなガウンみたいな光で透けるドレスを羽織りなおして、こちらを向いて、その生地がターンにあわせてふわっと翻ると、昼の光の中で楽しく微笑んでいた女の子が、夜の灯火の下で、曖昧に笑うのが、どうしたってセクシーで、また好きになる。そしてその薄い布も落ちて、魅せるために鍛えた身体が、クラシカルなゼラの色みたいな、ぼわっとしたラベンダーの照明に照らされて、後ろからは鋭いエメラルド色の光が輪郭を描き出すとき、焦がれた人にやっと触れたみたいな、恋が成就したような思いを味わうことができる。言い知れない感情が胸の奥を震わせて、頭の芯がしびれた気持ちでステージの上の肉体に拍手をすることしかできなくさせる。つよい酒を飲んで麻痺したみたいな、人工的な恋の快楽がある。

 今回私が誘ってもらって観たステージはダンサーが6人。順番に登場して4ないしは5順の舞台をこなすというもので、その中の非常に感動した演目に「班女」をモチーフにしたものがあって、それをやってらっしゃた方は芸名を水鳥藍(これで「みどり あい」と読ませる)さんとおっしゃる方で、もう一種出していたナース服の演目も、昔のテレビ番組バミリオンプレジャーナイトを思わせるとてもかっこいい仕上がりで、とたんに好きになってしまったのだけど、別の日にエアリアルを使って映画をテーマにしたものを演じられるということで、どうしても観たくなって劇場に通うことになってしまった。

 エアリアルというのは、最近は舞台演出でも一般的になってきたから知っているひとも多いかもしれないが、舞台の上から吊るした布(シルク)や、フラフープに使うような輪(フープ)を使ってやる空中演目のことで、サーカスなどでもよく行われる。(エアリアル・トラピスといえば空中ブランコのことだ)動くものを使ってやるポールダンスがイメージに近いかもしれない。

 私がはじめてそれを見たのも、サーカスの舞台で、お話仕立てのものだった。死んでしまった男の走馬灯のなかで、かつての妻達がランジェリー姿で輪から輪へ艶めかしく渡って行くものだった。

 鍛えられた身体を使って、さも重力を無視したように、輪の中で美しくポーズを決めるエアリアルを、ストリップと組み合わせるなんてもう最高の最高の最高でしかない。

 実際に見ると、本当に最高だった。

 前述のダンスシーンは、かわいらしくもボリュームのあるドレス。映画の冒頭のイメージで未来への希望をたのしくぶち上げる。続いて、ミニの赤いスパンコールのドレスで、気の合う男とステップを踏んでみせる。もちろん、一人でやっているのだが紳士の帽子を使ってそこに彼氏を出現させてみせる。舞台の上では、どんな嘘も有りだ。踊りの手の振り方やステップは説得力になってなんだって出てくる。

 お話はどんどん進んでいく、とってもハッピーだったけど行き違いが起こって、彼氏とはさよなら。手で顔を覆うだけで涙、涙だ。

 さあ、話は変る。きみは何がしたい? ほんとうに好きだったもの、憧れ。映画、お芝居、ダンス。舞台袖から、大きな輪を持ってセクシーなランジェリー姿で登場する。伸びた背筋、もう悩みなど何一つ無く。エアリアル・フープだ。私が一番大好きな。マン・イン・ザ・ムーン。月の中の女の子。

 照明が輝き、きれいな足が輪に絡む。頭の奥の裏がしびれて、あの子以外のことが脳みそから出払ってしまう。美しい、と思う。夢のときは短い、音楽はいつしか消えて、拍手をする手は痛いほどだ。照明は落ち、そして次の演者の次の夢が、恋が始まる。

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ストリップめっちゃよかったし水鳥藍さんの演目は私の友達には全員見てほしいのであわあわさんの初心者向けストリップ入門を貼っておきます。まじいいので全員いこうぜ。6月にも池袋で見れるらしいので多分、行きます……。はまっている。こわい。

http://merryberrymerry.hatenablog.com/entry/2017/04/07/120407

あわあわさんが推してらっしゃる石原さゆみさんの舞台もとても素敵でした。ヒッチハイクがテーマの演目、架空の夏の思い出が捏造されそうでやばかった。6/1〜6/10で渋谷でラストだそうです。

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