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他人と距離を置く具体的な方法
50代に入って、どんどんと他人と距離を置き、人間関係をそぎ落とす事を実践してきました。
私は40代後半でサラリーマンを辞め、ひとり社長という自営業の道を選びました。独立して最初の頃は、正直心細さもあり、人脈を広げようと無理していた時期もありましたが、ある仕事関係者とのごたごたをきっかけに「しがらんでいる」のが面倒くさくなりました。
組織に属していた時の人間関係も面倒でしたが、自営業になってみると、思いの他、胡散臭い人間が寄ってきて、別の意味で面倒になりました。
私のような小規模事業者を利用したところで旨味は無いのは分かりそうなものですが、世の中そう単純には出来ていないようです。
色々と振り回された結果、
「ひとり社長なんて、どこまでいっても孤独だし、結局は自分しか頼れない。それなら、もう他人にイイ顔するのは止めよう」
と、開き直りました。
面倒な人との関係はもちろんのこと、無害だけどなんとなくつながっていたような人間関係も、整理しました。
人間関係を維持するというのは、とてもコストがかかります。
SNSやLINEだけでつながっているような間柄でも、いいねボタンを押したり、儀礼的な返信を送るだけで結構な手間と時間がかかります。
私は自営業になって安定は失いましたが、引換えに自分でコントロールできる時間を得ることができました。その貴重な時間を無駄なコストに費やしたくはないと考えるようになりました。
そこで、少しやり過ぎかなと思いつつも、思い切って人間関係を整理しました。
以下は私が人間関係を整理していった際に、具体的に行った手法です。
1.面倒な人から面倒な相談をされたら一言で返す
こちらが望んでいないのに、面倒な人と距離が縮まってしまう事があります。特に、相手が必要以上に仕事やプライベートを開示して込み入った相談事を持ちかけてきたような場合に、不用意に親身になってしまうと、深みにはまってしまいます。
私は試行錯誤した結果、次の一言で済ますようにしました。
「上手くいくといいですね」
下手にアドバイスなどはせず、なるべくこの言葉で済ますようにすると、相手としてはそれ以上込み入った相談をしにくくなります。
実態としては相手を突き放しているのですが、一応は貴方の成功を祈っていますよ、でも私はこれ以上は踏み込みませんよ、という意思の表明となります。
2.SNSに近づかない
元々興味はありませんでしたが、流行り始めの頃に少しだけ触ったFacebookやX(旧Twitter)等のアカウントは停止しました。
面倒な人やどうでもよい人の日常生活や、意見なのか愚痴なのか分からない報告が目に入らないようにすると、心身ともにすっきりとし雑念に捕らわれにくくなりました。
特にXは、粗雑であまり美しくない短文で溢れていますので、要注意です。
私はたまに地震の情報とかわいい動物の投稿を眺める程度で、決して自分から発信しないように気を付けています。
余談ですが、昨年、マルクス・ガブリエルさんというドイツの著名な哲学者の講演を聴く機会がありました。
彼は「10年以内にSNSは消える」と断言しています。
3.LINEの交換には慎重になる
相手の事をよく理解できていない段階でLINEを交換するのは考えものです。
確かにLINEは便利なツールですが、使い手によってはかなり無遠慮に連絡してきたりします。LINEは中年以上の高齢者にも多く利用されていますが、これらの方々はもともと電話でのコミュニケーションに馴染んでいる層でもあり、無遠慮にこちらの時間に割り込んでくるケースがありますので、要注意です。
仕事上で知り合った相手であっても、いきなりLINEを交換する事は避け、まずは名刺に印刷してあるようなオフィシャルなメールアドレスのみを教える等、慎重を期しました。
このように列記すると、ずいぶんと冷たい印象を持たれる方もおられるかと思います。
しかし、50代以上の方は同意していただけると思うのですが、私達が幼少期を過ごした昭和の時代は、人間関係は今よりもずっと狭い範囲で形成されていました。夕方になると、お母さん達は近所の家々の門前に集まっておしゃべりし、お父さん達は安酒場にぎゅうぎゅう詰めになってわいわいとやっていました。
実用性のある情報や知識を得るためには、人間関係を介して取得するより他にほとんど方法が無かった時代でした。人間関係がコストと見なされるような事はあまり無く、むしろ実利の多いものとして重視されていました。
ところが今や、人間関係を介さなくても大抵の情報や知識が入手できる時代となりました。
同時に、デジタルによる「拡張現実」が歯止めなく拡張し続けていて、うっかりすると人間関係も際限なく広がり続けて、コストも膨れ上がるという状況にあります。
現代は、人間関係がいつの間にか高コスト体質になっている事に自覚が無く、イライラばかりが増大している人々で溢れています。
その状況に巻き込まれないで穏やかに過ごすには、しっかりと他人と距離を取って過剰に自衛するくらいがちょうど良い、と私は思います。