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【イントランス】タイの観光戦略
こんにちは、株式会社イントランスのIR担当でございます。
これまで「観光・インバウンド業界の情報」として、いくつかの国の特筆すべき観光戦略について記事をあげてきましたが、本日はアジアで最も観光客の多い「タイの観光戦略」についてお伝えしたいと思います。
最近は通常の観光だけではなく、デジタルノマドからも高い評価を受けているその魅力についても検証していきましょう。
目次
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1.タイはアジアNo.1の観光大国
タイは観光地としてアジアで最も人気のある地域であることは多くの方がご存じだと思いますが、まずはアジアの観光客ランキングを見ていきましょう。
アジアで外国人観光客が多い国のトップ10(2023年)は以下の通りです。
1.タイ: 約2,815万人の国際観光客を受け入れていて、アジアで最も人気のある観光地です。
2.中国: パンデミック前はアジアトップでしたが、2023年以降、首位をタイに譲りました。
3.日本: 2019年には3,188万人の外国人観光客を受け入れ、アジアでの重要な観光地です。
4.マレーシア: 多様な文化と自然が魅力で、観光客数は年々増加しています。
5.インドネシア: バリ島などの観光地が人気で、多くの外国人観光客を引き付けています。
6.韓国: ソウルを中心に観光地が多く、特にアジア圏からの観光客が多いです。
7.フィリピン: 美しいビーチや自然が魅力で、観光客数が増加しています。
8.シンガポール: 都市型観光が人気で、特にビジネス旅行者が多いです。
9.ベトナム: 近年観光客が急増しており、特にハノイやホーチミン市が人気です。
10.インド: 歴史的な観光地が多く、外国人観光客を引き付けています。
このランキングを見てみると、いずれもなじみのある国であり、特に驚きは感じませんね。
意外感をあげるとするならば、日本人から圧倒的に人気観光地である台湾がランキングに入っていないことくらいでしょうか。
また、こうして見てみると、国土の大きさとランキングはあまり関係がないようにも思えます。
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2.タイの基本情報
タイの正式な国名は「タイ王国」で首都はバンコクです。人口は約6,600万人であり、タイ族、中華系が多く、その他、モーン・クメール系やマレー系、ラオス系、インド系と多様な民族で構成されています。
国土面積は日本の1.4倍であり、非常に特徴的な形をした国です。
観光地は、首都バンコク、中心部(バンコク近郊)、東北部、南部と全国に分散しています。
主にはバンコクの他、チェンマイ、スコータイ、アユタヤ、プーケット、パタヤ、サムイ島など、日本人も多く訪れる観光地が多数あります。
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3.タイの魅力とは?
アジアからだけではなく、欧米など世界中から観光客が訪れる観光地であるタイですが、一般的に言われるその魅力について見ていきましょう。
1.豊かな文化遺産が魅力
タイは、古都アユタヤやスコータイ歴史公園など、ユネスコ世界遺産に登録された文化遺産が多数存在し、
仏教寺院は約3万あり、歴史的な建造物や仏教文化を体験できます。
2.多様な自然が魅力
ドンパヤーイェン-カオヤイ森林地帯や、トゥンヤイ・ファイカケン野生生物保護区群など、豊かな自然遺産
が多くあります。
3.独特の食文化が魅力
タイ料理は、「甘い・辛い・酸っぱい・塩辛い」が融合した独特のスタイルを持ち、世界的に人気がありま
す。日本でもタイ料理は人気ですが、他の東南アジアとも異なる味わいの料理が魅力です。
4.多様な民族と文化が魅力
タイでは、タイ族、中華系、マレー系など様々な民族が共存し、多様な文化体験ができます。
また、山岳民族の独自の文化や伝統を見ることができ、外国人からも魅力のツアーとなっています。
5.ナイトライフが魅力
訪れたこのある方ならよくご存じだと思いますが、都会中心に夜間の観光やショッピング、エンターテイメン
トが非常に充実しています。
6.体験型観光が魅力
料理教室やムエタイ体験など、タイの文化を深く学べる体験プログラムが豊富です。タイでは地方の料理文化
や地産食材を積極的に紹介するツアーも多くあります。
7.おもてなしの心が魅力
タイは、「微笑みの国」と呼ばれるおもてなしの精神が観光客を魅了しているようです。
日本もおもてなしで有名ですが、見習う部分も多いかと思います。
こうしてタイの魅力を見てみると、普段の生活では味わえない異文化の「文化遺産」「自然」「食事」「ナイトライフ」「体験型観光」あたりがポイントかもしれません。
また、このようにタイの魅力を並べてみると、日本も同様の魅力はあるのではないかとも感じます。
それでは、日本とタイの観光戦略においてどこらへんが違うのかという観点で見ていきたいと思います。
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4.タイの観光戦略
観光地としての魅力では、日本も同じような要素を十分有していると思われます。
それでは日本とタイの観光地としての魅力の違いは何なのでしょうか。
これらを理解するためには、タイの観光戦略を見ていく必要性があるでしょう。
(1)タイの観光戦略の特徴
ここからタイの観光戦略について見ていきたいと思います。
タイの観光戦略が他国と比較し、特に優れていると言われる点について列記していきます。
1.地方分散型の観光推進
タイでは、国内全土を5つの地方ごとに異なるテーマを設定し、それぞれの地域の魅力をアピールする戦略を
採用しています。
(※タイの地域区分には、何通りかの分け方があります。)
これにより、観光客を主要都市だけでなく地方にも分散させ、多様な体験を観光客へ提供しています。
2.経験重視の観光推進
タイでは、商品よりも経験を観光客に提供することを重視しています。
これは現代の観光トレンドにも合致しており、より深い文化体験や思い出に残る体験を求める観光客のニーズ
に応えることができます。
3.フード観光の強化
タイは、地方の料理文化や地産食材を積極的に紹介し、フード観光ルートを開発しています。
これによって、タイ料理の地域多様性への認知度を高め、観光客の消費増加と滞在時間の延長を促進していま
す。
4.持続可能な観光の推進
タイでは、経済、社会、文化、環境すべての面で調和した官民連携を強化しており、持続可能で責任ある観光
を目指しています。
また、2050年のカーボンニュートラル目標達成も視野に入れた環境に配慮した観光を推進しています。
5.柔軟な戦略転換
タイでは、コロナ禍を観光産業が世界の変化に対応するための機会と捉え、従来の課題(成長の偏り、持続可
能性・一体性の欠如、質より量など)を克服し、より質の高い観光の実現に向けて戦略を転換しています。
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(2)タイのデジタルノマド戦略の特徴
上記で「柔軟な戦略転換」について記述しましたが、タイではデジタルノマドの普及にいち早く対応していったことも特筆すべき点であると考えています。
特にタイのチェンマイは、「ノマドワーカーにとっての聖地」とも言われているほどであり、これは過ごしやすい環境、美しい自然、豊かな文化、おいしくて安い食事、そして快適で多様なライフスタイルであるからと言われています。
また、タイ政府も積極的なデジタルノマド戦略を展開しているのですが、その特徴をまとめてみます。
1.ビザ制度の柔軟化
・タイのデジタルノマドビザは、最長5年間であり、他国と比較して長期滞在が可能です。
・また、LTRビザ(Long Term Residents Visa/長期居住者ビザ)があり、こちらは最長で10年間の滞在が可
能となります。
(外国人の富裕層や高度な技術者及び人材をタイ国内に取り込み、消費と投資を促進する目的で2022年9月
より導入された新しいビザ)
・年収80,000 USD以上という要件で設定していて、高所得のデジタルノマドを優先的に誘致しています。
(現在は緩和されていると思います。)
2.インフラ整備
・高速インターネットの普及を推進し、デジタルノマドの仕事環境を整備しています。
・コワーキングスペースの増加を支援し、快適な作業環境を提供しています。
3.地方分散型の観光推進
・バンコクだけでなく、チェンマイやプーケットなど、他の有名観光地域でもデジタルノマド向けの環境整備
を進めています。
・上記により、オーバーツーリズムの問題を緩和し、地方経済の活性化も図っています。
4.多様な体験の提供
・文化体験や料理教室など、長期滞在者向けのコンテンツを充実させています。
・これにより、デジタルノマドの滞在期間延長と消費額増加を促進しています。
5.生活コストの低さをアピール
・物価の安さ、特に食事や宿泊費の手頃さを強調し、長期滞在の魅力を高めています。
6.外国人に優しい環境の整備
・観光産業の発達を活かし、外国人向けのサービスを充実させています。
・英語対応の改善など、言語面でのサポートを強化しています。
このように、タイのデジタルノマド戦略の特徴は、高所得者層を狙いつつ、他国と比較して長期滞在が可能であることだと思います。
これだけ長期のビザ制度であると、タイの有名観光地を気ままに転々としながら長らく生活できるので、ノマドワーカーにとって非常に魅力的な場所となっているようです。
また、長期滞在する上では生活コストが安いことは重要であるため、世界のノマド人気地と比較しても競争力は極めて高いとも言えるでしょう。
その他、外国人観光客が暮らしやすいような環境整備を全国的に展開している点も魅力なのかもしれません。
これに比較して、日本ではデジタルノマドビザの期間は6ヶ月で更新はできない制度であることから、少し長めの観光ビザ程度であり、全国をゆったりと周って長期滞在したいというノマドワーカーからすると、日本の制度は少々窮屈に感じてしまうかもしれません。
また、日本ではまだまだ「東京、大阪、京都のゴールデンルート」以外の地方都市が多くの海外観光客から知られていないという弱点もあり、タイと比較すると制度の魅力が限定的に感じてしまいます。
ぜひ、日本も今後は高い収入要件は維持しつつも、富裕層のノマドワーカーが長期滞在できるような環境を整備して、多くのノマドワーカーを取り込んだ上で、地方都市までその経済的恩恵が受けられるようにしていただきたいと思います。
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(3)タイの観光戦略から学べること
ここまでタイの観光戦略について見てきましたが、これらの戦略によってタイは観光客の多様なニーズに応えつつ、持続可能で質の高い観光を実現しようとしている点が他国と比較して優れていると見えます。
全体の観光戦略を見ていると、ごくごく当たり前のことをやっているのだろうとも感じますが、個々の戦略で見ると日本はまだ不十分なものもありそうです。
たとえば、日本も官民連携で「地方分散型の観光推進」をすすめているようですが、日本国内では外国人観光客は「東京、大阪、京都のゴールデンルート」への観光が圧倒的に多く、その他の地域でも奈良、北海道、博多、広島、富士山、高山など限られた地域に限定されています。
タイのように、都会もリゾートも古代王朝も山奥も観光客が訪れるという環境を作りだすためには、やはり地方都市、地域の魅力を海外観光客へ発信していくこと、そして地域ごとの魅力をブランディング化していくことが重要だと言えるでしょう。
そのため、今後の各地方の自治体やDMO(地域作り法人)による積極的なPR、ブランディング化の推進に期待していきたいと思います。
次に「経験重視の観光推進」ですが、タイでは「料理体験教室への参加」、「仏教寺院での瞑想体験」、「隊舞踊やムエタイなどの伝統芸能のレッスン」、「マングローブでのカヤック体験」、そして「稲作などの収穫体験」など、多岐にわたる体験ツアーがあるようです。
これについては、日本でも「料理ツアー」、「お抹茶や着物体験」、そして「寺院での瞑想体験」など多くのツアーがありますが、やはり「ゴールデンルート」の地域周辺での展開に終始していることもあり、この流れを地方都市へ分散していくことが重要そうです。
「フード観光の強化」についても同じことが言えます。
そして、タイと日本の観光戦略での大きな差は、「持続可能な観光の推進」と「柔軟な戦略転換」にあるのかなと感じています。
まず、「持続可能な観光の推進」とは漠然とした言葉でわかりにくいのですが、タイのこの施策は、環境、文化、経済の持続可能性を考慮しながら観光産業を発展させる取り組みです。
具体的には以下のような施策が含まれています。
1.地方分散型の観光推進
・観光客を主要都市だけでなく地方にも分散させ、各地域の特色を活かした観光開発を行っています。
・5つの地方ごとに異なるテーマを設定し、それぞれの地域の魅力をアピールしています。
2.文化観光の強化
・夜間の観光体験を充実させ、文化的な地方の観光地での滞在時間を延長しています。
・外国語でのアトラクション情報を提供し、各地域特有の文化を紹介する文化観光ルートを開発しています。
3.フード観光の発展
・地方の料理文化や地産食材をより積極的に紹介しています。
・フード観光ルートを開発し、地域の多様性を活かしています。
・ローカルレストランでの英語サービスや衛生面の改善を行っています。
4.河川観光の拡大
・バンコク以外の地域でも様々な河川観光ルートを設計しています。
・インフラ支援により、新たな観光地の開発を促進しています。
5.経験重視の観光
・単なる観光地巡りではなく、タイの文化や生活を深く体験できるツアーや活動を提供しています。
6.環境への配慮
・2050年のカーボンニュートラル目標達成を視野に入れた環境に配慮した観光を推進しています。
7.地域コミュニティの参加
・地元コミュニティの収入向上を図り、観光開発に地域住民を巻き込んでいます。
上記のように「持続可能な観光の推進」とは、観光という産業の側面から、地域の食文化、地域インフラ、文化などを活用して経済の活性化と観光品質の向上を図る施策であることが理解できます。
こうした施策の推進により、単に観光客の満足度向上だけではなく、各々の地域の経済を活性化させることで地域の発展や住民収入も向上し、すべての関係者がウィンウィンとなることを目指しているようです。
また、「柔軟な戦略転換」として、タイではコロナ禍をチャンスとして捉え、観光産業が積極的に環境変化に対応していったことで、より迅速に質の高い観光産業へと転換し、現在の観光立国としての地位につながったのではないかと思います。
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5.まとめ
いろいろと長くなりましたが、タイと日本は全く雰囲気が異なる国でありながらも、「文化遺産」、「多様な自然」、「食文化の魅力」、「おもてなしの心」など、似ている特徴が多いことに気づかされました。
また、日本の観光戦略のいまだ弱い部分としては、「地方分散型の観光推進」、「持続可能な観光推進」、「ナイトライフの充実」、「外国人が滞在しやすい環境整備(地方重視)」、そして「デジタルノマドの取り込み」などがありそうです。
こうした課題に集中して取り組んでいくことによって、日本の観光産業は地方も含めて飛躍的に発展する可能性があるのではないでしょうか。
また、触れてはいませんでしたが、「労働人材の縮小を跳ね返すためのデジタル化」も必要と思われます。
このように、課題が多いということは、その克服によって大きく伸びる機会でもあるため、政府、自治体、並びに観光業界の関係者には、ここをチャンスととらえて邁進し、日本を世界最高の観光立国にするという貪欲な活動を期待しております。
以 上
今回の「タイの観光戦略」の記事は以上となります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今後とも、イントランスをよろしくお願いいたします。
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