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【イントランス】インバウンドで稼ぐ国になるためには

こんにちは、株式会社イントランスのIR担当でございます。
コロナ終息後、日本では海外からの観光客が順調に増え続け、2023年では訪日外国人数は2,500万人を突破、そして訪日外国人の国内消費額は5.3兆円と史上最高となりました。

オーバーツーリズムという観光問題も生じていますが、世界をけん引する産業が徐々に減少し、明るい成長市場の乏しい日本の現状としては、数少ない成長市場である観光産業の重要性は増しています。

そのため、本日は日本が「インバウンドで稼ぐ国になるためには」どのような取り組みをしていけばいいのかを検証していきたいと思います。


1.世界で最も観光客の多い国は?

それでは早速ですが、UN Tourism(世界観光機関)の発表による、2023年度の世界における外国人観光客数の情報を見ていきましょう。

出典:World Tourism Barometer、UN Tourism

【2023年 国際観光客受入数 ランキング トップ10】

出典:World Tourism Barometer、Wikipedia

まず最初に「外国人旅行者受入数ランキング」についてですが、1位はフランス、2位はスペイン、3位はアメリカとなりました。

その後は、イタリア、トルコ、メキシコ、イギリス、ドイツ、ギリシャ、オーストリアと続いています。

1位のフランスは昔から観光大国として有名ですが、首都のパリでは、エッフェル塔や凱旋門などの歴史的モニュメント、そしてルーヴルやオルセーなどの美術館、また、ルイ・ヴィトンやエルメスなどのハイブランドが立ち並ぶなど、パリだけでも多くの観光スポットがあります。

コロナ禍前からもフランスは1位でしたが、現在では観光客数1億人を突破し、圧倒的な存在感を示していますが、2024年はパリオリンピックも開催されることから、今年はさらに伸びることは間違いないでしょう。

また、2位のスペインもフランスに迫る勢いの観光大国であり、サクラダファミリア、アルハンブラ宮殿などの世界遺産、プラドやレイナ・ソフィアなどの美術館、そして伝統文化や食事など多彩の魅力を放っています。

そして3位のアメリカですが、多様な自然景観から主要な都市、エンターテイメントやグルメなど、様々な都市を持つ広い国ですが、日本人としては馴染みのある国であることからあまり説明はいらなしでしょう。

その他、4位から10位まで見てみますとヨーロッパから5つの国がランクインんしており、周辺国から気軽に観光できる地理的要素がこうした結果につながっていると思われます。


2.世界で最も観光で稼ぐ国は?

【2023年 国際観光収入ランキング トップ10】

出典:World Tourism Barometer、Wikipedia

一方、2023年の「国際観光収入ランキング」では、1位はアメリカ、2位はスペイン、3位はイギリスとなっりました。

その後は、フランス、イタリア、アラブ首長国連邦、トルコ、オーストラリア、カナダ、日本と続きます。

1位のアメリカは、約1,759億USドルとなり、2位のスペイン920憶USドルを大きく引き離しています。

また、「国際観光客受入数ランキング」1位であるフランスが686億USドルであるため、アメリカはその3倍を観光で稼いでいることになります。

アメリカは「国際観光客受入数ランキング」では世界3位であるにもかかわらず、ここまで観光収入が大きいことには驚かされますが、その理由の一つとしては、やはり国土の広さと多様な観光資源を有することだと言えるでしょう。

アメリカと言っても、ニューヨーク州、フロリダ州、カリフォルニア州、ハワイ州など、まったく地域も気候も環境も異なる観光地が分散しており、ひとつの州で長く滞在する観光客も多いのではないでしょうか。

東海岸ニューヨーク、次は西海岸カリフォルニアなど、一つの都市が大きく、観光資源もたくさんあるという規模の大きさがアメリカの強みだと言えるでしょう。

日本へ来られる外国人観光客は、東京以外にも大阪、京都、富士山と、忙しくても複数の観光地を一回の旅行で訪れる方が多いようです。

一方、アメリカは広すぎて複数都市の移動にはそれなりの時間がかかり、こうしたことがアメリカへのリピート観光を増やしている要因だと思います。

次に、重要なのはコンテンツの豊富さだと言えるでしょう。

「国際観光客受入数ランキング」1位のフランスは、自然や食事、歴史的建物、美術館など、観光資源は豊富にあり、日本もフランスと似たところがあります。

ですが、アメリカでは歴史的施設や美術館は当然として、ディズニーやユニバーサルスタジオなどのテーマパークやカジノ、世界トップレベルのスポーツ観戦などのエンターテイメント、ショッピング、最先端の技術とトレンドに強みがあると言えます。

また、ハワイやフロリダなど、リゾートと高級複合施設を兼ね備えた魅力的な地域が多いことも強みと言えるでしょう。

自然や食事、歴史的建造物などの魅力に若干依存しているように見える日本と比較し、アメリカでは高級複合施設を重視し、いかにお金を使ってもらう環境を提供するかが根幹となっており、極めて戦略的な観光戦略を有していると言えるでしょう。

アメリカの観光戦略の事例として、カリフォルニア州のナパ・バレーという場所があります。
ここでは超富裕層をターゲットとしており、ナパ・バレーは、特産品のワインが世界的な成功を収めていて、観光業としてワイナリー巡りを目玉コンテンツとしているそうです。

ナパ・バレーのDMO(Destination Management Organization/観光地域づくり法人)では、地元の農家やワイナリーのブランド単位のマーケティングではなく、「ナパ・バレー」という地域そのものをブランディングすることに注力しました。

また、マーケティング担当を複数設け、展示会やSNSなどの露出先をそれぞれ専任により管理し、富裕層向けのサービスとして、ウェルカムセンターにもゲストサービスのプロを配置したそうです。

ワインのブランディングに成功した後は、農産物を目玉にした観光の確立に着手し、「超富裕層に混雑した旅は向かない」というスタンスで、平日の昼ツアーを主力の売り物とし、この結果、時間も金銭的にも余裕のある富裕層が多く訪れるようになったということです。

こうした事例を見ていますと、いかに地域レベルでターゲティングを明確にしたブランディング、そしてマーケティングに注力することが重要かということがわかってきます。

日本人の好きな観光地であるハワイもそうしたブランディングが成功した事例と言えるでしょう。

3.日本の観光業界の課題

(1)稼ぐ力がないこと

観光白書などでも指摘されていますが、日本の観光産業は生産性の低さや人材不足といった積年の構造的課題が顕在化しており、これらの構造的課題を解決するために、観光産業は「稼ぐ力(収益力)」を強化することが課題とされています。

日本の観光業界が他国と比較して稼ぐ力が低いと言われる理由には以下のものがあります。

1.観光GDPの低さ:
    観光GDPが国内GDPの2.0%程度であり、欧米7カ国平均4.5%と比較し大きく下回ること。
2.付加価値率の低さ:
   日本の観光産業の付加価値率は49.0%で、欧米5カ国平均の52.3%より低いこと。
3.就業者1人当たりの付加価値額の低さ:
   日本の観光産業における就業者1人当たりの付加価値額は491万円で、欧米5カ国平均の766万円と比較
   し、275万円も低い。

また、最も観光収入の多いアメリカとの違いには以下のものがあります。

1.観光GDPの規模:
   アメリカの観光GDPは日本を大きく上回っており、国際的に見ても最大規模である。
2.就業者1人当たりの付加価値額:
   アメリカの観光産業における就業者1人当たりの付加価値額は1,122万円。一方、日本の付加価値額は
    491万円と約2倍の現状がある。
3.マーケティングとブランド戦略:
   アメリカは、観光地のブランド化やマーケティング戦略に優れており、これが高付加価値につながって
    いる。
4.多様な観光資源:
   アメリカは広大な国土と多様な文化を持ち、様々な種類の観光地や体験を提供できることが強みにつな
    がっている。


(2)三大都市圏への集中

現在、日本への観光客は年間2,500万人超となりますが、すでにオーバーツーリズムと言われています。
日本の場合は、アメリカなどのように国土が大きくない中で、東京、大阪、京都といった人気都市に観光客が集中してしまう傾向があります。

具体的には、外国人観光客の宿泊数のうち、約7割が三大都市圏に集中しているようであり、逆に見ればその他の地域はインバウンド恩恵をさほど受けていないと言えるでしょう。

この結果、消費額をみても三大都市圏の数字が突出しており、「地方誘客の促進」が極めて重要であると指摘されています。

観光白書でも、地方誘客の促進に向けて、地域ならではの観光資源を生かした地域の魅力向上やマーケティング力が重要であると指摘されており、消費額拡大のためには、「豊かな自然・文化・食などの地域独自の資源を生かした質の高い体験コンテンツ」、「地域の様々な主体との連携による広域周遊の促進・戦略的発信」、そして「滞在体験の魅力向上による長期滞在の促進」が必要とされています。


4.日本がインバウンドで稼ぐ国となるためには

(1)高付加価値化とブランド力強化

日本の観光産業においては稼ぐ力が他の国よりも弱いことを上述しましたが、稼ぐ産業へと発展するためには「商品やサービスの高付加価値化とブランド力の強化」が最も重要と言えるでしょう。

上述した、ナパ・バレーのブランディング戦略の取り組みのように富裕層や高付加価値旅行者をターゲットとした戦略を推し進めること、そしてハワイのように観光客増加と地域住民の収入増がリンクするような持続可能な観光地域づくりが必要となるでしょう。


(2)客単価の引き上げ

観光業の付加価値が低いことを指摘していますが、日本は他国と比較してモノやサービス物価が低く、さらには利益も薄いという状況にあります。

このため、本来であればモノやサービスの販売価格を上げていきたいところですが、事業者間での価格競争も激しいため、そう簡単には値上げもできないようであるため、サービスの付加価値を高めて客単価の引き上げを行う必要性があるでしょう。

サービス付加価値を高めた一例として、群馬県の伊香保温泉の取り組みがあり、ここでは未利用スペースを貸し切り露天風呂に改修したり、客室に温泉を付けたりしたことで、客単価を高めたそうです。


(3)地方への富裕層の誘客

日本が観光で稼ぐ国となるには、上述のナパ・バレーの事例を参考に、富裕層を呼び込む取り組みが重要と思われます。

日本は通貨安であるため、以前と比べてリーズナブルに観光ができるという事情もり、「安価に旅行できる旅先」というイメージとなっているようです。

これが観光客が増えている要因でもあるのですが、リーズナブルな旅行を求める観光客は、当然ながら多くのお金を落とすことも期待もしづらいと言えます。

また、オーバーツーリズムで混雑している観光地はあまり富裕層に好まれず、他国の観光地と比較しておのずと富裕層ではない観光客の割合も多くなっているようです。

その他、日本では世界の有名観光地と比較して高級ホテルが明らかに少ないことから、富裕層が滞在しにくい環境となってしまっている面もあるようです。

大都市であれば高級ホテルもありますが、地方やリゾート地では圧倒的に不足していますし、ショッピングやエンターテイメント、そしてナイトライフを楽しめる高級複合施設は、地方ではほとんど期待できないのが現状です。

上記より、多くの富裕層を呼び込む環境を構築するためには「高級ホテルや高級複合施設を作ること」が必要であると考えますが、これを実行するためにはそれなりの投資が必要です。

そのため、地方自治体やDMO(観光地域づくり法人)のみが頑張るのではなく、企業や投資家を多く巻き込んだ地域活性化戦略を進めることが重要となるでしょう。

また、ナパ・バレーのように、地域資源の活用、体験型コンテンツの充実が必要があり、地域固有の資源を活用し、体験型のコンテンツを充実させることで付加価値、ブランド価値を高めていくことができるでしょう。

その他、重要なポイントとしては、なんといっても「マーケティング力の強化」であり、デジタル化を通じて顧客ニーズを把握することはもちろん、マーケティング専門家・部隊によりブランド価値の魅力を世界に発信していくことが重要と言えるでしょう。

また、当然ですがDXをフル活用した顧客管理の高度化や、新規顧客の拡大、リピート率の向上、稼働率の向上など、デジタル化の推進は必須と言えるでしょう。


5.まとめ

観光政策は、日本政府も地方自治体も当然のように進めているのですが、その投資規模とスピードが重要と言えるでしょう。

例えば中東のサウジアラビアでは、3年前までは観光客が入国できない国でしたが、現在は国を開放してから3年足らずで日本よりも多くの外国人観光客を受け入れている実績があります。

これは、サウジアラビア政府の主導による圧倒的な観光投資額とプロジェクト推進のスピードの賜物と言えるようです。

また、日本の観光政策としてすべきことは、すでにオーバーツーリズム状態の三大都市圏ではなく、それ以外の地方都市において「富裕層の誘客」と「観光消費の活発化」を目的とした活動を進めることでしょう。

結論としては、観光産業が稼ぐ力を持つためには、各地域で「地域固有の資源を活用したブランディングによる富裕層誘客」が重要なテーマであり、これを実現できるかどうかが観光産業の未来にかかってくると考えています。

今後、外国人観光客数の安定的な拡大とともに、外国人観光客が三大都市圏から地方に広く分散し、各地のブランド化された魅力により、滞在期間や消費額が活発化すると、観光業界の稼ぐ力が高まるだけではなく、日本という国のブランドもさらに高まっていくでしょう。

日本の観光戦略がよりスピーディーで卓越したものとなり、世界の観光都市と切磋琢磨しながら、真の観光大国となれることを期待しています。

                                             以 上

今回の「インバウンドで稼ぐ国になるためには」の記事は以上となります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今後とも、イントランスをよろしくお願いいたします。


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Contact「IRに関するお問い合わせ」:https://www.intrance.jp/contact.html


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