【イントランス】国内インバウンド送客事業について
今回は、当社が2023年10月11日に公表した「連結子会社の送客事業の開始に関するお知らせ」の内容についてご説明をしていきたいと思います。
送客事業とは、当社が国内で運営するホテルに向け、中国を始めとした中華圏の地域より観光客を送客する事業となります。
この事業自体は従来より計画されていたのですが、中国からの観光客のビザ発給の問題、もしくは政治的な事情などでなかなか推進できなかった事情もありましたが、ようやくスタートさせることができました。
そのため、なぜこの時期にようやく開始に至ったのかなど、その解説を含めてご説明をしていきたいと思いますので、よろしければ最後までお付き合いください。
1.事業開始の背景
(1)市場の状況
上述のとおり、送客事業とは、当社が国内で運営するホテルに向け、中国を始めとした中華圏の地域より観光客を送客する事業となります。
こうした取り組みを本格化させることにより、当社グループが運営するホテルへ、中華圏からの観光客を独自で確保することができ、ホテル運営において重要となる指標でもある、OCC(Occupancy Ratio/客室稼働率)の安定的上昇につなげることができ、かつADR(Average Daily Rate/客室平均単価)の上昇につなげることができます。
客室稼働率(OCC)とは簡単に説明すると、ホテルの部屋がどれだけ埋まって回転しているかの指標です。
また、客室平均単価(ADR)とは、どれだけの価格で一部屋を販売したのかという指標です。
当然、両方の指標とも高くなればなるほど、売上や収益性が上昇していくわけですが、ホテル運営をより効率的にしていくためには、これら指標を意識し、上げていくことを目指さなければなりません。
しかしながら、実際にこれら両方の指標を上げていくことは、そう簡単なことでもありません。
宿泊費を上げることで、客室平均単価(ADR)は上げりますが、宿泊客から見るとコスト上昇となるため、ホテルの競争力は相対的に下がり、客室稼働率(OCC)は下がる傾向にあります。
その反面、宿泊費を下げることで、客室平均単価(ADR)を下がりますが、相対的競争力は上がるため、客室稼働率(OCC)は上昇していくといった動きをするのが一般的です。
このように単純化してみると、反比例していく指標でもあるのですが、ホテルの売上や収益性を高める上では、これら両方の指標を上げていく必要があります。
そのためには、ホテル側として、①ブランド力、②特化した強み・戦略、といった部分で他社に負けない魅力や独自性を持っている必要があります。
また、ホテルの属性の側面から見ていきますと、ビジネス型のホテルなのか、リゾート型のホテルなのかによって、これら指標のコントロールがより難しくなってきます。
例えば、首都圏に存在するビジネス型のホテルですと、毎月安定的に宿泊者が訪れるため、季節によって客室稼働率(OCC)や客室平均単価(ADR)が大きくぶれることは少ないでしょう。
しかしながら、リゾート地、観光地にあるホテルでは、多くの観光客が訪れるハイシーズンは客室稼働率(OCC)、客室平均単価(ADR)とも大きく上昇する一方、ローシーズンとなると、両方の指標は大きく下落するといった特徴があります。
そのため、ホテル運営では、以下が重要な施策となります。
1.客室稼働率(OCC)の上昇
2.客室平均単価(ADR)の上昇
3.ローシーズンの客室稼働率、客室平均単価の安定化、一定値の確保
(2)当社の状況
当社の場合は現在、沖縄、京都、大阪でホテル運営をしていますが、沖縄、京都は観光地でもあり、季節要因が大きく左右します。
一方、大阪は首都圏のビジネスタイプでもあるため、観光地ほどの季節要因はありません。
上記により、当社グループとしては、いかに①ブランド力、②特化した強み・戦略を駆使してこれら指標を上昇させていくかが重要なポイントとなります。
当社グループのホテル運営事業における、事業上の強みは、①中華圏ネットワークの優位性、そして②国際的ブランドであるバンヤンツリーグループと資本提携を行っていることが挙げられます。
当社の社長及び経営陣の一部は中国出身者であり、特に社長は長年において、日本及び中国で様々な事業に携わっており、中華圏のネットワークには長けたものがあります。
もう一方のバンヤンツリーグループとの資本提携の件についてですが、バンヤンツリーは本社をシンガポールに置いているホテルブランドのグループですが、保有ホテルの多くを中国国内で展開しており、中国国内では非常に有名で人気のあるホテルブランドです。
2.事業開始の目的
これまで事業開始の背景についてご説明をしてまいりましたが、ここからはその目的についてご説明を加えてまいります。
ホテルの収益を上げるための重要な施策として、以下のようなものがあるとご説明してきました。
1.客室稼働率(OCC)の上昇
2.客室平均単価(ADR)の上昇
3.ローシーズンの客室稼働率、客室平均単価の安定化、一定値の確保
また、それを実現するには、①ブランド力、②特化した強みや戦略、が必要であることをご説明してきました。
さらには、当社グループの強みは、①中華圏ネットワークの優位性、②バンヤンツリーグループとの資本提携である、ことをご説明してきました。
そのため、当社グループは、中国子会社であるイントランス上海が中国国内の旅行会社やOTA(Online Travel Agency)と契約し、中華圏から当社運営のホテルへ観光客数を送客します。
(※厳密には、当社親会社であるETモバイルジャパンの旅行ライセンスを活用します。)
これにより、当社運営のホテルへの送客が増え、予約数は向上させることで、ホテルの客室稼働率(OCC)を安定化させた上、高めていくことができると考えています。
また、送客対象となるホテルは、中国で人気のある有名ホテルブランドであるバンヤンツリーブランドのホテルであるため、それなりの強気の価格で販売することが可能となり、客室平均単価(ADR)を高めていくことができると考えています。
さらに、ローシーズンのホテルを中心に集約し、送客に注力していくことで、大きく落ち込む傾向にあるローシーズンの客室稼働率、客室平均単価の落ち込みを軽減させ、一定値の確保ができると考えています。
このように、当社グループは、「ブランド力」は、バンヤンツリーブランドを活用した上、「特化した強み・戦略」として、予約待ちの姿勢だけのホテル運営ではなく、独自及び現地で宿泊客を集客し、送客につなげるというシステムを構築することにしました。
上記により、「インバウンド送客事業」とは、当社が注力する「ホテル運営事業」の売上及び収益性を高めていくことを目的とした事業となります。
また、イントランス上海は、当面は当社運営ホテルを中心に送客をしていきますが、先々は、第三者のホテルへの送客まで行うことを目指しております。
そのレベルまで到達すると、本事業はホテル運営事業の補完的な事業としての機能としてだけではなく、独立した収益事業に発展すると考えております。
3.事業開始の道のり
本事業は、従来から事業の計画としては存在していたものの、なかなかスタートまで漕ぎつくことができない事業でした。
時間がかかってしまった理由としては、2020年初頭から始まったコロナ禍により社会が激変し、日中両国とも鎖国に近い状況となったことが挙げられます。
また、冒頭でも触れておりますが、その後、中国からの観光客のビザ発給の問題や、日中関係の諸問題があったことで中国国内からの観光客が激減、団体観光客の渡航が禁じられてしまったことがあり、とても本事業に注力できる環境ではなくなってしまったことがあります。
さらには、2023年夏ごろに、中国からの団体観光客が解禁されるというニュースが駆け回ったものの、その後、福島第一原発の処理水問題で、一時的に歓喜した中国観光客の増加期待が一気にしぼんでしまったこと。
これにより、またしても本事業の推進に力を入れることへの懸念が生じていたという理由があります。
本事業がここまで遅れた背景としては、こうした諸々の事情が積み重なってきた結果でありました。
4.まとめ
このように、本事業につきましては計画段階から正式開始までの決定までにおいて、長らく時間がかかってしまいました。
一時は、コロナ禍や日中関係の諸問題で危ぶまれた事業でもあり、中国人観光客の回復は望めないのでは?という意見もありました。
しかしながら、それでも中国人観光客はこうした諸事情がある中でも、日本への来日者数は、韓国、台湾に次いでいまだに第三位の国であります。
中国からの訪問者数のうちには、中国以外の在住者、例えば米国に留学中の方なども含まれていますので、いまだ中国からの観光客が回復に至っていないことは事実です。
また、中国国内は不動産市場の不調もあり、以前のように海外旅行が活況ではなくなっています。
そのため、中国からの観光客減少は政治的懸念のある日本だけではなく、日本以外への渡航者も大きく減っていおり、コロナ前のような観光需要が復活することは当面ないと考えています。
ただし、あくまでも当社のような規模でホテル運営をしている企業としては、それら需要を取り込む意味は大きく、かつ中華圏ネットワークを強みとして謳っているいる以上、やりきらなければいけない事業でもあるとも考えております。
ぜひ皆様も、機会がありましたら、当社の運営するホテルへ足を運んでいただければと存じます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今後とも、イントランスをよろしくお願いいたします。
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