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【社会起業家取材レポ #13】 尖った個性や才能をさらに尖らせ、社会と繋げ輝かせる。

SIACの学生が東北で活動する社会起業家の想い・取り組みを取材する「社会起業家取材レポ」。今回は、SIA2021卒業生の後藤大志さんにお話を伺いました!


1. 後藤大志さんについて

宮城県大崎市出身。高校卒業後、自衛隊に入隊。6年間勤務したのち、海外の大学へ進学。その後、航空機材関連の輸入商社に入社。商社に勤務する傍らベトナム人の友人と共に、絵本出版会社を設立する。会社を経営する中で、障害がある娘を持つ絵本作家の保科さんと出会い、絵本業界の課題や社会課題などについて意気投合。「笑顔の力で人を繋げ、誰もが笑って生きられる孤立のない未来を創る」をビジョンに掲げ、2021年に株式会社ラフコネクトを創業。SIA2021卒業生。
▷株式会社ラフコネクトweb:https://www.laughcnt.com
▷SIA2021最終pitch動画


2. 取り組んでいる社会課題


後藤さんは、
「絵本業界に従事する絵本作家さんを取り巻く課題」に取り組んでいます。

絵本作家は、なること自体が難しいにもかかわらず、作家さんの収入が低いことが問題となっています。

通常、出版社から絵本が出版される場合、印税率は約7%。1冊約1,000円で販売した場合、年間で1万冊販売されても70万円しか作家さんの手元に入りません。

絵本作家さんにとって生計を立てることはとても難しいことなのです。


3. インタビュー:これまでの歩み&今後の展望


Q. 絵本は大人にとって関わりの浅いものだと思いますが、なぜ2度も絵本に関連する会社を立ち上げたのでしょうか?

A. 1社目は完全な興味、2社目は保科(ラフコネクト共同創業者)との出会いからですね。

「1社目は興味本位ですね。ベトナム人の友人とたまたま連絡を取る機会があり、そこで"日本の文化をベトナムに持っていきたい"と声をかけられたんです。当時のベトナムはベトナム戦争の直後でまだまだ貧しく、読書の文化がないことや教育の面で遅れがあるので、その橋掛かりとして絵本を届けたいのだと。戦争直後のベトナムは経済成長が始まったばかりでちょうどベビーブーム。更に中間所得層も増加しています。そこにむけて輸出すればいけるんじゃないかということで始めました。僕としては、面白そうだし、人生経験としていいんじゃないかという程度の動機でした。そこでは大手出版社の絵本を輸出していたんですが、大手の絵本は前金が高く、ベンチャー企業にとっては負担が大きかったんです。なんとかできないかと糸口を探す中、アマチュアでも面白い絵本を書く人がいることに気づき、ネットで色々調べていました。そして出会ったのが後にラフコネクトの共同創業者となる保科でした。」

「2社目のラフコネクトついては、保科と絵本業界のためになる事業を何かやりたいよねという話をしていたことに加え、保科の強い想いもありラフコネクトを創業することにしました。保科には重度の障害を持っている子どもがいるんです。障害を持つ子どもたちは、子どものうちは様々な支援が受けられるものの、成人すると十分なサポートを受けられずに社会に放り出される。働く場所が足りず、結果的に多くの当事者が家の中で引きこもってしまうといった現状を見ていたんです。保科はそこを絵本の力で解決したいのだと。例えば、"一人一人が持つ個性を活かして活躍できるような場所を作ったり、社会的に孤立をなくすようなコミュニティーを創ったりしたい"と言っていました。僕はそんな保科に共感し、2社目となる会社、ラフコネクトを創業しました。」


Q. SIAプログラムに参加して学んだことや変化したことはありますか?
A. もちろんあります。特に、色んな人との出会いですね。

「社会起業家の母数は絶対的に少ないと思うんですよ。"社会を良くしたい"とかってみんなが考えていることではないので。そんな中で社会を良くしたいと思って何かしらの活動をしている人とSIAプログラムで出会えたのは、すごく良い刺激だったと思っています。」

「また、事業についての捉え方も、SIAプログラムに参加する前とSIAプログラムが終わった後では変化したと思います。SIAプログラムを卒業した後というのはちょうどビジネスが立ち上がったばかりだったんですね。実際に事業を進めてみると、メンバーや僕自身の中で改善点がいくつも出てきて、絵本の販売だけでない色々な方向に事業を伸ばして行くことになりました。」


Q. 他の絵本出版会社との違いはありますか?
A. 作家さんへの還元率です。

「製造から販売まで一気通貫で行っているところですね。ベトナムとの繋がりを使って絵本自体をベトナムで安く作って、それを輸送して販売しているので他社に比べてコストを抑えられていると思います。その結果、高い利益率と絵本作家さんへの高い印税率を実現できています。具体的には、作家さんへの印税率を約20%にすることが出来ているので、そこが弊社の強みになると思います。」


Q. 現在、事業は想定通りに進んでいるのでしょうか?
A. 全然進んでいなくて、今がすごく大変です。

「最初の月は売り上げがそこそこあがったんです。というのも応援してくれる人たちが結構買ってくれていて、「待ってたよ」との声もあり好評で。それで最初はいけるかなって思ったんです。けど、2,3か月目には知り合いが買ってくれないフェーズになっていて、一気に売れなくなりました。新しい顧客を獲得するために、月に2回やっていた定例会(社内mtg)を毎週やってどんどんアイデア出して、様々なトライをして行きました。このままじゃ年内持たないよって話になって本当に危機感もってやっていましたね。」


Q. これからやっていきたいこと、ラフコネクトの将来の展望など教えてください。
A. まずは絵本関連事業の拡大ですかね。社会課題の解決に向けた事業はその先にあると思っています。

「出版社が社会的事業をするというイメージは世間一般にはなかなかないと思います。自分達が、やりたいと考える社会的事業をしていくためにも、まずは、事業の軸である絵本の販売でしっかりと売り上げをあげていくことが大切だと思っています。」

「その上で、絵本作家さんの育成事業を行っていきたいです。これは、すでに活動をしている良い作家を発掘して連れてくるのではなく0から人材を育てて売り出していく、会社としてプロデュースしていくというあり方を考えています。わかりやすく言うとタレント事務所のような形ですかね。その人の個性が引き出せて、より多くの人に魅力を伝えられる会社にして行きたいです。」

「そもそも、私たちの会社が出版社であるというのも少し違和感を感じています。イベント事業やECでの販売事業もしているので。まずは出版社という枠組みにこだわらず、周りの方から求められるような会社になることが大切なのかなと思います。」


4. 編集後記

後藤さんは、すごく温和で話しやすい方でした。
人を集める魅力があるからこそ色々な事業に手が出せるのだろうと思いました。


後藤さんは、私がする1つ1つの質問に丁寧に答えてくださり、とても優しい方だなという印象を持ちました。後藤さんは現在、宮城県と千葉県での2拠点生活をしていらっしゃるのですが、この日はなんと、朝に千葉県から車で来てくださったということで、ますます、感謝の気持ちが膨らみました。

後藤さんの事業に関しては、後藤さんの作られた人脈がすごく重要なポイントになっているように感じました。たまたまの持ち込み話で始まった絵本事業から絵本業界の構造に違和感を持ち、縁あって繋がった保科さんと社会課題の解決まで視野に入れた会社を創業され現在に至る後藤さん。

僕には出来ないような経験を沢山されていて、だからこそこのような一般の人とは違う角度から進んでいらっしゃるんだろうなと思います。僕自身も人との繋がりを大切にしながら、自分が出来ること・やりたいことというものを探していきたいと思いました。

取材・執筆担当:干場一樹(東北大学 2年)


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