母の日の昨日
朝、実家に電話したけど、誰も出ない。
きっと、姉と姪っ子と一緒に
どこかに行っているのだろう。
心配よりもよかったなと思う。
夕方、花が届いたと母から電話がある。
声が弾んでいて、とても元気。
久々に1時間以上話す。
40年以上習っていたフォークダンスを辞めたという。
その教室は母が先生を探してお願いして立ち上げたとか。
最初のメンバーが数人いたが、
母ともう1人だけ残って、
みんな、亡くなってしまったと聞いた。
今は母の妹や、姉が入って、20人近く。
だからもう大丈夫と思って辞めたと。
足がもつれて転ぶ前に、とも言った。
朝、電話に出なかったのは、
姉と、町内の公園の掃除をしていたかららしい。
それもだいぶしんどくなったという。
みんな、寂しくなったから、
毎週木曜日に集まろうと提案して、
10数人が町内会館に集まるようになったとか。
明るい声で話す内容に、ふと垣間見れる切ない日常。
だけれども、娘と孫と一緒に暮らす毎日は
とても幸せでありがたいと感謝した。
そして、遠くで暮らす、
私が幸せでいることが一番の幸せだとも言った。
ずっと言ってほしかった、
今まで言われたことがない言葉を
不意に聞いて、私は戸惑いながら、すごく嬉しかった。
「ともちゃんは笑顔が可愛い」とか。
さらりと言われて、
照れてしまって、うれしくて、胸が詰まって、
「ありがとう」と返すのが精一杯。
「たけちゃんに褒められることはすべて、
お母さん譲りのことばかりよ」
と言って、具体的に挙げると、
「あらそうお、うれしいね」と喜んだ。
母は褒めないし、受け取らない人だった。
なのに今は、声がニコニコしている。
いつかこの声を聞くことがなくなると思うと、
昔のことは綺麗さっぱり本当に忘れ去って、
ハートに響かせて、できるだけ深く浸透させようと思う。
私が「ありがとう」を言う前に、
「ありがとう」を言う母の声を。