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チョコレートスラッジ(バンド)
Vo:カスヤヒロユキ、Ba:アオキチョチロウ、Gt:カシワギアスカ
・結成年:2015年
・代表曲
STAR GAZER:https://youtu.be/U7X6oSL2-wY
TENDER RAIN:https://youtu.be/5xz5QAMwfhk
・オフィシャルサイト:http://www.chocolatesludge.com
- Interviewz.tv - 収録日 2020/07/19
ーー僕がカスヤくんに抱いてるイメージというとパンクロッカーなんですけどパンクって今、様々に細分化いて、僕の年齢だとよくわからないんですが反体制的ではある?
「僕の中では反体制とか興味ないです。なんでも自由に表現できるのがパンクなんじゃないかなぁ」
ーー上京当時、僕はカネがなかったんで、数百円で行けるライブというとパンクしかなかったんです。そのイメージをずっとひきづっていて、パンクというのはビンボー人と、何か主張がある、あっても表現する場が無いというような人の音楽って気がします。客も演奏者も認められない集団の音楽だと思ってました。
「いや、ありますよね、それ。ボクの知り合いのギタリストで、昔ボクの女のコを持ってった(笑)けっこう名があった人がいたんですけど、コンビニの前で若い女パンクが3人で一つの弁当食べてるの見て、俺、パンクやめようって。それはボクも共感できます(笑)」
ーーそれで僕の時代は「こんなビンボーやってられるか!」って怒りが反体制に向かったと思うんです(注。もちろん音楽性を否定してるわけでは無い)。カスヤくんは何に対して歌っているの? 歌を聴く限り何も批判してないラブソングとかですよね。
「あんまり批判とか興味ないです。子供の頃はというか、パンクに入ったばかりの頃はそういう(体制批判)のも好きではあったけど、自分で演るようになってからは余りそう言ったことに興味は無くなって、歌詞を作る時に批判とか反体制とか入れませんね。そういうメッセージは(例え入っていても)受け取る側の自由にした方がいいんじゃないですか?そもそも自由が好きでパンクスになったのに反体制っていう名の『体制』に縛られるっておかしいじゃないですか。わざわざ自分から束縛されに行ってるようでちょっと理解出来ないとこがあるんですよね」
ーーカスヤくんのバンド、チョコレートスラッジが3人のバンドであるっていうのはこのインタビュー依頼して知ったんですけど、メンバー紹介していただけますか。
「はい。ベースのチョチロウ(以下、チ)です。ギターのアスカ(以下、ア)です。それでボーカルが僕、カスヤヒロユキです」
ーーチョコレートスラッジはカスヤくんのソロだと思ってましたが?
「そうです。ほぼ1人ユニットでやってましたね」
ーーチョチロウさんはコンチネンタルキッズ(82年結成の老舗バンド)にいたという話を伺っていたんですが。
チ「はい」
ーーどういう経緯でチョコレートスラッジへ(注、カスヤくんもコンチネンタルキッズに在籍経験がある)
チ「以前(カスヤくんと)2人でユニット組んでいて、それで彼が1人でチョコレートスラッジになった時に、「もう一回やらない?」って言われて「アスカちゃんが弾くんだったら」って」
ーー分裂してくっついてまた分裂というか、そういうイメージがバンド全般ににありますよね。
「出たり入ったりですね」
ーーそれは気分なんですか。今演りたいのがこれだからこっち、みたいな。
「そうですね、気分で。いまこういうステージを演りたい、って思うメンバーを探してこの二人を誘いました」
ア「大好きな2人に誘って頂いたので」
ーー客席にいたらナンパされたようなイメージですが。
「あーそれでいいっすよー(笑)」
ア「チョコスラの曲は大好きだったので、ありがたくお受けしましたが、じつはチョコレートスラッジのメンバーになりたかったんです」
ーーチョコレートスラッジ、カスヤくんの歌詞は僕も評価していて素晴らしい。でもライブハウスだと、バックの音とボーカルが同じ音量なんですよね。聞き取れない。
「聞き取れない、その問題は各ライブハウスのPAさんにお任せするとして(笑)」
ーー僕のイメージで元々パンクってお客にサービスしないというのが意識にあって、それだからこれでいいのかなーっとは思いますが。
「突き放されてるのが気持ちいいとかかっこいいとかいう時代は終わり。それは80年代特有のモノだったと思います。自分も当初はそういうの大好きだったんでMC入れないバンドとか大好きだったんですけど、今はそういう時代じゃない。なので自分もステージでよく笑ったりコミュニケーションを取るようになりました」
チ「お客さんを楽しませたいという気持ちをサービスというならそうかもしれませんね。ステージの照明の下に立つ以上、普段着で立ったりお客さんに背中向けて黙々と演奏するとかいうのは失礼だと思います」
ーー友達集めて飲み会の代わりにやってるわけではないという事ですね
「身内で盛り上がってればいいやとは全然思わないんだけど、結果的にそうなっちゃうんですよね。口づてで広がるとこが限られると。要は表に向かって広く告知しなければならないんだけど、それをどうやってやるかという問題で困ってしまう。配信とかあるけど、いまいち自分には向いてない気がして……どうやって宣伝をやっていくか。なんでも出来る時代だから逆に難しいですよね」
ーー何か訴えたいことがあってバンド作ってるんですよね? そうでもないですか、今時は。
「聴いてくれた人が気持ちよくなれればそれでいい、とは思います。パンクって言うよりUKのポストパンクとかそっちの方の流れを強く感じてますね」
ーーチョチロウさんはちょっと毛色が違う感じ(雰囲気から)がします。よりパンク度が高いと言うか。よく一緒に組んでますね。
チ「それはチョコレートスラッジには曲とか歌詞で面白いな、と思うとこがあって、先ほどメッセージって話があったんですけど、カスヤくんはこれはこうだって説明しないんですよ。プレーンに近い感じでそれを通して、聴く人によって違う。めちゃくちゃラブソング歌ってるつもりなのに、これこの人死んでるよねって思う人もいる、深さというか自由さがあるよね」
「押し付けがましい歌詞って好きじゃなくて、説明書みたいなモノはやりたくないです」
ーー曲を聴いて、こう言っちゃなんですがライブハウス向きじゃないと思います歌詞を聴かせるバンドですから。
「確かにね。そうかも知れない」
ーーアスカさんは(チョチロウさん、カスヤさんの並び順で)一番パンクじゃないような気がするんですが。
ア「え、そうですか。それならそれで結構です。アイドルポジションで」
ーーそれで今回の新型コロナウィルスによるライブハウス問題。壊滅状態じゃないですか。
「ハイ」
ーーもう8割くらい平常運転に戻れないと思ってるんですが、これからの活動はどうするんですか。配信とかありますけど。基本的にお客さんの前で実演して収入を得ると言うのが難しくなってしまった。街頭でやると言うわけにもいかないでしょう?
「うちだと打ち込みだから街頭じゃできないですね」
ーーじゃ宅録でCD販売、配信で音源ダウンロードってカタチになるんですか。それしか考えつかないんですけど……。
「ライブハウスが完全にダメになったら……そうするしかないですけど……自分的にはやりたくない。お客がいて伝わる手応えみたいなものが大切でーー」
ーーライブハウスが運営しても客が来ないですよ。この前の舞台(イケメン人狼)のお陰で小さなハコのダメージがすごいです。
「この間、一段落して自粛が緩んだ時友人が久しぶりにライブしたんですけど、割と入ってはいました。一応うちも8月に予定してるんですが……」
ーー今回もそうですけど、お互いが感染源かも知れない。そうなったら責任取りようがないじゃないですか。
「うーーん、まずコロナがどこまで危険なのか曖昧な状態だと思うんですよ。高齢者がリスクが高いってのはわかってきてますけど……そこいら辺を考えるとどうなんだろう。自分としてはそこまで尾を引くことはないんじゃないかなって思ってるんです。いろいろな規制があるし。お互いの責任というのは違う気がする。コロナとは絶対この先付き合って行かなくちゃならないわけで、単純にお前が感染させたとかいう責任論は違う。コロナと共生していて、そこは変えられないんですから……ワクチンができてそのうち収まるかなって思っているんですけど」
ーーライブハウスって最初からライブハウスとして設計されてないから、換気も悪いし密になりやすい。かと言って今から設計やり直し作り直す資金は到底ないわけです。
「実際、何軒か潰れてますしね」
チ「11月にチョコレート・スラッジ、台湾でライブやろうと計画してるんですけど、台湾は感染者ゼロを更新し続けていてライブハウスも普通にやってらしいですね。知り合いが割と最近台湾に移住をしたんだけど、着いたら二週間監禁。1ヶ月間は様子を観察されて、そこから仕事に入れるんですが、その間の収入補償は国がやってくれる。そこまでちゃんとしてるから台湾は平気なんだなって思います。感染者がいないからマスクもしないでいいし、ライブハウスも普段通り。ただ、私たちが今行ってライブするとなると、2週間休み取るのもキツいですから。11月1日からの観光客完全解禁になるのを待って」
ーーキツい質問ですが、これからどうするつもりですか?
「先ほども言いましたが、ライブ配信はやりたくないんですよ。お客さんが沸いている前で演るのがライブだと思うんですよね」
チ「音楽番組の収録とか観客がいないところで歌う、スタジオとかもありだとは思いますが、私たちはライブバンドとしてやっていきたいから、やっぱりお客さんの反応を見てこちらのテンションも上げるというのが……ライブハウス使って配信は演るつもりはない……」
「ライブハウスからの配信とか今は考えてないです。ライブでやらせてもらえるとこがあるならそこでって」
チ「配信ならいっそちゃんとしたPVとかちゃんと配信用に作りたいよね」
「あと、音源の配信か」
ーー配信すると言っても、そもそもその曲を知らなければ検索されませんよね。
「そうなんですよ。結局そこになる。どうやって宣伝告知していくか」
ーーライブが最大の宣伝の場になってたわけですよね。そこが塞がれるとキツい
「音楽雑誌とかも無いし、みんな好きなバンドはピンポイントで情報取れちゃう時代だから、それに伴って他の似たようなバンドとか、同じシーンで活躍していてもそちらの情報を知る機会がないんですね。昔はそういう雑誌とかがあったんですけど。好きなバンドが出てるからって買って、それで似たような活動してる他のバンドを知るって言う現象があったんだけど、今は個人で好きなバンドのHPにアクセスして、他の人が活躍してても知らないってなっちゃう。でも、そこで個人で何か訴えても限界があるし……」
※まさしくチョコレート・スラッジを知ったのは知人のライブに出演していたからだった。
ーー模索するにも模索する場所が無い。
「……そうですよね……そこをなんとかしないと」
ーーカタチ自体が変っちゃってますからね。伝えるカタチが。
話はちょっと変わりますが、これ(バンド活動)は仕事としてなんですか?
「商業ベースには乗っけられないですね、おそらく」
ーー音楽は皆さんの中で仕事なんですかね。今(コロナで自粛)の時期、そういう根本的な事を考える時間だったと思うんです。
「自分の人生の中でやらなきゃいけないことは音楽だと思うんです。それがカネになるかどうか、裕福な暮らしができるかまた別のことで。ただ自分のやらなきゃいけない事という意味では仕事です」
ーー自分のやるべき事、やらなきゃいけない事を仕事とするという感覚でよい?
「はい。まぁ、いわゆるメジャーに行って、こういう音よりこういう音の方がいいよっていうような商品作ることはしたくない。ミュージシャンによってはギターさえ弾ければいいみたいなのがいて、そういうのは僕はやろうとも思わないしできない」
ーー皆さんは極端な話、儲からない道を選んでるじゃ無いですか。その上、コロナでさらに活動が自粛されていく。
「後悔とか全然ないですねー、やめてた方が後悔する」
ーーこぼれ落ちちゃった人も沢山いるわけで、続けてることが一番大事ということですか?
チ「やめられる人の方がすごいなって思う。強いてやめる理由がないままやめていくというのがすごい」
ーー僕がカスヤさんの演奏を始めて聴いたのはまだ1人だった頃ですね。次にチョチロウさんが入って。一口で言うと、カスヤさんはライブ向きではないと思いました。チョチロウさんのテクがすごいから耳障りではない。でもバックとボーカルの音量が同じなので、せっかくいい歌詞なのに聴こえない。
「まぁそこは仕方ない……その日のライブハウスのPAさんによって違いますからね。歌詞が聴こえないのは……残念だけど。そういう時もあると」
ーーチョコレートスラッジのアジトというかホームのライブハウスはどこですか?
「新高円寺のロフトXというとこでよくやってました」
ーーました、ということは。
「今はコロナでここ半年くらい演ってないです」
ーー今、これから演らせてくれと言ってやらせてもらえるんでしょうか?
「ライブハウスによってはそろそろ(7月19日時点)できるとこも出てきてます」
ーーパンクって客にサービスがないということが根本にあるって言ったじゃないですか。僕がカスヤくんに会ったのはイベント名「レプリカント・ナイト」なのに、誰もヴァンゲリスの「ブレードランナー」のカバーしない。でもカスヤくんはコスプレしてたよね。自分サービス。
「カバー、覚えるの大変なんですよ(笑) それに自分たちは演らなかったけど、誰かがやるだろうって。そこの席は空けとこうと。でも一番は覚えるのが面倒くさいということにつきますね」
ーー本当に厳しくなっちゃいますよね。音楽をやるために別の収入を得なければならない。生きていくために。ライブハウスが閉ざされたことで、もっともライブで生計立ててるわけじゃないでしょうけど、これからますますその圧力が強くなっていく。音楽活動もして食ってもいかなくちゃならないでしょう。
「そこら辺ナイショですーー言ってる人多いですよね、でも、僕は言わない。お客さんに申し訳ないなって思うんです。非日常を体感したくて来るお客さんにこちらの生活感見せたくないですね。日常で稼いでいるところとか想像させちゃいけないと思う。むしろお互いに日常を忘れて楽しんでもらいたい場ですから。思うのは自由ですよ、それは。この人たち何やって食べてるのかなーって。でも僕が夢を壊すことはない」
(注。全く同じことを鈴木は「キカイダー01」の主役だった故・池田駿介さんからも聴いたことがある。カスヤくんの発言は、池田さんの「テレビの中の憧れのヒーローが実は……という夢を壊してはいけないので、そこは書かないでくれ」という気持ちと同じだと感じた)
ーー金持ちしか音楽できないって。何して食ってるんだと思うといいサポーターがいて、という。
「ヒモでいいですよヒモで(笑)」
ーーでも続けていくってそういうことですよね、何らかの補償がないと続けられない。それで生活苦じゃないけどやめてった人たちに思うこととか何かあるんですか?
「しょうがないかなーと思うくらいですかねー。あんま興味ないです。どんな事情で辞めていったか正直わからないし」
ーー3人の音楽の原体験っていうのは何でしょうか。
「ガキの頃、親が夜は歌番組しか見せてくれなかったんです。9時以降くらいから始まる番組。それで音楽には小さい頃から慣れ親しんでいたんですけど、自分で初めて「この曲はすごいな」って思ったのは、街で流れていた大瀧詠一の「君は天然色」。あれが街の有線か何かでかかっていて、すごいカッコいいって思って、あの頃だから曲名調べるのもすごく大変じゃないですか、それで全然辿りつかなくて、やっと二十歳になった頃です。ネットが普及してからですね。昔は調べるにしても調べようがない」
ーーかっちり構成されたウォールサウンドですね。それが原点?
「そうかも。実は大瀧さん。そこから入ったというかテレビで売れてる曲じゃなくて、街で流れてる音楽で「これ、すげぇ」って思ったのはあれが初めてでした」
ーーカスヤくんの曲は投げっぱなしのインディーズじゃなくて、きちんと構成されてる印象です。大瀧さんが原点ということはすごく良くわかります。
「根っこにはあると思います」
ーーチョチロウさんは?
チ「音楽自体はちっちゃい頃からピアノやってたんで……なんでベースにいったかというと、両手でやってるとピアノってメロディとベースラインじゃないですか。左手の方が強かったんで、勝手にベースラインが出てくるんですよね。あ、ベースがすごいあってる。初めから私ベースやるんだって思いました」
ーー影響を受けた音楽とかは?
チ「衝撃を受けたのはスターリンですかね」
ーーそれは、普通に衝撃受けますよね。
チ「なんだこりゃ、すごいなって思って」
ーースターリン、アナーキーは当時絶大な人気だったですから。ステージで豚の臓物投げてましたよね。
「入門ですよね。大抵、パンクバンドはそこから入る。僕も学習……コピーしましたもん。「ロマンチスト」(スターリンのメジャーデビュー曲)とかいまだに引ける」
ーーこの3人の中で一番パンク色が薄いと思うアスカさんは? 歌謡曲とか言ってくれると非常に安心するんですが。
ア「だったら、ロックに目覚めたのは男闘呼組です。ジャニーズなのにすごいバンドがカッコいいって」
「ベースとかもね、そこ開放じゃないのに開放で引いてるし」
ーーあの、アスカさん、それはこちらに寄せた発言ですか?
ア「違います。本当に男闘呼組を聴いてバンドってカッコいいなって……若い頃ですね。そこからイロイロ聴いて……。好みって色々あると思うので、(チョコレート・スラッジは)3人が三様でそれが相乗効果でいい具合になってると思うんです」
ーー3人が同じ音だったらつまらないでしょうね。音といえば。
僕ね、繰り返すけど上京当時貧乏で、最初にコンサートと呼べるものに行ったのが新宿厚生年金会館ホールでやったEPO。座って聴けるということに驚いたし、いい音ってことでも驚いた。音は大事だと思います。
「エポ。懐かしいですね。僕、ああいうシティポップも好きなんですよ」
ーーでも、自分がやる音楽とは違うじゃないですか。それはどういうこと?
「荒削りも好きだし、ああいう洗練されたモノも好き、それが合わさってチョコレートスラッジの音楽だと思います」
ーーチョコレートスラッジはエレキも使ってるし打ち込みだし、でも歌詞のおかげか非常にアコースティックに感じる時がある。ライブでは新鮮な体験でした。
「それは初めての感想で……ありがとうございます」
ーーさて、これからの音楽活動ですが作るのはメンバー集まればできる、けど、伝える方法が難しい。ライブハウスだと思いを共有した、みたいな幻想があるじゃないですか。3人揃えば演奏はできる。でも伝えなければ今までなんのためにやってきたんだってことになりますよね。
「うまくいく方法が有ればいいんですけど……リモートとかはやりたくない」
ーー全員防護服っていうのはどうですかね?
お客さんも演奏者も全部防護服。
「それはテクノにあるような」
チ「アイドルとかビジュアル系は絶対ダメですよ」
ーーそれでとうとうこんな時代を迎えてしまったわけですが、どういう風に生きていく?
「防護服は外ヅラ、ファッションですから。音楽自体に影響はないですよね……今はライブができないとかの影響は多々ありますが、僕らが演る音楽には変化ないです。変わった時代に対して歌っていくだけで」
ーー伝る方法が変わるだけ?
「そうですね」
ーーキャッシュレスになったという。伝える形態が変わっただけで。
「あーでも、そんなことって……(時代への対応って)鬱陶しいだけだったりします。伝えるという点では今、音楽もサブスクですよね。定額で聴き放題が基本で。あれのおかげでまた音楽を聴くことが増えたと思います」
ーーただ聴く量は増えても熱量は減ってるなって感じがします。そんな時代だからこそ、サブスクから溢れた手売りとか、そこ(ライブ)でしか買えないモノに価値が出てくる。
「なんでも自分でできるようになっちゃって、そこがいいとこなんですけど。ぶら下がってる人も少ないから見入りも大きい」
ーーチャンスはあると思うんですよ。この前のサザンの配信で50万人が観たって言う。ツアー20本分の売り上げが出た。
「すげー」
チ「私たちはその場の人に向けてっていうイメージがあるからどうしても密になる」
ーーチョコレートスラッジはライブに来ないと会えないとこが魅力の一つでもあるから。配信とは相入れない部分でのバリューがありますよね。
でもあの山下達郎も配信やるっていう。
「配信はソールドアウトがない。そこがいいですね」
ーーダフ屋もないし。
ただ、山下さんは音にうるさそうですから大変だろうなって思いますが。
「あの人、音楽にスゲー厳しいから怖くてお近づきになりたくない(笑)。でも「ライドオンタイム」とかボク大好きです(笑)」
ーーライブハウスアーティストとは違った意味でそういう風にもう一部のアーティストは変化してる。
「(ライブハウスアーティストって)すごくわかりやすくていいですよね」
ーー台湾のライブはそういう意味で本領を発揮できるんじゃないかって。
チ「まだ11月に普通に入れるようになるか未知数です。できたら行く。ただ東京も感染者数が増えているし心配なんですが」
ーー東京都民は旅行するなって言われてるし。ただ、路上からライブハウス、そしてメジャーというサクセスの図式は今回壊れましたよね。路上でやる必要がない。YouTubeがあるから。
「僕、YouTube昔から見ない。好きなアーティストの昔のPVとか観るくらいで。YouTuber的な人たちが苦手なんです」
ーーでは最後にチョコレート・スラッジが言いたいこと、活動予定などで締めてください。
「8月にライブあるんでぜひ……くらい」
ーー本当に演れるんですか?
「多分やると思います」
ーー自粛期間中に練習というか製作ははかどりました?
「あ、3曲くらいあげました」
チ「スタジオ入れないから練習というカタチは取れないけど、やっぱり自分でできるアレンジとかはいい時間になりました」
ーーもうそう考えていくしかないですよね。いや、現実的に良い風に捉えていく。ライブは何か特別に対策を立ててる?
チ「入口で検温してアルコール消毒とお客さんにはマスク着用してもらうくらいで、アクリルで仕切るとかは考えてません」
ーーさすがパンクロッカーというか……時代に合わせてない。
「音楽シーンを俺たちが変えるとかそんな大上段に構えてませんので。それに時代の方が今やパンクですよね。経済状況もボロボロですしね」
ーー8月のライブですが。
「8月の23日に新宿SAMURAIでやります。歌舞伎町に入るのかな」
ーーよりによって感染源と言われてる街で……気骨は認めますが感染者が心配です。
「……深刻に考えると落ち込んでやってられないけど、考え込んでどうにかなるモノではないし、根が明るいからですからね。年末に向けて他のとこから全く声がかからない。そっちが心配です」
ーーチョコレート・スラッジの皆さんの話を伺って、良くも悪くもコロナに流されないパンクは強いと思いました。けど、本当にわざわざ感染する必要はないですから、十分注意してください。
インタビュアー:TOMMY鈴木・飯島雅彦
ライター:TOMMY鈴木
映像:寺川真嗣
写真(当日):石川高央