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エスムラルダさんへのインタビュー/第3回「人を支える言葉」

ドラァグクイーンのエスムラルダさんにインタビューしました。
時にはネガティブな感情が飛び交う場ともなるSNS。
心ない言葉は人を傷つけますが、一方で、人を救う力も言葉にはある。
第3回では、エスムラルダさんの言葉との向き合い方について伺いました。

動画版はこちら

プロフィール
1972年 大阪府に生まれる
1994年~ ドラァグクイーンとして各種イベント・メディア、舞台公演などに出演し、講演活動も行う
2002年 東京都の「ヘブン ・アーティスト」ライセンスを取得
2018年 作詞家・及川おいかわ眠子ねこ、作曲家・中崎なかざき英也ひでやの全面プロデュースにより、ドラァグクイーン・ディーヴァ・ユニット「八方不美人」を結成し、CDデビュー
11月14日には新曲『ジーザス!』の配信が開始された
また、本名の村本むらもと篤信あつのぶ名義でフリーのライター・編集者としても活動
3000円投資生活』(横山光昭 著)シリーズを始め、これまで携わった書籍のトータルの売上部数は300万部近くとなっている
2023年3月には自身の著書『話しやすい人になれば人生が変わる』(アルファポリス)を出版した

批判の中にある人へ

賛否が分かれるようなことってあるじゃないですか。

社会運動とか、表現とか。

1人、2人が何の気なしに書き込んだ批判や悪口なら、まだ自分の中で処理できるかもしれない。
でも、集合体で来るとすごくダメージを食らっちゃう。
人間ってどうしてもネガティブなものを捉えやすいらしいんです、心理学的に。

誰かのやってることを見て「う〜ん、どうかな」って感じるところがあったとしても、自分はその否定の集合体に加わる必要はないのかなって思う。

何か批判をされている人が、自分から見たらすごく頑張ってるなとか、この人がこれをしたから社会が一歩動いたんだよねって思うんだったら、それはやっぱり相手に伝えてあげなきゃいけないなと思う。
「あなたの行動が何かを変えたよ」ってことはちゃんと伝えたい。

もしかしたらね、その時点では、その人には否定的な言葉の方が心に残っちゃうかもしれない。
そんな中でも、1つでも2つでも、何か支えるようなね、ポジティブな言葉をかけたら、その人を助けられるかもしれないなと思う。

私自身は、プライベートにおいてもできるだけネガティブなものは発信しないようにしたい。

言葉が背中を押してくれた

話しやすい人になれば人生が変わる』にも書いたんですけど、誰かが何かをやりたいって思ってる時は極力、「やってみれば」とか「いいんじゃない」みたいな感じで背中を押すような言葉をかけるようにしてますね。

それが誰かにすごく迷惑をかけるとか、犯罪的なこととかだったらもちろんダメですけど、前向きにね、何かにチャレンジしたいっていう人に、「いやもういい年なんだからやめたら」とか「そんなにうまくいくもんじゃないと思うよ」とかは、私は基本的には言わないようにしています。

「よりよくするためにこうした方がいいかも」と言えることがあったら言うかもしれないんですけど、その人の「チャレンジしたい」って気持ちに水を差すようなことはしないようにしてますね。

――エスムさんが今まで何かにチャレンジしようとした時に、誰かから応援してもらった言葉で印象に残ってるものはありますか?

27年ぐらいお手伝いしているゲイバーがあるんですけど、そこのマスター2人がね、男性同士のカップルでやってるお店なんです。
お2人は私よりもちょっと年上で、私が20代の頃からずっと見守ってくれています。
そういう人達がいるっていうことがすごく支えになってるんです。

何をしても「いいじゃん」とか「面白いね」とか「がんばれ」とか言ってくれる人達がいるってことがすごく支えになっています。

あとはね、全然身近な人の言葉とかじゃないんですけど、会社を辞める時、13人ぐらいに占ってもらって(笑)
やっぱり自分としては一大決心だったので。

子供の頃から物を書きたいって思いはありました。
会社員をやりながらドラァグクイーンをやって、その延長線で文章を書く仕事も来るようになった。

3足の草鞋わらじが結構大変になったので、会社を辞めることにしたんです。
でも一番の収入源だったので、すごく自分としては将来が不安だった。

手相とか四柱推命とか占星術とか13人ぐらいに見てもらいました。

10人には「あなたは辞めても全然食べていけますよ」って言ってもらえて、3人ぐらいの人には「社会情勢的にやらない方がいいと思いますよ」みたいに言われました。
もう不況が始まってたのかな、2000年代なんで。
「でもそれ占いじゃないよね」と思って、「辞めても食べていける」って言葉を信じて辞めました。

――辞めてみて、今どうですか?

たまにね、「あのまま会社勤め続けてたらどうだったかな」っていうのは思うんです。
今でもたまに当時の会社の同期と飲むことがあって、みんな偉いなと思います。
自分は毎日ちゃんと朝起きて会社に行くのが続けられたかな。

やっぱり辞めてよかったなと思ってるんですよ。
想像もしてなかったようないろんな経験ができた。

辞めてからもう20年になるんですけど、お陰さまで全然食べるのには困っていません。
本当にね、ありがたいことだなと思ってます。

会社勤めしてたらそんなに有給も取れないので、ライブとかもできなかっただろうし、お芝居とかも出られなかった。

人生初のチャレンジ

――エスムさんは9月に上演された舞台『Bad Luck!』で、脚本に加えて演出も担当されました。

演出は人生初のチャレンジだったそうですが、どうでしたか?

今までは、自分が脚本を提供して他の人に演出していただくっていうのが好きでした。
なぜかというと、自分では思いもよらなかった形になってくるから。

1人でやれることって限界があると思っていて。

書くだけ書いて、それを演出の方と出演者の方で立体的にしていく作業を見るのがすごく好きなんですよ。

けど、自分が演出をするとなると、自分である程度は作らなきゃいけない。
本当にできるのかなと思ってた。
今までの演出の方々の仕事ぶりを見てきましたが、やることがたくさんある。

でもやってみたら、すごく楽しかった。

さっき、演出家の方に脚本を渡して、でき上がっていくのを見るのが楽しいって言ったんですけど、一方で寂しさもあった。

脚本の直しっていうのは生じるんですけど、1回稽古が始まっちゃうと、演出家の方と出演者の方々が一緒に作ってるのを傍観者的に見てるので。
その輪に入りきれないみたいな。

けど、今回は自分で書いて、さらにキャストのみんなと作り上げるっていう感じがすごく楽しかったですね。

あと、今まで舞台に出たり脚本を提供したりして、演出家の方がしていることを見て、意外と自分の中に演出をするために必要なものというのはだいぶ蓄積されてたんだなっていうのが確認できた。

演出をするという目でキャストの皆さんを見ることがなかったんですが、「なるほど、この人はこういうお芝居をするんだ」とか「こういう風にアプローチするんだ」とか、俳優さんを見る目がちょっと変わった部分もある。

なのでたぶん今後、自分が書くものとか、あるいは自分がお芝居に出る時にも、演出の経験が生きるんだろうなって思います。

~第4回へ続く~

『SPECIAL2MAN SHOW』@シアターマーキュリー新宿(新宿マルイ本館8階)
2025年3月20日(木) エスムラルダ×ちあきホイみ
21日(金) エスムラルダ×ドリアン・ロロブリジーダ
23日(日) エスムラルダ×ギャランティーク和恵
各19時半開演


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