エスムラルダさんへのインタビュー/第1回「ドラァグクイーンをやる理由」
ドラァグクイーンのエスムラルダさんにインタビューしました。
ショーや歌など、30年にわたって活躍を続けているエスムラルダさん。
第1回では、ドラァグクイーンを始めたきっかけや、その魅力について伺いました。
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「ドラァグクイーン」とは?
一般的な定義は派手なメイク。
例えば私の眉毛も、自前よりもちょっとオーバー気味に描いてますし、目もね、普通の目の1.5倍から2倍ぐらいに見えるようにしてます。
口紅もね、ちょっと大きめに引いてるんです。
こういう派手めな、誇張したメイクをして、豪華な衣装を着て、クラブイベントとかを盛り上げるパフォーマーというのが一般的なドラァグクイーンの定義なんです。
ただ、最近はいろいろな人がいて、ナチュラルメイクに近いドラァグクイーンもいたりするんですけれども。
私は割とこういう、ちょっと大げさなメイクでショーをやったり、最近は歌を歌ったりとか、お芝居をしたりしています。
――大きなつけまつげはどこで買われてるんですか?
昔はね、100均のパーティー用品のコーナーにあったんです、こういうまつげが。
最近はもうあんまり売れないのか、100均で売らなくなったんですけれども、海外通販とかで割と買えたりするんですよね。
――ドラァグクイーンって海外から来た文化なんですか?
大元を辿ると、イギリスの女方の俳優さんとかが源流にはなるとは思うんですけれども、たぶんアメリカとかが発祥なのではないでしょうか。
ドラァグクイーンを始めたきっかけ
――エスムさんは2020年に出版された写真集『WHY DRAG?』(マグナス・ヘイスティングス)の日本語版で解説を書かれています。
エスムさんご自身はなぜドラァグクイーンをされているんですか?
今、ドラァグクイーンとして活躍していらっしゃるブルボンヌさんと、大学時代から仲がよくて一緒に遊んでいました。
そのブルボンヌさんが30年前にやっていたレズビアンとかゲイのパソコン通信があったんですよ。
それの確か4周年パーティーをクラブでやることになりました。
当時、ニューヨークでル・ポールというドラァグクイーンがすごく人気を博していました。
「ああいうのちょっとかっこいいからやってみようよ」みたいな感じで盛り上がって、パーティーの余興で始めたのがきっかけだったんです。
そっからしばらくは年に1回とか半年に1回ぐらいのペースで2、3年やってました。
その頃、小さなクラブがね、新宿2丁目とかにもできるようになって、ドラァグクイーンが呼ばれることも増えてったんですよ。
もうその頃には私会社員をやっていたんですけれども、なんか副業みたいになっていって、今に至る感じですね。
――初めてドラァグクイーンの格好をして人前に出た時って、どんな気持ちだったですか?
元々、人前に出て何かをやるのが好きな方ではあったんですよ、子供の頃から。
もう本当に物心ついた頃から、当時社宅に住んでたんですけど、他の家に行ってトントントンってドアを叩いて、流行っていた演歌とか歌ってね、「ああ上手いね」なんて褒められて帰るっていう迷惑な子供でした(笑)
お芝居とか見たりするのも好きで、小学校では演劇部や鼓笛隊に入りました。
音楽をしたりお芝居をしたりっていうのは子供の頃から好きだったんです。
初めてドラァグクイーンでショーをした時、リップシンク(口パク)でやったんですけれども、お客さんがすごく楽しんでくれるのを見て、なんかこっちも嬉しくなって楽しくて、やみつきになっちゃったんですよね。
それまでドラマや映画、舞台もヒロインに憧れたり、あるいは女性のアイドル歌手もすごく好きでよく聞いたり歌ったりしてたんです。
自分自身が女性の格好をしたいとか、女性になりたいっていう願望がすごく強かったわけではないんですけど。
ただ、メイクをして女性の格好をして人前で何かをやるっていうのは普段の自分とは違う存在になれる。
気持ちが切り替わって、ショーを思い切りよくやれる部分があって、そういうのも楽しかったんですよね。
求めてくださるお客様がいて、自分自身も楽しんでやれるので、お声がかかったらどんどん出かけていってショーをやるっていう風になっていった感じでしたね。
――「WHY DRAG?」でもいろんなドラァグクイーンの方が「あなたはなぜドラァグクイーンをするんですか?」という質問を受けています。
その中でアメリカのナオミ・スモールズさんという方は「ドラァグは私の興味あるもの全部を表現する驚異的な方法。メイクアップ、ヘア、ネイル、ファッション、ステージ、それに人と繋がること」と答えていました。
エスムさんも1994年にドラァグクイーンの活動を始めて、いろんな人との繋がりができたんじゃないかと思うんですね。
エスムさんはよく人から「話しやすい」と言われるそうですが、人と繋がっていく中でその特性が生きる場面はありましたか?
ちょうど今から20年ぐらい前、地方でゲイの人ね、クラブイベントが盛んに行われていて、結構呼ばれたんですよ、全国に。
行く先々で知り合ったお客さんとか、一緒にイベントを作ったスタッフの方とか、日本全国いろんなところに友達がいるっていう状態ができたのは嬉しいですよね。
今もたまに、何かの機会にそういう遠方に住んでいる友達と会ったりすると、懐かしかったり嬉しかったりする。
話しやすさが原因で友達になれたかどうかわからないんですけれども、もしかしたら少しは関係してるのかもしれないですね。
やっぱりね、会ってもうずっとブスッとしてたらたぶんお友達にもなれない。
知り合った人と一緒に楽しんで会話をする、それを通して相手のことを知り、自分のことも知ってもらうみたいなことができたから、きっと未だにそういう全国のいろんな人と友達でいられている。
父親の仕事で割と子供の頃から引っ越しが多かったので、やっぱり行った先で順応しなきゃいけないっていう部分もあった。
新たな環境でみんなと友達にならなきゃいけないっていう状況だったから、ある程度コミュニケーション力みたいなものが磨かれた部分はあるかもしれないです。
~第2回へ続く~
『SPECIAL2MAN SHOW』@シアターマーキュリー新宿(新宿マルイ本館8階)
2025年3月20日(木) エスムラルダ×ちあきホイみ
21日(金) エスムラルダ×ドリアン・ロロブリジーダ
23日(日) エスムラルダ×ギャランティーク和恵
各19時半開演