宇佐美・黒川研究室【学生インタビュー】柴田啓介
本日ご紹介する柴田君は「熱電発電」の研究に取り組んでいます。
ご自身の研究内容と、研究にかける想いについて聞かせていただきました。
目次
1・柴田君の研究
①熱電発電の現状(メリットと現状の課題)
②柴田君の研究
すごいところ・ポイント
2・研究にかける想い
【1.柴田君の研究】
①熱電発電の現状
「熱電発電とは、温度差を与えることによって電力を得る発電方法で、
未利用のエネルギーを用いた発電方法として期待されています。
強みとしては、
・熱さえあれば、いつでもどこでも発電可能
・駆動部がない→メンテナンスが必要ない、静かである
<※駆動部:火力発電のタービンなど>
・クリーンな発電方法(熱から電気に直接変換。二酸化炭素などは排出されない。)
ということが挙げられます。
一方、
・現在主流となっている材料→有毒性・希少性を持つ→大量生産に無むすびつかず、太陽光発電のような一般的な新規発電方法とはならない。
という課題があります。
そういった課題を解決する材料の一つとしてシリコンがあります。
シリコンは、地球上に豊富に存在し、比較的安価で安全な材料だからです。」
②柴田君の研究
★柴田君の研究のすごいところ★
今まで:シリコンの大きさを小さくすると発電材料としての性能がアップ→なので結晶を小さくするというアプローチはよく行われていたが、従来、結晶を小さくできても、自分が狙ったようには大きさを抑えられない・コントロールできなかった。
→
柴田君の研究では:「狙い通りの大きさのシリコンのナノ結晶を作ることが出来る」→ナノ結晶の大きさが熱電発電の性能にどのような影響を与えているのかや、どの大きさが最も良い性能を示すのか、を観察することができるようになる!
★柴田君の解説★
熱電発電においては、
発電材料内にいかに温度差をつけるかが重要です。
(例えば表面と底面の差、左端と右端の差など)
熱の伝わりが良いとすぐに反対側まで同じ温度になってしまいます。
そのため、熱の伝わりを抑えることが重要になります。
また、電気の伝わりが悪いと、たとえ温度差がしっかり生まれても発生した電力を妨げてしまい、性能の低下につながります。
そのため高性能な材料として、電気の伝わりは良く、熱の伝わりはより抑えることが必要です。
この、「熱は伝わりにくく、電気は流れやすく」を達成するために、ナノ結晶化(結晶を小さくする)というアプローチがあります。
結晶を小さくすると、熱の伝導を担う粒子の散乱が促進します。
本来であれば、真っ直ぐ最短距離で伝わるものを、散乱させ、端まで到達するのを遅延させるイメージです。
ただ熱伝導を抑えるだけなら、結晶のように規則正しく並んでいない状態が好ましいですが、それでは、電気の伝わりが悪くなってしまう。
そこで、ナノ結晶を利用することで電気が流れる道を作ってあげるんです。
そのような理由から、結晶を小さくするというアプローチはよく行われていますが、
従来、結晶を小さくできても、自分が狙ったようには大きさを抑えられない・コントロールできない。という課題がありました。
僕のやっている研究では、
違う層を重ねて成長を止めて、狙い通りの大きさの結晶を作ることが出来ます。
★違う層を重ねて成長を止める方法(少し専門的な説明)
シリコン酸化膜(SiOx/SiOy)膜中のシリコン濃度が高いもの(x)と低いもの(y)を交互に積層する。
→熱処理を行うことで高濃度層では結晶が成長する。しかし、低濃度層では発現しない。
→低濃度層が高濃度層の成長を止めるバリアの役目を果たす
という流れです。★
シリコンの結晶の大きさを制御できると、狙い通りの大きさの結晶をつくり、ナノ結晶の大きさが熱電発電の性能にどのような影響を与えているのかや、どの大きさが最も良い性能を示すのか、を観察することができるようになります。
【2.研究にかける想い】
★高校時代はどんな学生さんだったんですか?
サッカー部で練習に没頭していました。
昔から、数学や物理が面白いなと思っていましたが、理系を選んだのは特に
これといったものはありません。
でも、強く意識していたわけではありませんが、材料系に興味はあったかもしれません。
高校の授業のプログラム、SSH(スーパーサイエンススクール)のグループ研究で、電池のテーマに取り組んだことがあり、面白いと感じていました。
★研究室選び・材料系を選んだのは?
世の中には、色々な機械があるけど、それが成り立つのは材料があるからだと思って。
実験も興味があったし、半導体そのものに魅力を感じていました。
その中でも、太陽光発電や熱電発電に関する研究は、エネルギー問題の解決につながることが面白そうだと思いました。
また、宇佐美・黒川研究室は、先輩方が、研究面に関して学会論文など、とても成果を出されていて、モチベーションになると感じたことと、
学生同士につながりがあって仲がよく、雰囲気が良かったからというのも研究室を選んだ理由のひとつです。
★熱電発電を研究テーマにしたのは
エネルギー問題解決へのアプローチは太陽光発電など様々なものがありますが、
今の研究室では、同期で他に熱電発電やっている人が僕だけで、自分だけがやってる。自分しかできない。という点が、チャレンジできるし、面白そうだと感じて惹かれました。
★今、やりがい
テーマ選択の際に感じた通り、自分ひとりなのでいろいろなことにチャレンジできるし、同期は仲間だけど、僕とは違う事に取り組んでいるから、考えを聞くと違う視点をもらえます。
それを聞いて、自分の研究に活かしていくことが面白いです。
また、直接先生と議論できる機会も多く、成長につながる感じがとても楽しいです。
★今後
実際に発電デバイスを作ることにチャレンジしようと思っています。
それにむけて、材料の向上にも取り組んでいきたいです。