スタートアップで陥りがちな採用・組織面での課題とは?そしてその解決策とは
「採用人数を優先しすぎて、組織が行き詰まりつつある」
「売上が伸びないのに、採用活動を続けて資金がショートしてしまいそう」
「経営者が現場と求める人材のすり合わせができておらず、オンボーディングがうまくいかない」
「正社員だけを採用し、事業が落ち込んだ時のリスクヘッジができていない」など…
あなたの企業は、このような状況に陥っていないでしょうか。スタートアップは、限られた従業員や資金、認知度のなかで、つねに「成長性」や「スピード」が求められます。さまざまな制限があるために、社内でのコミュニケーションや、採用・組織面での知見などが足りずに、さまざまな問題を引き起こしてしまいがちです。
理想と現実との間で起きる、スタートアップならではの課題とはどういうものなのか。そしてその課題を認識した上で、継続的に成長し続ける企業になるための有効な施策とか何なのか、人事・採用面から提案します。
スタートアップで起こりがちな課題とは
◆メンバーレベルの採用に集中しすぎて、チームが機能不全になっていないか
まずは「中長期視点の欠如」です。事業軸では、しっかりと中長期計画を立てていると思いますが、人材軸では、はたしてどうでしょうか。3〜5年後において、どういう体制で戦っていくのかというところまで、考えられていないケースがほとんどではないでしょうか。
たとえば、事業拡大のために、エンジニアのチームを現在の5名から10名採用して、来期15名の組織を目指すとした場合に、今の5名がどのようなスキルを持っていて、どのような役割を担っているのか。さらに15名の組織になった時には、その15名をどういうフォーメーションにするのかまで、本来考えなければなりません。
しかし、現実は転職エージェントに「即戦力となる経験者が10名ほしい」といった粒度での依頼を出されるように思います。チーム編成を考えれば、メンバーレベルのエンジニアだけ揃えても、なかなか機能しません。PLやPMクラスのエンジニアを同様に増やさなければ、新たなプロジェクトなどにも迅速に対応できる組織はつくれないでしょう。
特にスタートアップでは、目の前の短期スパンで事業をスケールさせることに意識が集中しがちです。事業計画ととともに、どういうフォーメーション(体制)にすれば効率よく組織が動くのかを考慮した上で、誰を(プレイヤーやマネージャー)を、どの順番で採用するべきかを、事前に現場の事業側もしくは経営側と人事側が目線合わせしておくことが重要です。
◆売上が伸びていないのに、採用し続けていないか
これは「柔軟性」と「連携性」の欠如についてです。事業計画や採用計画はあるものの、必ずしも現実は、その通りに進むわけではありません。特に、売上が計画を大きく下回っている時は、採用を一旦中止するなど、柔軟な対応が必要不可欠です。しゃがむ時はしっかりしゃがまないと、スタートアップの場合、経営が破綻することにもなりかねません。
プロダクトの組織では、先ほど紹介したようなフォーメーションが大事になりますし、セールスの組織では、1人あたりの生産性(売上)が設定されているので、それらをモニタリングして、現状の事業成長と人員とのバランスを適宜チェックする必要があります。
たとえば、この1年間の売上目標が1億円だとします。その事業計画をもとに、営業の採用計画を考えていきますが、実際事業を動かしてみると、今の市場では、当初の半分の5000万円の売上しか上げられそうにありません。
この状況では、通常事業計画の見直しとともに、採用も早急にストップするはずですが、事業(現場)と採用を別々に考えてしまうケースが多く、採用活動は当初のまま継続し、「現場の売上をなんとかせよ」という話になりがちです。1つは、経営陣が元トップセールスマンや元大手コンサル出身者など営業や戦略に強い方が多いというのが大きく影響しているのだと感じます。
現営業陣で想定の半分の売上しかつくれない状況なのに、新たに入社した人が、商品やお客様を知らない中で、すぐに1.5倍の売上を伸ばせるとは到底考えられません。ですから、人事側と事業側(経営側)は密に連携をとりながら、事業の状況に合わせて、採用人数を臨機応変に変えていくことが大切です。
その際、採用は動き出してから、入社が決まるまで大体3〜6カ月くらいかかります。そのため、3カ月程を目安に売上と今の人員計画を見て、想定よりも売上が大きくショートしている場合は、採用計画をこまめに見直していきましょう。
◆候補者に現場に馴染んでもらおうと、面談回数を数多く行っていないか
無駄な採用活動を行って、現場スタッフや応募者に負荷をかけ、採用に至らないケースがスタートアップの場合、散見されます。これは、「面接回数はどのくらいが最適なのか」「面接では何をチェックすればいいのか」など、経営陣に採用ノウハウを持った人材がいないゆえに起こることです。
入社の可能性が高い応募候補者をチームに馴染めるように、経営層が現場のメンバー複数人に面談を依頼したりするのは、その一例です。その他には、今後を見据えて、これまでとはタイプの異なる人材を採用したことを現場に伝えずに採用した結果、オンボーディングがうまくいかずに、せっかく採用に至った方が早期に退職してしまったり。経営と現場とのコミュニケーション不足による弊害が起こっています。
こうした弊害は、多忙さゆえに起きてしまうというよりも、その必要性やそのやり方を理解していないがために、起きていることが圧倒的に多いです。
◆入社した人たちのキャリアプランや評価制度が、できあがっていない
短期的な成果を追い続けるがあまり、入社した人が会社のなかで、どのような成長を果たせるのかという「キャリアプラン」や「評価制度」ができあがっていないことです。この課題は、多くのスタートアップが抱えています。
「若手層は、入社後3年かけてリーダーに育てよう」「ここ3年以内には、経験者層からマネージャーを半分昇格させよう」「その際、どういう人材(どのようなレベルになれば)がマネージャーに任用されるのか」など、この辺りのことがほとんど整理されていません。
それは同時に、従業員の「人事評価制度」が整っていないことにもつながってきます。こうした環境下で、人を集めないといけないので、中途採用の場合、前職以上の年収を考慮することも多く、任せているミッションと年収との整合性が取れていないケースも増えています。
どういうミッションをクリアすれば、どのような業務を任せるのか。その時には、どのくらいの給与をベースとするのか。こうしたことを設計していかないと、次の組織をどのようにしていくのかの会話ができなくなってしまいます。これらのことは短期的には致し方ないものの、中長期的に、優秀な人材を獲得していくためには、できるだけ早く整備していく必要があるでしょう。
離職率が10%を超えたら「黄信号」
スタートアップの採用は簡単ではありません。その一方で、上記で挙げてきたような、スタートアップ特有の課題も並行して解決しなければ、定着率も高まりませんし、事業を継続して成長させることも難しいでしょう。つまり、ほとんどのスタートアップは、「輸血(採用)と止血(定着)」の両方を行わなければならない状況です。
その際、定着面で気をつけるべきは「離職率」です。事業の成長を考える上では、従業員一人ひとりの存在が大きいため、離職者が増えると企業にとっても大打撃になります。我々が目安としているのは「離職率10%」です。これを超えると、事業成長が難しくなります。そうならないように、採用だけでなく社内での事業部間や上司間でのコミュニケーションや、キャリアプランや評価制度の整備をしっかり行っていくようにしましょう。
小規模の場合は、フリーランス人事や外部のHRプロを活用しよう
起業当初は、経営陣の前職などでのネットワークにより、リファラル採用で一定の成果を出しているスタートアップ企業は多いです。しかし、それもしばらくすると尽きてしまいます。そこから、転職エージェントや求人メディアなどの外部チャネルを使って人材を採用しようとしますが、企業としてまだまだ認知されていないことも多く、思うように成果を上げることができないのが現状のようです。
数百人〜数千人規模の企業であればCHROがトップにいて、経営ボードにおいても、人事部側から採用・育成面において積極的に意見を発信できたりするでしょう。しかしそこまでの事業規模に達していない企業では、人事採用全般を任せられる人材を獲得するのは簡単ではありません。
そういった企業が採用などの知見を持った人材を獲得するためには、業務委託や副業あるいは、外部のHRプロとのパートナー契約などの選択肢が有効だと思います。
外部のHRプロであれば、採用支援だけでなく、事業の成長とともに自社の採用スタッフが増やせるようになった暁には、採用ナレッジを共有して自社の人事部門だけで採用が回せるようにサポートしてもらえます。スピードを求めるスタートアップなら、立ち上げ期などにこういった外部のHRプロ人材が有効になるでしょう。
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