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ヒトはなぜ文字が読めるのか?〜『プルーストとイカ』〜【9月実用書チャレンジ9−1】

今日は今月読みたいと思っていた本に入りたいと思います。私の中で今、もっともホットなトピックである、「読むこと」と「理解」の話です。

副題の「読書は脳をどのように変えるのか?」というのが私が詳しく知りたいことです。

本好きで活字中毒ということもありますが、やはり同時通訳者として過ごしてきた経験と、コロナ以降始めた「瞬読」で分かったことから文字を読むときに人間の脳ではどういうことが起きているか、ということが気になってしょうがない、脳科学的にどういうことなのか、という疑問が頭をしめているのですね。

読書法についての本はたくさんあります。本をどうやって自分の血肉にしていくか、ということについては、まだまだ足りていないとはいえ、いろいろな本を読みました。でも文字を見てどうやって理解につながるのか、いまひとつピンと来ていませんでした。人間は文字より先に音だけで言葉を習得していたはずです。自分の仕事も話を聞いてそれを理解した上で反対言語に訳出する、という作業なので、音を聞いて文章をまとめることは分かります。でも読む時も同じことをおそらく自分の脳内でやっているのではないか、と気付いた時、ちょっと整理がつかなくなったんですね。聞く方いいの? それとも読むのはやはり重要? そして、どうすれば効果的にいろいろなことを学べるのか?

多くの疑問に答えてくれそうなのが、本書『プルーストとイカ』です。ハードカバーで重たい本ですし内容も深いので、今回はこの本を3回に分けて理解していきたいと思います。

PartⅠは「脳はどのようにして読み方を学んだか?」と表題がついています。口伝で文化を伝えていく口承文化から文字が生まれていく過程、そして面白いのは、文字という表象システムを持ったことで人間がどう変わったか、などについて書かれています。

まず、はじめに「視覚や発話など、読字の構成要素であるプロセスは遺伝子にプログラミングされているのだが、読字自体は次世代に直に伝わる遺伝子プログラムを持たないプロセス」である、と明記してあります。つまり、「読む」という行為は生まれた後に人間が学習により獲得しなければならないのです。親が本を読むから子どもが自動的に本を読む、のではなく、子どもも自分で読もうとしなければ読む能力はつかない、ということです。

うん、ちょっと複雑になってきたでしょうか?
研究者が書かれた本なので一般向けとはいえ、けっこう難しいところがあります。

また、異なる言語によって脳が活性化(賦活化)する部位が異なっているそうです。たとえばアルファベットの読み手は左脳の特殊領域に多く依存しており左右両方の脳を使うことはほとんどないそうですが、中国人は左右両方の脳の領域を動員しているそうです。

このふたつと比べて日本語の読み手の場合、漢字だけを読むときは中国語の読み手と同じ、そしてかな文字を読むときは、アルファベットに近いけどまったく同じ訳ではない脳の経路を使うことが書かれています。

やっぱり、漢字とアルファベット、理解する脳は違うよね〜?
常々そうではないか、と思っていたことが、もうとっくに研究されて結果が出ている、ということが分かってかなり満足できました。

では明日は続きのPartⅡ「脳は成長につれてどのように読み方を学ぶか?」に続きます。

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