ABILITY & KOTORI KOIWAI
声優・マルチクリエーターとして多方面にわたり積極的な活動を続ける小岩井ことりさん。
2018年にはアルバム「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! M@STER SPARKLE 08」に収録の「Sister」で作詞・作曲家としてメジャーデビューし、今年の9月にはメタルバンドDual Alter Worldとしてアルバム「ALTER EGO」をリリースされました。MIDI検定1級と講師資格も所持。そんな厳しい目を持つクリエーターの小岩井さんに、音楽やDAWとの出会い、そしてABILITY 3.0の魅力をインタビュー。
━ 声優・マルチクリエーターという肩書で多方面にわたってご活躍中ですが、音楽との出会いを教えてください。
小さい頃、家族でミュージカルのように、歌で会話をするようなことをして遊んでいました。たわいもないことでも、お話ししいたいことを、即興で作ったメロディにのせて歌っていたんです。
なので、あらたまって「作曲」というような意識はなく、曲を作ることが自然に身近にあったように思います。きっとこれが私の音楽というか作曲の原体験だったのかもしれないです。
その後は、中学生になって吹奏楽部に入り、ユーフォニウムやフルート、トランペット、チューバなど色々な楽器に触れ音楽の知識なども身についてきたかなと思います。
吹奏楽部での活動のかたわら、元々パソコンが好きだったこともあり、フリーの音楽ソフトとおもちゃのキーボードを繋いでマルチトラックレコーディングを始めましたが、これがDAWソフトを使って、意識的に曲作りを始めた第一歩かと思います。
音楽の理論もわからないまま、手探り状態でなんとなく曲っぽいオリジナルの作品を自由に作っていました。
━ MIDI検定1級をお持ちとのことですが、取ったきっかけは何でしょうか?
お世話になっていたスタジオがあるのですが、そこは音響や照明なども扱う会社で、会社としてMIDI検定の取得を推奨していたんです。
仲のよいスタッフさんに、MIDIの知識で音や音楽に関わるいろいろな知識も知ることができるということを教えて貰ったのと、私もずっと独学で来ていて何か勉強する機会が欲しいなと思っていたので、ちょうど良い機会だなと思い、2014年にMIDI検定3級、2015年に2級、そして2016年に1級と3年連続で受験して合格しました。
━ DAWを使った具体的な作曲方法をお聞かせください。
場合によって異なりますが、最初にメロディと仮の歌詞を考えることが多いです。小さい頃に家族とやっていたミュージカル風の遊びの延長かもしれませんが、歩いている時とか、お風呂に入っている時に、メロディや歌詞をなんとなく考えます。
その後、コードや伴奏も頭の中でふんわり考え、DAWを立ち上げて打ち込みをしながら想像を膨らませて形にしていく感じです。メロディがある程度完成したら、コードを作って、リズムを作って、ベースを作って、そしてさらにいろいろな楽器を重ねていきます。最近はオーディオ素材を切り貼りして制作することもありますが、多くはMIDIデータで作っています。入力や演奏表現の編集など、ふとしたところでMIDI検定で取得した知識や技術が活かされているなと思うところがあります。
━ ABILITY 3.0 Pro発売後、すぐに試していただきましたが、ABILITY 3.0 Proの印象をお聞かせください。
ABILITYを使って、まず最初に目を引いたのはワンウィンドウに対応している点です。ノートパソコンとかでも画面サイズを気にすることなく簡単に開けてどこでも作業できるのが凄く良いなあと思いました。
次に、マウスを使った楽譜(スコアエディタ)への音符入力が非常に分かりやすく、楽譜がすごく作りやすい点です。以前先輩のクリエーターさんから「Singer Song Writer※」という作曲ソフトが使いやすいと聞いていたのですが、衝撃的で「正にこのことねっ」と一瞬で納得しました。(※Singer Song Writerは当社が販売する作曲入門用ソフトです。)
パレットに用意されている音符(ノートパレット)をマウスで選んで、楽譜(スコアエディタ)の上でクリックするだけで直感的に音符が入力できるので、例えば一見パソコンとはかけ離れているかと思われるような、ピアノの先生とか私がそうだったように吹奏楽をしている方とかにもお勧めできると思います。
ちょっと楽譜が必要という時でも、手書きと違って、何度でも簡単に書き直しができて、クセのないキレイな楽譜が作れて便利じゃないかなと思います。
すぐに音で確認できるので、書き間違いも無くなりますね。
慣れてくると、ノートパレットではなくショートカットを使って音符を選べば、作業も抜群に早くなると思います。
そして、3点目は、コード進行やフレーズを使って伴奏が組み立てられる作曲の支援機能です。コード進行のパターンも伴奏作成に使用できる伴奏パターンやフレーズパターンも、探すのが大変なぐらいの量が収録されていますが、これを組み合わせて、マウスでループさせるだけで伴奏の形になりますよね。
特にMIDIのパターンの場合はさらにすばらしくって、指定したコードのキーだけでなくコードタイプまで受けて展開してくれるので、打ち込みの必要もなくなりますね。きっと今まで曲作りをしたことがない方でも素早く曲の形が作れるのではないでしょうか。
さらに、コード進行に関して言えば、収録されたコード進行だけでなく、コードパッドを使えば、楽曲のキーとかを基準に次にどのコードを選んだら良いかを色分けで見せてくれます。濃い色の方が正しいというか、より一般的に多く使われているって感じですかね。コードを組み立てたことがない方でもポンポンと入れていくことができます。
本当は作曲をしようと思ったら、理論の勉強なども必要で、始めるまでにかなり時間がかかってしまうと思うんですが、これだったら、コードに馴染みがなくても、濃い色で指定されたコードを選ぶだけで、コード進行を作れるので、これから始める方にも心強いのではと思います。あと、いつもと違うコード進行を使ってみたいなというような場合にも閃きをくれる良いツールになるように感じます。
あと、外せないのが、最大3声までのハーモニーを瞬時にボタン一つでポンと作ってくれるオートハーモナイズ※です。凄く便利ですね。
このパートをハモらせたらどうなるかなという場合も、自分で何度も歌って試すこともなく、3度上とか5度上とか指定するだけで素早く試せるので、時間も短縮できるし、いろんなパターンが試せるので曲のイメージをどんどん広げていけるし、完成形が早い段階から見えてくるのがうれしいですね。
※オートハーモナイズ機能は、ピッチや発音タイミングを補正できるボーカルエディタに搭載されています。
━ 今まで使っていたDAWとの使い分けはどうでしょうか?
今、挙げた個別の機能に関しては、要所要所で活用したいなと思っていますが、ABILITYは、ちょっとアイディアが浮かんでないなあとか、どんな曲にしようかなとか、思いついてない時にもすごく助けてくれる機能が沢山入っているので、これを作りたいとか決まっていない時とか、イマジネーションを高めていきたい時とかにすごく良いんじゃないかなって思っています。
これを作るぞって決まっている時には今まで使ってきたDAWが操作も慣れているので使っていきたいんですけど、ABILITYはすごくイマジネーションをくれるので、やったことのないジャンルの曲とかは、ABILITYに助けてもらって作っていきたいなと思ってます。
━ 作った曲のミックスダウンについてはどうでしょうか?
ミックスは基本的には自分ではしないようにしていています。
凄く職人色だなと感じていて、自分の耳をそこまで高めるのは、かなり時間が掛かるなと思ったので、すべてエンジニアさんにお願いしています。
このスタジオにもABILITYを入れてもらっていて、VSTi等も含めて自宅とまったく同じ環境でミックスまでしてもらえるようにしているのですごく便利です。
━ ここからは、小岩井さんの楽曲のミックスダウンをされているエンジニアの廣田さんにお話しを伺いたいと思います。
小岩井さんの楽曲はどのようにミックスダウンされているのでしょうか?
小岩井さんからは打ち込みをした楽曲のオーディオ化されたデータが届くので、まずは順番に並べます。その段階である程度音量は整っているので微調整しつつも、「パンニングに関しては苦手なのでお任せします」と言われることが多いので、左右と奥行き感の調整をします。
あとはそのバランスを保ちながら音が潰れず、迫力のある仕上がりになるようにコンプ等で調整をしていくという流れが多いですね。
━ 今回初めてABILITYを操作されたと思いますが、どのような印象を受けましたか?
小岩井さんもおっしゃっていたかもしれませんが、各社の良いとこ取りされたDAWだなと感じました。
VSTが使用できるのもポイントが高いです。普段使用しているVSTプラグインを違和感なく使えるので代用品を探す手間もかかりませんでしたし、クオリティの高いミキシングができました。
━ ABILITYは、今バージョンでVCAフェーダー、Channel Link機能などを搭載しました。どのような印象でしょうか?
VCAフェーダーで一括してコントロールすることにより、アクセスの速度が上がり作業時間の短縮につながりました。Channel Linkも簡単に使えて、必要なトラックのみをまとめて操作したい時に役に立ちますね。
━ なにか気に入った機能はありましたか?
先にお答えした機能も気に入った点ではありますが、加えて3つほど。
まずは、PINコネクトとMS処理機能はありがたいですね。
ステレオトラックでどうしても片側だけ調整したい場合は、わざわざオーディオをモノラルに切り分けて処理する等ひと手間かかる場合があるのですが、PINコネクトならその必要もありません。エフェクトにあるスイッチをクリックするだけでその効果が得られます。
そして何より嬉しかったのが、MS非対応のエフェクトまでMS処理が可能になるという機能です。近年はMS処理でバランスを作る機会も多く、このプラグインがMS対応ならなぁ、と思うことも多かったので、ABILITY 3.0ならそれができるというのは非常にアドバンテージが高いのではないでしょうか。
次に、ミキサーヒストリーがエフェクトの値まで記憶してくれるところです。ディレクターやクライアントの「ちょっと戻して」への対応も簡単ですし、何より自分自身が迷った時にすぐに聴き比べができるのはありがいたですよね。
あとは、バックアップ機能です。以前に比べると頻度は低くなりましたが、PC自体何かの拍子にエラーが出たり、電源トラブルでプロジェクトが落ちた場合、どの段階までバックアップが取れているかは非常に重要です。
ABILITY 3.0は最大100個までのプロジェクトファイルを自動でバックアップしてくれるので、安心感がありますね。
━ どんな方にオススメでしょうか?
今まで他のDAWを使っていたけど、いまいちしっくりこなかったとか使い方が分かりにくかったというような方にも、メニューやアイコン、各ウィンドウの開き方なども含めて直感的な操作ができるのでよいのではないでしょうか。そしてとにかくMSで処理したいという方には是非オススメしたいです。
今回、小岩井さんはDual Alter Worldというメタルバンドを結成してCDもリリースされましたが、ミキシングはメンバーのRYUさんがされています。私自身HM/HR系のミキシングは得意なので、Dual Alter Worldの次回作は是非ABILITY 3.0で1曲挑戦させていただきたいですね。
【小岩井ことりさんプロフィール】
京都府出身、2月15日生まれ。ピアレスガーベラ所属の声優。
2011年よりTVアニメやゲームなど幅広くこなす。作詞、作曲、DTMもしていたことから、MIDI検定1級と、さらには講師資格も取得し声優として活躍する一方、作詞作曲家として楽曲提供なども行っている。
2018年4月「Sister」の作詞作曲で作家としてメジャーデビュー。「Sister」が収録されたCD「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! M@STER SPARKLE 08」はオリコンアニメアルバムランキングで1位、アルバムランキングで6位を飾る。
2019年4月に全人口の2%のみが入ることの出来る高IQ団体であるMENSAの会員になったことを公表。Twitterトレンド1位に入るなど、各メディアでも話題となる。
代表作としては、「のんのんびより」宮内れんげ、「七つの大罪」エレイン、「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」天空橋朋花、「白猫プロジェクト」フランほか多数。