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日記① 拝啓、客へ

私は現在、コーヒーショップでアルバイトをしている。

 そのコーヒーショップで働き始めて二年以上経ったが、未だ仕事が遅い私に任されるのは『レジ打ち』、これだけだ。

 私の店ではオーダーをお客さんから聞き、店員に通し用語で伝え、お会計をするというのが、レジの役割である。

 つまりはお客さんと接するのは、レジのみである。

 これを踏まえて、先日のハイライトを聞いて欲しい。(日記か?これ)

◇◇◇◇

 今日も今日とて私がレジ打ちをしていると、一人の男性客が現れた。

男 「ケーキセット、ないの?」

私 「すみません、ございません」

男 「あぁそう、じゃあカフェラテのLとケーキで」

私 「かしこまりました!ケーキとLサイズのラテお願いしまーす」

会計を済ませる

男 「領収書ね」

私 「かしこまりましたー」

店員S「お待たせしましたー。Lサイズのラテです」

男 「紙カップじゃん!コップ!コップないの?」

 すぐさま危険を察知。レジ打ちを長くやっていると、空気のピリッに敏感なのだ。

店員S「すみません。Lサイズは紙カップでの提供になります……」

男 「いや、じゃあレギュラーサイズに交換して」

店員S「お会計変わりますが……」

男 「いいよ」

ぽぁ!?!?!?!?!?!?


そんなに紙カップ嫌いなにょ!?!?!?


私 「すみません、返金対応分からないので、僕がラテ作り直すので対応お願いします」

店員S「分かった。お客様、えーと、返金があーだこーだ……」

私 「お待たせしましたーRサイズのカフェラテです」

 ここで逃げる。ベテランの方が対応した方が、双方、安全だからだ。

店員S「領収書のお宛名お伺いします」

男 「さっきの人には聞かれなかったけど」

店員S 「聞く前だったので!」

男 「あっそ」

ぽぁ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!


ぴちょぴ!?!?!?!?!?!?


 なにこれ!?ワテか!?ワテが悪いんでっか!?!?

 この時の私の頭の中、真っ白。まっさらなキャンバス。

 脚は震えて、動悸がする。

 私は、他人の悪意に敏感だ。態度が悪いお客さんが来ると、

『なぜこんな態度の悪い人が社会に出ているんだ……。もっとみんなが他人に優しくできれば……』

と、本気で悩んでしまう。

 つまりはパニック。かなしい。かなしい。

(他人の悪意に曝されると胸がきゅーーーーってなる人、仲間だからいたら教えて欲しい)



 そしてそのお客さんが帰ってから、私は考える。


あの人は一度も、”声を荒げたり、怒ったりはしなかったな”


と。

 これは仮説だが、あの人は少しでも気になったことは言わなきゃ気が済まないし、変更しなきゃむず痒いタイプの人間なのではなかろうか。

 ただ、ケーキセットの有無を聞きたい。

 ただ、紙カップは気に食わない。

 ただ、領収書の宛名の対応が違うことに気がつく。

 それだけ。

 その証拠に、彼は一度、『すみませんね』と言っていた。

 心もなーんにもこもっていない”詫び”ではあったが、そこには形式的にでも謝罪する社会人の姿があった。

 彼にとっては、それ(時間のかかるカフェラテを作り直し、工程の多い返金作業をすること)が迷惑のかかる行為であるとわかっても、改善せずにはいられなかったのだ。


そこに、悪意はなかった。


 クレームをつけたいだけの奇人(接客をしてればわかると思うが、稀にヤバいのはいる)ではなかった。

 彼は純粋に、紙カップが嫌いだった。

 そう考えるだけで、私の心は救われたし、脚の震えも簡単に止まった。



 だからこそ言いたい。


拝啓、先日来た”客”へ。



次からはレギュラーサイズでドリンク頼めよ!!!!!




なぁ!!!!!!!!!




一杯、一杯つくるから、捨てることになるカフェラテがもったいねーし!!!!



返金作業はクソだるいからな!!!!!!!



ぶぴょぺぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええ!!!!!


(※お客さんの要望は出来る限り答えてあげたいから、丁寧に注文して頂けると、こちらもすっごく嬉しいです!!!!!!まじで!!!!!)


おしまい







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