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任天堂+ポケモンがポケットペアを提訴

今週はこのニュースに注目が集まっています。

任天堂(株)と(株)ポケモンが共同で、ゲーム「パルワールド」を開発販売する(株)ポケットペア社を特許権侵害で提訴しました。

かねてより「ポケモン」と「パル」のキャラクタの類似性が指摘されていました。しかし、予想に反して、著作権侵害での提訴ではなく、複数の特許権侵害を理由とした提訴となりました。
キャラクタの類似性の点で、著作権侵害の主張は難しかったと予想します。

では具体的にどの特許の侵害と主張したのでしょうか?
これは明らかにされておらず、予想するしかありません。

任天堂(株)+(株)ポケモンのニュースリリースで明らかになっているのは、
・パルワールドが複数の特許権を侵害しているという理由で
・侵害行為の差止及び損害賠償を求めた
という点のみです。

J-PlatPatで特許検索すると、任天堂(株)と(株)ポケモンとの共同出願の特許は確かに複数件あります。

その一つである例えば、特許7398425号は、
「仮想空間内のキャラクタに対する処理を行うゲームプログラム・システム等」です。
従来技術は、ボールを投げてキャラクタを捕獲するのは戦闘中に限られており、フィールド上ではボールを投げることができなかった、しかしこの発明では、「仮想空間のフィールド上において、プレイヤキャラクタに様々な種類の動作を行わせることができる」
という点がポイントです。

別の特許(7490873号)では、
「空中用搭乗オブジェクトに搭乗したプレイヤキャラクタが地面に向かって移動するときは、地上用搭乗オブジェクトに搭乗した状態に自動的に変更させる」

このような様々な技術、すなわち
・戦闘中だけでなく、仮想空間のフィールドキャラクタの捕獲
・キャラクタが搭乗するオブジェクトをスムーズに切り替えられる
などの複数の技術を組み合わせて特許侵害を主張したと予想されます。

パルワールドは、「パル」という生物に戦闘、農作業、建築などをさせるというゲームであるため、戦闘だけではなくフィールドにおける捕獲が中心の任天堂+ポケモンの特許を侵害しているとの主張をしている可能性があります。

この訴訟は目が話せません。
判決が出るのを待って、さらに解説していきたいです。

弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
翻訳家、執筆家、弁理士(奥田国際特許事務所)
株式会社インターブックス顧問、バベル翻訳学校講師
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)英検1級、専門は特許翻訳。アメーバブログ「英語の極意」連載、ChatGPTやDeepLを使った英語の学習法の指導なども行っている。『はじめての特許出願ガイド』(共著、中央経済社)、『特許翻訳のテクニック』(中央経済社)等、著書多数。