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任天堂+ポケモンのポケットペアに対する訴訟の特許分析

任天堂(株)+(株)ポケモンが、「Palworld/パルワールド」を開発・販売する(株)ポケットペアを、特許権侵害であると主張して東京地裁に提訴しました。
任天堂(株)+(株)ポケモンが有する複数の特許権をポケットペアが侵害している、との主張ですが、これら特許権は明らかになっていませんでしたが、これがやっと判明しました。以下の3件です。ポケットペアが「特許侵害訴訟に関するご報告」という形で明らかにしたものです。

1 対象特許
特許7545191号
特許7493117号
特許7528390号
2 請求の概要
「Palworld/パルワールド」の差止め
及び
(1)  (株)ポケモンに対する、500万円+損害遅延金の支払い
(2)  任天堂(株)に対する、500万円+遅延損害金の支払い 

そこで、今回を含め、今後3回にわたり、任天堂+ポケモンの提起した根拠となる特許を解説していきます。

今日は1件目の以下の特許です。
特許7545191号
戦闘場面だけでなく、「仮想空間のフィールド上において、プレイヤキャラクタに様々な動作を行わせるゲームプログラム・システム・ゲーム装置・ゲーム処理方法」であるという点が特徴です。

従来技術では、
ボールを投げてキャラクタを捕獲できるのは戦闘中に限られ、フィールド上ではボールを投げることをしない、
よって、仮想空間のフィールド上でもキャラクタを捕獲するなど様々な動作を行うことが可能なゲームプログラムが、本発明です。

図8

仮想空間とはこの図のようなものです。フィールドキャラクタFCが配置されています。プレイキャラクタPCが、ユーザ操作により、仮想空間内で動作します。

プレイキャラクタPCはボールを把持しており、これがフィールドキャラクタFCに命中した場合、捕獲成功判定が行われ、成功と判定された場合、このフィールドキャラクタFCを捕獲して、ユーザが所有する状態に設定されます。
ユーザは、たとえばボタンを押下することで、上図のような「構える動作」をプレイキャラクタPCに行わせ、たとえば押下しているボタンを離すことにより、投げる動作が行われます。

図9
図10

戦闘中の捕獲も説明されています。

図11
以上、上掲図面はすべて、J-PlatPat(特許庁、INPIT)よりダウンロード


プレイキャラクタが戦闘キャラクタBCを内部に収納したボールアイテムBsを把持しており、ユーザがたとえばボタンを押下する操作を行うことにより、プレイヤキャラクタPCがボールを投げる構えをし、たとえばボタンを離す動作により、戦闘キャラクタ(ここでは恐竜)を投げる動作を行う。

この特許の請求項1には、
「・・・捕獲アイテムを放つために構える動作を、・・・戦闘キャラクタを放つために構える動作を、前記仮想空間内のプレイヤキャラクタに行わせ」
「操作ボタンを離す操作入力に基づいて、・・・捕獲アイテムを前記照準方向に向けて放つ動作を、・・・戦闘キャラクタを前記照準方向に向けて放つ動作を、前記プレイヤキャラクタに行わせ」
「命中した場合、前記捕獲が成功するか否かに関する捕獲成功判定を行わせ」
「捕獲成功判定が肯定判定された場合に、前記捕獲アイテムが命中した前記フィールドキャラクタをプレイヤが所有する状態に設定させ」
のように、「構える動作」「放つ動作」「捕獲成功判定」「命中したフィールドキャラクタをプレイヤが所有」という動作や状態が盛り込まれています。

請求項のこれら記載をもとに特許侵害を主張しているため、パルワールドのゲームにはこれが含まれているはずです。
「パルワールド」が上記特許を侵害しているのは、仮想空間におけるキャラクタの捕獲を描写しているからです。

以下のゲームプレビューで確かめることができます。
「パルワールド」ゲームプレビュートレーラー

弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
翻訳家、執筆家、弁理士(奥田国際特許事務所)
株式会社インターブックス顧問、バベル翻訳学校講師
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)英検1級、専門は特許翻訳。アメーバブログ「英語の極意」連載、ChatGPTやDeepLを使った英語の学習法の指導なども行っている。『はじめての特許出願ガイド』(共著、中央経済社)、『特許翻訳のテクニック』(中央経済社)等、著書多数。