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X(ツイッター)のスクショは著作権侵害?
他人のツイッター投稿をスクリーンショットして貼り付ける行為は、著作権侵害でしょうか?
結論を言うと、裁判所では「引用」として認められました(つまり、著作権侵害ではない)。
これを教えてくれた判例があります。原告の4つの投稿が何者かにより、スクリーンショットで添付されました。原告の投稿の1つです。
「こないだ発信者情報開示した維新信者8人のログインIPとタイムスタンプが開示された
NTTドコモ 2人
KDDI 3人
ソフトバンク 2人
楽天モバイル 1人
こんな内訳だった。
KDDIが3人で多数派なのがありがたい。
ソフトバンクが2人いるのがウザい しかし楽天モバイルは初めてだな。
どんな対応するか?」
「@A」というユーザは、
「この方です(´・ω・`)。。
に続けて、原告の上記ツイート「こないだ発信者情報開示した維新信者8人・・・」をスクリーンショット画像で添付しています。
ツイッター投稿は著作物?
上記の投稿は著作物と裁判所で認められました。140字という文字制限のなかで、
「著作権侵害と思われる通信に係る経由プロバイダが明らかになった事実に基づき,当該事実についての感想を口語的な言葉で端的に表現するもの」「原告の個性が現れている」
つまり「言語の著作物」であると判断されました。
しかし、上記を含む複数の投稿をスクショして添付した行為が「引用ではない」と一審の東京地裁では判断されました。理由は、
「ツイッターは,他人のコンテンツを引用する手順として,引用ツイートという方法を設けている」
というものです。
引用ツイートという手法があるのに、あえてスクショ画像を添付したのは、規約違反であり、引用の要件として規定されている「公正な慣行」にも合致しない、と判断されました。
また、スクショ画像が量的にも質的にも「主たる部分」であるため、引用が従という要件も充たさない
被告の主張内容は具体的には明らかではない、「スクリーンショット画像を掲載しなければならないような事情」などを 具体的に主張立証するものではない
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つまり原告投稿のスクショ画像添付は引用ではない、と判断されました(つまり著作権侵害)。
(令和3年(ワ)第15819号、東京地裁)
この事件は、プロバイダ制限責任法という法律により、原告が発信者の情報開示をプロバイダ(NTTドコモ)に求めたものです。
原告投稿のスクショ画像添付が引用ではない、と認められたことにより、発信者情報開示を受けるべき正当な理由があると判断されました(令和3年(ワ)第15819号、東京地裁)。
二審では「引用」と認められる
一審である地裁の判断は知財高裁(二審)では覆りました。
上記投稿は、「Xが多数の者に関する発信者情報開示請求をしていることを知らせ、このような行動をしているXを紹介して批評する目的で行われた可能性が認められ」ると判断されました。
注)「X」とは原告
引用の要件とは?
・公表された著作物であること
・公正な慣行に合致こと
・報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれる
これらが引用の要件として規定されています(著32条)。
上記投稿4は、批評する目的で行われているから、引用の要件に合致すると判断されました。
投稿1~3についても、同様に正当な引用であるとされています。
リツイートは元の投稿が削除されると、閲覧できなくなる
知財高裁では、リツイートは、「元のツイートが変更されたり削除されたりすると、・・・批評の趣旨を正しく把握したりその妥当性等を検討したりすることができなくなる」とも言及されています(令和4年(ネ)第10060号、知財高裁)。
つまり、リツイートするのはよいが、元の投稿が削除されたら、批評内容を正しく把握できなくなる、というのです。
したがって二審では、 (株)NTTドコモに対する発信者情報の開示請求は認められませんでした。
引用するときは、一字一句違わずに引用する必要があり、引用する著作物「コピペ」する必要があります。
コピペもスクショも何ら変わるところはなく、この事件ではスクショがツイッター上で行われたことに問題があったのだと思います。
ツイッターは字数が限られているため、引用をもとに自分の意見を述べると言っても、字数が少なくならざるを得ません。またスクショ部分は画像なので、投稿のなかで目立ちます。
明らかに批判すべき他人の投稿は、引用が認められるべきです。知財高裁で引用と認められたのは私たちにとっても、表現の自由が保障される良い判断だと思います。
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
翻訳家、執筆家、弁理士(奥田国際特許事務所)
株式会社インターブックス顧問、バベル翻訳学校講師
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)英検1級、専門は特許翻訳。アメーバブログ「英語の極意」連載、ChatGPTやDeepLを使った英語の学習法の指導なども行っている。『はじめての特許出願ガイド』(共著、中央経済社)、『特許翻訳のテクニック』(中央経済社)等、著書多数。