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大谷翔平選手の偽ユニフォーム事件

大谷翔平選手の偽ユニフォームを販売した男性が逮捕されました。
以下のニュース記事で写真をご覧ください。

この男性は、中国から大谷選手の偽ユニフォームを輸入し、フリマサイトで販売していたそうです。このユニフォームには有名スポーツブランド「ナイキ」のロゴ、「Dodgers」「OHTANI」の文字が縫い付けられています。

さて、知的財産の点で何が問題でしょう?
① 「ナイキ」のロゴを付けているので、商標権侵害

商標登録第6445528号ほか
(ナイキ イノベイト シーブイ)

② 「Dodgers」の文字が付いているから、商標権侵害
「Dodgers」は日本でも多数商標登録されています(4864689号ほか)

商標登録4864689号
(メージャー リーグ ベースボール プロパティーズ インコーポレーテッド)

③「OHATANI」の文字があるので、パブリシティ権侵害
パブリシティ権とは、有名人の名前や肖像が持つ経済的価値を利用する権利です。有名人の名前や写真を商品に付けると、商品は爆売れします。「OHTANI」の名前を付けるとユニフォームは何もつけないユニフォーム、あるいは有名でない選手の名前のユニフォームより売れます。それが大谷選手のパブリシティ権であり、この偽ユニフォームはパブリシティ権を侵害します。
ただし、パブリシティ権は法律上に定められておらず、判例で認められた権利です。

なお、この事件では、中国から偽ユニフォームを「輸入」していますが、「輸入」も商標の使用として、商標法に規定されています。ネット上での販売は、「電気通信回線を通じて提供する」という条文の文言に該当します。
「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為」(商標法2条3項2号)。

偽造品は真正商品より品質が劣るのが通常です。この偽ユニフォームは1万円以下で販売されており(真正品は2万円以上)、しかも偽物とわかる品質だそうなので、本人の名誉やパブリシティ権を考えても撲滅すべき行為です。

弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
翻訳家、執筆家、弁理士(奥田国際特許事務所)
株式会社インターブックス顧問、バベル翻訳学校講師
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)英検1級、専門は特許翻訳。アメーバブログ「英語の極意」連載、ChatGPTやDeepLを使った英語の学習法の指導なども行っている。『はじめての特許出願ガイド』(共著、中央経済社)、『特許翻訳のテクニック』(中央経済社)等、著書多数。