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ニンテンドーの改造品で商標権の侵害

任天堂のゲーム機「Nintendo Switch」の基板を改造して、フリマアプリで販売したとして、運送業者の男性が商標法違反で逮捕されました。

なぜ基板を改造したことがなぜ商標法違反でしょうか?
海賊版のゲームソフトを動かせるように基板を改造し、登録商標「Nintendo Switch」と類似の商標を付けて販売したからです。
つまり、この男性は、正規品ではない製品に他人の登録商標を付し、これを販売したことになります。
商標権の侵害とは、他人の登録商標を正規品でない製品に無断で付したり、このような製品を譲渡(販売)、使用などする行為です。
改造した製品はもはや任天堂の正規品ではないため、非正規品に他人の登録商標を付し、これをフリマアプリを通して販売しているので、商標権侵害になります。
正規品は、海賊版ソフトが読み取れないように設計されているので、海賊版を起動させるように改造したゲーム機は正規品とは到底、言えません。
NINTENDO SWITCHは「家庭用テレビゲーム機」について、以下のように商標登録されています。


商標登録6013945号(任天堂株式会社)


商標登録6013946号(任天堂株式会社)


商標登録6013947号(任天堂株式会社)

著作権侵害の疑いも
海賊版ソフトウエアをダウンロードしているので、これも著作権侵害になり得ます。海賊版と知りながらダウンロードする行為は違法です。

特許侵害は?
報道では特許侵害については触れられていないので、不明ですが、「改造」が新たな生産行為となり、特許侵害となる場合もあります。
特許が取得されている発明を無断で生産、使用することは、特許権の侵害です。
改造が新たな特許の生産となれば、特許権侵害の可能性もあります。
つまり正規品を改造し、特許が取得されている技術的範囲で新たな生産行為を行ったと認定されれば、特許権侵害も構成します。
特許部分を部品を取り替えて全面的に改造し、改造された製品が特許発明の範囲に属するときは、「新たな生産」となり、特許侵害です。

任天堂㈱はゲーム機に関して世界中で多くの特許出願を行っており、特許も取得しています。
例えば、日本では

「支持装置、充電装置、および、操作システム」(特許6482038号、特許6233943号)
「ゲームコントローラセット」(特許6857770号)

などですが、今回の事件では、改造は部品の取替を伴ったが、これらの特許部分を侵害していなかったものと予想します。

弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
翻訳家、執筆家、弁理士(奥田国際特許事務所)
株式会社インターブックス顧問、バベル翻訳学校講師
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)英検1級、専門は特許翻訳。アメーバブログ「英語の極意」連載、ChatGPTやDeepLを使った英語の学習法の指導なども行っている。『はじめての特許出願ガイド』(共著、中央経済社)、『特許翻訳のテクニック』(中央経済社)等、著書多数。