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【データ考察】ラウカクは”決定力”があるのか?それとも”理不尽”なのか?

こんにちは!TORAです🐯

いよいよ2週間ぶり!インテルマッチウィークが近づいてきました!

インテルの試合がなかったこの機会に、マッチレビュー以外の記事も上げたかったんですが、セリスタにまー時間が溶けまくってしまい…とてもじゃないけどリソースを回せませんでした笑

セリエAのスタッツが楽しく読めるようになっちゃいます!
略してセリスタ!
想定はしてましたがどんどんYouTubeチャンネルの視聴数が落ちていますw
皆さんのお力添え!何卒お願いします!笑

なんとか雑巾しぼりの如く、リソースを振り絞った記事がこちらです。

ラウカク(ラウタロ+ルカク)は決定力があるのか?それとも理不尽なのか?

●前置きと概要

サッカーのゴールって様々な表現がありますよね。性質…は言い過ぎですけど毛並みというか。

例えば、

「ごっつぁんゴール!笑」

「ナイスゴール!今のはしっかり決めて欲しかった!」

など、得点がある程度、前提なシーン。”決定機を確実に仕留めた!”的なゴール。

これを本記事では”決定力”と表現します。

例えば、

「おわー!これはゴラッソ!」

「えぇ!?今の決まっちゃうの!?」

など、得点を感じさせないシーンで無理やりネットを揺らす、いわゆる”ゴラッソ(スーパーゴール)!”的なゴール。

これを本記事では”理不尽”と表現します。

まだパターンはありそうですが、今回はこの2種にフォーカスを当てます。
両者に優劣はありません。どちらのゴールも勝利のためには重要でしょう。

で、

これって選手によって傾向があるのかな?
そして、スタッツで見れないのかな?

と思ったのが企画の発端です。

インテル自慢のツートップであるラウカク、つまり、ラウタロ・マルティネス+ロメル・ルカクは28節(27節)現在、

ラウタロが得点ランク5位タイ

ルカクが得点ランク2位

に位置していますが、実際の試合を見ると実は決定機を外しがちな印象を抱きますし、SNSでもそのような意見や議論を度々目にします。

しかし、決定機を外す!というのは悪印象なのでどうしたって頭にこびつきがち。
主観性が強く、より正確に評価するには統計が必要なのでは?と考えました。

ということで、データ分析でラウタロやルカクのシュートチャンスや得点を深掘りし、傾向分析いたしました!というのが本記事の概要です。

●結論

先ずは事前注意。

本分析はルカク、ラウタロ、ロナウド 、イブラヒモヴィッチ、インモービレの5選手を比較して傾向分析をしています。

彼らは今季のセリエAトップスコアラーたち。

なので、”決定力”がある、ない。”理不尽”なのか、否か。は、彼らの中で比べて、ということです。あらかじめご了承ください。

さて、本分析はライトではあるんですが、性質上、文面で説明するとややこしくなるので、いきなり結論から入ります。

細かい数値はあえて出しません!笑

色々分析した結果、こうなりましたよ!だけを出力します。

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はい!ということで、本分析上では

・ラウタロの傾向【理不尽タイプ】
✔︎"決定力"は5選手の中では明確に後れを取る。
✔︎得点が期待できるシュートチャンスを充分に得点に繋げていない。
✔︎しかし、ゴラッソ製造機!得点期待値が非常に少ないチャンスを得点に昇華している。
・ルカクの傾向【決定力タイプ】
✔︎実は”決定力”がある選手!
✔︎高い得点期待値=得点が期待できるシュートチャンスをしっかりと得点に結びつけている。
✔︎反面、ゴラッソは少なめ。シュートシーンにおける”理不尽”さは非常に少ない。
✔︎他のトップスコアラーと比べ、シュート1本1本の期待値が高め。

との結果になりました。

ラウタロとルカクは補完性がありますね笑

ラウカクの相性はデータ上でも証明された!

というオチで、一旦中締めします。
以降は細かい分析に移りますので、興味ない方はそっ閉じでお願いします。

*4/3追記
他選手の特徴もカンタンに示しておきます。

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・ロナウドの傾向【バランスタイプ】
✔”決定力”、”理不尽”、どちらのエレメントも高次元に兼備している。
✔ゆえ、シューターとして総合的な火力が最も高い。理想的なフィニッシャー。
・イブラヒモヴィッチの傾向【決定力タイプ】
✔”理不尽”さも併せ待つが、他の選手と比べると相対的に決定力タイプにカテゴライズ。
✔特に多くないシュートチャンスをしっかり仕留めている点が印象的。
・インモービレの傾向【バランスタイプ】
✔やや”決定力”寄りではあるが、タイプとしてはバランスに落ち着く。
✔数値上はロナウドのスケールダウン版という表現が分かりやすいかも(あくまで数値上は)。

●分析内容

それでは分析内容を説明いたします。
本分析は得点期待値(xG:Expected Goals)というスタッツを核にしたデータ分析です。

・得点期待値(xG:Expected Goals)とは
組織的なシュートチャンスを評価する指標。過去の膨大なデータから算出され、0〜1(0〜100%)で表されます。
仮に、とあるシュートチャンスの期待値が0.4だとすると、「平均的な選手がこのチャンスでシュートを打った場合、40%得点の可能性がある」ということになります。
シュートチャンスを評価しているので、シュートを打つ選手は値に影響を及ぼしません。

以降、得点期待値はxGと表記いたしますのでご周知おきください。

本当は略さずに、得点期待値と表現したいのですが、本記事では得点というワードを多用する関係上、ややこしくなるのでxGとします。

さて、重複になりますが今一度。

本分析はルカク 、ラウタロ、ロナウド 、イブラヒモヴィッチ、インモービレの5選手をスタッツで比較して傾向を考察しています。

傾向分析をするにはサンプル数が少ないんですが、スタッツ収集に非常に時間がかかる分析なのでやむを得ず、5人に絞ります。

彼ら5人の得点とxGを深掘りすることで、

”決定力”がある=決定機を確実に仕留める傾向にあるのか?

”理不尽”=個で決め切る傾向にあるのか?

をスタッツだけを切り取った観点から考察していきます。

●STEP1:得点とxGを確認

本項から分析方法の詳細に移ります。

先ずはPKを除いた得点とxGを確認。
尚、PKは今回のテーマからは外れるので除外します。

まずは得点とxGを抽出し、引き算します。

計算式:得点-xG=
ルカクの例:14-13.7=0.3

この値は、

期待値よりもどれだけ得点しているか?(得点を逃しているのか?)

が分かります。

尚、xGは平均的な選手がシュートを打った場合の指標なので、この値がプラスだと、額面上は優秀なシューターであると言えます。

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流石、セリエAのトップスコアラーたち。
5選手ともプラスの値ですね。

プラス幅が最も大きいのはロナウド。少ないのはルカクという結果。

これは額面上は、5選手の中でシューターとして個の火力が最も高いのがロナウド、低いのはルカクであることを示唆しています。

ちなみに、この分析はxG分析の最もポピュラーなもののひとつと思っています。

というわけでここからです。

ここからオリジナリティを出していきます。

✔︎本項のまとめ
シューターとしての火力は5選手だとロナウドが最強。ルカクは一歩劣る。

●STEP2:得点に繋がったxGを確認

続いて、各選手のxGの内、得点に繋がったxGのみを抽出します。
逆を言えば、得点にならなかったxGを省く、ということです。

抽出したものをゴール数で割ります。

計算式:得点のxG÷14=
ルカク例:5.74÷14=0.41

さぁ、分かりづらくなってきました笑

この値は

選手の得点が平均でどれくらいの期待値なのか?

が分かります。

ルカクの場合、14ゴール中、1得点平均の期待値は0.41。
つまり、1ゴール平均41%、得点の可能性があって、実際にそれらを決めてきた。

ということです。

つまり、

この値が高いほど、決定機をしっかり仕留めている。

と言い換えることができると考えました。もっといえば、チャンスに強い!

ではデータで見てみましょう。

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平均値なので値が小さく、

「どんぐりの背比べじゃね?」

と思われるかもしれませんが、確率で表せば

最も値が大きいルカクが41%。

最も値が小さいラウタロが28%。

この差、13%を何度も積み重ねれば、それは大きな差異となるでしょう。
1点の重みが大きいサッカーであれば、尚更です。

✔︎本項のまとめ
5選手の中でルカクが最も期待値の高い決定機を仕留めている回数が多い。
ラウタロは最も決定機を活かし切れていない。

●STEP3:非得点のxGを確認

本項は前項の後押し的なパートになります。

例えば、ロナウドは超積極的にシュートを打っており、本記事執筆次点でセリエAで断トツトップとなるシュート数を誇っています。

・第28節(27節)時点でのシュート数トップ3
1位:ロナウド 123回
2位:インシーニェ 90回
3位:ラウタロ 83回

これを前項と紐付けると

積極的にシュートを打つ選手(打ってほしい戦術)ならば、xGが下がってしまうのは半ば必然的。しょうがなくない?

それを選手の傾向とするのは根拠が弱くない?

という疑問が生まれます。

なので、非得点(得点にならなかった)xGを非得点のシュート数で割ってみようかと。

*4/3追記
リクエストがあったので生スタッツ載せておきます

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計算式:非得点xG ÷非得点のシュート数=
ルカク例:8.03÷55=0.15

この値では

得点にならなかったシュートが平均でどれくらいの期待値なのか?

が分かります。

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上述の通り、ロナウドは超積極的なシュート数ゆえ、非得点シュート1回あたりのxGは非常に低いですね。意外だったのはインモービレも同じ結果。

その値は0.09なので、得点になっていないシュートはたった9%しか、得点の可能性がない!と読み取れます。

着目すべきはラウタロです。

■非得点シュートのxGがルカクに次ぐ高さ
=得点にならなかったシュートチャンスも他の選手よりは質が高い。

■が、前項の通り、シュートに繋がったxGは5選手中、最低値。
=けど、得点になっているシュートチャンスは他の選手よりも質が低い。

要は

やっぱり決定機を逸しがち。

と読み取ることができると思っています。

✔︎本項のまとめ
前項の「ラウタロは決定機を活かし切れていない」が後押しされる。

●STEP4:xG上でのゴラッソを決めた回数を確認

この時点で結果は見えてますが、ダメ押しをしましょう笑

本項はシンプルです。各選手の得点の内、xGが0.1未満の極端に低いものをカウントしました。

これはつまり、10%未満すなわち一桁のパーセンテージしか可能性しかないシュートチャンスで得点を決めた!ということです。これはスタッツ上のゴラッソと言っていいでしょう。

ということで、本記事では便宜上、0.1未満の得点を(スタッツ上の)ゴラッソと表現します。

予想がついている方も多いと思いますが、最後のデータを見ていきましょう。

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*4/3追記
リクエストがあったので生スタッツ載せておきます。

キャプチャ

ルカクが最低値。14得点の内、ゴラッソはわずか1回。

ラウタロは最高値。同じく14得点の内、ゴラッソは7回。

ラウタロはなんと得点の半分がゴラッソ!!!

あくまでスタッツ上ですが、とんでもない結果ですね笑

✔︎本項のまとめ
ルカクはゴラッソが非常に少ない。
ラウタロはゴラッソ製造機。

●まとめと考察(分析読むのめんどくさい方にオススメ!)

各分析のまとめを改めて見てみましょう。

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STEP1:シューターとしての火力は5選手だとロナウドが最強。ルカクは一歩劣る。

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STEP2:5選手の中でルカクが最も期待値の高い決定機を仕留めている回数が多い。
ラウタロは最も決定機を活かし切れていない。

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STEP3:前項の「ラウタロは決定機を活かし切れていない」が後押しされる。

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STEP4:ルカクはゴラッソが非常に少ない。ラウタロはゴラッソ製造機。

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いやはや、分析しがいがある結果になってくれました笑
インテルの2トップ、ラウカクが特徴的だったので記事にしやすい笑

キャッチーなのはラウタロですね。

ⅰ)得点に繋がったxGが低い=決定機を活かし続けているわけではない。

ⅱ)得点にならなかったxGが高い=外したシュートの期待値は相対的には高め。

つまり、決定機を逸しがち。なのになんで実得点が高いの?

答えは、

xGが極端に低いシーンで
”理不尽”にゴールを決め切っている。​

個人的にこの結果は非常に腹落ちしました。
直近ではトリノ戦の劇的な得点はスタッツなんか見なくても間違いなくゴラッソでしたもんね!

一方、やや頭を捻らなければいけないのがルカクです。

シンプルに見れば、

得点に繋がったxGが高い=決定機を得点にしている回数が多い。
つまり、”決定力”がある!ということなんですが、

もう少し深入りすると

ⅰ)シンプルな計算で求められるシューターとしての火力は5選手中、最低値。

ⅱ)得点にならなかったxGも高い=外したシュートの期待値は他の選手と比べると相対的には高め。

以上を加味すると、厳密に言えばルカクは

決定機をしっかり決めてるし、やや外しがちでもある。
じゃあなんで総得点が高いの?の答えはそもそものxGが高いから。
つまり、質の高いシュートチャンスに絡んでいる回数が多い。

と言っても、得点−xG=プラス値なので、決定機をしっかり決めている!というファクトの方が色濃いです

ということになります。

が、ⅱの分析は捉え方が難しいです。

外したシュートの期待値は他の選手と比べると相対的には高め。
は、裏を返せば、

質の高いシュートシーンに関与している。その継続性がある。

無理なシュートを放っていない。チャンスを大事にしている。

とも捉えれます。
これはルカクのイメージとだいぶ合致するのではないでしょうか?

また、ゴラッソが少ないのもポジティブに捉えることができます。

実際にシュートが決まろうが、決まらないが、
とにかく質の高いシュートチャンスに関与している。

当然、再現性が期待できます。要は安定して得点が見込める。

不安定だけどゴラッソがある選手と安定して得点が見込める選手。
貴方が監督だったら、どちらをスカッドに欲しいでしょうか?

最後に、データではなく、本分析記事自体への考察です。

特にインテリスタの方に伺いたいんですが、ルカクが

■決定機をしっかりと仕留める

■ゴラッソ、つまり理不尽なゴールは少ない

という結果だったのは意外!と思った方は多かったのではないでしょうか?
むしろ逆じゃない?とは思いませんでしたか?少なくても僕は思いました。

なんでだろ?

って考えた時に、自分なりの仮説はすぐに見つかりました。

xG、得点期待値はシュートチャンスを評価する指標です。
シュートのシーン、シチュエーションを期待値として可視化している。

つまり、その前のシーンは考慮されてないんですよね。
(厳密に言えば、考慮されてるみたいですが、詳細はブラックボックスなので、一ユーザーは知る術がありません。たぶん。)

で、ルカクが理不尽なのってその前のシーンに詰まっていませんか?

圧倒的なフィジカルとスピードを活かしたゴリッゴリのドリブル。

無慈悲なポストプレー。

ハイレベルなプレーもこなすスキル。

個の質的優位でシュートチャンスを質の高いものに昇華させる。
=xGが高くなる。

僕はこの仮説を推します。だとすれば、決定機をしっかり仕留めてくれる傾向は、チームにとってはめちゃくちゃ有難いですね!

では、最後にまとめです。

✔︎本分析記事のまとめ
ルカクは”決定力”がある。
ラウタロは”理不尽”。

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やっぱりラウカクの相性はバッチリ!!!!!

最後までご覧頂いた方、誠にありがとうございました🐯


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