【リビジョン】コッパ・イタリアファイナル ユヴェントス-インテル レビュー
こんにちは!TORAです🐯
今回はコッパ・イタリア決勝戦ユヴェントス-インテルのレビューです。
●選手起用
●前半-瓦解したゲームプラン
立ち上がり、ユヴェントスは本試合において明瞭なアプローチを示しました。
一口で表せば「迎撃ブロック」。
人に対して厳しく行く<守備配置を整える
立ち上がりのユヴェントスはとにかく配置に重きを置いていました。
インテルの心臓であるブロゾヴィッチのマークはディバラなのでヴラホヴィッチはデ・フライを見ますが、両者とも深追いせず。
担当にこだわることなく、位置次第でマークを引き渡していました。
また、バレッラのマークは対面のラビオですが、バレッラがブロゾヴィッチのサポートに降りると付いていくのを放棄したり。と、ブロックを崩すことを徹底的に嫌っていた印象です。
「ある程度インテルのボール保持を誘って、絡めとり、そこからカウンター!」がアッレグリ監督の画餅だったと推断しますが、そのプランはわずか6分で瓦解することに。
CKのこぼれ球を拾ったブロゾヴィッチが外に膨らんだバレッラに預けます。
バレッラはそこからドリブルで横にスライド。
ブロゾヴィッチが縦にランニングしベルナルデスキを引きつけるとシュートコースが空きました。
すかさず放った右足のコントロールショットはGKノーチャンスのコースへ。
ユヴェントスは『迎撃』に囚われ過ぎていたか。
一連のシーンではシューターのバレッラはもちろん、中央で待っていたペリシッチに対しても自由を与え過ぎており、被チャンスは避けられなかったシーンでした。
「ユヴェントス困った、さぁどうする?」
得点直後、プレス強度は上がりましたが行くのか行かないのかの意識統一はできておらず、連動性に欠けドタバタ気味。
ユヴェントスの選手が1、2人が喰い付いてきても、インテルは3、4人の選手でいなす。
「これぞシモーネ・インテル」
追加点が期待できる出来でした。
が、しかし。
最初の決定機を許した20分頃からリードチームの雲行きが怪しくなります。
ゲームプランが瓦解したのはユヴェントスだけでなかった
シモーネ監督には誤算が2つありました。
ⅰ)ジェコvsキエッリーニ
組み立ての局面を崩しの局面へと変える存在として、僕は常々ジェコ(のタスク)を『変換器』と表現してきました。
シモーネ監督のカラーを出すためのスイッチなんですが、キエッリーニのマークに文字通り「何もさせてもらえず」。
いやはや、完敗中の完敗でしたね。
前回対戦時も完敗だったので、『誤算』という表現が適当ではないかもですね。
想定はできていました。けど、これほどまでとは!って感じでしょうか。
いやでも、背負うの苦手なジェコと背負わせるの得意なキエッリーニ(というかユヴェントスCB陣)のデュエルならやっぱり想定内であるべきかも笑
ⅱ)左サイドのボール前進不全
もう一つは左サイド。
本試合はバストーニの代わりにシュクリニアルが左CBに収まりました。
左右でも中央でもこなせるユーティリティ性は賞賛に値しますが、特にビルドアップの面で左は数段落ちるのが現実です。
理由は明確。
シュクリニアルは基本的に右のインサイドキックをちゃんと身体の向きを整えてから蹴りたい人です。
したがって左配置だとサイドに逃しづらいし(引っ掛けられやすい)、中央へは角度作らないといけないのでワンテンポ遅れるんですよね。
加えて、本試合は「右のダンブロジオが上がる」がフォーマットとなっており、物理的にシュクリニアルがボール前進のサポートに上がりにくい環境でした。
もしかしたら、これもシモーネ監督にとっては『誤算』ではなかったのかもしれません。
特に最終ラインは「右に流れ、中央にブロゾヴィッチが降りてきてボールを配球する」という動きが非常にシステマチックだった。
右WBの先発がダルミアンなのも、「オーバーロード(密集)からパス交換など直接的な連携、オフザボールなど間接的な連携。どちらも得意なオーガナイズドプレーヤーであるから」に紐づくは間違いないでしょう。
ただまぁ、結果論はやっぱり『誤算』だったかな。笑
前半、左サイドで純粋にボール前進できたのは34分過ぎのシーンくらいだったのではないでしょうか。
いくら右メインでボールを前進させるといっても、一辺倒じゃ流石に厳しいものがあります。
●前半-ユヴェントスの逆襲
というわけで、先制からその後の流れは特に悪くなかったインテルですが、要所のウィークポイントによって、風上をユヴェントスに譲ります。
ユヴェントスは「ジェコ絶対跳ね返すマン」ことキエッリーニというはっきりとしたカウンタースポットで重心が前に傾くと、インテルのボール前進不全も合間って押し込む時間が増加。
特に目を惹いたところを一点だけピックアップ。
ディバラとザカリア(+クラドラード)の連動性
両名の入れ替わり、またそれに伴うクアドラードのレーン移動は敵ながら見事でした。
やっぱりディバラは前を向いてボールを持つと何かしらやってくれますし、何かしらやりそうだから相手は身体も意識も引きつけられる。
一方でザカリアはスペースに入り込むの上手いですし、それ以上に迫力が凄い。
攻撃における圧が半端ない。
この選手特性を活かすための流動性、その再現度が◎。
しかし、この過程で気にあった点も。ずばり、ベルナルデスキです。
基本的に選手配置は良いんですよ。
ラビオと連動してザカリアの穴(というか、ディバラの守備担保)を埋めて、擬似的なアンカーというかインサイドハーフというか。
中盤的なロールはできているのですが、なんでかボールに絡めないですね(というか、なんか避けられている感も。ガリアを見てる感じに近いものが)。
ここはユヴェンティーノの方にぜひご教示いただきたいところ。
で、そうこうしているとリズムが無くなったか。自信を失ってしまったのか。
「ここぞ!」という局面で配置を埋めれずにフォローできなったシーンもありました。
DAZN解説の細江さんも仰っていましたが、ベルナルデスキは内に秘めるものがあったように感じました。
●後半-悪夢の失点とその後のPKに対して思うこと
本題に進む前に前半41分にダニーロが負傷離脱をしてしまったので、選手配置を一旦整理しましょう。
前半のまま4−4−2表記でも誤りではないと思いますが、僕は4−2−3−1がベターだと考えます。
最大理由はSBの役割
後半のユヴェントスはベルナルデスキとモラタを広げることによって、インテル5−3ブロックの”3の横”でSBがボールを持つことを色濃くしました。
クラシカルというかトラディショナルというか。
SBがいかにもなTHE・サイドバック的な業務に。
同点弾のきっかけもクアドラードが3の横でアーリークロスを放ったことを起点としています。
そしてわずか2分後、CKのロングカウンターをヴラホヴィッチに仕留められて逆転。
あれは一連まるっと全て見事でしたね。
あそこでラストパスがディバラ、フィニッシュがヴラホヴィッチという教科書通りの筋書きなのが憎いというか。ユヴェントスの強さに感じました。
インテルにとっては悪夢の120秒、ユヴェントスにとっては”してやったり”の120秒。
さて、その後の展開ですがご存知の通り、延長を挟みインテルが2つのPKを獲得し再逆転。さらにダメ押し弾を加えて、2−4、インテル勝利で終幕します。
PKについてはインテル側の僕が何を言ったところで判定に不満のある方々と交わることはないでしょう。
ただただ水平線をなぞるだけなので本レビューでは流そうと思いますがひとつだけ記します。
より賛否ありそうな2つ目のPKに関して。
あれは分類で言えば、リーグ前半のイタリアダービーのそれと同じです。
「ぶっちゃけ微妙だけどVARでアップ+スローで見たら(セリエAだと)PKになってしまうんでしょ」ってやつ。
リーグ前半は僕たちが泣きを見たのでお互い様かな、と。
それよりも「なぜPKになるような際どいシーンが2度発生したのか?」を考えるが本試合の面白さに繋がります。ここが今回のミソなのですから。
●後半-交代策がターニングポイントに
勝敗を分けたのは64分、そして67分の交代策であることは間違いありません。
交代による両チームの選手配置は以下の通り。
しかしこれはあくまで基本的な配置。
特にユヴェントスは3-4-2-1で戦う時間は多くありませんでした。
ゲームプラン通り軌道修正に成功したユヴェントスはむしろプラン以上に守りを固めます。
インテルは多少のリスクは上等で攻めるしかありません。
選手交代の狙いは以下の通りと断じます。
もうこれしかない!というジャストな交代でした。
対して、ユヴェントスは配置優先の守備から、5−3−2ブロックを敷いてレーンを封鎖。
インテルの配置に合わせて人をつけて対応する守備的なアプローチに変更します。
試合の流れを加味すると選手配置はこんな感じ。
上記ツイートの通りですが、インテルのシステム目線でもユヴェントスのシステム目線でも、インテルは良い意味でも悪い意味でも左右を揺さぶってのクロスが主となるでしょう。
ここでキーとなったのはディマルコ。
インテルの戦術的戦術破壊兵器(ややこしい)
質的優位ではなく、位置的優位や数的優位で相手守備陣にカオスをもたらすことのできる飛び道具です。
65分のトライアングル(ディマルコ・ペリシッチ・コレア)による連携。
70分のインナーラップ。
75分のインサイド深めを取る抜け出し。
86分またもインナーラップ。
などなど、とにかく要所で彼らしさが全開。
彼の最大武器は左足の精度!という意見がありますが、個人的には破壊的なランニングだと断言します。
破壊的と言っても超スピードで破壊するわけではない。
選手配置の空白を的確かつ迅速に縫うことで破壊する。
これこそ、戦術的戦術破壊兵器(ややこしい)です。
ユヴェントスはまず、この兵器をどう捕まえるのかをクリアにできなかったですね。
で、このディマルコの存在で更なる輝きを放ったのがペリシッチ。
ディマルコ投入前は個人パフォーマンスの良さこそ垣間見えましたが、如何せん戦術の犠牲になっていた感があります。
しかし、投入後からは左で運べるし、崩しのカードも増えました。
先ほど「左足の精度よりもランニングが良い!」と言っておいてなんですが、ディマルコは崩しの局面でボールの戻し役としても厄介なんですよね。
精度の高いアーリークロスを放れるので、ボールを戻すことがやり直しとは限らない。と思ったら裏へ抜け出すなど非常に捕まえづらい選手。
こうなると、ペリシッチの「抜かないでもクロスを放れる」というスペシャルなスキルがまた活きる。
「引いた相手にはディマルコ」。
今シーズンのオプション、集大成でした。
●延長-劇場の裏には
選手の入れ替えはもちろん、配置も意識も役割もモードチェンジとなった両交代策。
その後の同点劇という流れも相乗されると、インテルが”ボールを握る”のは必然だったかもしれません。
単に支配率という意味ではなくて、ビジネス的な意味、実権を握る的な意味で。
3点目はVARに焦点が当たりがちですが、その実はセットプレーの流れからペリシッチが必殺技「抜かないでもクロスを放れる」を発動したことが起因。
それをファーのドゥンフリースが折り返すというのは、シモーネ監督の企図通りです。
クロス自体はペリシッチという”個”のアウトプットですが、流れという大枠はプランそのもの。
さらに直後の4点目。
シュートそのものは見た目以上のゴラッソ。
トラップしてからの振り足の速さ→あの角度から左足でファーサイドに決めるというのはなかなかの離れ業です。
またもペリシッチがやってくれました。
が、そこに至るまでの過程を見てみると、ブロゾヴィッチのサイドチェンジを拾ったコレアをディマルコが得意のランニングで追い越して奥行きを取ると、インサイドのレーンへ移動していたペリシッチへ折り返しています。
ペリシッチの圧倒的なパフォーマンスに加え、VARの賛否もあり、延長は”劇場感”がありました。
戦術的にサッカーを見づらい状況でしたが(僕、リアルタイムは全くもってロジカルに見れていなかったですw)、その実はシモーネ監督が思い描く絵を選手たちが体現していたのです。
偶然ではなく必然
判定に納得できない気持ちは僕も長いことサッカーを見てきたつもりなので、痛いこと分かります。
が、起こった事象の本質をしっかり見てみると、VARとなったシーンそのものは起こるべくして起こった側面が強い。
インテルは自分たちの形を諦めることなく連打・連打・連打。
これこそ、サッカーにおける『再現性』。
そう、インテルは人事を尽くして天命が訪れたのです。
●雑感-終わってみれば
本試合は今季の積み重ねが結果に繋がった試合だったかなと思います。
命運を決めたのはリビジョン
両チームとも今季のサッカーという『バージョン』、つまり形や大枠がある。
そして試合中に『リビジョン』、つまり修正や改訂を行うことで試合を優位に進めるための駆け引きが存在した。
結果、”コッパ・イタリア決勝戦ユヴェントスvsインテル”というスペシャルなカードによりフィックスできたのがインテルでした。
シモーネインテルVer2.3といった感じでしょうか(適当)。
何が言いたいかというと、シーズンの集大成となる内容で、一サッカーファンとしてとんでもなく面白い試合だったということ。
レビューを書くために冷静に試合を見直しましたが、今季のイタリアサッカーでも指折りの内容だと思いました。
これはインテリスタだからとかそうゆう色眼鏡を抜きに。
ハイライトだけ見て、判定のみにフォーカスしてしまっている他サポの方にはぜひフルマッチ見て欲しいですね。
セリエAフリークスなら絶対に見て損はありませんよ!
そして10日後にはリーグ全体がそう表現されるかもしれません。
「今季のセリエAは過去一だ!」と。
こんなにも優勝争いも欧州争いも残留争いも盛り上がっているシーズンがあったでしょうか。
数字的にたまたま競っているだけじゃなく、全体のクオリティも間違いなくレベルアップしています。
果たして、どこが笑うのか、喜ぶのか。どこが悔しむのか、落胆するのか。
ロマンティック・セリエA。
最後まで目を離せませんね!!!
インテリスタとしては願わくば、国内3冠でゴールテープを切りたい!!!
FORZA INTEEEEEEEEEEEEEEEER!!!!!⚫️🔵
中三日、キツすぎますね。。
ですが、今だけは勝利の余韻に浸りましょう。
…ということで
やったぜインテル!!!!!
国内2冠!!!!!