【スタッツから読み取る”今季らしさ”】セリエA20-21第11節 カリアリ−インテル マッチレビュー
こんにちは!TORAです🐯
今回はセリエA第11節 カリアリ−インテルのマッチレビューです。
な ん で す が。
所用がありマッチレビューが大幅に遅れてしまいました…。
試合展開やチームの意図を考察する、いつものレビューは”今さら感”が強いので、前回のCLシャフタール戦同様の簡易レビュー。個人的に気になった点をピックアップしてお届けしたいと思っています。
●ゴール期待値に見る”今季らしさ”
本項はインテリスタの方にとっては少しセンシティブなお話なので主観を抜きにして、客観性のあるスタッツのみを取り扱います。
下図はunderstat.comによるゴール期待値。
期待値と実得点に大きな乖離はなく、結果は妥当であったことが読み取れます。
当マッチレビューでもお馴染みのFBref.comの期待値はカリアリ1.7、インテル3.5。インテルの値に開きがありますがカリアリはニアリーイコールです。
着目して欲しいのはその中身。具体的に先制点です。
ソッティルのゴールは期待値がたったの0.06。”チャンスの質”的には全く得点に値しなかったシーンであったことが窺えます。
期待値にそぐわない失点が目立つ
最もキャッチーな”今季らしさ”かもしれません。2失点とも期待値が低かったパルマ戦なんかはその象徴となる試合ですね。
じゃあ、この場面ではなんで失点したの?という原因を二極端に大別すれば
ⅰ)ソッティルのゴラッソ
ⅱ)ハンダノヴィッチのエラー
の、どちらかになるでしょう。
インテリスタ的には偉大なカピタン絡みの話は気になるでしょうし、議論しがいもあると思いますのでこの機会にもう少し深掘りしてみましょう。
・シュート後失点期待値から先制点を考察してみる
FBref.comによると本試合のハンダノヴィッチは被枠内シュートが3本、シュート後失点期待値が0.5という結果です。
シュート後失点期待値:シュートを打たれた後にGKが失点する期待値。当然、枠内シュートのみが対象。
ゴール期待値は攻撃の選手がその状況から得点する期待値であるのに対し、シュート後失点期待値というのは、シュートが打たれた後にその状況・そのシュートでGKがどれくらい失点する可能性があるのか?という指標。
つまり、このスタッツが意味するところは
本試合の被枠内シュート3本を平均的なGKがセーブしようとすると50%、失点の可能性がある。
ということになります。
3本の被枠内シュートのシュート後失点期待値は詳細が確認できないので、先制点の失点期待値は分かりません。
しかし、3本で0.5という値を顧みるに先制点のゴール期待値とのギャップは大きくない、すなわちソッティル側から見てもハンダノヴィッチ側から見てもスコアが動くような期待値ではなかった、スタッツからはそう読み取れることになります。
となると、正GKであるハンダノヴィッチにかかる期待と責任を加味すれば「スタッツ上では失点0に抑えて欲しかった」と言わざるを得ません。
尚、今季ここまでのハンダノヴィッチはシュート後失点期待値が実失点を下回っている、すなわち期待値以上に失点を許してしまっているのですが、これはFBref.comでデータが遡れる17-18シーズンから見ると今季が初、となります。
とまぁ、ハンダノヴィッチを槍玉に挙げてしまいましたが、GKのスタッツなのでどうしたって名前が出てきますし、僕自身、偉大なるカピタンを貶めるつもりはありません。
というか枠内シュートを許している時点でGK個人の責任ではありませんからね。チーム全体に非があります。
それでも冷静に客観的に失点の1つ1つを分析・解釈する作業は不可欠でしょう。スタッツ上では理不尽な失点が目立つ今季は特に。
●インサイドハーフに見る”今季らしさ”
続いてはインサイドハーフ、特にインテリスタ注目の的となったエリクセンにスポットを当てたいと思います。
本項は僕のインプレッションとスタッツを組み合わせて解釈と考察を進めていきます。
一応記載しておきますが本試合の選手配置は3-4-1-2ではなく、中盤▽の3-5-2でしたね。
エリクセンは左のインサイドハーフとしてプレーしました。
トップ下ではないので常に高めの位置でタクトを振るう訳ではなく、ボールを受けに中盤底まで降りてくる機会が多かった訳ですがその点を指摘する声が散見されました。
個人的な意見は「全く問題ない」です。
以前の考察記事でインテルの3-5-2は最終ラインとアンカー、そして2WBがビルドアップユニットと記載しましたが、これはあくまでベースとなるスキーム。
ビルドアップの入口になったり、それをサポートすることもインサイドハーフのお仕事の1つ。そのポジションで起用されるならば必要な場面で降りてきてもらわないとむしろ困ります。
特に昨季ELファイナルではアンカーのブロゾヴィッチを封じられ「中盤空洞化しかない!」という状況を強いられることで試合そのものをロックされたので、昨季と同じ3-5-2の選手配置でもこういった流動性は注力していると見ています。
ここでバレッラ、エリクセン、センシのインサイドハーフ3人組のボールタッチに関するスタッツを見てみましょう。
各ゾーンでのタッチ割合を見て頂けると分かるようにバレッラもディフェンシブサードでタッチ、つまりボールを受けに中盤底や最終ラインまで降りてきていることが分かります。なんならバレッラの方が割合が多い。
(センシは投入された時の状況が状況なので割合は参考にできません)
したがって問題は
降りること
ではなく、
必要な場面で降りてきているか
もしくは
降りた後に効果的なパフォーマンスが出来ているか
だと確信しています。
個人的には前者は問題ないと考えています。タイミングは良いと思いますよ。けど、
ⅰ)ボールホルダーとの位置取りにおいて角度を付けれず、良い多角形を作らない、少ない。
ⅱ)他の選手とのレーン被りが散見。
これが”あえて”なのか”そうなっちゃう”のかが正直分かりません。いや、正確に言えば”あえて”を信じたいというか。完全な色眼鏡です笑
他の選手だったら”そうなっちゃう”、つまりネガティブ!と断じてると思います笑
しかし、問題は後者でしょうね。降りた後のアクションの質です。ここでまた気になるスタッツがあったので見ていきましょう。
まずはボールを足でコントロールして運ぶ、所謂”運ぶドリブル”に関するスタッツ。
続いてパス関連のスタッツ。
バレッラは3選手の中では唯一フル出場しているので棒グラフにすると値が突出するのは当然です。
着目すべきはやはりエリクセンのスタッツ。タッチ数の割にボールを前に持っていけていない!ということが明確に示されています。
インサイドハーフとしてボール保持の
コストパフォーマンスが非常に悪い
運ぶドリブルはともかく、前方向、つまりゴールに方向にパス出すことは必ずしも正しいとは限りませんがインテルはバーティカル(縦方向)な攻撃がウリのチームなので、”ボールを前方向に運ぶ”スキルや連携はチームにおいて必須と考えます。
本試合、「エリクセン、なんだか消えているなぁ」、「印象に残っていないなぁ」と感じた方はけっこういらっしゃるのではないでしょうか。少なくても僕はそう感じましたが、ここに起因すると睨みました。
そして、このスタッツがバレッラとエリクセンの現状を論づけられる結果になるとも。
ピッチの至るところに顔を出し、さらにドリブルでもパスでもボールを運べるバレッラはマスターピース。怪我を押してでも出場する意味と価値がある。
対してエリクセンは大枠は指示通りに動いくれるものの、そこからゴールに向かう術、つまり中身が”現在”はない。
チームのホロンになれるか、否か
ホロン:部分でありながら全体としての機能、性質を持ち、全体と調和して機能する単位。
上述でも紹介させて頂いた、3-4-1-2の選手配置の考察で使用した「ホロン」というワードは3-5-2に戻した今でもキーになると思っています。
インテル中盤に求められる”今季らしさ”が、そのままチームにおける貢献度や重要度に反映されている。それが本試合スタッツ面の特徴だと解釈しています。
そのマイナスファクターはスキルなのか、連携なのか、はたまた根本的な特性なのかは、もしかしたらコンテ監督もエリクセン本人も分かっていないのかもしれませんね。
●終着は近い
試合中にコンテ監督はエリクセンに対し「降りたままでいろ!上がるな!」と指示し続けたという報道がありました。
仮にこれを真実とするならば考察しがいがありますね。エリクセンの降りてくる動きは個ではなく戦術由来になり、お世辞にもパフォーマンスが良いとは言えない状況で尚、その位置でのプレーを求めたのですから。
1試合にも満たない時間で意図を汲み取るのは材料が少なく、僕では妄想の域を出ることが叶いません。
ただ、こうなってくるといよいよ終着が近いです。
求められることに取り組んでいるものの、
それを体現できない
俗に言う「フィットしない」ってやつですね。
しかもこれ以上ないってくらいのシンプルな理由。
エリクセンにとっては元々、崖っぷちではありましたがいよいよ片足を突っ込んでしまった感が否めない試合となってしまいました。
願わくば残りわずかかもしれない時間で盛り返して欲しい。
最後までご覧頂きましてありがとうございました🐯
次節ナポリ戦からは通常営業に戻りますのでよろしくお願いいたします。
FORZA INTER!!⚫️🔵