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【混沌と秩序】セリエA20-21 第3節 ラツィオ−インテル マッチレビュー ※10/6追記あり

こんにちは!TORAです🐯

今回はセリエA第3節ラツィオ−インテル。昨シーズン1勝1敗の対戦成績だった上位チームとの一戦をレビューします。

●スタメン

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●前半−冴え渡る組織守備とカウンター

まず目についたのはラツィオのボール非保持時。

ラツィオは積極的にプレッシングを敢行するタイプではないのでセットするのは分かっていましたが、そのアプローチが印象的でした。

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✔︎CBがボールを持つのは許容。
✔︎代わりに中盤は数的優位で監視。
✔︎コレアは中盤3枚のパスコースを切る繊細なタスク。

ラツィオは左右のCBにボールを持たせたがっていました。
そこからじわじわとボールサイドに人数をかけて囲います。ポジティブトランジションを起こしたらすぐに縦へ突破!カウンター!が最大の狙いに見えました。

それにしてもラツィオの組織的守備は非常にオーガナイズされてますね。選手感の距離も良いし、人に行くところとボールを見るところの判断も素晴らしいです。

特に左は狙われました。
守備に課題を残すペリシッチと快速のラッザリのミスマッチを狙ったのでしょう。
4分にはペリシッチが果敢にプレスかけるも、あっさり剥がされ裏抜けされるシーンも。

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✔︎直前のプレーでバストーニが上がっている。
✔︎にも関わらず果敢にプレスを仕掛けるペリシッチ。
✔︎あっさり剥がされ広大なスペースを使われてしまう。

これはペリシッチ、喝!ですね。
詰めれば数的優位だし、体勢的にも有利な状況だったので気持ちも分からなくはないですが…こんなあっさり剥がされては流石に厳しい。

ただ優先順位は予防的カバーリングだったと思います。マークの受け渡しは出来ていましたので、うまくバランスを取って欲しかったと思ったのは僕だけでしょうか?

この辺り、チームとしてまだまだ課題はクリアになりそうにないですね。

●前半−ビダルとバレッラ

さて、そんな訳でインテルは攻めあぐね、ネガティブトランジションに都度ひやひやする展開が続きますが、20分頃から少しずつペースを握り始めます。

この時間目立っていたのはビダル(正確に言えば前半はどの時間帯も目立ってましたけど)。

人に対してハードに付けるし、予防的な位置取りも目に留まります。
危険の芽を早い段階から詰んでくれることで攻守に安定感が生まれました

一方で戦術面の観点で目立ち始めたのはバレッラ。

ゾーンディフェンスのラツィオにおいて、ルーカス・レイバはその幹となる選手なのでしょう。
他の選手よりと比べ、レーンを変えることは控えて中央に鎮座することを意識している印象です。

これに対し、対面のバレッラはハーフスペースやアウトレーンにササッと逃げて瞬間的なフリーと数的優位を捻出します
前半32分の崩しは彼が起点となりました。

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✔︎バレッラがハーフ外側に膨らむ。
✔︎ルーカス・レイバはそこまで追えず。
✔︎プレーの空間と時間を得る。
✔︎ルカクの楔からビダルのサイドチェンジ。高めで勝負させたいペリシッチの元へ。

残念ながらこの崩しはなんてことないシーンに終わりましたが、コンテ監督がイメージしていた形だったと考察します。

このボール保持の工夫を見て、バレッラのトップ下起用の意図はここにあったのかな?と感じました。

当初は両WBを高めに押し出す為に中盤の3枚を高負荷に耐えられる選手を起用したと思っていました。もちろんそれも意図の1つではあったはず。が、前半はこちらの側面がむしろハマっていたかな、と。

センシとはまた違う、運動量に任せたボール引き出しはインテルのボール保持を支えていたと思っています。

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✔︎バレッラのボールタッチエリア。
✔︎ベネヴェント戦のセンシ同様、広範囲でボールに関与しています。
※WhoScoredより引用

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✔︎ポジションは違うが同じ中盤のガリアルディーニと比べるとそのフレキシブルさが明らか。
※WhoScoredより引用

少しだけ時間を巻き戻しますが、前半30分のラウタロの先制点もバレッラは膨らむムーブを見せています。
結果、バレッラは使われず逆サイドから展開することで崩しましたがコンテ監督のプランの元、再現性がある仕掛けだったことはこのシーンからも窺えます。

惜しむらくはバレッラのプレー精度ですね。慣れないポジションであるせいか、雑さと最終局面での細かい連携不足は否めませんでした。

0-1、インテルリードで折り返した前半は両チームとも監督が求めるフットボールを秩序を持ってプレーできていたと言っていいでしょう。おかげでかなりヒリついた展開になりましたね。

しかし、ラツィオは立て続けのアクシデントに見舞われ、5枚の内3枚のカードを負傷交代という理由で前半とHTに切らざるを得なくなります。

※1試合の選手交代に関しては以下の通り。リマインドまで。
✔︎選手交代は5人まで
✔︎ただし、回数は3回まで
✔︎ハーフタイムの交代はカウントされない

結果論ですが、後半に起きる混沌はここから始まっていたのかもしれません。

●後半−結果的に好転

立ち上がりこそ引き続きインテルが流れを掴んでいましたが、少しずつラツィオのボール保持が安定してきます。

そして55分、バイタルでボールを回されると最後は上がってきた左CBアチェルビがファーへクロス。これを長身のセルゲイ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチに合わせられます。

本来であればこのゴールはインテルがやりたかった形でしょう。二重にキツい失点となりましたね。

ここから流れはガラリとホームチームに傾きます。

要因は主に2つと推察します。
まず、インテル。前半に比べ、人への当たり、というか球際が緩くなった印象です。
特に失点の場面ではその詰めの甘さからアチェルビにプレー精度を与えてしまいました。

もう1点はそのアチェルビとアルベルトです。
蹴れるアチェルビが中央から左CBに移ったことで左サイドのリンクマンになりました。

60分、被カウンターはその象徴的なシーンでしょう。

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✔︎ストラコシャからのリスタート。
✔︎ボールを引き出したアチェルビが自陣からハーフラインまで一気にボールを運ぶ。
✔︎インテル守備陣を引きつけて右のセルゲイに預けボールレーンを変える。

このシーンではアチェルビがボールを運んだことで左に数的優位が生まれたことでスライドを余儀なくされ、セルゲイとラッザリのアイソレーションを許してしまいました。

アチェルビのポジションチェンジはスクランブルですが、むしろポジティブな影響を与えました。
これによりフォローが手厚くなったアルベルトがとても活き活きとプレーできていたことが印象的でしたね。

●後半−さらなる混沌へ

さて、ここから試合が荒れます。

69分、インモービレがシミュレーション+報復行為。グイダ主審は迷わず1発レッドを提示します。

人数の有利を得たインテルが圧倒的にボールを保持しますが効果的な崩しができません。
特に途中交代のブロゾヴィッチはチームのブレーキになってしまったかな…と。

しかし、この混沌に対してもラツィオは秩序を保ち続けました。
コレアやラッザリのスピード、セルゲイの高さ。個を活かした陣地回復でインテルに攻め続けることを許しません。

すると86分、今度はセンシに1発レッド。これでピッチの選手数はイーブンになると、試合はクロージングしてしまった感がありました。

1-1で互いに退場者も1人ずつ。まさに痛み分けといった形でスタディオ・オリンピコにタイムアップの笛が鳴り響きました。

・スコア
ラツィオ1-1インテル
(30分ラウタロ、55分セルゲイ)

●雑感−混沌の中で

3人もの負傷交代、エースの退場というフットボールファンでも中々お目にかかれない展開の中、秩序を保ったラツィオは称賛に値します。

こういったイレギュラーな試合展開では勝ち点に繋がる、何よりも重要なファクトではないでしょうか?

逆にインテルは秩序を保てませんでした。というか、自滅してしまった感すらあります。
スクデットを狙うならこういった試合展開は是が非でも避けないといけませんね。

●雑感−英断の時?

試合を振り返った時に気になったのは左サイド。ずばり、ペリシッチです。

前半の項で指摘したようにボール非保持も今日は怪しかったですし、ボール保持の貢献もやはり厳しい。

相変わらずボールを引き出すような動きは少ないですし(これはコンテ監督の指示かもしれません)、バストーニの攻撃参加を促せないのも気になります。

ここで前半9分、シュクリニアルの攻撃参加のシーンを紹介させて下さい。

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✔︎ビダルが最終ラインに落ちて指示を出す。
✔︎ハキミが内に絞りアウトレーンを空ける。
✔︎空いた大外をシュクリニアルが攻め上がる。

コンテ監督の最も典型的なCB攻撃参加の形ですが、ポイントになるのはWBの動きです。
この動きがないと上がったCBがレーン被りをしてしまうので上がれません(あえて被らせる時もありますが)。

今日の左にこの連携は見られませんでした。バストーニが攻め上がったこともありますが、ただただハーフスペースを上がっただけに過ぎません。
ペリシッチは基本左にベタ張りなので…

バストーニの攻撃参加は昨シーズンの中断明けにトライし始めた3-4-1-2において、最も効果のあったオプションと言って過言ではありません。
しかし、ペリシッチの起用によってコンテ監督は自らこの武器を封印してしまっています。

ペリシッチに求められてあるのはフィニッシュワークなはずで、今日は(一応)アシストで結果は出したので彼を褒めることはあっても、責めることはできませんが…

これでいいのか?という懸念はむしろ強まってしまいました。

今シーズンのインテルは新しいことにトライし過ぎて、昨シーズンの財産を活かせていない印象を受けます。

中盤空洞化は意図的に封印している感がありますが、それ以外のものまで封印してはいざという時の拠り所がありません。

一方のラツィオは正直、昨季と大きく変わった点はないように感じます。しかし、それゆえに自分たちのフットボールを貫き通している感が強い。フィオレンティーナと似ていますね。

今日はこの差が本記事で何度も使用しているワードである「秩序」に繋がったと感じています。
新しいことにトライするのは大賛成ですが、この3節では裏目に出てる場面のインパクトが強いので、昨シーズンからの上積みという形で上手く乗っけて行って欲しいところ。

まだ3節ですがメルカートの締め切りはもうわずかであることを考慮すると、個人的には英断の時と思っています。

LWBの補強、そして選手起用方法。
土壇場で新しい噂も出て様々なパターンが想定されますが、なにかしらのアクションはして欲しいと思っています。

次節は代表ウィークを挟んでのミラノデルビー!是が非でも勝利を!

FORZA INTER !!⚫️🔵

●10/6追記

更新後に気になるデータがあがってきましたのでピックさせて下さい。
Between The Postsによるパスマップです。

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本記事でバレッラのトップ下起用について述べましたが、このパスマップを見ても左右へのフレキシブルさが分かります。

バレッラは最もプログレッシブなパス(端的に言えばゴールに向かう効果的なパス)を出しており、かつルカクの落としを最もレシーブしたプレーヤーで戦術的な貢献が窺えますね。
尚、選手本人のパフォーマンスは別の話。笑

ここからが本題。
このパスマップで印象的なのがバストーニの位置。明確に高めに位置しており、ガリアルディーニのニアでプレーしています。
またビルドアップの中心であったことも示されています。

これは

「バストーニの攻撃参加の現れだね!」

ではなく

「バストーニがペリシッチの分までビルドアップを担保している」

と見るべきでしょう。

この事象はどこに重きを置くかで見方が変わります。

バストーニがビルドアップをフォローしてくれるならペリシッチが高い位置を取れて崩しに専念できるね!
だったり、

バストーニにビルドアップの負荷がかかっているから高い位置に上がっていけないのでは!
だったり、

だから左サイドは被カウンターが刺さりやすいのか!
だったり。

個人的にペリシッチWB起用はインテルのシーズン序盤において最もフォーカスを当てないといけない戦術面のポイントと思っております。

皆さまはどうお考えでしょうか?ご意見お聞かせ頂けると幸いです。


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