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【展開と内容のコントラスト】CL20-21 グループB第5節 ボルシア・メンヒェングラートバッハ−インテル マッチレビュー

崖っぷちのインテルは勝点3がマストな試合。
理詰めで挑むが試合は点の取り合いに。
「一体なぜ?」が本マッチレビューの核である。

こんにちは!TORAです🐯

CLグループリーグ第5節ボルシア・メンヒェングラートバッハ(以下BMGと表記)−インテルのマッチレビューです。


●スタメン

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・BMG
46分、ヤンチュケ➡︎ザカリア
70分、スティンドル➡︎エンボロ
78分、ヴェント➡︎ヴォルフ
・インテル
60分、ダルミアン➡︎ハキミ
71分、ラウタロ➡︎サンチェス
87分、ヤング➡︎ペリシッチ

●前半−狙いは明確

今回のインテルを一言で表現すれば「昨季から中盤空洞化を除いたインテル」が妥当かなぁと考えます。

特にビルドアップはそのまんまですね。非常にプレーンな形でした。

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画像は【考察】インテルの変化−”1”に求めたもの、より抜粋。

意図は

ⅰ)BMGの快速アタッカーたちの中央カウンターを予防する。
ⅱ)インテルのWBにあえて高い位置取りをさせないことでBMGのSBを釣り裏のスペースを作る。

と見ました。
特に後者でしょうね。プレビューでも取り上げた通り、BMGの問題になっていてインテルも明らかに狙いを定めていました。

対するBMGのボール非保持、こちらもプレビューの通りですが守備のアプローチを変更してるっぽいですね。
片方のSHが中盤ブロックに降りる4-4-2の選手配置は変わらないものの、ボールホルダーに対しての圧が前回(の特に前半)とは一段違います。

インテルからすればこのアプローチはむしろ助かりました。というか、こう来ると分かってたからこそ今回の手段を選択したのでしょうね。

この狙いはジャストだったと思っています。
例えば11分のシーン。

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✔︎シュクリニアルからダルミアンにパスを付けてヴェントを釣る。
✔︎空いたスペースにバレッラが侵入。

このシーンではダルミアンのパスがヴェントに引っ掛けられてしまいましたが通っていればチャンスに繋がっていたでしょう。
ヴェントが食い付いたと同時にバレッラも動き出したところを見るに事前準備の高さが窺えます。

さらに28分。

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✔︎ダルミアンが幅を取ることでCB−SB間のスペースが開く。
✔︎すかさずバレッラが真っ直ぐ侵入。ヤンチュケを困らせる。

バレッラからルカクのパスがズレてもたついてしまった隙に囲まれてしまい、こちらもチャンスに結びつきませんでしたが意図と再現性を感じられるシーンでした。

最終ラインのスライド精度や立ち位置の微調整不足。

特にヤンチュケ。仮に「ルカクを死んでも離すな!」という指示が出てない限りは厳しいと言わざるを得ませんね。

また17分の先制点に象徴されるようにルカクとのマッチアップも不利であった感は否めません。177cmとサイズに差がありますので当然と言えば当然だけれども。

まぁ、この辺は彼を責めるよりも戦術浸透不足を指摘するべきでしょうか。インテルも現在進行中で痛感してますが、戦術の変更って本当に難しい!

という訳で彼がHTで退いたのには非常に頷けました。とは言え「え、いきなり交代なんだ!」とは思ったけど。HTにCBが戦術的な交代ってそこそこ大胆ですよね。
さらにその交代が本来中盤の選手であるザカリアだったことにもびっくり。
「最終ラインの練度はこの試合中に改善できない。ならば、対ルカク用にフィジカル優先の起用をしよう!」という感じでしょうか。

●前半-押し込まれた理由

時間を少し巻き戻します。

30分くらいまではインテルの策がハマりペースを握っていましたがその後は一転してBMGに流れが渡りました。ホームチームがひたすら押し込み、アウェイチームを自陣に張り付けにします。

こうなった事象の考察に移る前にBMGのボール保持を確認します。

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✔︎DHがCBの横に落ちてビルドアップの入口に。
✔︎アウトとハーフレーンで菱形を作る。

そうです。インテルのビルドアップと酷似ですね。
DHが最終ラインに落ちるのもサイド重視の攻撃も、BMG本来の形ではありますが僕がチェックした試合はその全てでもう少しラフ。アバウトでもとにかく前線へフィードを届けて質的優位で殴る!的な印象を受けましたが今回はかなり丁寧でした。尚、これはスタッツにもハッキリと表れています。

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✔︎CL第1節と第5節。対インテル戦におけるMGBのパス回数を比較。
✔︎総パス回数は1節と比べ100回以上増加。
✔︎ロングパスの割合は1節と比べ10%以上の開きが。

今回のインテルは昨季の守り方、まずはセットしてそこから縦に捕まえに行くというスキームだったのでいきなり蹴っても効果的じゃないという要素もあるでしょうが、”5-3ブロックの3の横”をしっかりと狙うぜ!という要素がより強かったと見ています。

さて、肝心の押し込まれてしまった理由は主に2つあると考察しています。
)BMG、ビルドアップの入口出口が輝く
入口で存在感を発揮したのは左DHのノイハウス。右DHのクラマーも同様のタスクですが、やはり中心となるのは彼ですね。

✔︎FBref.comによるとノイハウスはパスでボールを運んだ距離がチームNo.1(尚、クラマーは4位)。
✔︎ゲームメイクの中心であることがスタッツからも窺える。

入口の質が高ければ出口に繋がるのは道理。
その出口はテュラム。フィジカルありドリブルありのプレーヤーなので迂闊に詰めることができず、ラインが下がってしまう温床に。
インテルとしては得意の右サイドで深さを取られているので押し返すことが容易ではなかったのも大きかったですね。

ⅱ)陣地回復の手段
2点目はクリア。インテルは自陣深くにあってもとにかくクリアが控えめ。

✔︎FBref.comによるとクリアの総回数はセリエAで2番目に少ない。

「自陣からしっかり繋いでいこう!」というプランだということは分かりますが、一方で「デュエルに強いターゲットマンがルカクしかいない!」という点が影をおとしていると思っているのは僕だけでしょうか。
ラウタロも”トーロ”の愛称通り、ボディバランスに秀でていますがやはり期待値が高いのはルカクのみかと。

クリアすればセカンドボールを回収される確率がより高い。
ならば自陣深くでのトランジションリスクよりもパスを繋いで二次攻撃の発生防止を優先する。

余談ですが、先日トッテナム-マン・シティ戦を観ていてトッテナムのエンドンベレが”中盤のポストプレーヤー”的なタスクでプレゼンスを発揮してました。「あぁ、こうゆう選手いたらインテルも楽にクリア(フィード)できそうだな〜」とオンタイムで思っていたところ。エンドンベレ・・・アリだったかもしれません(シュクリニアル売らなくて本当に良かったけど!)。

ということで、まとめると

BMGのビルドアップの質が良く押し込まれた。
それが得意の右サイドだったので尚痛かった。
クリアをしない(できない)ゆえ
シンプルな陣地回復が容易ではなかった。

この後ロスタイムに失点するんですけど、これはバストーニのパスミスを引っかけれれたことが発端です。やっぱりリスクはありますよね。

●後半-前からプレスで蘇る

流れと時間帯、ダブルで嫌な失点。コンテ監督はすかさず手を入れてきました。
変更点はボール非保持の前からプレス。

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✔︎バレッラが1枚上がりMGBのダウンスリーにそれぞれ人を付ける。
✔︎その為、3-4-3のような選手配置に。
✔︎進軍されたら中盤ブロックまで戻り組織的守備に移行。

今シーズンお馴染みの「バレッラ高負荷作戦」が発動しました。

立ち上がりはそこまで効果があるとは思えませんでしたが、時間が経つにつれ慣れてきたか、それともBMGが疲労してきたか。機能してきましたね。

64分の2点目はこの前からプレスでプレー制限、中盤でガリアルディーニが奪うとブロゾヴィッチがすかさずCB-SB間にパスを通してルカクがネットを揺らします。
前半からの再三の狙いと後半の修正が実った手応えを感じるゴール。また、このシーンではルカクがザカリアとの1対1を余裕を持って制した訳ですが、73分に生まれたゴールもザカリアの対応には難がありました。

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✔︎サンチェスがトップ下の位置に置いてニアゾーンへ展開(得意のやつ)。
✔︎ハキミ、グラウンダーの折り返し(得意なやつ)。
✔︎走り込んだルカクが難なく決める。

このシーンでザカリアが背後にいたルカクに気づいていなかったか、はたまた気づいていたけどその先のビジョンが見えていなかったか。
対応が明らかに後手を踏んでいました。これまたインテルも今シーズン最序盤は痛感しましたが本職のCBってやっぱり大事だなと個人的に実感。

その後は再度、パスミスから失点をしてしまうもなんとか耐え切ったインテル。
今季のCL初白星で決勝トーナメント進出になんとか望みを繋げました。

・スコア
BMG2-3インテル
(17分ダルミアン、45+1分プレア、64分ルカク、73分ルカク、75分プレア)

●雑感-コントラストは強みと弱みから

試合はジェットコースターのような心臓によろしくない展開でしたが、一方で内容は理詰めで堅実。
このコントラストが面白い好試合でしたね。

で、なんでこのコントラストが生まれたかと言うと、強みも弱みも再現性があることに起因するかと。

狙い通り+徹底のボール保持や後半の修正で得点できたことは素晴らしいですが、「押し込まれて耐えられずに被弾する」流れだったり、自陣でのパスミスは悪い意味での再現性が目立ちました。

このなんとも分かりやすい問題を抱えて欧州の舞台を勝ち進むことは不可能と断じていいでしょう。

また、このサッカーだとアタッキングサードでの選択肢が狭まるのでツートップの依存度もより大きくなるのも見逃せません。

✔︎FBref.comによるとこの試合、インテルのゴール期待値は1.7。
✔︎内、ルカクが0.7、ラウタロが0.7とツートップで1.4を占める結果に。
✔︎ちなみにダルミアンのゴールは期待値、すなわちチャンスの質が低い=個のスキルで決め切ったと判断されている。
✔︎ルカクも2ゴールなのに期待値が1もないので同様に決定力◎。反対にラウタロは・・・と読み取れる。

取り急ぎは決勝トーナメント進出が最重要事項ですのでシャフタール戦も昨季ベースのサッカーをするのがベターでしょうが、足踏みしてる感を否定できない現状はなんとももどかしいですね。なんとかミランやナポリのように上積みできないものか。

さて、裏のシャフタール-レアル・マドリードはシャフタールがレアル・マドリード相手にまさかのダブル達成!
これで最終節のレアル・マドリード-BMGは本気のやり合いになることでしょう。崖っぷちギリギリでしたが追い風も吹いてきましたね。
まずは次節のボローニャ戦、しっかりと勝ち点3を積み上げて、運命のシャフタール戦に備えましょう!

FORZA INTER!!⚫️🔵

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