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【全コンペティションを、戦う】2024/25シーズン インテル序盤を紐解き、その先を考える
こんにちは!TORAです🐯
今回は毎年書いている”新シーズンの戦い方考察”記事。
…『戦い方考察』としましたが、今季を紐解く上では
戦術:目標を実現するための具体的な手段や方法
ではなく、
戦略:クラブが成長するための進むべき方向性、目標
に、より重きを置かなければならないと考えます。
去年や一昨年の記事よりもふんわりするかと思いますが、戦術ではなく戦略に関しては”そのクラブのファン”でないと踏み込めない点が多いと思っております。説得力や重みが違うというか。筆者は一応インテリスタのつもりなので、今季はフォーカスしてみるのだ。
尚、本記事はボール保持時の話で進行します。非保持に関しては大枠よりも練度で、こちらはもう記事にもしております。喝。
●概念的なお話
さて、まず押さえておきたいのは概念、基礎的なノウハウ的部分。
冒頭に添付した記事の通り、僕は昨季のインテルがポジショナルなサッカーを超えた特異なアウトプット(=リレーショナル、ファンクショナルプレー)をしていると主張しました。
有難いことに?その後、他の有識者も似た表現をしており、直近ではとあるサッカーメディアにインテルの記事が上がっておりましたが、「リレーショナル(≒関係性、連携)」というワードも使われておりましたね。
昨季の見方は間違っていないという前提の上で、今季の在り方を考察説明いたします。
あくまで私見ですが、昨季のリレーショナルで良い意味で再現性の薄いサッカーから、またポジショナル色を戻している印象。
念のために記載しておくと、ポジショナルやリレーショナルプレーは戦術ではなく、もっと根本的な概念なので、この点においては戦術変更ではなく、戦略変更と捉えるべきでしょうか。
欧州サッカーの『概念トレンド』はざっくり「ポジショナルを大前提に、構造や原則を崩すリレーショナルもできる」だと思っていますが、指針となる域で体現できているクラブは欧州トップレベルでも実は少ない。
昨季のインテルは数少ない”体現できているチーム”として界隈の有識者からも注目されましたが、今季はあえてトレンドから少し逆行してる感想を持ちます。昨季(リレーショナル濃いめ)と初年度(王道ポジショナル)を足して、2で割ったイメージでしょうか。
リーグを席巻した機能性優位・関係性優位、つまり、即興的な超連携は確実にトーンダウン。
これは疲労やコンディション低下によるチームパフォーマンス由来もありますが、それだけでなく、そもそも「昨季よりも無理せずに、ダウンコントロールしようとしている」と見えます。
理由は、昨季の課題、ターンオーバー、過密日程。そしてこの3点が絡み合うことにあると思っています。
✅昨季の致命的な課題として、スタメンと控えにおいて、特にリレーショナルなクオリティの差が挙げられる。
✅今季は昨季以上の過密日程、総スカッド勝負なので課題改善はマスト。
✅ジエリンスキやタレミ等のタレントを獲得するなどスカッドの強化を図るが、すぐに関係性が構築され、連携が確立する訳はない。2人ともオフに怪我もあり、代表ウィークもクラブにいないし…。
✅その上、オフ含む昨季の過密日程でコンディションが整っていない選手が多い。
✅したがって、ポジショナルの色を濃くし、最大火力・ピーキーさよりも安定火力・再現性を優先する。
目的もまた、理由とリンクします。
課題と向き合いつつ、過密日程乗り越えるためのターンオーバーをする。マロッタやシモーネ、ラウティなどインテル戦士たちが口を揃えて言う「全コンペティションを戦うために」。
●戦術面の変化
具体的な戦術面に言及すると、再現性という面においての決定的な違いとして主に挙げたい点は3つ。
先ずは基本メンバーの確認をしていきましょう。
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ターンオーバーのみならず、負傷により記載外の選手配置も存在しますが(左のビセックやダルミアンなど)、スターティングは現状、昨季と一切変わりなし。
唯一、右WBのドゥンフリースが直近盛り返してきている感もありますが、同時にダルミアンが戦況に合わせて左右問わずで投入されるための意図的温存でもあったので、ここからでしょうか。
では、本題です。
①さらに左肩上がり
今季の最たる戦術的特徴はさらに左肩上がりとなった点。というよりもディマルコ、ですね。
相手にバレバレでも、例え崩し切れてなくとも、その左足を振れば可能性が生まれる絶対的な”質”。「再現性」と切り口においてのメインウェポンだと評価しています。
スタッツを見てもここが最もドラスティック。
ディマルコは高い位置でのボールタッチが劇的に増え、その分、低い位置でのタッチが減っています。つまり、ビルドアップ関与成分が減り、チャンスメイカー色を強めています。
✔︎ディマルコのアタッキングサードにおけるボールタッチ数/1試合平均
23/24シーズン:27.7回(全体の41.6%)
24/25シーズン:32.2回(全体の53.0%)
✔︎ディマルコのディフェンシブサードにおけるボールタッチ数/1試合平均
23/24シーズン:14.7回(全体の22.1%)
24/25シーズン:9.25回(全体の15.2%)
お家芸のクロスはスタッツサイトFBrefによるとリーグ12試合時点で101回。リーグトップとなる数字で、チーム総回数のなんと37.3%を占めます。
昨季はシーズン196回、チーム総回数の24.4%。試合数が少なく、まだスタッツの分母が少ないとはいえ、これは確度が高いでしょう。
今季どれだけ彼のクロスが”チームの殴り方”になっているかが分かりますね。
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②バレッラの解放
昨季は仕事の幅を広げ、低めの位置でチャルハノールに続く『第二の心臓』としても機能したバレッラ。
今季はディマルコが左で高めを取る分、第二の心臓…とまでいかないにしてもビルドアップ担保役はムヒタリアンが務める頻度が高くなりました。相対的に右のバレッラはフィニッシュ隊としての仕事が増加。
彼の攻撃性能もまた再現性に強く紐づいており、特に停滞した試合や局面ではバレッラの創造性によって打開されるシーンは少なくありません。
直近はチャルハノールの離脱で彼自身がアンカーをしたり、タスクにもチームにも慣れていないジエリンスキのフォローをしており、結局心臓しちゃってますが、それでも1試合平均のチャンスメイク的なスタッツは昨季よりも多いです。
📊 Nicolò Barella created SEVEN chances against Empoli- the most any player has done in a single Serie A game this season. 🇮🇹 🪄
— Inter Xtra (@Inter_Xtra) April 2, 2024
[via @WhoScored] pic.twitter.com/GqhFLLasgt
具体的にアシスト期待値や決定機創造・関与等。チームでディマルコに次ぐ数字ですが、彼ほどハッキリとした差異ではなく、スタッツ紹介にするには参考にし難いので今回は端折ります。
しかし、数字抜きにしても、海外の戦術好きインテリスティなんかはこの論調がかなり強いですね。
③10番と9番を逆に
最後に挙げるは、自慢のツートップである”テューラ(テュラム+ラウタロ)”の主業務入れ替え。
昨季は背番号9に反して、10番の振る舞いをしていたのはテュラム。逆に背番号10の主将はストライカーとして得点を重ね、見事セリエA得点王に。
しかし、今季は逆。テュラムが奥、すなわち9番。ラウタロが手前、すなわち10番の位置をベースとします。
勿論タスクが交差したり、あえてタスクを被らせたり、9・10番以外のタスクをこなすことも試合の中で幾度となくあります。テューラはインテル歴代の中でも超万能型コンビですからね。あくまで”ベース”の話。
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昨季リーグ得点王をなぜゴールから遠ざけるかの考察が難しいのですが、理由が単一ではなく複合的なのは間違いない。
ⅰ)さらに相手が引いてくること(≒ドロー許容)が予想されるので、相手にカオスを与えるための流動性担保として、ポストプレーの”技術”がより上手いラウティを潤滑油としたい
ⅱ)フィニッシュの再現性はディマルコのクロスが肝だからこそ、最前線には高さとスピードが欲しい
ⅲ)シンプルに、昨季と変化を出すことで、対戦相手を惑わせる
他にも様々考えられますが、現状は今ひとつしっくりきませんね。
しかしながら、これは戦い方だけでなく、選手の成長、具体的に言えば個人戦術のアップデートも内包しているとも捉えるべき。
昨季のバレッラをはじめ、ディマルコやチャルハノールのように今・未来含めたキープレーヤーには万能性を高めた上で、チーム現況にあった仕事をしてもらう。
主にプレミアと比べると財政的な問題があまりに深刻なセリエA。特に借金を抱えるインテルは1シーズンでもCLを逃すと次の2、3シーズン、下手したら5シーズンくらいの中期的なダメージを負うとして過言ではありません。
目先のことだけでなく、予期せぬ入れ替えがあってもスムーズなチームビルディングをするための対応措置はシモーネやマロッタらの頭の中には確実にあるでしょう。この時代に万能型の道に進むのは(基本的には)選手のためでもありますね。ロジカルに説得して選手のモチベーションを高める、監督の人的マネジメントは重要ですが。
「いや、ラウティはFWとして既に超万能型じゃん?」
このツッコミには既に書いている通り、僕も首を縦にブンブンなんですが、ラウティが不調だからこそ、今後の対応措置として”テュラムの9番色を強める”ということなんでしょうか。
ここは現場以外はどうやったって考察の域は出ませんね。みなさまはどう思いますでしょうか?
僕は先を見据えるからこそ、ラウティに9番タスク濃い目にして上げて、得点感覚を少しでも早く取り戻してほしいかなぁ。
⭐️おめでとう、ラウティ⭐️
— TORA (@labeneamata104) October 30, 2024
インテル外国人選手の歴代ゴール数1位! pic.twitter.com/IcUFhfIyGk
その他、細かい違いもありますが、平たく言えば「キャラクター発揮」がイマの戦術的テーマかなと考察します。
総スカッド勝負のシーズンではありますが、インテルは所謂「誰が出ても同じサッカーができる」という理想テンプレをそもそも追いかけていないと考えていて、仮にこの思考が合っているとしたら個人的には賛同です。というのも、この土俵で戦うとメガクラブ相手には絶対に勝てないから。
リレーショナル成分を薄くし、”その時のチーム状況・メンツ”と相手によって戦い方のコンセプトを選ぶ=1試合1試合の殴り方に再現性を持たせることで、苦しいシーズン序盤を乗り切ろうとしている。
だからこそ、出場する選手たち、コンディションが(相対的に)整っている選手たちがより重要に。彼らの個性発揮のために、その位置や配置に優位を持たせることでポジショナル色が濃くなっているのです。
ディマルコや(高めで輝いた時の)バレッラが目立つのは、それだけ彼らのキャラクターが強く、また、試合を問わないから。シンプルに中心選手。
他のキャラクターが輝いた試合をひとつ挙げるなら、なんと言ってもアーセナル戦。ターンオーバーを大目的に、ダルミアンとビセックの個性を引き出しまくったこの試合は「全コンペティションを、戦う」という今季テーマの象徴的な試合でした。だからこそ、続くリーグ天王山は絶対に勝たないと!だったのですが!
●シーズンプランは…
「昨季(リレーショナル濃いめ)と初年度(王道ポジショナル)を足して、2で割ったイメージ」
「ポジショナルの色を濃くし、最大火力・ピーキーさよりも安定火力・再現性を優先する」
ここまで長々と考察しましたが、タイトルにもある通り、これは”序盤”のお話。シーズンプランとしては徐々にリレーショナルプレーの濃度を元に戻すのでは、と睨んでいます。
アタランタ戦に代表するように、やれない訳ではありません。今振り返ると、あの試合はアタランタのマンツーマン攻略のための戦い方として、「リレーショナル成分を意図して戻す」というコンセプトだったのでしょうね。
元に戻す、というよりも、ここから先はさらに新しいものになっていく。と表現すべきでしょうか。
今ポジショナル色を戻しているのは、ターンオーバーやコンディション不良の担保。現在生じている不利益を補う補償。
同時に利益を享受して目指すは、試合が積み重なることでの関係性の広がり。奥行きもさることながら、広がり。
新しいポテンシャル・化学反応・コンビネーション・理論体系化による、新しいリレーショニズム。
これこそシモーネが思い描く、昨季の属人性課題へのソリューションではないでしょうか。
そしてその先にはリーグ戦やCL、コッパイタリアだけではなく、クラブW杯がある。インテルにとってクラブW杯は超重要です。誤解を恐れず発すると、我が軍にとっては結果というよりも内容がむしろ重要。
サッカーに興味を持つ投資家が最も多いアメリカ開催でのスーパーショーウィンドウで魅力ある訴求ができるか否かは、今後のクラブの命運を分けると言って大袈裟はありません。
シーズン開幕前から「今季のインテルはシーズン後半に照準を合わせる」という声が挙がっているのもここに紐付く側面も強いでしょう。
しかし、「言うは易し行うは難し」。狙い通り、後半にコンディションもパフォーマンスも高めて、前半の借金を返済してーの利益得てーの出来たら苦労ありません。
その実現の為にも、試合後ごとのコンセプトと再現性で許容勝ち点を維持し、チームの醸成を促しているというファクトも存在しそうですね。
全コンペティションを、戦う
今季が例年以上に点ではなく、線で見るべきシーズンであることは間違いありません。
とはいえ、僕も現状にはモヤつきが晴れませんが、シーズン後には昨季のように澄んだ夜空に星が輝くことを信じています!
超がんばれ、インテル⚫️🔵
最後までご覧いただきましてありがとうございました🐯
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