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【必然の事象】セリエA20-21 第4節 インテル−ミラン マッチレビュー

言い訳の余地はあるものの余儀ない敗北だった。
発生した事象はインテルのアキレス腱を的確に突いていたのだから。

こんにちは!TORAです🐯

今回は伝統のミラノダービー!セリエA第4節インテル−ミランのマッチレビューです。

今回のレビューはプレビューの内容に合致した(伏線を回収した)形が多いので、未読の方は是非こちらからご覧下さい!


では見ていきましょう。

●スタメン

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●前半−意図と事象

さて、この試合は立ち上がりのゲームの入りが山場でした。
まぁ勝敗を決定付けた2失点を喰らっているので当然なんですけど!笑

なので、今日のレビューは前半、特に立ち上がりにフィーチャーして進行いたします。

まずピックアップしたいのは今日のインテルのフォーメーションは可変式だった点。
と言っても大袈裟なものではなく、ボール保持時は△だったのがボール非保持は▽になる形です(その為、各データサイトでは▽表記が目立つ)。

理由はシンプルでインテルの中盤3枚はミランの△に合わせ、マンツーマンでプレッシングをかける為に▽で合わせてきました。

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✔︎ムービング系レジスタであるベナセルにバレッラ。
✔︎フィジカルゴリゴリのケシエにビダル。
✔︎質的な要素で対抗できる選手をマンマークにし、明確さを強調。

プレビュー通り、ミランのビルドアップはCBとDHの細かいパス交換から構築していくのでその基幹となる選手をハードマークで潰したかったんでしょうね。

今季のインテルといえば攻撃!ですし、実際に本試合は攻撃重視で前がかりになったインテルをミランが効果的なカウンターで刺す!というのが試合の大枠でしたが、このアプローチを考慮すると実はコンテ監督はボール非保持から試合に入っていたのでは?と僕は考えています。

しかしチームとしてここにフォーカスを当て過ぎてバランスを失ってしまった感が否めません。
意図は分かりますし、上手くやれば対ミランにおいてキラーになり得るアプローチだと思いますがハイプレス若葉マークのインテルにとって「上手くやれば」の条件は少なくともベストメンバーに近い人員配置が必至でしょう。

ゆえ、今日は悪手。自分たちで自分たちの首を絞めてましたね。
上述の明確なマンマークに加え、フォーメーションが噛み合い過ぎるので、結果、フルのマンツーマン!というシチュエーションになることが多かったです。

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これがコンテ監督の狙いだったかは分かりません。ただ事象として発生していました。

●前半−アキレス腱が丸見え

で、問題なのはやっぱりリスクマネジメントがおそろかになっていること。
例えば、マンツーマンディフェンスで有名なアタランタは最終ラインのサイドどちらか一方を捨てリターンを減らす代わりに、最終ラインは1枚余らすことで予防措置をしています。

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しかし今日のインテルにそんなものはありません。
はい。ここでプレビューのフラグ回収です。

1失点目に繋がるPKを与えてしまったシーン。
これはカラブリアの運ぶドリブルに対して、あっさりとペリシッチのプレスが剥がされたことがトリガーになり、後手の対応を強いられたインテルが崩されました。

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✔︎ペリシッチが剥がされたのでブロゾヴィッチがケアせざるを得ず。
✔︎ビダルはブロゾヴィッチと連携してボール奪回したかった?(チャルハノールは見れていたが…)
✔︎ダイアゴナルランでパスコースを確保したチャルハノールにデ・フライが対応せざるを得ず。
✔︎イブラヒモヴィッチvsコラロフという不安なマッチアップを許してしまった。

2失点目も同様。
ペリシッチのボールロストからブロゾヴィッチがサーレマーケルスにあっさり剥がされたことに機にオープンスペースでレオンとダンブロージオの1対1を許してしまいました。

ⅰ)フルのマンツーマンで予防措置は特になし。
ⅱ)なのにマンツーマンであっさりとプレスを剥がされるもんだから後手後手の対応を強いられる。
ⅲ)失点の入口は2得点とも懸念のあった左から。

インテルのアキレス腱はアンクルパンツを履いているかの如く丸見えで徹底的に狙われました。
うん!これじゃ失点しない訳がないぜ!!!

繰り返しますが、コンテ監督がマンツーマン風味を狙っていたかは分かりません。もしかしたらリスクマネジメントと火力をトレードオフとして割り切っていたのかも知れません。
ただ起きてしまった事象はミランのスピーディーな攻撃と相性が最悪でした。

失点に大きく関与してしまったコラロフ、ブロゾヴィッチ、ペリシッチも率直に言って指摘されて然るべきと思っています。失点はチームのせいですが彼らは明確にそのトリガーになってしまいましたからね。

ただ最も責任が重いのはやはり監督のコンテでしょう。欠場者の多さは情状酌量の余地はあるものの、「いや、こんなハズじゃなかった!」で済まされる采配じゃありません。
構造に致命的な欠陥があり過ぎますよ。

●前半−シチュエーションの作り方

インテルのことだけガーッと指摘してきましたが、ミランのクオリティも十分勝ち点3に値するものでした。
どこが良かったかは、そのほとんどがプレビューが通りなので省略。本項では1つだけ取り出します。

シチュエーションの作り方が上手い!

DAZN解説の細江さんが仰ったようにミランはダービーに向けて周到に準備していた感があります。
例を挙げたいシーンが前半32分。ラウカクとバレッラで素晴らしい崩しを見せた直後です。

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✔︎ドンナルンマからマークが甘かったカラブリアへ。
✔︎サレマーカーズが降りてきてボール引き出し&コラロフを釣り出す。
✔︎チャルハノールがリンクマンになり、ぽっかり空いたコラロフ裏のスペースへ。
✔︎そこからダイアゴナルにスルーパス。受け手はポジションチェンジしたレオン。

サレマーカーズのスルーパスが長くなってしまったのでハンダノヴィッチが問題なく対応しまたが実に素晴らしい崩しでした。

先ほどのアキレス腱の話ですね。コラロフのスピード不足とペリシッチ&ブロゾヴィッチの個人守備の性能不足。これを的確に突くことでビルドアップから擬似的なカウンターを創造しています。
スルーパスの受け手がイブラヒモヴィッチではなくスピードのあるレオンなのも◎。完璧にデザインされてますね。

このようにミランはインテルをしっかりスカウティングした上でそのウィークポイントが顕在化するようなシチュエーション作りが本当に上手。
本試合はインテルの方がシュート数も決定機もあり決め切れなかった点も敗北の一要因ですが、それはミランのボール保持やポジティブトランジションの質も内包していると思ってます。

特にビダルとブロゾヴィッチは戦況を注意深く見ていた印象で、ゆえにフィニッシュワークの厚みを加えられなかったシーンが散見。
これは彼らを責めているのではなく、そうさせたミランの攻撃を称賛するものです。

●前半−唯一ポジティブ

そんな中、”戦術面”で唯一ポジティブだったのはバレッラです(個のパフォーマンスで素晴らしかった選手はもちろん他にもいます)。

今回は可変システムだったと述べましたが、彼は文字通りインサイドハーフとトップ下のタスクを同時に体現してました。「ポジションからタスクへ」という界隈でお馴染みの枠組みですね。

こちらに関しては考察記事にする予定です。

本記事で超端的に説明するとトップ下バレッラは今のインテルで唯一無二です。

パスミスだとかシュートミスだとか、表面的はミスはありますが、それは大したことではなくて戦術的にはマスターピースになっていると断言できます。
まぁこれは僕なんかがドヤ顔で説明するまでもなく、Twitter上でも称賛の嵐でしたね。

この成長はコンテ監督の求める今季のモダンフットボールに不可欠。それを絶賛レベルのパフォーマンスで応えたバレッラには手放しで褒めちぎりたいところです。

●後半−アジャストの応酬

はい。前半フィーチャーし過ぎました。笑
後半はアッサリいきます。その大枠を短いセンテンスで表現すると「アジャストの応酬」がピッタリかなと思っています。

後半、インテルはボール非保持(カウンタープレッシング)をアジャストしてきました。ただこれは戦術面というよりも個人の意識レベルの方が強かった印象。
したがって結局のところ解決や改善には至ってません。

尚、ミランも同様です。戦術というよりも個人レベルのアジャストがより目立つ。
特にケシエは目を惹きました。ビダルへのマークの比重を落とし、周囲、特にルカクへのケアを強めました。
推察の域は出ませんが、おそらくビダルがバランスを取っていて上手く攻撃参加出来なかったらことを見抜かれていたのかな?代わりにボール収めが良かったラウカクへの注意を強めたって感じでしょうか。ピオーリを彼ならこの重めのタスクをこなせるという信頼があったんでしょうね。

ボール保持面での変化もありましたが、個人的にはボール非保持の改善が印象的でした。そのせいでしょうか。スコアは動きません。
するとミランは交代策を挟みながら徐々に守備モードをリトリートへとアジャスト。
インテルはエリクセン、サンチェスと攻撃的なカードで火力を積もうとしますがハマりませんでした。

無念。今回のミラノは赤と黒に染まりました。

・スコア
インテル1-2ミラン
(13分(PK),16分イブラヒモヴィッチ、29分ルカク)

●雑感−成熟度の差

こちらもバレッラ(トップ下)の特集記事で取り上げる予定ですが、今季のインテルはモダンサッカーの最先端に近いシステムと思っています。

対するミランは最先端!って感じではありませんが、システムを超えたシチュエーションの作り方やサイドのフレキシブルなアタック、その恩恵で中央被カウンターのリスクマネジメントに繋がっている、など随所にモダンさを感じさせます。

上述で「ポジションからタスクへ」という枠組みを紹介しましたが、これとセットで「システムからシチュエーションへ」という枠組みも有名です(この枠組みももう次のステージに移行しそうですが)。
インテルとしては言い訳したい点や腑に落ちない点ももちろんあるんですがモダンサッカーシステムを志向する同士、その成熟度がミラン優位なシチュエーションを作り上げました。本記事で何度も取り上げたワードである「事象」は起こるべくして起こった必然のものだったということです。

一方、成熟度とは別にコンテ監督が現戦力と戦術、ミランの特性に対する落としどころを間違ってしまったことがシチュエーションに影響してしまったのもまた事実。
ですが、だからと言ってこの一戦だけ昨季のサッカーで挑むのも「それどうなの?」って感じはします。

詰まるところ、これが今のインテルの現在地ってことなんでしょうね。
非常に悔しいですが余儀ない黒星です。

以上です。

ご覧頂きありがとうございました🐯

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