【5の劇場】セリエA 23-24 第4節インテルvsミラン レビュー
こんにちは!TORAです🐯
今回は第4節の目玉、3連勝同士がぶつかり合う唯一の試合「ミラノダービー」のレビューです。
プレビュー未読の方はぜひ合わせ技一本でお願いします!記事ありきで進行するので。
●スタメン
●前半-インテルはローマを踏襲
前半5分、ホームチームが幸先よく先制。
ドゥンフリースの縦パスをテュラムがチャウと競り合ってボールをモノにし、奥を抉ってのクロスを起点にムヒタリアンがネットを揺らします。
先制点はその後のインテルの戦い方を如実に表していました。
新しいミランのビルドアップ(カラブリア偽SB)に対して、インテルが選んだアプローチは直前3節ローマの踏襲。
ローマは基本的にミランのIHにはCB、(実質的に)CHにはIHが付く仕様。
それに加えて、
ⅰ)ツートップがミランのCHを背中で見る
ⅱ)CHのパレデスを+1のフォロータスクに
上記2点の設定で、今季ミランのテコ入れ場所である中盤の設計書を破ろうと目論みました。
結果的に2失点、黒星がついてしまったものの、アプローチそのものは決して悪くなく、前回プレビューの締めにした
「じゃあインテルはどう戦うか?」
に対しては
「ローマを踏襲したら?」が僕の意見で、スペースでも説明させて頂きました。
結論、シモーネ監督も同じ企図だったのかな、と。インテルの取り掛かりはローマ味がありました。
イコールで通ずるところはツートップ。最終ラインのボール保持は許容、代わりに実質的なダブルボランチのパスコースをひたすら切って、ボール循環を制限します。
逆にアレンジがあったのは前線以下のポジション。
ⅰ)バレッラはラインデルスをしっかり監視
ⅱ)ドゥンフリースがテオに圧をかける
ⅲ)ムヒタリアンとチャルハノールは対面を見るのがスタンダードだけど、マークの受け渡しが柔軟
ローマはアンカーのパレデス以外は対面をしっかり捕まえる!が主でしたが、インテルはもちろんそれが軸にありながらも「臨機応変に対応しますよ」が強かった。
必然、ミランがボールを持つ時間は増えますが、手数をかけずにゴールへ強襲できるインテルは相手全体を引きつけたい。
縦の練度こそ今季の象徴。
ポゼッションやパス施行数が少ないのに難度の高いPA内でのボールタッチや決定機が多いことは理想を体現している証左です。
●前半-テオの押し出しで流れは変わるも
イニシアチブがどちらにあるかは至極当然、素人視聴者以上にピッチの選手たちが分かるでしょう。
ミランは20分過ぎあたりから、ここまでビルドアップ隊に専念していたテオ・エルナンデスを解き放ちます。
手段は色々ありましたが、最も頻度が多かったのがこの殴り方。
全体を右に寄せて、左のテオを上げる時間とスペースを創造します。
ポイントは新戦力と彼らの特性発揮。
ロフタス=チークは得意のキャリーを密集したスペースでもやってのけ、自身を相手選手の吸引機に。
そこに絡むはラインデルス。時にはバレッラよろしく密集している逆サイドに出張して数的優位を作る。時には深さを取って襲撃を散らつかせる。多彩で小まめなオフザボールでインテルの配置を乱します。
カラブリアやクルニッチらも場面に合わせてサポートしたり、テオが上がる最終ラインの担保となってチームを下支え。
インテルの臨機応変さは表情を変え、『曖昧』という意味合いになっていきました。
30分前後はハッキリとミランに主導権が移行。このフェーズで同点弾が生まれていれば、試合の行く末は変わったかもしれません。
が、インテルが一枚上手でした。
赤黒の時間を耐えた黒青はボールのこぼれ球をラウタロが華麗な反転で一気に前線へ。抜け出したのは身体系コンビのドゥンフリースとテュラム。
ドゥンフリースはスピードそのままにグラウンダーのアーリークロスをテュラムに送ります。精度にやや難はありましたが、カウンターの勢いを殺さなかったことと、その一瞬の判断ができた成長はちゃんと褒めてあげたい。
前節初ゴールを決めた新9番は流れたボールを回収すると、マーカーのチャウを剥がして右脚一閃。
ここしかないコースを豪快な弾道で射抜くスーペルゴラッソで追加点。
ミラン視点ではようやく自分の掌の中にイニシアチブがあり、あとは天命を待つという流れの中でトンデモ被弾。「色んな意味で痛い失点」ってやつですね。
●後半-雨と先
ミランは主導権を握った『テオ押し出しモード』を弱め、フラットスタイルに戻しました。
推察が難しく妄想の域を脱しえませんが、おそらく自分達(テオ)を上げるよりも相手を上げる=引き寄せるがゴールに近づくと判断したのではないかと思っています。「急がば回れ」。2失点目みたいにまたカウンター浴びてしまったら終戦ですしね。
この時間で特に効いていたのはこれまたラインデルス。
前半のフラットスタイル時は斜めに降りて、ビルドアップをサポートしたり、中央に移動して斜めのパスコースを作るが目立ちましたが、後半は大外に開く動きを増やしました。
さらに様相が変わったファクトもあり。外的要因である天候です。
後半になると雨足が一気に強くなりました。波はありましたが、瞬間的にはスコールと呼べる雨量でピッチの環境が一気に劣悪に。
代表戦明け、2点リード、CLグループステージの開幕。”先”を見据えることもシーズンを走り切る上では要用。
ホームチームは前半に比べ、球際や囲いの強度を落とします。「走らなくなった」という表現は適していませんが、距離の詰め方の迫力やストーキングぷり、フィジカルコンタクトは明らかな差を感じました。
試合の流れこそ傾きはありませんでしたが、徐々にネガティブに釣られたり、カバーやスライドの質が低下。
そして一瞬を突かれる。
バレッラが釣られ、チャルハールが絞り切れなかったスペースにテオがすかさずパスを送ります。降りてアチェルビの圧から解放されたジルーは余裕を持ってレオンへスルーパス。インテルは追撃弾となる一撃を浴びました。
テオからジルーへのパスはまさに上記の図解を体現。
この失点は各セクション甘かったですね。雨という要因を言い訳の傘に使いたいんだけど、言い逃れできるほど水を凌げない。うん、これはやられました。
●後半-1974年以来の劇場
ちょっと嫌なムードが漂う中、天候の回復と選手交代によってインテルの強度と活気が復活。
追い縋るミランを突き放す3点目はそれを証明するかのよう。
チャルハノールのポジティブトランジションから華麗なトライアングルパスワークで縦に運ぶと、逆サイドへどんピシャサイドチェンジ。受け取ったラウタロが冷静に中央へ折り返すと暗殺者ムヒタリアンが仕留めました。
テュラムが個のゴラッソならば、これは組織のゴラッソ。パーフェクトですね。
防げなかったミランを責めるのは酷ですが、強いて言うならばプレビューで触れた『ボールサイドを圧縮する設計』は失点の温床になってしまったかも。
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巻き返すべく、ミランはアタッカーの枚数を増やすファイヤー風味の陣形に変更しますが、直後にテオがPK献上でスコアボードは4−1に。
湧きに湧くインテリティですが、劇場はまだ閉幕しません。終了間際にはリスクを背負って攻勢に出た悪魔をあしらって、反撃に出る毒蛇。
カルロス・アウグストとムヒタリアンがチェクウェゼを挟んでボールを掻っ攫うと数的優位のカウンター発動。ムヒタリアンのキャリーとキーパスから仕上げの一噛みはフラッテージ。
代表でも良い身体を曝け出した爆撃機は、ジュゼッペ・メアッツァでもしっかり決めて、しっかり脱いで、しっかりとイエローカードを貰いました。
ミラン目線だと2失点目と同じカテゴリーですね。「色んな意味で痛い失点」(2回目)。リソースを投入してリスク覚悟で攻めたのに報われずに裏返しでやられてしまいました。
あ、そいでもって、この得点はアルアウトヴィッチの斜めのデコイランも見逃せませんね。めっさ良かった。
1974年以来となるダービーでの5得点。
両クラブ合わせて初となる5連勝(=5連敗)。
『5の劇場』はこれにてエンディングを迎えました。
いつもだと”雑感”とか名付けて締めの項目を設けるんですが、今回はオーバーキルになるのでここでぶつ切りします。
最後までご覧いただきまして、ありがとうございました🐯
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