【ラストピースになれるか】コッパ・イタリア準決勝 第2戦インテル-ミラン
こんにちは!TORAです🐯
今回はコッパイタリア準決勝第2戦インテル-ミランのレビュー。
第1戦はスコアレスドロー。コッパイタリアはCLと異なり、アウェイゴールが息をしているのでインテルは勝利が必須となる一戦です。
●選手起用
・インテル選手交代70分、ラウタロ▶︎ジェコ
70分、コレア▶︎サンチェス
73分、チャルハノール▶︎ヴィダル
78分、バストーニ▶︎ダンブロジオ
78分、ペリシッチ▶︎ゴセンス
・ミラン選手交代
46分、トナーリ▶︎ブラヒム・ディアス
46分、サーレマーケルス▶︎メシアス
73分、ベナセル▶︎クルニッチ
73分、カラブリア▶︎ガッビア
86分、レオン▶︎ラゼティッチ
●前半-柔軟な『1対1+1』
立ち上がり早々、ラウタロのゴラッソでインテルが先制。
75,000人超満員のスタジアムを揺らします。
にしても、ラウタロは本当にボレーが上手い!
というよりも浮き球の扱いが抜群なんですよね。
たしか19−20シーズンのどこかのレビューで詳しく書いた気がするので、引っ張ってこようと思いましたが、探し切れないので諦めます笑
さて、先制点だけでなく、戦術的に先手を打ったのもインテルと見ています。
右WBのファーストチョイスのドゥンフリースは体調不良?コンディション不良?とのことで、今回スタメンに選ばれたのはダルミアン。
シンプルなスピード対決では対面のテオには及ぶべくありません。
期待しつつ不安があったインテリスタの方は少なくなかったのではないでしょうか。
しかし、シモーネ監督は「ダルミアンvsテオ」に焦点を当てていなかった。
前からプレス時、ダルミアンを明らかに下げ目に配置し、テオではなく、レオン監視をメイン業務に据えました。
✔︎バレッラが対面のトナーリだけでなく、左SBテオにも圧をかける
✔︎ダルミアンは下り目でレオンを優先監視、押し込まれた場合は配置通りにテオを見る
CLレアル・マドリード戦でも導入していたアプローチですね。後半戦はめっきり見なくなったので久方ぶりの手法です。
ただ、レアル・マドリード戦は左SBが本職ではないナチョであったために成立した考え方なんですが(結果的には成立しなかったんだけれども)、ミランの左SBは爆発的な攻撃力を有するテオ。
正直なところ、先制点があってもハラハラして見ていたのですが心配は杞憂に終わりました。
ピックアップしたいのは2点。
ⅰ)バレッラの脅威的なエンジン
この試合の「最も物理的に頑張ったマン」でしょう。トナーリを見つつ、テオにボールが渡った際には迅速なプレスを徹底。突破された際のプレスバックも手を抜くことなし。
やや矛盾する表現かもですが、実に”機械的な献身性”に思えました。
・本試合の走行距離
着目すべきはブロゾヴィッチに次ぐ11.876kmという走行距離。
…ではなく、その内訳。スプリントの量です。1試合で1.473kmのスプリントを記録するのはかなりエグい値。
単純に足が速いテオよりも量が多いのは、賞賛に値するとともに彼のブラックな労働環境を証明するものです笑
セリエA公式より
ⅱ)シュクリニアルのカバーリング
バレッラがテオにプレスをかければ、当然トナーリがフリーになります。
ここはラウタロが背中でパスコースを切ったり、ブロゾがカバーに入ったりで対応しましたが、シュクリニアルが上がってカバーに入るパターンも散見。
明らかに意図的で計画的。
立ち上がりはシュクリニアルのカバーからボール奪取して、そのまま攻め上がるシーンは幾つかありました。
13:50〜のシーンはその象徴かと。
1対2ではなく、1対1+1
レオンに比重はあるものの、チームの流動性で後手になる部分(テオやトナーリ)を先手で潰していく。
ミランのビルドアップが足元から足元の各駅停車が多かったことも手伝い、インテルの流動的なプレッシングは見事に刺さりました。
先制点も実はインテルのポジティブトランジションからシュクリニアルが攻め上がる→やり直し→今度はバストーニが攻め上がる。という、『本試合の狙い+シモーネインテルらしさ』が合わさって生まれています。
攻守がシームレスなスポーツであるサッカー。
両者は直接関与はしていませんが、インテルの『流動的』を体現。下支えをしてくれました。
●前半-修正するものの…
暫定とはいえリーグ首位に位置するミラン。
スコアも内容も不利な状況に対して、ただただ指をくわえて黙っているわけはありません。
分かりやすくなったのは25分頃からでしょうか。
左SBテオを押し上げる配置が目立ちはじめます。
✔︎トナーリが最終ラインに降りる動きが増加
✔︎両サイドSBを押し上げる。テオは右のカラブリアよりも明らかに高め、大外だけでなく内に絞るパターンも
この変更により、バレッラはトナーリ(もしくは幅を取ったトモリ)、ダルミアンはテオ、シュクリニアルはレオン。
それぞれ対面の選手たちとのマッチアップに引き戻されました。
逆を言えば、「インテルの選手たちはマークが明確になった」とも捉えることができ、状況によってはポジティブなことです。
しかし、今回は柔軟なプレッシングが刺さっており、いわばフレキシブルさがインテルの土俵。
それをミランに磁場転換させられたことでリズムが狂います。
ボールの奪りどころは低くなり、ネガティブな意味で重心下がり目に。
必然、シュクリニアルのカバーによるポジティブトランジションやバストーニの後方支援が目立っていた序盤と比べるとカウンターの威力が低下。
すると、流れを掴みインテンシティを増したミランに押し込まれ始めます。
ピオーリ監督がどう指示を出したのかは分かりませんが、選手たちの実行力には敵ながら天晴れと言わざるを得ません。
白状すると、30分付近はいつネットが揺らされるかとドキドキしていました。
ハラハラドキドキ。これぞダービーですね。
しかし、威力が低下したとは言え、カウンターによる一刺し自体は虎視眈々と狙うインテル。
38分にはペリシッチ、39分にはハンダノヴィッチ。立て続けにゴールを死守すると、こぼれ球を拾ったバレッラ→ブロゾヴィッチ→コレアへ展開。
圧倒的に数的不利で特段、可能性のあるシーンではなかったと思いましたが、ボールキープしたコレアが一瞬のタメを作ってスルーパス。
鮮やかに抜け出したラウタロが冷静に流し込みました。
得点が生まれてもおかしくないチャンスからの被弾
ミランにとっては二重に痛い失点となりました。
スコアだけでなく精神的なダメージもあったでしょう。
後半に物議を醸す判定もありましたが、終わってみると試合のターニングポイントはここ。
狙いを即座にゴールへ昇華できたインテル
流れを掴み返したが決め切れず、むしろさらなる失点を許したミラン
サッカーにおける「これは厳しい…」の教科書と言わざるを得ません。思いっきり結果論なんですけど。
●後半-借金とギャンブル
2点ビハインドで攻めるしかないミラン。
後半、メシアスとインテリスタのトラウマであるブラヒム・ディアスを投入します。
ボール保持のハード面は前半と変わらず。
左SBテオを押し出す形ですが、ブラヒムが入ったことでテオが大外、レオンが内の主軸パターンがさらに色濃くなりました。
選手配置のデータにもはっきりと現れています。
・ミランの平均的な選手立ち位置
画像上が前半、下が後半です。
後半は交代選手が反映していて視認性が低いですが、レオン(17番)の配置に注目。後半は前半と比べ、明らかに内寄りでプレーしています。
セリエA公式より
インテルの5−3ブロックの隙間でボールを引き出せるブラヒムとドリブルでもスプリントでも密集地を抜け出せるチート能力を持つレオンを化学反応が狙いでしょうか。
平たく言えば、2人の個×個のジャムセッションで強引に突破しちゃえ!ですね。
もちろん全体とも連鎖していますが、突き詰めて根っこを見ていくと、このセッション、というかレオンという因子はあまりに大きい。
レオンの質的優位をいかに活かせるか。瞬間的に着火させるかが根幹。
彼が攻撃の中心であることは明らかで、ゆえに僕はミランのボール保持をピーキーだ、と表現しました。
我が軍も昨季はピーキー全開でリーグの覇権を取り戻したので(僕はそう思っているので)、これ自体は良い悪いの二元論ではありません。
ただ、レオンとブラヒムにアレをやらせるならポストプレーヤーともハーモニーを奏でないと瞬間火力は上がらないだろうな、と思って見ていました。
って、いつの間にかミラン目線のレビューに笑
もっと掘り下げたいところですが、本項の本題はここにあらず。
ブラヒムの投入は至極当然、得点を取るための施策ですがリスクも孕んでいます。
インテル対策としてお馴染みの『ブロゾ番』。
前半はケシエが務めましたが、後半は(当たり前ですが)トップ下に入ったブラヒムが担当。
『ブロゾ番』という仕事においてはケシエよりも不得手なのはどう考えても明白。
DAZN解説の細江さんも仰っていましたが、ブロゾヴィッチは間違いなく、ブラヒムが自分を監視し切れていない、周囲をスキャンできていないことを察知してポケットに走り込みました。
ブロゾヴィッチは持ち前の運動量でゴール前にも顔を出しますが、積極果敢にスペースを突く選手ではありません。
スプリントやクイックネスは相対的に平均以下でしょうし、何よりも彼が飛び出すのはインテルで最もリスキーな殴り方です。
ネガティブ・トランジション時の保険役としてはもちろん、彼の場合はそこからボールを取り返して、再度ボール保持した際の陣形回復の保険役でもありますしね。
もちろんこのW保険役をスイッチして飛び込むシーンも全くないわけではありませんが、あんなランニングは1シーズン単位でも中々お目にかかれません。
借金を返済できず、ギャンブルに敗れた
重複ですが、後半はインテリスタですら腹落ちしない、ファンに『if』を想像させてしまう判定がありました。
しかし、結局のところ、ミランは前半の借金を返済することができず。
3失点目は後半のギャンブル(リスクを取ってリターンを求めた)に失敗してしまったという事実は完全否定できるものではないでしょう。
筆者がインテリスタなのでミラニスタの方は釈然としないかもしれませんが、今回はスコアほどの差はないにせよ総合力が反映された結果かなと確信しています。
・スコア
インテル3−0ミラン
(4分•40分ラウタロ、82分ゴセンス)
ちなみに負けたー!って時は素直に認めますからね笑
この試合はペリシッチ、本当に酷かったなぁ。本当よくフィットしてくれました。
●雑感-見えた『プランB』、走り切れるか
本節のMOMはラウタロでしょう。
ペリシッチも名前を挙げたいところですが、やはり2得点の価値は大きいですし非保持でもトナーリのパスコース切りは高品質。集中力を感じられました。
がしかし。
戦術的に最も響いたのはコレアだと声を大にして言いたい。
身体を脱力させて前を向き、そこから外に流れるか、内に進入するか。
ボールを絶妙に晒して選択肢を突きつける。
と思ったら、深さを取る相棒へ縦パス(スルーパス)という第3の選択肢をチョイスする。
シーズン序盤から窺えたパフォーマンス。
もっと言えば、ラツィオ時代から見てきたパフォーマンスですが、ここ2.3試合のそれはシーズンの最終コーナーを回ったこのタイミングでインテルにマッチしたと期待を持てるものでした。
エリクセンになれるか
昨季のスクデット獲得にエリクセンの存在は欠かすことができません。
有識者から僕のような素人まで『プランB』の必要が騒がれる中、彼のフィットそのものがプランBへ成り、終盤のクオリティを保証してくれました。
さて、今季のインテルも昨季同様に『プランB』という壁にぶち当たっています。
「ブロゾヴィッチ不在時の代役をどうするのか?」が一般的かと思いますが、僕はもちろんブロゾヴィッチの依存度は深刻だけど、本質的に問題なのはビルドアップにおけるツートップの機能性にあると見ています。
コレアのパフォーマンスはこのアンサーになり得る
ロングボールを収めるのは厳しいですが、ここ最近は降り過ぎずに良い位置でボールを引き取れる点。そこから”一瞬のタメを作れる”点が機能し、インテルの新しい変換器に。
ストライカーのラウタロとは同胞という因子だけでなく、選手特性的にも相性◎。
なんといっても、本試合2点目は彼らのシナジーによるものですしね。
そう、彼の存在が『プランB』に昇華しています。
本試合はクリティカル。
あとはこのパフォーマンスのまま走り切れるか、ですね。
インテルの今後の日程はライバルたちと比べて楽だと言われていますが、残留争い真っ只中のクラブたちは死に物狂いで勝点を殺しにくるでしょう。
コレア対策のスカウティングも早速始まっていると思いますが、今、セリエAで最も過密日程なインテルにとって、彼の活躍は特にジェコ御大のターンオーバーに繋がりますし、コレアだと思っていたところにタイプの異なる変換器が選ばれると相手としてはやっぱり嫌でしょう。
プランBはプランAにもプラスの影響を与える。
内容こそ全く違えど、昨季と似た道を歩もうとするインテル。
コレアよ、昨季のエリクセン枠=ラストピースになってくれ!
いざ!三冠へ!!!(変則的な三冠だけど)
FORZA FORZA FORZA INTER!!!⚫️🔵
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