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【考察】なぜバストーニは重宝されるのか?−データで見るインテル−
こんにちは🐯
本日は表題通り、インテルが誇る若きCBバストーニにフィーチャーしていきたいと思います。
というのも先日、Twitterのフォロワー様の👍から、とある記事を拝見しました。
3/28と少し前の記事なんですが、バストーニの攻撃性能について言及しています。つい先日、私もパルマ−インテルのマッチレビュー内にてバストーニについて軽く触れていたので、この機会にもう少し踏み込んでみたいな、と思った次第です。
マッチレビュー以外の記事は初めてですので至らない点が多々あると思いますがご容赦下さい。(マッチレビューも至らないのだけれども!)
●バストーニってどんな選手?
まずはバストーニってそもそも誰?いまいち分からん!という方向けにざっくりご紹介します。
とは言え、私が説明するまでもなくWeb上には情報が多数上がっておりますので簡易的に。
名前:アレッサンドロ・バストーニ
国籍:イタリア
年齢:21
ざっくり経歴:アタランタの下部組織出身。2017年8月31日にインテルが約3100万ユーロにて獲得しました。
現在、このレコードの1位はクルセフスキに更新しています。
アタランタ→パルマのレンタル移籍を経て、今シーズン(2019/20)から復帰。9月のサンプドリア戦でインテルデビューを果たしました。
WhoScored.comによると、第31節の時点で1500分出場。CBの中ではシュクリニアル、デ・フライに次ぐ3番目の出場時間です(ゴディンは1252分)。デビューが第6節のサンプドリア戦であることを考慮すると、バストーニはインテルで初シーズンながらレギュラーポジションを勝ち取ったと言っていいでしょう。
なぜ、若干21歳の若手があのゴディンよりも重宝されているのか。理由をデータから考察してみよう!というのが本記事の目的です。
●結論から言えば
先に挙げた記事では攻撃性能を賞賛する一方、本業の守備に関してはやや辛口です。これは私もほぼ同意します(守備はそのタスクを顧みれば頑張ってると思うけど)。
なので、なぜバストーニは重宝されるのか、の問いに端的に答えると
バストーニは“攻撃性能“が優れているから。
となります。
では、この結論に紐付くようなデータをこれからご紹介していきます。
次項に移る前に予め注意事項を記しておきます。
✔︎本記事のデータは2019-20セリエA第1〜31節までを参照しております。CLなどは加味しておりません。
✔︎本記事では複数サイトのデータを引用しますが、各データの定義については各サイトによってニュアンスが異なります。加えて、仮に単一サイトであろうとも自分の解釈が本当に合っているかの検証は私では出来かねます。したがって本記事ではデータの定義に関しては明記いたしません。ご了承頂いた上でご覧頂けると幸いです。
●そもそもインテルのスタイルは?
「お前の為にチームがあるんじゃねぇ、チームの為にお前がいるんだ!!」という名言がありますが、まずは選手個人を取り上げる前にインテルというクラブそのものをセリエAの他のクラブとデータ比較して掘り下げてみます。
尚、本項に用いた分析は下記のサイト、記事を参考にさせて頂きました。
本項のデータは www.whoscored.com より引用しております。
・パスアテンプト×ボール奪取 ※アテンプト=試みた回数
このデータの掛け合わせにより、プレッシングの強度&精度と奪ってからどう攻撃に転じているかが分かります。
ボール保持と非保持の基本的なフレームワークを見る際にこの掛け合わせはとてもシンプルなのに真理を突いていると思っていて、普段からお世話になっています!詳細は是非、上記の記事をご覧ください。
尚、ここでの「ボール奪取」はタックル成功数とインターセプト成功数を合わせたものを指します。
インテルはボール保持+重心低めの結果。
インテルのボール非保持時は(中断明けは)2トップ+OHが前プレ隊になりますが、これはハメに行くというよりも、高い位置から圧をかけてルートを制限していくといった形で、基本的にはブロック守備の迎撃型。重心低めは当然です。
ボール保持においては、ポジトラから一気にショートカウンター!というのもありますが、基本的に相手を引き込んでルカクに当てる→からの二次攻撃がメインウェポンです。これはコンテがEURO2016やユベントス時代にも見せていた「中盤空洞化」のコンセプトですね!
なので、バルセロナみたいなポゼッションではありませんが、パスアテンプトは確かに多いんですよね。なので、データ上ではボール保持型になるという結果にも頷けます。
・パスアテンプト×ロングボール
さて、先ほど“ルカクに当てる“と記しましたが、その他にもインテルはCBからWBへ。WBからCH、逆サイドのWBへとロングボールアテンプトも目立ちます。この辺は3-4-1-2(3-5-2)のシステム故ですね。
インテルは保持する+ロングやや少なめの結果。
と、上記のように確信していたのですが、結果はそうでもありませんでした。笑
パス自体の分母を加味するとインテルはショートもロングもバランス良く。先程のデータも合わせると縦に速くというよりはしっかりゲームを組み立てて攻めるようなイメージでしょうか。
データを見てて面白いのは、こういった自分の主観や思い込みにメスを入れてくれること。もちろんデータが全てではないですが、クエスチョンを与えてくれることは本当に有難いです。
とは言ってもこれを鵜呑みにするのは早計で、これはセリエAのチームでハイプレスでガツガツ来るチームが多くないこと。また、セリエA上位チームということで押し込んでいる時間が多いことに起因してるでしょう(さらにロングボールの定義次第でこれまた変わりそう)。
試しにクリア回数との散布図も出力してみました。パスアテンプト=ポゼッション×クリア=陣地回復ということで、押し込んでいる、押し込まれている時間が分かります。
インテルはボール保持+押し込んでいる時間やや多めの結果。
やはり、ですね。インテルは第1グループには劣るものの押し込んでいる時間帯は多めのグループに属しています。このことからもロングパス少なめ+押し込んでいる=ゲームを組み立てて攻める、という解釈ができそうです。
●インテルのチームスタイルは?
さて、以上のデータからインテルは
①ボール保持型
②重心低め
③ ロングボールはやや少なめ
④ゲームを組み立てて攻める
が基本的なスタイルであることが分かりました。さて、ここで簡単なデータをもう少しだけ。まずはセリエAのゴール数です。
31節時点で、インテルはゴール数65で上から4番目に位置しています。この時点では4位なので順位通りで妥当なんですが、インテルのシステムが一般的には守備的と捉えられる3バックであること考慮すると効率良くゴールを奪っていることが分かります。しかも重心が低めなのに。
ではどうやって点を取っているかと言うと…
ボール保持時のアタックエリアはサイドを中心にバランスが取れていて
シュートディレクションは中央偏重である
ことを考慮すると、サイドで組み立て&崩し、中央で刺す、というようなスタイルが考察できます。まぁこの辺はデータなんかなくてもって感じですが。笑
考察は続きます。先に触れたようにインテルのボール保持は、相手を引き込んでルカクに当てて→二次攻撃がメインウェポン。ルカクはストライカーであり、ビルドアップの要でもあります。そのルカクは右のCFなので、崩しへのフェーズ移行は左サイドが担うことが基本になると想定されます(あくまで基本です。当然さまざまなパターンが存在します)。
ここからがコンテ監督のフットボールのミソ。3バックという守備的なシステムで、かつ重心低めのインテルが効率良く点を取るためには?
答えは所謂、ポジショナルプレーですね!
崩しのフェーズでは複数のパスコース形成で位置的優位を生み出し、ビルドアップのフェーズでは空洞化で空いたスペースにドリブルで持ち上がり数的優位を生み出す。
コンテ監督はこの役割を左右のCBに求めています。
何故なら3バックシステムではCBが1枚浮きがちだから。重心低めで、ロング1発構成が多くなくゲームを組み立てて攻めるタイプのインテルはこの優位がないと効率良くゴールは決められないでしょう。セリエAはテレビゲーム感覚で攻略できるほど甘くありません。
個人的にここの取り組みの強度が従来のコンテ監督と一味違う点と思っています!もしかするとロングボールが意外と少ないのも、CBが上がる時間の確保、という側面もあるかもしれません。
特に左は崩しのフェーズ移行の役割が右よりも強いため、左CBのバストーニには大きく求められると思われます。これが効率のメカニズムで、中断明けは一層注力しているように見えます。
●バストーニ、シュクリニアル、ゴディンをデータで比較
長くなりましたがここからが本題です。これでも削りに削ったつもりなんですが…笑
前項では、コンテ監督の求める3CB像に攻撃性能が必要であることが分かりました(もちろん守備性能が不要な訳ではないです)。
ではここで左右のCBを争うバストーニ、シュクリニアル、ゴディンのスタッツを比べてみましょう。ちなみに、中央CBに求められるスキルは左右とはまた異なるのでデ・フライのデータは割愛します。
本項のデータは FBREF より引用しております。
・ボールタッチ数とエリア内訳 1試合平均
こちらのスタッツではタッチ数とエリア内訳を確認することで、どの局面でボールプレーに関与することが多いか?を考察します。
タッチ数はバストーニをトップにシュクリニアル、ゴディンと続きます。バストーニとゴディンは7タッチほどの差がありますね。
着目すべきはエリア内訳です。バストーニはディフェンシブサードでのタッチがシュクリニアル、ゴディンよりも少なく、ミドルサード、アタッキングサードのタッチ数は多いです。これはバストーニが彼らよりも高い位置でボールプレーに関与していることを示しています。
・パスの出し手としてのスタッツ 1試合平均
もう少し細かく見ていきましょう。こちらはパスの出し手としてのスタッツです。
パスが通った回数と成功率はシュクリニアルがトップです。この数値の差はパス精度もあるでしょうが、それだけでなく左サイドよりも右サイドの方がビルドアップの起点になっていてセーフティーなパスを送る回数が多いから、という戦術的な要素もあるかもしれません。
さらにプレス下でのパス(プレス耐性)、サイドチェンジ(ピッチ横幅35m以上のパス)、クロスが通った本数をご紹介します。こちらはいずれもバストーニがトップ。圧巻ですね!
個人的にクロス成功数1.02というのは3バックシステムのCBとしては破格の値で、バストーニの戦術的な貢献度と攻撃性能の高さを物語っていると考えます。
・パスの受け手としてのスタッツ 1試合平均
続いてパスの受け手としてのスタッツです。
パスターゲットはパスのレシーバーとしてターゲットとなる回数を指します。こちらはシュクリニアルがトップの数字です。
加えて、ミスコントロールとボールロスト。こちらはネガティブなスタッツなので低ければ低い方がいいですが、前者はシュクリニアル、後者はバストーニが良値です。
このスタッツからはシュクリニアルが自陣で安定してポゼッションできていること。また、バストーニは彼らよりも高い位置でプレーしているのにも関わらずボールロストが少ない=バストーニのスキルの高さを示している。という仮説が立てられそうです。
・メカニズムがスタッツにも現れてる?
さて、攻撃性能に関わるスタッツをいくつかピックしましたがご覧の通り、いずれもバストーニかシュクリニアルが優位でした。
面白いのは基本のメカニズムがスタッツにも現れているのでは?と推察できる点でしょう。
主にビルドアップを担うことが多い右(シュクリニアル)はパス本数&成功率、パスターゲットに長けていて、崩しのフェーズを担うことが多い左(バストーニ)は高い位置でボールを触る回数が多いですし、サイドチェンジやクロス本数などゴール期待値に関わる部分(xG、xGAなど)に貢献してることが分かります。
ちなみにxG、xGAもバストーニがトップです。
このことからも、やはり基本は右で組み立て左で崩しが始まる、と言えそうです。となると、右は自陣でのポゼッションに安定感があるシュクリニアルが。そして左は攻撃性能の高いバストーニが重宝されるんだと考察できます。
こう見るとコンテ監督はCB陣の力をうまく引き出していて、その手腕の高さを感じますね。
●まとめ
ダラダラとした長文失礼いたしました。これよりまとめに入ります。
コンテ監督の3バックシステムには攻撃性能の高いプレーヤーが必要である。
バストーニは攻撃性能が高くスタッツにも現れている。
もっと言えば、
バストーニはコンテ監督の求める3CB像満たし、
その戦術的な貢献がデータにも現れている。
だから、重宝される。
ということが言えるでしょう。これが今回の結論になります。
●おまけ
さて、このままではなんだかゴディンのことを貶めてるような感じになってしまうので守備性能のスタッツも比べてみました。
本項のデータは FBREF より引用しております。
・守備性能のスタッツは?
はい。ゴディン圧倒的です!出場時間の短さや攻守のバランス(ボール保持の貢献が少ないから余裕を持って守備できているのかも)などを加味しなければいけませんが、それでも素晴らしいスタッツです。
押し込まれる時間が多い強豪相手や試合終盤のクロージングなど、そのニーズは高いと思われます。間違いなくインテルに必要なプレーヤーだ!と私は思っています。
・序列に変化も…?
ここまで書いたところでトリノ戦を迎えました。この試合、ゴディンの攻撃参加の精度は圧巻!素晴らしいパフォーマンスでした。これはもうデータなんかなくても分かりますね!
さらに直近の低パフォーマンスでコンテ監督はシュクリニアルに見切りをつけ、適切な価格のオファーなら受け入れる模様、なーんて報道もありますが果たしてどうなることやら…今後は熾烈なポジション争いにも注目ですね!(ちなみにシュクリニアルの放出は断固反対です!ありえません!)
以上です。
長文にお付き合い頂きまして誠にありがとうございました🐯
評判が良ければ今後もこういった考察記事はチャレンジしてみようと思いますのでよろしくお願いいたします!!
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