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【理想の体現】セリエA20-21第9節 サッスオーロ−インテル マッチレビュー

インテルの選手個人のパフォーマンスに目を奪われる内容と結果だったが、戦術の応酬と噛み合わせもまた影響が甚大な試合となった。
一が全になる仕組みはいかにして生まれたか。

こんにちは!TORAです🐯

今回はセリエA第9節サッスオーロ−インテルのマッチレビューです。

●スタメン

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サッスオーロ
42分、キリケシュ➡︎マルロン
59分、ジュリチッチ➡︎ミュルデュル
59分、トルヤン➡︎オビアング
76分、ラスパドーリ➡︎スキアカパッセ
76分、ロペス➡︎トラオレ
インテル
80分、ラウタロ➡︎ルカク
80分、サンチェス➡︎ヤング
85分、ペリシッチ➡︎エリクセン
85分、バレッラ➡︎センシ
90+2分、ダルミアン➡︎ハキミ

●前半−ボガ封じ

最初にピックアップしたいのはなんと言ってもバレッラのセンター。立ち位置的にはトップ下ではなく所謂アンカーですね。

意図はズバリ、ボール非保持だと睨んでいます。ぶっちゃけボール保持においてはそんなに期待があった訳ではなさそう。

サッスオーロのトップ下のジュリチッチは、味方にとっては気が効いて、相手にとってはいやらしいムーブが特徴。
これを運動量とスプリント、クイックネスのバランスに富み、さらに今季は戦術理解度の高さも目立つバレッラで封じ込めよう!という魂胆だと判断しました。

実際、バレッラ➡︎センシの交代後、アンカーを務めたのはガリアルディーニ(センシはLIH)。これがボール非保持目的だったことの証明になるでしょう。

「ん?それならヴィダルをセンターに置くのがベストじゃない?」

となるのですが、彼には彼でピッタリなタスクが存在します。昨季、散々苦しめられたセリエA屈指のドリブラーであるボガ封じ。
以前のレビューでも触れましたがボール奪取、すなわちシンプルな1対1は彼がNo.1とスタッツでも現れています(コンテ監督がそのデータサイトを見ている訳じゃないですけど笑)。

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✔︎バレッラはジュリチッチのケアがメイン。降りる動きにも付いていって対応する。
✔︎ヴィダルはロカテッリを監視しながら、ボガがボールを持てば積極的にボール奪取に行く。
✔︎ダルミアンも同様。ロジェリオを(以下略
✔︎その分、フェラーリにはオンザボールを許す。

とにかくボガ封じでしたね。ただ、この試合で最も面白かったと感じたのはこの手段によって起きた事象。

「ボガ封じ」が「サッスオーロ封じ」に発展していた。

●前半−サッスオーロのビルドアップ

説明に入る前にサッスオーロのビルドアップとインテルのツートップの前からプレスを確認させて下さい。

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サッスオーロ
✔︎サッスオーロはお馴染みのショートパス重視のビルドアップ。
✔︎ロカテッリが中盤底でボール引き出し役に。SBと合わせてジグザグのような形から開始。
✔︎ロペスもボール引き出しはするが、どちらかと言えば中盤と前線のリンクマンがメインか?
インテル
✔︎ツートップは内切りのポジショニングでロカテッリのパスコースに蓋をし、ボールをサイドに追いやる。
✔︎その為、ツートップは極端に近い距離感になることも。
✔︎サイドに流れたらIHは素早く圧をかける。

要はボールの獲りどころをボガとベラルディがいるサイドにあえて定めていた訳ですが、これがハマりました。

理由は

ⅰ)サッスオーロがショートパスをコンパクトに繋ぐTHEポゼッションサッカーであり、テンポが遅かったこと。
ⅱ)ラウタロとサンチェスの2人でキリケシュ、フェラーリ、ロカテッリの3人を阻害できたこと。

これによりサイドに流れたら余裕を持った状態で数的優位が生まれた点、と見ています。

先制点もインテルのアプローチがハマり、何度も攻め直しを強いられたキリケシュが思い切ったフィードを引っ掛けられたことが原因。立ち上がりは100点でしたね。

しかし、サッスオーロも黙ってはいません。15分頃からビルドアップに変化が見られるように。

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✔︎両SBが絞ることで2+3でコンパクトな5角形のビルドアップユニットを形成。
✔︎ヴィダルとボガ、ガリアルディーニとベラルディの距離が空き、ケアが及ばなくなる。

ディテールの変化により後方のボール循環にリズムが生まれたサッスオーロ。中盤底から縦にパスが入るケースも目に見えて増加します。
インテルは防戦一方。自陣に引いて組織的守備で迎撃しなければならなくなり、機能していたサイドへの追い込みがなくなります。
今回は組織的守備においてツートップも引いた位置取りだったので陣地回復も難しくハーフコートゲームに近い展開になってしまいました。

サッスオーロのリアクションもまた100点。現在の順位がフロックでないことが伝わります。

ただし、前半の時点では。

後半、サッスオーロは自らの対応ゆえ、雁字搦めに合い完敗を喫することになります。

●後半-シーンをコントロールする

サッスオーロのスタンスは変わりありません。前半のスコアは先制点はミス、2得点目はオウンゴールによるもの。内容も得点以降、ペースを握っていたことを考えれば当然でしょう。

しかし、インテルはこの設計の穴を見抜いていました。

ただでさえ、ショートパス重視のポゼッションサッカーでオーバーロード気味のサッスオーロ。
そこにSBがビルドアップで絞ればアウトレーンが空くのは至極当然。

ならば、幅を取ってワイドな展開を狙う。

68分のシーンは象徴的でした。
サッスオーロが左を押し込み、ボガがドリブルを仕掛けるもヴィダルが止めた場面から図解で紹介いたします。

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✔︎ヴィダルの運ぶドリブルに対しロペスが即時奪回を狙うも、カバーに入ったシュクリニアルがボールを受け取る。
✔︎楔のパスに対しサンチェスが潰れてアウトレーンに流れる。
✔︎そこには広大なスペースが。PA内にいたペリシッチが楽々間に合う。

幅を取りやすいのは3-5-2のメリット。さらに今回はWBはペリシッチとダルミアン。
両者とも絞る動きに難があることは当レビューでも触れてきましたが逆を言えば幅を取る動きやアップダウンの質はお手のもの。
今回は「この両者だからこそ良かった!」という側面は強いでしょうね。

時間を巻き戻しますが、60分の3点目もビルドアップのやり直しで左を起点に中央➡︎右のワイドな展開に起因します。

選手位置を広げれば的確な人員配置でビルドアップを遮断され、絞ってポゼッションを安定させればアウトサイダーたちに幅を取られる。
あっちを立てればこっちが立たず、の雁字搦め。

これです、これですよ!前回のレアル戦レビュー内で表現した、僕が解釈している今季インテルの理想。

シチュエーションを制してシーンをコントロールする。

局面1つ1つの優位を積み重ねてゲーム全体を支配する。
追い求める理想像を体現してくれたインテル。レアル戦の屈辱的な敗北からしっかりと切り替えて強敵サッスオーロに完勝しました。

・スコア
サッスオーロ0-3インテル
(4分サンチェス、14分キリケシュOG、60分ガリアルディーニ)

●雑感−ダイバーシティマネジメント

再度、前回レアル戦のレビューについてのお話。

私心と銘打った項ではかなり抽象的な表現、かつカタカナばかりで実は猛省をしておりました(ただし後悔は一切なし笑)。

「少しずつレビューやプレビューでフォローしていかないとなぁ」

と思っていた矢先、早速チャンスが舞い込んできてくれました。

ご紹介したいのは「ダイバーシティマネジメント」というワード。
主にビジネス面で良く知られるワードですね。かいつまんで説明すると「ダイバーシティ」とは「多様性」という意味ですので「マネジメント」がくっつくと、「多様な人材での体制や取り組み」になります。

国籍や性別、年齢、身体的特徴なとどいった性質の違いを受け入れて、ひとりひとりが能力を発揮できる環境や体制をつくりあげよう!という考え。

企業におけるCSR(社会的責任)の一環という側面が強く企業イメージの向上が目的の根底にある訳ですが、もう少しライトかつクローズドなところで”個性や特性”という側面で切り取ることもできます。

簡単に言えば、多様な能力の人材を適材適所に配置することでパフォーマンスを引き出す!新しい価値や発見を見出す!ということですね。

で、何が言いたいかというと、結果のついてこなさがジャッジを難しくしますが「コンテ監督ってこのダイバーシティマネジメントをサッカーに落とし込むのが上手いなぁ」と思っていること。

シチュエーションに合った個性や特性をぶつける。

今回で言えばバレッラ、ヴィダル、ダルミアン、ペリシッチですね(両WBはターンオーバーっていう要素も強いけど)。今季のマッチレビューで選手配置や与えられたタスクを考察していると、こう思うことが本当に多い。
繰り返しますが結果が出てないので評価しづらいはしづらいんですけど、それでもこのスキルはコンテ監督の色だと考えています。

試合のリアルタイム中、SNSでは選手の称賛はありふれてましたがコンテ監督への称賛や評価は全くと言っていいほど見ず。笑
なので、今回意識して取り上げてみました。選手評価はインテリスタにプロがいますしね!

という訳でダメな時は指摘しますが、良い時は称賛しますし評価します!

僕のサッスオーロ戦MOMはコンテ監督。

●雑感−ちょっとだけ苦言も

って、ここまで上げといてなんですが少しだけ。

今回の試合は選手のパフォーマンスと戦術の噛み合いの影響が大きく、自力の差はスコアほどなかった印象です。というか、スコアという結果がインテルの弱さをぼやかしてしまった感。

特に前半におけるインテルのボール保持は再現性に乏しくアバウトな感じが否めませんでした。したがって、前半のボール保持を「中盤空洞化」、「5レーン占有」など短いセンテンスで表現するのは難度が高く十人十色感が拭えないかと。
後半も「幅を取る!」、「ワイドに展開する!」という”狙い”は解釈の通り明瞭ですがあれど、”手段”そのものについてはもう一歩!というのが個人的な印象です。

今回は勝てたけど、次回は勝てるの?

戦術はこの問いに「YES」と答える指針になると考えています。

レアル戦からマインドリセットに成功した様子は見られましたが、戦術、つまり「手段の確立」までは中3日じゃ流石に及びませんね。

早急に、けど丁寧に改善していって欲しいものです。

以上。
最後までご覧頂きましてありがとうございました🐯

FORZA INTER!!⚫️🔵



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