![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/33105294/rectangle_large_type_2_43c6d8beb253aad5eb4f7f0c5931e943.jpeg?width=1200)
【”いつも通り”を封じ込める】19-20 ELファイナル セビージャ−インテル マッチレビュー
こんにちは!TORAです🐯
今回は19-20 ELファイナル、セビージャ−インテルのマッチレビューです。
●スタメン
プレビューで、「セビージャはもしかしたら多少の変更はあるかも(デ・ヨングなど)」と記載しましたが、まさかの正解でした。
●前半−はじめに
開始2分、バレッラの素晴らしいインターセプトからカウンター発動。ルカクをジエゴ・カルロスが倒し、PKを獲得→成功させます。
…あれ?さっきからなんかプレビューの伏線回収してる気が?笑
さて、早々に先制したインテルですが、この後はセビージャに試合をコントロールされます。
その要因を一言で表すなら「経験値不足」に尽きるでしょう。メンタル面やプレー面、戦術面など、今日は随所に経験不足が顔を覗かせていました。
しかし、気持ちが空回っていた!とか、緊張してた!だけですとレビューが終わってしまうので笑、本レビューでは戦術面にフォーカスして進行いたします。
という訳で、戦術面での要因は
セビージャのインテル対策により、インテルが”いつも通り”のプレーが出来なかった。
この表現が端的で的確かな?と考えました。
ではその対策について見ていきましょう。
●前半−ハイプレスのからくり
まずはセビージャのハイプレスについて。噛み合わせはプレビューで挙げていた「もしかしたら」バージョンできました。
直前のマン・ユナイテッド戦とはちがう形でしたが、このハイプレス、とんでもなく練り込まれてました。
✔︎デ・ヨングはデ・フライのマークしつつ、ハンダノヴィッチに圧をかける。
✔︎バネガはブロゾヴィッチを徹底監視。
ハイプレスと言うと「ハメる」イメージが先行しがちですが、セビージャの狙いはプレー制限です。特定の場所にボールを持たせたかったんでしょう。持たせたかったのはハンダノヴィッチ、左右のCB。意図は中央空洞化対策と考えます。
セビージャは中盤空洞化を「させない!」のではなく、インテルに「しかない!」と制限させるのが狙いだったように見えました。インテルはこれに乗せられる形になります。
デ・ヨングとバネガは人という明確なタスクがある一方で、WGとCHはややアバウト。人よりはボール。パスコースを消すタスクの優先度が高いように見えました。
ですがセビージャが良かったのはスキーム以上にインテンシティ。
特にデ・ヨングとバネガの献身性には驚かされました。
前者は前プレ隊が回避されたら中盤までプレスバックするのが当然!って感じで数的優位を作っていました。
後者はブロゾヴィッチを徹底マーク。彼がここまで消されたのは今シーズン通しても何試合あったか?って思うくらいしつこくて効果的でした。
このハイプレスにより、インテルは一応、中盤空洞化の形は取れるんですけどネガティブなんです。
ルカクにボールは入るんですが、そこからの二次攻撃はフェルナンドがセーフティな位置にいることで優位を消され、クリーンに処理されたり、ミスしてしまうことが多かったですね。
中央空洞化が刺さるのはブロゾヴィッチを中心とした、空洞化とは違う縦のビルドアップが担保であるからこそ。今日はここを封じ込められました。
故に「しかない」。これでは”いつもの”崩しに繋げることは難しいでしょう。
●前半−ブロック攻略
セビージャのハイプレスがハマる一方で、インテルのブロック守備はハマりませんでした。ここにもセビージャは対策があったと睨みます。
まず、やられたなー!と思ったのはバネガ。プレビューで紹介した左SBに落ちるビルドアップはあまり見かけませんでしたね(ベースはフェルナンドのサリーダ・ラボルピアーナ)。
これは今日のセビージャはレギロンに最初から高い位置を取らせる気がなかったからでしょう。同じく5-3の守備ブロックのウルブズ戦のヒートマップと比べれば一目瞭然です。
インテル戦(上)とウルブズ戦(下)のヒートマップ比較。攻めの方向違うのでご注意下さい。※Sofa Scoreより引用
なので、ボール保持の基本ポジションはこんなイメージ。
✔︎左はレギロンは低め、オカンポス高め
✔︎右はナバス高め、スソ低め
✔︎フェルナンドに加えてジョルダンも低め。その分、バネガは自由度高め
ポイントになるのは中央やインサイドの使い方。
突破力のあるオカンポスが内に絞ることで。
スソとジョルダンは縦の入れ替わりで。
そしてバネガが自由を謳歌し彼らをサポートすることで。
インテルMF陣の狙いをぼやかしました。
中央にリンクができるようになることで活きたのはセビージャの武器であるサイド。12分の同点弾はインサイドのジョルダンがリンクマンになり、ヤングやバストーニが釣られてしまったことで、大外のナバスの時間を許してしまいました。
ナバスのクロス精度、デ・ヨングのオフザボールも称賛に値すべきですが、失点の原因はクロスの手前の部分ですね。
その後、両チームにセットプレーからゴールが生まれ2-2で前半を折り返します。
●後半−役割を与えられて
スコアこそイーブンですが、内容は平衡とは言い難いインテル。コンテ監督がどう手を打ってくるのか非常に楽しみでしたが、効果的に動いたのはロペテギ監督でした。
後半のセビージャはハイプレスの頻度をグッと落とし、ミドルブロックを敷きました。
✔︎全体的にやや左寄りに
✔︎前線の横の距離感が短くなった
✔︎スソのパスコース切りはガリアルディーニからヤングへ、なのでガリアルディーニが浮きがちに
✔︎オカンポスは変わらず
まず意図として推察できるのは全体を左寄りにすることでルカクとバレッラの時間とスペースを潰すこと。
その分、ガリアルディーニは浮きがちにボールを持つシーンが増えますが、しかし…というのが本項のミソです。
ガリアルディーニのプレースタイルは教科書通りの「インクルソーレ(絶妙なタイミングで2列目から攻め上がりゴールを狙うMF)」。
ですが、セビージャのアプローチ変更によって中盤底でボールを持たされてしまったことでレジスタの役割を与えられてしまいました。
当然、上手くゲームを作れません。具体的には横や後ろばかりのパスで縦につけれませんでしたね。
この状況にガリアルディーニもなんとかドリブルで持ち上がったりしてましたが、セビージャの引いたブロックを崩すまでとは行かず。
これがロペテギ監督の狙いなのか結果論なのかは判断できませんが、とりあえずインテルはボール保持の局面においてフリーズしてしまいました。
●後半−動くに動けず
戦術面のみを切り取った場合、最も痛恨だったのがこのポイントだったと思います。
というのもセビージャがこのアプローチをしてきたのはおそらくスタミナ温存という側面もあったはず。
戦術自体はドンズバですが、実はセビージャも薄氷の思いだったのでは?と感じました。
なので、ここでインテルが3-4-1-2のオプションを確立してさえいれば、と。
こんな時の為の3-4-1-2だったはずでしょう、と。
3-4-1-2でエリクセンを前に持っていけば、フェルナンドのタスクや前線の帰陣で消耗が増えて、状況は変わったかも。
誤解しないで頂きたいのは「なんで3-4-1-2にしなかったの!?」ということではありません。というか、仮にコンテ監督がシステム変更してたら、「リスキーすぎる💦」と思っていたでしょう。笑
僕が伝えたいのは引き出しの質と開け方の問題。
3-4-1-2を”いつも通り”に出来なかったことへの無念、です。
これも経験値でしょう。セビージャは引き出しを持っていました。
そして、その開け方が上手いんです。
ファイナルという舞台でもスムーズに開けられるのがこれまたもう。
後半の得点は1点のみ。74分、前半にルカクにPKを与えたジエゴ・カルロスのバイシクルが他ならぬルカクに当たってネットを揺らすという、因果のドラマを経て幕を閉じます。
スコア セビージャ3-2インテル(5分ルカク、12.33分デ・ヨング、35分ゴディン、74分OGルカク)
●雑感
今回は”セビージャの対策”にフォーカスしたので、対照的にどうしても「インテルが良くなかった!」みたいなレビューになってしまいました。
インテリスタの皆様、不快に感じてしまったら申し訳ございません。
なので最後だけ。
最後だけ負け惜しみを言わせて下さい。
インテルとセビージャを比べたとき、選手層やその選手たちが織りなすアウトプットの質はインテルに軍配が上がると思っています。
というのも、マッチレビューを執筆する為に改めて試合を見て思ったのですが、
ここまで試合をコントロールされて、逆に良くあんなにチャンスを創れたな、と。
とにかく良かったのはトランジション、カウンターです。即興の連携で縦に速く崩していくアタックは正に“集大成“でした。
これを後押しするデータもあります。界隈でお馴染みのゴール期待値xGです。
BTPによると、インテルの方がxGが高い=チャンスの質が高いという結果でした。
特に見て欲しいのがxG OPEN PLAY(オープンプレー時のゴール期待値)の項目。
流れの中ではインテルが明確に組織的な崩しを見せていたということです。
※他のサイトも覗きましたが、同様にインテル優位でした。
xG自体、そのまま飲み込めるデータではありませんので参考の域は決して出ないです。
しかし、インテルの攻撃は手数こそ少なかったですが、
・ルカクのカウンター
・ダンブロージオのクロスからガリアルディーニのボレー
・バストーニの高速クロス→モーゼス&サンチェスの押し込み
などなど。トータルで見ればセビージャよりもゴールに近かったんじゃないかと。そう思うんです。
なのでインテルは決して全てにおいて劣っていた訳でもないですし、まだまだ伸びしろがあるんだな、と思います!
今回の「経験値」は必ず来季役立ってくれる!!
ハンダノヴィッチが掲げるタイトルはスクデットかビッグイヤーに取っておきましょう!!!
FORZA INTER!!⚫️🔵
ご覧頂きありがとうございました🐯
これにて今期のマッチレビューは終了となります。
新シーズン開幕までは今シーズンの振り返り的ものを出したいな、と考えております。
そちらもご覧頂けると幸いです🙇♂️
いいなと思ったら応援しよう!
![TORA](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/35381757/profile_a26288e39d63c9998f5c8dd89ba12a6d.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)